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一章 5人の婚約者

お話いいかしら

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 チャイムが鳴るとメイリン先生は授業を終わらせた。次の魔法学は明後日の光の日だ。それまで回復魔法についての授業を受けることはできない。
 他の魔法学の授業を受けている生徒は、外で授業を受けて実際に魔法を使うこともあるけれど回復魔法はそれをする機会がない。
 次の授業では怪我をした教員がいれば無理にでも連れてくるから楽しみにしていてと言われたけれど、授業のために態々怪我をさせるわけではないだろうかと思いながらも私は保健室から出た。
 その時だった。丁度職員室から出てきた1人の生徒が目に入った。それは、接触をしたいと思っていた人物だった。
 相手に気づかれる前に私は早足に近づいて声をかけた。

「こんにちは」
「え? あ、こんにちは」

 声をかけられて驚いていたけれど、私が誰なのかがわかると少し目を泳がせてから挨拶をしてくれた。まさか私から声をかけられるとは思っていなかっただろうし、接触しよと考えてるとも思っていなかったに違いない。
 何故なら、彼女がフレイと一緒にいるところを食堂で見ただなのだから。廊下でフレイや他の取り巻きが一緒にいる姿は見たことがあるけれど、彼女が一緒にいるところは見たことがない。
 取り巻きであることは間違いないのだろうけれど、他の取り巻きとは何か違う理由があるのかもしれない。一緒にいることもできない理由なのか、他に取り巻きに嫌がらせでもうけているのか。

「もしかして、貴方ってもしかして令嬢じゃなくて庶民の子?」
「ええ……そうですけど」
「ごめんなさい、こんな言い方嫌よね。でも、私あなたの名前を知らないから。私はアメリア・レーメンツ。よろしければ名前を教えてもらえるかしら?」
「ナターシャ・ヒューテッドです。よろしくお願いします、アメリア様」

 頭を下げて言うナターシャは少し怯えているのか震えているように見えた。もしかするとこの子息令嬢が多い学園では煙たがられているのかもしれない。
 でも、ナターシャ以外にも庶民の生徒はいたはず。結局は付き合う相手を間違えてしまったということなのだろう。付き合う相手がフレイでなければ、彼女はこんなに怯えなくてすんだのではないだろうか。
 私よりも少し身長が低い彼女は金色に近いオレンジの髪をしており、目はとてもきれいな青。髪から覗く耳と、下がった尻尾を見て動物の種類に詳しくない私でも彼女がヒョウの半獣だということはわかる。ただ、彼女の様子からこれではいじめているようにしか見えないのが正直悲しかった。

「様なんてつけなくていいわよ。呼び捨てで構わないわ」
「ですが、身分が」
「身分なんか気にしないわ。貴方と私は同級生よ。フレイには様をつけないと怒られるの?」
「はい」
「普段は敬語?」
「学園では敬語です」
「なら、私には話しやすい話し方でいいわよ」
「え?」

 笑顔で言うと、ナターシャは驚いた顔をした。正直とても綺麗な顔をしていると思った。メイリン先生も見惚れる程美人だったけれど、ナターシャは美人というより整った顔をしていて綺麗というのが相応しい。
 はじめて話す相手からそんなことを言われてナターシャはどうしたらいいのかわからない様子だったけれど、一度小さく頷くと「ありがとう」と嬉しそうに言った。
 もしかすると、学園生活が辛かったのではないかと思ってしまった。ナターシャには友達と言える人はいるのだろうか。

「ナターシャに聞きたいことがあったのだけれど、本題はあとにして別のことを聞いてもいいかしら?」
「うん。いいよ」

 敬語ではないナターシャは少し話しやすいようで、笑顔で答えてくれた。本当は私をいじめの標的にする理由を聞きたかったけれど、今は別のことを聞くことにした。
 もしかすると彼女にとっては話しにくいものかもしれないし、話したくないことかもしれない。その場合は無理に聞こうとは思わない。

「貴方はどうしてフレイの言いなりになっているの? 食堂にもいたようだけれど、取り巻きをやりたいわけじゃないのでしょう?」
「やりたくない。でも、昔から家族同士は仲がいいから。私が逆らうと家族の仕事が無くなっちゃう。フレイ様の両親の下で働いてるから、困らせちゃいけないの」

 爵位を持っている人に庶民が逆らえば路頭に迷ってもおかしくはない。だからナターシャは自分1人が我慢をして家族を困らせないようにしているのだ。
 それなら、ナターシャが困った時は誰が助けれくれるのだろう。相談できる相手はいるのだろうか。

「ねえ、ナターシャ。こんなこと言われて困るかもしれないけれど、私達お友達にならない?」
「友達?」
「そう。私、昔言いがかりをつけられて友達がいなくなったことがあるの。それから友達がいないの」
「婚約者達は友達じゃないの?」
「彼らは友達よ。でも、女友達はいないの。どうせ裏切られるからって作らなかったの。でも、貴方とは友達になれる気がするの。言えないことは言わなくていいの。でも、誰かに話しを聞いてほしくなることってあるでしょ?」
「私、アメリアをいじめてるよ」
「……おもちゃの蜘蛛をフレイにふらせたことを言ってるの?」

