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16話
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しおりを挟む『貴方は何もしなくていいの。私の呪いを解くことはできないのだから』
「お、おい! どこに行くんだ」
冷たく言って背中を向けて離れると、後ろから声が聞こえたが立ち止まることはしなかった。ここまで来たが、呪いを解くために必要なのはニールではなかったのだ。それが分かっただけでも、よかったのかもしれない。
見たところ怪我もしていなかった。ルージュが来たことは間違いではなかったのだろう。ニールと国王が殺されて、この国がリラのものになったら最悪の結果になっていた。
それを阻止できたのだ。十分だろう。
「どうして呪いを解かないんだ」
驚いた様子のノワールの声色は、まるで怒っているかのようだった。せっかく呪いを解くためにここへ来たのだから、解く様子のないルージュに対して怒るのは当然なのかもしれない。
(でも、リラ嬢の計画を阻止できたのだからいいじゃない)
きっとノワールも、ルージュの呪いがすでに解けていてもディオース王国が危険にさらされているから助けに行くと言ったら手伝ってくれただろう。今回ノワールにとっては、呪いを解くことが最優先だったのだろう。だから呪いを解こうとしないルージュに怒っているのだ。
ニールの元に行って呪いを解けと言う言葉には従わない。もう痛みは無いだろうが、治したばかりの傷に気をつけながらルージュはゆっくりと膝の上に乗る。
前足をノワールの胸につけて体を伸ばす。何をするのかと様子を伺っていたノワールは、ルージュを黙って見ているだけで動かなかった。だから頬にキスをするのは楽だった。
キスをされたことに驚いているノワールの目の前で、ルージュは元に戻った。戻ったルージュは、ノワールに微笑んだ。ルージュは気づいてしまったから、戻ったことに驚くことはなかった。
窮地に助けられたから言葉が届いたのではなく、気がつかないうちに好きになっていたから届いたのだということ。
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