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第11話:「片喰さんがカッコよすぎる件」
しおりを挟む皆様、お世話になっております。愛錵芽久郎です。
大変、お待たせしてしまい申し訳ございません。
予約投稿になっていなくて、19時に投稿したら話の途中で切れてしまったまま投稿してしまっていて、投稿内容を保存していたメモも削除してしまっていたのもあり、書き直していましたらこんなに時間がかかってしまいました。
お待たせしてしまい、本当に申し訳ございませんでした。
慌てながらも一生懸命、書かせていただきました。
楽しんでいただけますように、心を込めまして。
++++++++
「君たちにお会いするのは初めてだね。どうも、名をルメアーノという。君たち、人間で言うところの神という存在になるのだろうか?」
目の前には俺がヴェリきゅんのことを託された神様とよく似た髪と瞳の色をした美しい人が立っていた。
以前は、ヴェリきゅんを託される際に夢想空間のようなところで神様と会話をしていたから、まだ現実味がなくて神様のことを直視できていたが、普通に起きている現実の空間にルメアーノ様がいると神々しすぎて浮いて見える。
そのせいだろうか、めっちゃくちゃ緊張してしまうんだけど!!!??
ヴェリきゅんなんて、初めての神様との対面だし、俺より遥かに驚いて固まってしまっている。
ここは、俺が先陣を切らなければ…!
「えっと……お初にお目にかかります、ルメアーノ様。ご存知かとは思いますが、杜若響と申します。こちらがルメアーノ様のお仲間の神様から託されたヴェリキュス・ロ・ラベリッタです」
「嗚呼、同胞から聞いているよ。こちらも少し手を貸していた件だったからね。こちらからもお礼を言わせてくれ。同胞の願いを聞き入れてくれて本当にありがとう」
ルメアーノ様が頭を下げる。
「ルメアーノ様、やめてください!俺が好きでやったことです。お礼を言われるようなことじゃないですよ!」
「そんなことはないよ。思うだけは誰でもできる。"救いたいと思った"ことを行動できる者はごく限られているからね」
「そんな…!あ、ありがとうございます……」
神様にそう言われると何だか照れてしまうな。
ついつい、言葉に詰まっているとヴェリきゅんが徐に口を開いた。
「ルメアーノ様。この度は私をお救いくださり、誠にありがとうございました。私は、貴方様方のおかげでご覧の通り楽しく過ごさせていただいております。本当に感謝申し上げます。同胞の御方にも直接、お会いしてお礼を申し上げたいのですが、可能でしょうか…?」
「同胞が気にかけていた君に会えて嬉しいよ。こちらが勝手に手を出したことだ。気にしなくていい。同朋に会いたいとのことだが、すまない…同胞はこちらと違って、名前がなく番った相手もいないからね。こちらに来ることはできないんだ」
「名前がない…?そして、番……ですか?」
ヴェリきゅんは、俺にヴェリきゅんを託してきた神様にお会いできないと知りショックを受けている。
「そう。君たちが神と呼ぶ我々の種族は、生涯にたったひとつだけ番の存在を見つけるんだ。その番は、人間である場合もあれば動物だったり植物だったりする。その存在を見つけて、お互いに結ばれ了承し、名前のない存在である我々に名を付けて貰えば、番のいる場所にこうして赴けるようになるんだ」
「それは、また…」
「不便だと思うだろう?しかし、これは他の種族に比べて類稀なる力を持つ我々の代償だと思っているよ。それに、こうして番となる存在に出会えたから幸せだよ」
「そうなのですね…自分の運命みたいな、たった一つの存在だなんて素敵です!私もその番の方にお会いしてみたいです。その番の方は一体どちらに…?」
ヴェリきゅんは、無邪気にキョロキョロと見回す。
俺も気になっていたのだ。しかし話の流れ的に誰かは薄々、理解してはいるが……ヴェリきゅんは気がついていないようである。
「そうか忘れていたよ。ヴェリキュス・ロ・ラベリッタは鈍いのだったね。相手が誰であるか気がつかないのも無理ないか」
「あら。甘やかしてはダメよ、ルメアーノ。こういった鈍さというのは相手によっては不快になるものなんだから。働いてもらうからには、こういったところをビシバシ鍛えなくては」
「ふふ、麗は相変わらず真面目だね。そういったところが本当に愛おしいよ」
「また、ルメアーノはそういうことをストレートに言うんだから…もう」
片喰さんが照れている!!!!