 その言葉にナターシャはとても驚いた。私がナターシャだったらきっと驚いていたと思う。だって、自分が使える魔法を言っていないのだから。
 けれど、彼女が隠れるようにしていた理由は何となくわかっていた。おもちゃの蜘蛛をフレイにふらせたのが彼女なのだ。
 転送魔法。ナターシャが使える魔法がそれ。魔法によっては、使う時に魔法陣が現れる。彼女の魔法がそうだとしたら隠れていた理由になる。
 魔法陣が出ていれば魔法を使っていたとわかるため、あの時おもちゃの蜘蛛を落としたのが私の所為には出来なくなってしまう。だから隠れていたのだ。
 ナターシャが隠れておもちゃの蜘蛛を落としても、私がそれを落とせる場所にいなかったことはダンや他の人達が証明してくれたから別に構わなかった。

「貴方は家族のためにもフレイの言いなりになって取り巻きとして過ごさないといけないのは仕方がないから構わないわ。それに、貴方が本当はやりたくないと思っていることもわかる」
「ごめんなさい」
「どうして謝るの? フレイの取り巻きとして生きていかないといけないのなら、全力で私をいじめなさい。大丈夫。私がフレイから解放してあげるから、それまでは全力で頑張りなさい」
「ふふっ。なんか、アメリアってかわってる。でも、ありがとう。こんな私でもいいなら友達になってくれる?」
「ええ、喜んで」

 誰もいないから2人で話すことができるけれど、私はベルディア先生ならこの様子を見ているのではないかと思っていた。
 彼の魔法ならそれが可能なのだから、時間があれば学園内を見ているのではないかと思っていた。そうでなければ、昨日の放課後に階段から突き落としたのが私だと思っていてもおかしくないのだ。
 人間じゃなかったと言っても、怪しいと思われている人には先生から問いただすだろうから。でも、そうしなかったのだからベルディア先生は見ていた可能性が高いのだ。

「それで本題って?」
「忘れるところだったわ。ナターシャは知らないかもしれないけれど、どうしてフレイが私をいじめるのか知らないかしら?」

 その言葉にナターシャは首を傾げた。知らないのだろうと思ったけれど、ナターシャh何かを考え出した。もしかすると以前何かを言っていたかもしれないと思って思い出そうとしてくれているのかもしれない。
 けれどフレイは誰かに話をするのだろうか。取り巻きは命令さえすればなんだって聞いてくれるだろう。私をいじめるのだって言われたというだけかもしれない。それに、フレイやその取り巻きだけが私をいじめているわけではない。
 フレイの取り巻きはナターシャを入れても5人程度。それ以上の人が私をいじめてくるのだから、彼女達には別の理由があるのだろう。
 でも、まずはフレイのほうから解決したい。彼女達のやることは正直目立つ。それに、最近では私の所為にしようとしている。本当に私の所為だと思っている人もいるのだから、解決したいのだ。
 このままだときっと昔のようなことが起こってしまう。1人になることは別に怖いとは思わないけど、その矛先が他の人に向くことがとても怖いのだ。

「フレイ様には、婚約者がいるの」
「それが誰かはわかる?」
「わからない。でも、アメリアの婚約者の誰かだということはわかるよ」
「もしかして、私の婚約者になったから相手をされなくなったとか?」

 フレイに婚約者がいるということは知っていた。エルセント学園でも廊下で擦れ違う時に、よく婚約者の話をしているところに遭遇していたから。それが誰なのかは知らないし、名前を出していたこともない。だから誰が婚約者なのかはわからなかった。
 その婚約者がフレイに何かを言って私をいじめることになった可能性もなくはないだろうけれど、それだとするとおかしいのではないだろうか。
 私をいじめることをフレイの婚約者は喜ぶのだろうか。私がフレイの婚約者だったら喜びはしない。逆にそんな人だったのかと婚約を破棄するだろう。若しくは、相手をしなくなる。簡単に婚約を破棄できない場合は相手をせずに、貴方に気はないと示すだろう。

「……私の婚約者の誰かと、フレイが協力して私をいじめてる?」
「そうだとしたら、アメリアの婚約者にはどんな利益があるの?」
「私が婚約を破棄すると、フレイと婚約者は堂々と付き合えるとか。フレイに協力している婚約者が私と結婚できるとか?」
「その可能性はありそうだけど……アメリアは婚約者の誰かと結婚するの?」
「今のところそのつもりはないの」

 首を振って答えると、ナターシャが「それなら、フレイ様の婚約者が誰なのかを突き止める必要があるんじゃない?」と言った。たしかにそうだけれど、突き止めることはできるのだろうか。
 私の婚約者に聞くと怪しまれてしまう可能性があるし、ナターシャがフレイに聞いても怒られるかもしれない。
 それなら、他に知ってそうなのはだれか。そう考えて思いつくのはベルディア先生だった。担任教師なのだから知っていてもおかしくはないだろう。
 ただ、教えてくれるかというと別の話だろう。個人情報でもあるのだから教えてくれないと思う。

