上 下
36 / 61
第四章

第07話 待っていたよ

しおりを挟む





 馬車が城へと着くと、馭者が扉を開いた。先にスワンさんが馬車から下りて、私が後ろに続いた。城には大勢が働いているのだろうけれど、誰の姿も見えない。
 スワンさんに案内されて、私は後ろに続く。この間パーティーをした場所に来ると、階段を上り右側の通路へと向かう。
 この通路は一般の者が通ることは許されてはいない。国王に会う約束をしている者であれば、私のように案内されて通ることができるのだ。それ以外の者は、通ることすらできないのだ。
 何も話すことなくついて行くと、スワンさんが扉の前で立ち止まった。その扉には『玉座の間』と書かれていた。この扉の先に国王がいるのだ。
 一度私を見たスワンさんに小さく頷くと、同じように頷き返してくれた。そして、小さく息を吐いてスワンさんは扉をノックした。
「お待たせしました、国王陛下。ロベリア様をお連れしました」
「入れ」
 聞こえてきたのは国王の声だった。パーティーの日に聞いた声に、知らずに緊張してしまう。けれど、スワンさんに言われた言葉を思い出す。
 ――私は、私のままでいいんだ。
 一度息を吐いて大きく吸う。スワンさんが静かに扉を開き、王座の間にいる国王へ向かって頭を下げた。私もスワンさんほどではないけれど、頭を下げた。
 そして、スワンさんに促されて部屋の中へと入る。扉を静かに閉めたスワンさんは、私に目配せをした。後ろについて来てほしいという意味だとわかり、何も言うことなくついて行く。
 数段ある階段の上にある玉座に座る国王は、足を組み、肘掛けに肘をついて頬杖をつきながら口元に笑みを浮かべて私を見ている。右隣にはメイド服を着た、鳥人族の女性が立っていた。
「待っていたよ」
 そう言った国王に、私は嫌な予感がした。スワンさんが戻ってきたためか、メイドの女性は静かに部屋を出て行った。
 部屋に残されたのは、私とスワンさん。そして、国王だけだった。











―――――
『謁見の間』か『玉座の間』のどちらにするか悩んで悩んで悩んだ結果、『玉座の間』となりました。
普段国王は、自室にいるか『玉座の間』にいます。

因みに、国王の側にいたメイドの鳥人族女性はシマエナガの鳥人族です。シマエナガ可愛いです。このメイドさんも小柄で可愛い女性をイメージしております。が、描写はないのでお好きにイメージしてください。
どのキャラクターにも言えることですがね。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私は、あいつから逃げられるの?

神桜
恋愛
5月21日に表示画面変えました 乙女ゲームの悪役令嬢役に転生してしまったことに、小さい頃あいつにあった時に気づいた。あいつのことは、ゲームをしていた時からあまり好きではなかった。しかも、あいつと一緒にいるといつかは家がどん底に落ちてしまう。だから、私は、あいつに関わらないために乙女ゲームの悪役令嬢役とは違うようにやろう!

半世紀の契約

篠原 皐月
恋愛
 それぞれ個性的な妹達に振り回されつつ、五人姉妹の長女としての役割を自分なりに理解し、母親に代わって藤宮家を纏めている美子(よしこ)。一見、他人からは凡庸に見られがちな彼女は、自分の人生においての生きがいを、未だにはっきりと見い出せないまま日々を過ごしていたが、とある見合いの席で鼻持ちならない相手を袖にした結果、その男が彼女の家族とその後の人生に、大きく関わってくる事になる。  一見常識人でも、とてつもなく非凡な美子と、傲岸不遜で得体の知れない秀明の、二人の出会いから始まる物語です。

