追放された荷物持ち~魔法は使えないけど、最強剣術で冒険者SSSランク!?完全回復魔法が使える幼馴染は一緒についてきてくれるそうです~

柳原猫乃助

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第二章 勇者降臨

第五十三話 モンスター・スタンピード

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三日後。
スバーリック平野にて。

そこは、一言で言えば戦場と言える様相だった。

「広範囲攻撃魔法の直撃を確認!!」

スポッターとして望遠鏡を覗く冒険者が叫ぶと、続かんばかりに他の冒険者が立ち上がる。
それぞれの得物を手に取り、意気揚々とする彼等と彼女等の前には、魔獣達の群団が蠢いていた。

「ちっ…………なんて数だ。もっと魔力を込めて吹っ飛ばすことができないのか?」

「これ以上やったら、今度は平野の自然体系まで死ぬ。あとは俺ら戦士の出番って訳だ」

アギトとブリッツにチュルムの三人は振り分けられた部隊で、そんな言葉のやり取りを聞きながら、それぞれ武器の最終確認をする。
問題なし。

「…………なあ、アギトよ」

「なんだ?」

「あれ結局、言わなくて良かったのか?」

「…………ああ。直接聞いたって、どうせはぐらかすか、知らないフリをされるのが関の山だ。今は兎に角これから突破することを考えるぞ」

ブリッツが頷き、チュルムが首を突っ込む。

「セシルと話してたあれか。あんまり上の思惑なんて考えない方がいいんだぜ?」

「考えているつもりはないさ。ただ、これがどういう目的で行うのか。それを知るきっかけになれればと思っただけだ」

「へ……まあ、それもこれも生きて帰ってからのお楽しみって奴かな」

「チュルム。お前はモンスター・スタンピードについて経験者なのか?」

「…………まあ」

その時、彼女は戦士にして凶悪かつ強い思いを込めた殺意の笑みで、槍を握り締めた。
恐怖と興奮が、同時に吹き出たようである。

「嫌という程、な」

それで察した二人は、何か問うことはしない。
思い出したくない過去は、ほっといてももうすぐ再現されるのだろうから。

「第三撃目!! 魔法、命中!! 敵前衛殲滅!!」

「予定通り戦士部隊の突撃を行う!! 射手部隊の展開は完了済み! 魔法士部隊の支援陣形の展開に合わせて行くぞ!!」

指揮を取る冒険者に従い、同業者153名は体勢を取る。
タイミングを合わせ、彼等は突撃を開始した。

まるで大河ドラマの合戦だ。
突撃を命令されると、戦士達は吠えて地面が蹴られる。
走っているだけで土埃が立ち上ぼり、視界が徐々に不良へとなっていく。

しばらくして、アギト達は走っていると、前から戦闘音が響いてきた。
先頭集団はすでにやりあっている。
部隊は散開し、それぞれが狙いの敵を倒していた。
相手は魔獣なので、人間同士の合戦と比べて、はるかに乱戦しているが冒険者なら問題ない。
乱戦の方が馴れているからだ。

アギトとブリッツもその例にもれない。
寧ろ、そちらの方が最近は多かった。

通りすがりのゴブリンに対して、アギトはすれ違いざまに切り捨てて、ブリッツは進行方向に隙だらけの状態の相手に右ストレートを叩き込む。
全身の体重と筋肉のしなやかな動きから繰り出された一撃が、醜悪な小人の顔面をより醜悪へと変えて、頭蓋骨を砕いた。
チュルムは負けじと、素早い槍捌きで、瞬く間にオークを二匹刺し殺した。

「おらおらぁ!!」

ブリッツの猛攻は止まらない。
右から左へ前後ろとやってくる魔獣を巧みな体捌きと、素早いコンビネーションで翻弄し、撲殺する。
アギトも次々と斬撃を繰り出し、あっという間に太刀に血脂がベットリとついた。
切れ味は落ちているがそれでも上段からの袈裟切りによって、革兜を被る、オークの頭を破壊した。

「へぇ! やっぱすげぇなアギト!!」

軽口を飛ばしながら、槍を軸に回し蹴りからの、倒れた魔獣を連続突きで抹殺するチュルム。
背後からくるフォレストウルフを背中越しではたきおとし、首の骨をへし折りながら続けた。

「本気であんたのこと狙おうかな! 夫婦で戦士とかよくない?」

「うるさい!!」

鞘で接近するゴブリンを怯ませると、道具袋から投げナイフを取り出して投擲して殺し、飛びかかってきたオークの首に切っ先を突き立てる。
死骸から引っこ抜き、血糊を振り払うが、完全には飛び散らない。
太刀は継戦能力が低いのだ。

「軽口が出るくらいならまだやれるだろう。俺よりも頑張れ」

「そうは言うがね、おっと、そろそろだ!」

槍使いの戦士の言葉に頷く、太刀使いの剣士と豪腕の拳闘士。
周囲の冒険者らと同時に後退し、一気に距離をあける。
無論魔獣達は追撃した。
これほどの好機を逃すわけには行かぬと、そう言わんばかりに。

だが、次の瞬間魔獣の群れは左方向から襲いかかってきた、炎の槍に焼かれていくことになった。
断続的に放たれるそれは、魔法士の放つ、炎属性のカタパルト。
紅蓮の炎が迸り、受けた魔獣は肉と骨を焼き焦がされながら死んでいった。
右方向からは電撃の嵐。
合わさった魔力の奔流が変換されて、大地ごと残敵を塵芥田へと還す。

それでもなんとか突破したものたちに待ち受けていたのは、銃撃と弓矢にボルトや投げ石投げ槍の雨霰。
ピンポイントにオークの頭を撃ち抜いたシバは、仲間達と一緒に前衛と位置を交代して、狙撃していた。
ボルトアクションという、レバーハンドル操作を手早く行い、銃にマガジンから新たな銃弾を装填。
狙いをつけ、引き金を絞った。
破裂する音とともに放たれたのは、高圧縮された魔力の弾丸であり、それが音速以上の速度でサイクロプスの目玉と脳髄を破壊する。

「命中。次」

新たな戦果を確認して、次の標的を狙い、撃つ。

「命中。次」

「こっのぉ!! 銃になんか負けてたまるもんですか!」

その横ではリサが弓を何度も引いていた。
どうやら二人で競争しているようで、現状ではシバが若干有利である。

「よぉし!! 射手部隊後退!! 戦士部隊、再度突撃するぞ!!」

おおおおっ!!!!

鳴り響く戦意高揚の声。
戦士達は一斉に突撃し、射手の援護をうけながら残敵の魔獣達に、死の鉄槌をくだしたのであった。

その背後では、負傷をおったもの達がかき集められ、治癒魔法をかけられていた。
この中で、陽菜野の完全回復魔法は凄まじいの一言であった。
腕が切断された戦士の腕を再生させ、魔力の暴走で顔面に酷い火傷をおった魔法士の、顔立ちをもとに戻す。
それだけでなく、他にも幾重の患者が次から次へと押し寄せてきていた。
それを、彼女は一瞬にして治療していくのである。

「次の人!!」

「畜生ぉぉ!! いてぇ! いてぇよぉ!!」

「腹部の深い裂傷と、右腕は噛み千切られてる……」

一体どんな戦闘を繰り広げているのか。
そこに立つアギト達は無事なのか。

確かめる暇はなかった。
彼女に救いを求める手が、一面と差し出されている。

「すぐに回復するから大人しくして」

「いてぇええ!! いてぇんだよぉぉ!!」

叫び散らかす戦士に手早く魔法をかける。
戦いはまだ終わりそうにない。
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