追放された荷物持ち~魔法は使えないけど、最強剣術で冒険者SSSランク!?完全回復魔法が使える幼馴染は一緒についてきてくれるそうです~

柳原猫乃助

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第一章 勇者追放

第二十七話 本音

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事件から一週間後。
陽菜野は久しぶりにセシル達と依頼を受けて、一仕事終えた後。
ギルドの酒場でいつもの席に集い、杯を酌み交わしていた。
甘いオレンジジュースを口にして、まずは一息つける。
そして、彼女は現状を前にして、苦笑いを浮かべながら問うことにした。

「ええっと、なんで私だけ呼び出しを受けたのでしょうか?」

それを聞いていたのは、セシルとリサ、リティアにチュルムというセシルパーティーの女性陣。
セシルは先日の件で評価され、ランクをCへと上げていて、羽振りよく赤ワインを飲んでいた。
が、問いかけに対し、彼女は切り出した。

「単刀直入に言おう。ヒナノ、お前アギトのことが好きだろ?」

「………………えっと、話が見えないというか」

「好きなんだろ?」

「あ、あはははは……」

応えようとしないのは、承知の上だった。
しかしセシルにとって、そこを明確にしなくては行けなかった。

「笑って誤魔化すのはなしだ。アタシはマジに聞いている」

「うーん」

「…………じゃあ逆に、アギトは誰が好きなんだと思う?」

「え…………いや、それは、解んないというか」

「へぇ? 世話を焼きまくっていた幼馴染の好みが解んないと、そういいたいのかい?」

「そ、そうだよ。プライベートの所は守らないとね」

勢いで言いきった陽菜野だが、しかし多勢に無勢という言葉の通りに、セシル陣営は次の発言者によってリードを取り戻した。

「じゃあ、ウチがアギトと付き合っても、文句ないよね?」

チュルムの言葉に、陽菜野は吹き出す。

「ゲホゲホっっ! い、いきなりなに言うの!?」

「だってー、アギトってめちゃくちゃ強いし、戦士としては結構惹かれるっていうか」

「じ、冗談でも、言ってはいけない言葉があると思うけど」

「うん。だからマジ」

「…………………」

ニッコリする幼さと妖艶さをあわせ持つ表情に、陽菜野が変える言葉はない。
ただ慌てる感情にされるがままだった。

「まあでもウチ、ヒナノのこと大切な友達だと思ってるから。ヒナノがマジでアギトと付き合っているなら、諦めようかな」

「う、あ…………あ、ん…………そ、そういうのって」

「卑怯? それで結構」

余裕綽々というチュルムは、ぐわっとビールを煽った。
続いてリサがアプローチをかける。

「ヒナノは結局、アギトとどうなりたいの?」

「ど、どうとは!?」

「んー…………結婚したいとか?」

「結婚、結婚? そ、そんなのできるわけないじゃん! わた、したち、まだ17歳だし!」
 
「ゼブラールは10歳で婚姻可能なんだよ」

「え、ええ……その……あのですね……」

「諦めて好きだということ、認めたら?」

「だから、私は好きとか、そういうんじゃなくて……」

ぐらつくようになる陽菜野。
頭を抱えて悩みまくる彼女に、リティアがニンマリと追撃する。

「つーかさ、パンツの柄がわかる仲なら、実質付き合ってんじゃね?」

「それは単にアルバイトみたいなものだったからで」

「アルバイトねぇ、そんな小間使いなのにどうしてそんなに干渉したのさ?」

「私はその、真面目なんですよ」

「真面目か。真面目にやればパンツの柄が解るって言うのかい?」

「ていうか、その、あの時は冗談のつもりで」

「真面目なヒナノちゃんは、冗談で男の子のパンツが解るわけなのかー」

「うぐっ…………」

それはそれで嫌だ。
と言わんばかりに顔をしかめる陽菜野。
回避することで精一杯になっていた思考では、誘導に気がつくことはできなかった。

「へへへへ、さあどうなのさ? 全部言っちゃいなよ。なぁに、アギトに言うなんてこと、野暮ったいことしないから」

身をのりだして畳み掛けるリティアに対し、されど陽菜野の目には語りたくないという意志が存在していた。

「…………ただの幼馴染です」

「…………そっかそっか。ならチュルムの恋を応援するとしようかな」

うつむき気味にひねり出した応えを、そう言われるとは思っていなかったのか。
翡翠の瞳を見開いて、顔を上げる。
チュルムは楽しげに反応していた。

「お、まじー? さすがリティア姉、わかってるー」

「17までの付き合いがある幼馴染は、単なる幼馴染だと言い張るからしかたないよなぁ」

リティアがニヤニヤと微笑みながら言う。
空気に乗る勢いでセシルも同意した。

「それもそうだな。あいつも色々と溜まってんだろ。良い感じに抜いてやれよ」

「うーっすリーダー。ウチが元の世界の女なんて全部忘れさせる位、キモチイイテクでイかせまくってきますわ!」

「こりゃお楽しみ確定だな。ヒナノ、お前もきちんと祝福しろよ?」

そう言葉を投げ掛けられた陽菜野の目には、確かに涙が浮かんでいた。
震えるような小さい声でなにかをぼやいている。
ついうっかりやり過ぎた。
それを理解した面々は、慌てたように路線変更を意図する。

「まあしかし! アギトの野郎が今更ヒナノ以外の女に靡くわけねぇだろ!!」

「そ、そうっすね! リーダーの言うとおりっす! いやぁ、冗談でもあまり言わない方がいいですね!!」

冷や汗を無言で拭ったリサが、新たにジュースを頼んだ。
我は関せず。

「全くだーな、ヒナノちゃーん?」

「……………どうせ、どうせ私貧乳だし、チビだし、可愛くないし……………」

「え、えーとね。ヒナノちゃん? おーい」

「……………勢いのまま、えっちなおさそいしても、ぜんぜんだめだし、そんなかんじでしか、アプローチ、かけられないし………………」

「………………………」

「……………そんな私なんかが、こくはくなんか、むりだもん、いやしくて、あさましくて、げひんで、たよりなくて、だめだもん……………」

嗚咽混じりの言葉は誰もが顔を見合わせた。
しかしながらそれが何らかの状況打開を生むことはなく、結局はありきたりな励ましをたくさん並べるしかなかった。
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