上 下
53 / 61
第五章

第12話 家族

しおりを挟む





 スワンにつれられて着替えたロベリアは、すぐに『謁見の間』へと戻った。そこには、何かを考える父様がいた。何を話していたのかはわからないし、教えてはくれないだろうと雰囲気からわかっていた。
 それからギルはシロンについて行き、私は家族と一緒に帰宅した。その日、父様は私と会話をしなかった。キースは、まるで人が変わったように私に自分の気持ちを押しつけてくることもなくなった。一度寮へと戻ったけれど、荷物を持ってすぐに帰ってきた。
 私が『謁見の間』に戻る前に、父様に寮から出てもいいと言われたようだった。シロンから私とは本当の姉弟ではないと聞いたようだったけれど、納得したから構わないと笑っていた。それに、キースにとって私が姉であることは変わらないようだった。
 シロンは言っていた通り、新しく国王となったことを告げた。ルードの双子の兄であり、ルードは領主としての仕事につくことを。ただ、国民への説明は翌日の新聞でだった。
 今までルードが国王をしていたのは、10年前の事故により生死が不明で行方不明となっていたためと説明されていた。誰もが驚いていたが、受け入れられるのは早かった。
 ルードが国王ということに不満を持っていた者もいたのだろう。それは、他国との交流があまりなかったからだ。ルードは他国との交流をあまりしていなかった。
 父親が国王のときは、隣国エレニー王国と交流をしていた。それなのに、ルードはエレニー王国と交流をしようとしなかった。それに不満を持っていた者が多かったのだ。しかし、文句を言ってしまうと国を追い出される。だから何も言えずにいたのだ。
 スワンとの結婚も一緒に伝えられていたが、思ったよりも混乱しているように見えなかった。結婚は今日から2日後。もちろん、私達家族もギルも呼ばれている。けれど、私はその日までギルに会うことができない。
 朝食を食べ終わってから城へ向かったのだけれど、多くの者が集まっていたのだ。国王が変わったことにより、一目見ようと集まってきたようだった。大勢の者達が国王に会いたいと許可を貰おうとしていたのだ。そこに許可を貰ってきた様子のギルが現れた。
 とても疲れているように見えたので、声をかけることはしなかった。暫くは忙しいだろうと判断したのだ。だから、ギルに会うのは結婚式の日まで我慢することにしたのだ。
 帰宅した私を向えたのは、父様と母様。それに、キースだった。父様はこれから出かける様子だった。その見送りをしに出て来ていたようだった。
 何かを言ったほうがいいのか迷っている私の横を、何も言わず通りすぎようとする父様。シロンに認められはしたけれど、父様は私に対する思いは変わっていないのだろう。そう思ったけれど、どうやら違ったようで――。
「いってくる」
 頭に優しく乗せられたのは父様の右手だった。そして言われた言葉。はじめてかけられたその言葉に私は笑みを浮かべた。認めてもらえたのだと気づいたから。
「いってらっしゃい」
 離れる手と足音に、私は振り返りそう言った。馬車に乗り込もうとする父様が振り返り、私に小さく笑みを見せてから馬車に乗り込んだ。
 隣に並んだ母様が「これから、鳥人族の方と取り引きなのよ」と教えてくれた。今までも人族以外の者との取引はしていた。けれど、あまりいい顔はしていなかった。
 しかし、今の父様の顔は嫌そうには見えなかった。走り去る馬車を見送り、私達は家へと入った。父様は夕方に帰ってくると告げられ、私は自室へと戻った。
 久しぶりに自宅でゆっくりできると思うと、小さく息を吐いた。せっかく認めてもらったのに暫くギルに会えないことは寂しかったけれど、漸く家族としてこの家ですごすことを認められたのだと思うとすごく嬉しかった。
 そして、あることを相談しようと決めた。今の父様ならもしかすると認めてくれるかもしれない。そう思った。









しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

理不尽に抗議して逆ギレ婚約破棄されたら、高嶺の皇子様に超絶執着されています!?

鳴田るな
恋愛
男爵令嬢シャリーアンナは、格下であるため、婚約者の侯爵令息に長い間虐げられていた。 耐え続けていたが、ついには殺されかけ、黙ってやり過ごすだけな態度を改めることにする。 婚約者は逆ギレし、シャリーアンナに婚約破棄を言い放つ。 するとなぜか、隣国の皇子様に言い寄られるようになって!? 地味で平凡な令嬢(※ただし秘密持ち)が、婚約破棄されたら隣国からやってきた皇子殿下に猛烈アタックされてしまうようになる話。

【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。

るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」  色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。  ……ほんとに屑だわ。 結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。 彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。 彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。

美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛

らがまふぃん
恋愛
 こちらは以前投稿いたしました、 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 の続編となっております。前作よりマイルドな作品に仕上がっておりますが、内面のダークさが前作よりはあるのではなかろうかと。こちらのみでも楽しめるとは思いますが、わかりづらいかもしれません。よろしかったら前作をお読みいただいた方が、より楽しんでいただけるかと思いますので、お時間の都合のつく方は、是非。時々予告なく残酷な表現が入りますので、苦手な方はお控えください。 *早速のお気に入り登録、しおり、エールをありがとうございます。とても励みになります。前作もお読みくださっている方々にも、多大なる感謝を! ※R5.7/23本編完結いたしました。たくさんの方々に支えられ、ここまで続けることが出来ました。本当にありがとうございます。ばんがいへんを数話投稿いたしますので、引き続きお付き合いくださるとありがたいです。この作品の前作が、お気に入り登録をしてくださった方が、ありがたいことに200を超えておりました。感謝を込めて、前作の方に一話、近日中にお届けいたします。よろしかったらお付き合いください。 ※R5.8/6ばんがいへん終了いたしました。長い間お付き合いくださり、また、たくさんのお気に入り登録、しおり、エールを、本当にありがとうございました。 ※R5.9/3お気に入り登録200になっていました。本当にありがとうございます(泣)。嬉しかったので、一話書いてみました。 ※R5.10/30らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。 ※R6.1/27美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛(前作) と、こちらの作品の間のお話し 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 始めました。お時間の都合のつく方は、是非ご一読くださると嬉しいです。 *らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/4に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。

【1/21取り下げ予定】悲しみは続いても、また明日会えるから

gacchi
恋愛
愛人が身ごもったからと伯爵家を追い出されたお母様と私マリエル。お母様が幼馴染の辺境伯と再婚することになり、同じ年の弟ギルバードができた。それなりに仲良く暮らしていたけれど、倒れたお母様のために薬草を取りに行き、魔狼に襲われて死んでしまった。目を開けたら、なぜか五歳の侯爵令嬢リディアーヌになっていた。あの時、ギルバードは無事だったのだろうか。心配しながら連絡することもできず、時は流れ十五歳になったリディアーヌは学園に入学することに。そこには変わってしまったギルバードがいた。電子書籍化のため1/21取り下げ予定です。

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。

つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。 彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。 なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか? それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。 恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。 その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。 更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。 婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。 生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。 婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。 後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。 「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

処理中です...