ツンツンしている片喰さんがデレているとか、なにそれギャップ萌えなんですけど???
というか。このお二人、めちゃくちゃ顔整ってるから並んでるだけで絵になるし、絵力ありすぎて世界乗っ取れるのではってレベルなんだが????
というか、ヴェリきゅんは不思議そうな顔をして、きょとんとしているし…なにそれ。貴方、可愛すぎませんこと???いくら払えばいいの?ヴェリきゅんが、これからも元気にきょとん顔してくれるなら、俺はどれだけでも貢ぎます!!!
俺の脳内がお祭り状態のところに片喰さんがきょとんとしているヴェリきゅんに声をかける。
「アナタ、話によれば王子の婚約者だったのでしょう?そんな鈍くて、よくやってきていたわね…ルメアーノの番はワタクシよ」
「えぇっ!?片喰さんが……ッ!???すみません、勝手に女性だと思い込んでいました。大変、失礼致しました!」
「あら?アナタは王子の婚約者だと聞いていたけれど。同性同士の恋愛に偏見があるのかしら?」
「い、いえ…そういうわけでは!ただ、婚約者といっても殿下からは煙たがられていましたし…男性は女性に惹かれるものなのかなと経験上、感じたものですから……」
「それは、たった一人のデータでしょう?世の中には沢山の人間がいるの。一人からそれをされたからといって、全ての人がそうってワケじゃないわ。まだ若いから仕方がないけれど、なんでも思い込んではダメよ。よく考えて判断しなくてはいけないわ」
「…っ!片喰さんの仰る通りです。日々、精進して参ります。どうか、ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い致します」
ヴェリきゅんは勘違いした謝罪の意味も込めてか、自分の覚悟を示すように姿勢を正し深くお辞儀をした。
「フフ、律儀な子は嫌いじゃないわ。最初に電話で伝えた通り、ワタクシはアナタの就職先になるのよ。生半可なことをさせるつもりはないわ。厳しくいくから覚悟なさい」
「ハイッ!」
おお…さすが、片喰さん。
元騎士なだけあって、指導の仕方が上手いのだろうが、導き方がプロだな。
あれは、誰でもついていきたくなる…かっこええ!
それにしても、気になるのは。
「ヴェリきゅんの就職先って一体、どこになるのですか?」
この世界にまだ順応し切れていないヴェリきゅんが、初めて働く場所。とっても気になるよね!
「ワタクシとしたことが伝え忘れていたわね。ヴェリキュスには、通訳の仕事をしてもらいたいと思っているの」
「通訳…ですか?」
「通訳!確かに、五カ国が話せるヴェリきゅんにはピッタリですね!」
ヴェリきゅんは、いまいちピンときていないようだが、俺としてはヴェリきゅんにはピッタリの職業だと思えた。
五カ国が話せるのは、この世界において、かなりの武器になる。引く手数多に違いない!
「ヴェリキュスは、もしかしたら知らないかもしれないけれど、響くんなら知っているはずよ。レイヴン社って聞いたことがない?」
「レ、レイヴン社って、あのレイヴン社ですか!?」
レイヴン社といえば、超一流の洋服ブランドだ。
日本発祥の会社だが、海外でも爆発的な人気のある洋服ショップで、そこから雑貨屋、アクセサリーショップなどマルチに活躍している大手の会社。
そうか、レイヴンってことは…!!