令嬢と5人の婚約者

さおり(緑楊彰浩)
恋愛
レーメンツ伯爵家の次女、アメリアには婚約者が5人いる。 獣人と半獣と人間。爵位もそれぞれ。 しかし、アメリアは5人のうちの誰かと結婚できなくても構わないと思っていた。 彼女には前世の記憶があったのだ。 『どんなことがあっても、キミだけを守る。たとえ、人間でなくなったとしても』 そう言った前世の相手。顔もわからない、その言葉とその瞬間の自分のことしか覚えていない前世。 前世のアメリアが死ぬ瞬間に言われた言葉。 アメリアはただその人物だけを探していた。それが誰かもわからないまま。 見ても前世の声をかけてくれた相手かはわからないかもしれないし、相手も覚えていない可能性が高い。 たとえその人物が人の言葉を話せない存在になっていたとしても、覚えているのであれば感謝の言葉を伝えたいと思っていた。 今月中に5万字を取り敢えず目指しておりますが、不定期更新となります。 学園、魔法、ファンタジー、恋愛ものです。 最初のころは恋愛は全くしておりませんが、恋愛はします。時間がかかるだけです。 ※1月17日 プロローグ 『レーメンツ公爵家』を『レーメンツ伯爵家』に修正しました。 次の更新は18日18時です。それ以降は2月中旬から下旬。 2020年2月16日 近況ボードをご確認ください。

悪役令嬢ってこれでよかったかしら?

砂山一座
恋愛
第二王子の婚約者、テレジアは、悪役令嬢役を任されたようだ。 場に合わせるのが得意な令嬢は、婚約者の王子に、場の流れに、ヒロインの要求に、流されまくっていく。 全11部 完結しました。 サクッと読める悪役令嬢(役)。

【完結】美しい人。

❄️冬は つとめて
恋愛
「あなたが、ウイリアム兄様の婚約者? 」 「わたくし、カミーユと言いますの。ねえ、あなたがウイリアム兄様の婚約者で、間違いないかしら。」 「ねえ、返事は。」 「はい。私、ウイリアム様と婚約しています ナンシー。ナンシー・ヘルシンキ伯爵令嬢です。」 彼女の前に現れたのは、とても美しい人でした。

果たされなかった約束

家紋武範
恋愛
 子爵家の次男と伯爵の妾の娘の恋。貴族の血筋と言えども不遇な二人は将来を誓い合う。  しかし、ヒロインの妹は伯爵の正妻の子であり、伯爵のご令嗣さま。その妹は優しき主人公に密かに心奪われており、結婚したいと思っていた。  このままでは結婚させられてしまうと主人公はヒロインに他領に逃げようと言うのだが、ヒロインは妹を裏切れないから妹と結婚して欲しいと身を引く。  怒った主人公は、この姉妹に復讐を誓うのであった。 ※サディスティックな内容が含まれます。苦手なかたはご注意ください。

婚約破棄を望む伯爵令嬢と逃がしたくない宰相閣下との攻防戦~最短で破棄したいので、悪役令嬢乗っ取ります~

甘寧
恋愛
この世界が前世で読んだ事のある小説『恋の花紡』だと気付いたリリー・エーヴェルト。 その瞬間から婚約破棄を望んでいるが、宰相を務める美麗秀麗な婚約者ルーファス・クライナートはそれを受け入れてくれない。 そんな折、気がついた。 「悪役令嬢になればいいじゃない?」 悪役令嬢になれば断罪は必然だが、幸運な事に原作では処刑されない事になってる。 貴族社会に思い残すことも無いし、断罪後は僻地でのんびり暮らすのもよかろう。 よしっ、悪役令嬢乗っ取ろう。 これで万事解決。 ……て思ってたのに、あれ?何で貴方が断罪されてるの? ※全12話で完結です。

あなたが私を選んだ理由に、断固異議あり!

ルカ(聖夜月ルカ)
恋愛
なんでも『普通』で、誇れるものが何ひとつない奈美は、あることから、憧れのベリーヒルズで働くことに。 だけど、それと同時に社長からとんでもないことを言われて…

処理中です...