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第五章
第12話 家族
しおりを挟むスワンにつれられて着替えたロベリアは、すぐに『謁見の間』へと戻った。そこには、何かを考える父様がいた。何を話していたのかはわからないし、教えてはくれないだろうと雰囲気からわかっていた。
それからギルはシロンについて行き、私は家族と一緒に帰宅した。その日、父様は私と会話をしなかった。キースは、まるで人が変わったように私に自分の気持ちを押しつけてくることもなくなった。一度寮へと戻ったけれど、荷物を持ってすぐに帰ってきた。
私が『謁見の間』に戻る前に、父様に寮から出てもいいと言われたようだった。シロンから私とは本当の姉弟ではないと聞いたようだったけれど、納得したから構わないと笑っていた。それに、キースにとって私が姉であることは変わらないようだった。
シロンは言っていた通り、新しく国王となったことを告げた。ルードの双子の兄であり、ルードは領主としての仕事につくことを。ただ、国民への説明は翌日の新聞でだった。
今までルードが国王をしていたのは、10年前の事故により生死が不明で行方不明となっていたためと説明されていた。誰もが驚いていたが、受け入れられるのは早かった。
ルードが国王ということに不満を持っていた者もいたのだろう。それは、他国との交流があまりなかったからだ。ルードは他国との交流をあまりしていなかった。
父親が国王のときは、隣国エレニー王国と交流をしていた。それなのに、ルードはエレニー王国と交流をしようとしなかった。それに不満を持っていた者が多かったのだ。しかし、文句を言ってしまうと国を追い出される。だから何も言えずにいたのだ。
スワンとの結婚も一緒に伝えられていたが、思ったよりも混乱しているように見えなかった。結婚は今日から2日後。もちろん、私達家族もギルも呼ばれている。けれど、私はその日までギルに会うことができない。
朝食を食べ終わってから城へ向かったのだけれど、多くの者が集まっていたのだ。国王が変わったことにより、一目見ようと集まってきたようだった。大勢の者達が国王に会いたいと許可を貰おうとしていたのだ。そこに許可を貰ってきた様子のギルが現れた。
とても疲れているように見えたので、声をかけることはしなかった。暫くは忙しいだろうと判断したのだ。だから、ギルに会うのは結婚式の日まで我慢することにしたのだ。
帰宅した私を向えたのは、父様と母様。それに、キースだった。父様はこれから出かける様子だった。その見送りをしに出て来ていたようだった。
何かを言ったほうがいいのか迷っている私の横を、何も言わず通りすぎようとする父様。シロンに認められはしたけれど、父様は私に対する思いは変わっていないのだろう。そう思ったけれど、どうやら違ったようで――。
「いってくる」
頭に優しく乗せられたのは父様の右手だった。そして言われた言葉。はじめてかけられたその言葉に私は笑みを浮かべた。認めてもらえたのだと気づいたから。
「いってらっしゃい」
離れる手と足音に、私は振り返りそう言った。馬車に乗り込もうとする父様が振り返り、私に小さく笑みを見せてから馬車に乗り込んだ。
隣に並んだ母様が「これから、鳥人族の方と取り引きなのよ」と教えてくれた。今までも人族以外の者との取引はしていた。けれど、あまりいい顔はしていなかった。
しかし、今の父様の顔は嫌そうには見えなかった。走り去る馬車を見送り、私達は家へと入った。父様は夕方に帰ってくると告げられ、私は自室へと戻った。
久しぶりに自宅でゆっくりできると思うと、小さく息を吐いた。せっかく認めてもらったのに暫くギルに会えないことは寂しかったけれど、漸く家族としてこの家ですごすことを認められたのだと思うとすごく嬉しかった。
そして、あることを相談しようと決めた。今の父様ならもしかすると認めてくれるかもしれない。そう思った。
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