「もしかして、片喰さんが創設者ですか!?」
「その通りよ。前の世界では騎士をやっていたけれど、本当はずっと服飾関係の仕事をしたかったの。自分も着飾ったりしたかったし、誰かを着飾らせることもしたかった。でも、それは騎士の名門である我が家では叶えることのできなかった夢。だからこそ今、ワタクシはやりたかったことを全力でやっているのよ」
か、カッコイイ…
こんなん、ルメアーノ様も惚れるしかないやつやん……
しかも、片喰さんが一人で最初やられていたのだとしたら、それをここまで大手の会社に成長させるなんて簡単にできることじゃない。
それに、前の世界からヴェリきゅんのように、ここに来たのなら。この世界のことを一から勉強したはずだ。
それらを吸収したうえで、世の中の需要に合わせたものを生み出せているなんて…この人、凄すぎるぞ!!
「ワタクシは、主に日本を拠点に活動しているのだけど、海外の方と接することも多いわ。アナタと違って、騎士という職業故、他国の言葉を勉強することなんて軽く挨拶程度はあってもペラペラと話せるまで勉強はさせてもらえなかったの。今は通訳の方を雇っているけど、タイミングよく旦那さんの仕事の都合で辞められるのよね。ルメアーノの同胞の神様からアナタの就職先について打診もきていたし、五カ国が話せるってことだったから、ちょうどいいと思ってね。アナタにはその仕事をしてもらいたいの」
「私に…務まるでしょうか」
「まだ、この世界…どころか学生だったから前の世界でも働いたことがないものね。不安になるのも仕方がないわ。だからアナタには、この世界の人に慣れてもらう為に一度ここで働いてもらおうと思っているの。ホテルから依頼を受けてワタクシが手がけている、このバーのホールスタッフとしてね」
「ヴェリきゅんがバーのホールスタッフとしてですか…!?接客業をしたことがないヴェリきゅんにはハードルが高すぎませんか??お酒を飲む人もいるわけだし、絡まれたりは──」
「アラ、失礼ね。ここは高級ホテルの会員制のバーよ。ワタクシが選んだ方しか会員にならない仕様にしているし、ヴェリキュスにトラブルが起こらないように対策したうえでワタクシはここを選んでいるのよ?」
そうだ。片喰さんは、大手会社のトップ。
トップに立つ人間がそれらのリスクを考えずに提案してくるわけがないじゃないか…!
「俺の考えが足りなかったです。本当にすみませんでした!」
「わかってくれればいいのよ。ヴェリキュスのことが心配なのもわかるけれど、過保護なのはよくないわ」
「はい。気をつけます」
うう。釘を刺されてしまった…
そうなんだよな~。ついつい、ヴェリきゅんに対して過保護になってしまうところがある。
ヴェリきゅんが辛い思いをしていたと知っているからというのもあるが、純粋に俺はヴェリきゅんには幸せになってほしいと思っている。その思いが強すぎるあまり、ヴェリきゅんには傷ついてほしくなくて…不安要素があると、それらのものから守りたくなってしまう。
いつまで一緒にいられるか、わからないけど…
ヴェリきゅんが俺の元を巣立つまでは。せめて、それまでは…ヴェリきゅんを勝手ながら、できる限り支えていきたい。
過保護すぎない程度に…ね。
「あ、そうだ!すみません。ヴェリきゅんの就労ビザって、どうなっているんでしょうか?片喰さんはご存知ですか…?」
「ああ、それなら…」
「それは、ちゃんとこちらで手配してあるから安心して。ふふ、もちろん違法滞在にはなっていないから。それも含めて安心してね」
「良かった……!響さんからビザのことをお聞きして私も不安だったんです。いろいろとお手続してくださって、本当にありがとうございました」
ルメアーノ様も同胞の神様もちゃんと考えてくださっていたようだ。本当に本当に有難い。
とりあえず、これで全ての憂いごとはなくなった。
一安心したことだし。
「ヴェリきゅん。就職先が決まって、本当によかったね」
「……はいっ!」
ヴェリきゅんに微笑みかけて、そう言うとヴェリきゅんも嬉しそうに笑った。
その後、俺は帰って『就職先が決まっておめでとうパーティー』をヴェリきゅんとしようと勝手に考えていたのだが、気を利かせてくれた片喰さんとルメアーノ様から就職祝い&この世界へようこそ記念でご飯をご馳走していただくことになり、俺たちは高級ホテルのディナーに舌鼓を打ったのであった。
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