「無茶しない程度で、聞けたら聞いてもらってもいいかしら?」
「構わないよ」
「ありがとう。それじゃあ、一緒に戻るとフレイ達に怪しまれるだろうからナターシャは先に戻って」
「うん。それじゃあね」

 手を振って階段を向って行くナターシャを見送ってから、私は職員室の扉を黙って見つめた。とくに意味はないけれど暫く見つめていた。
 すると突然目の前の扉が開いた。見上げると扉を開いたのはベルディア先生だった。まるで面倒臭いとでも言うような顔をして私を見下ろしている。

「先生って身長何センチですか?」
「あ? たしか、196センチだったはずだ」
「私よりも35センチも高いんですね。扉が開かれたのに壁が現れて驚きました」
「酷いな」
「それで、何かを言いに来たのではないのですか?」

 私の言葉にベルディア先生は右手人差し指で頬を軽くかいてから腕を組んで大きく溜息を吐いた。
 何を言いたいのかわからず、私は見上げたまま首を傾げた。言いたいことがあるのならはっきり言えばいい。教師なのだから気にすることはないだろう。
 それなのにベルディア先生は何度か口を開いては閉じてはと繰り返している。言いにくいことなのか、それともここでは言えないことなのだろうか。

「場所を変えましょうか?」
「いや、変えたとしても変わらないからな」
「なら、早く言ってくださいよ。ベルディア先生が言いたそうにしていることが気になって教室に戻れません。そうすればチャイムが鳴って次の授業に遅れます」

 私の言葉に「たしかにそうだな」と納得してから、また大きく溜息を吐いた。この人は溜息の吐きすぎで幸せが逃げているのではないだろうか。

「結婚してるんでしたっけ?」
「いや。何? 口説こうとでもしてる?」
「違います。凄い思考回路ですね。溜息を吐きすぎているので、幸せが逃げると思いまして」
「ああ……俺の幸せは逃げてもいいんだよ。そのかわり他の奴が幸せになればいい。それは、お前にも言えるんだがな」
「……口説いてます?」
「違う。生徒に口説いたら問題だろ」

 そう言うと僅かに職員室内に目をやった。私もちらっと職員室を覗いたが、先程の言葉に反応したのか数人の教員がこちらを見ていた。
 卒業してしまえば構いはしないのだろうけれど、在校生に手を出してしまえば問題になってしまう。最悪、教員が学園から追い出されてしまうのだから。

「で、俺が言いたかったのは個人情報は教えられませんということ」
「魔法で覗き見はしてるのにですか?」
「安全のために見守ってるの」
「いじめには口も出さないのに?」
「……」
「気にしてませんよ。私でどうにかします。ベルディア先生は口を出さないといけないという時にお願いしますね」

 そんな時が来るのかはわからないけれど、私それだけを言うと教室へと向かうために歩き出した。ベルディア先生は何も言わなかったけれど、私が階段を上る時にもまだ扉のところにいた。
 何を考えているのかはわからないけれど、ベルディア先生にも考えがあるのだろう。もしかすると、学園の決まりで口出しをしてはいけないと言われている可能性もあるけれど、私は自分で解決すると決めているからそれで構わなかった。
 困った時は婚約者達に聞けばいい。フレイに協力しているのが誰かはまだわからない。それに、本当に婚約者の中に協力者がいるのかもわからない。いないほうがいいと思う。
 まずはフレイの婚約者が誰かを知るために行動しなくてはいけないと考えながら教室へと向かった。
 教室に入って自分の席に向かうまでの間、私のカバンが見当たらなかったけれど、掃除棚の上にあることを確認して小さく溜息を吐いた。
 これは、前の授業でカバンが邪魔になったから邪魔にならない場所に置いたのだろうと思いながら、婚約者の中で一番身長の高いローレンに頼んで取ってもらった。

「何か無くなった物はないか?」
「うん。大丈夫。ありがとう」
「いいのか?」
「うん。ただ邪魔になったから邪魔にならない場所に置いただけよ」

 思ったことをそのまま告げて私は自分の席に戻った。カバンについた埃を払い、机の上に置いてから魔法学の教科書とノートをカバンに中に入れて次の授業の準備をした。
 ローレンにフレイの婚約者について聞いてもよかったけれど、聞くことはしなかった。私の婚約者であっても、今は信じることができなかったから。
 早く解決して、信じてあげないと本当に1人になってしまうかもしれない。だから、頼れることがあれば頼らないといけない。でも、解決するまではいじめ関係では婚約者には頼らないようにしたかった。
 ナターシャもフレイに聞くのは難しいだろうから、私が頑張らないと。心の中で「大丈夫。解決できる」と言い聞かせて、私は頭の中で作戦を考えはじめた。



―――――
ナターシャ・ヒューテッドはアムールヒョウの半獣です。友達になる予定ではありませんでしたが、これで良かったと思ってます。
ベルディア先生は攻略対象ではありません。恋愛ゲームで言うのなら、全員攻略してから隠しキャラとして攻略できるようにはなりそうなキャラです。
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