追放された荷物持ち~魔法は使えないけど、最強剣術で冒険者SSSランク!?完全回復魔法が使える幼馴染は一緒についてきてくれるそうです~

柳原猫乃助

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第一章 勇者追放

第七話 仕事のあとは

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冒険者ギルドに戻ってきたセシルパーティ一行は、依頼であった薬草を受付嬢に手渡していた。

「はい、確認しましたよっと」

籠いっぱいに入っているそれを抱えて、他のスタッフに検品を頼んだティーシャは、各種書類を取り出した。
セシルがそれを次々処理していき、最終工程である報酬金の手渡しが行われた。

「これにて依頼完了と認定します。お疲れ様ー」

「おう、各員しっかりと確認しろー。もしかしたら受付嬢が抜いているかもしれないからな」

「あんたらの報酬金から抜くぐらいなら、もっと上のパーティの報酬金がいいわ」

憎まれ口の応酬を挟み、報酬金がメンバーに分配される。
分配率は八人全員均等にするためか、全体の一割二分であり、残りはパーティ専用の銀行口座へと振り込みされる寸法である。

そして面々は隣にある酒場へと行き、いつも占有している卓を囲んで打ち上げに興じた。
冒険者というのは、依頼を達成したらなんであれ酒飲みに騒ぐのが鉄則である。
セシルがそう定めたパーティルールに則り、彼等はビールやジュースに果実酒が並々と注がれた杯を交わしあった。

乾杯の一言と後に一気に煽る。
アギトと陽菜野は未成年なためジュースだった。
無論、元の世界の話だが。

砂糖と果実の甘味を楽しむ一方で、景気よくアルコールを流し込む仲間達の姿は、すこしだけ羨ましさが二人にはあった。
飲み干した後の一呼吸は、アルコールと麦の風味が仄かに漂っている。

「いやぁー! それにしてもアギトとヒナノは本当に驚いたよ! まさかここまでついてこれるなんてなぁ!」

そう口を開いたのは戦士カイロルだ。

「最初はたとえセシルのお墨付きとは言え、勇者なんぞのお付きっていうから甘く見てたが、噂はあまり役にたたんわけだな!」

「へ、なにを偉そうに」

というセシル。

「あんただって、元々は帝国軍士官の落ちこぼれじゃないかい」

「ありゃあ別に俺に合わなかっただけなんだって!」

そう反論するカイロルへ、リサがため息混じりに言葉を口にする。


「上官と反り会わなくて殴り合ったんでしょ。堪え性のないからモテないんだよ」

「う、るっせぇな! それとこれとは関係無いだろう!」

そこに、魔法士ゼナックが割り込む。
ゼナックはいかにも魔法士らしいロングローブを身につけ、やけに老けている男で、メガネをくいっと上げる姿は様になっていた。

「いやいや、カイロル殿はどうも恋愛と人生観に落ち着きが足らぬとみえる。もっとこう、染み渡る清水のような心が必要であろう」

「落ち着きすぎて老けまくっているよりはましだがな!」

さらに畳み掛けて、戦士チュルムが小馬鹿にしたような表情で煽る。
チュルムはセシルともカイロルとも違うスタイルの戦士であり、機動力を重視した革鎧姿と、長槍を背負っていた。
メンバーの中で幼げな顔立ちと、ツインテールが特徴的だった。

「どっちにせよモテないっていうことには変わりなくなーい?」

「ああ?」

「全然男としてみれないっていうか、人としてどうかというかー」

「なんだこのガキ、やるのかおら」

「えー? やってあげてもいいけど中年のおじさんになりかけているやつとはなぁー。せめてアギトと同じくらいだったら考えてもいいよ」

戦士同士の挑発に巻き込まれたアギトに、魔法士リティアが煽るように参加した。
酒をかなり入れており、やや酔っている。

「いやいや、アギトくんと同じくらいにしたら駄目だよー。なにせ、もう幼馴染のあんなところやこんなところを解りきっている。そんな心深い戦士なんだからね」

「うるさい。ヒナ、お前もなにか言ってやれ。そうしないとこいつは止まらないぞ」

アギトの要望に、ジュースを飲み干しながら聞いていた陽菜野が応える。

「あんなところやこんなところは解らないけど。アギトのパンツの柄ぐらいだったら解るよ」

「おい」

おおおお!?
と、ざわつく女性陣。

「元の世界でアギトの世話とか結構してたから」

「え、まさかその……同棲、とかしていたの?」

「んー、通い妻みたいなことをしてたよ。アギトのお母さんからバイト代貰ってたし」

「な、なんだ、そうなのね」

頬を赤らめて聞くリサは、どこか期待はずれだったと言うような空気ごと、ビールを煽っていく。

「しかしそんぐらい仲いい幼馴染もさほど聞きませぬな。珍しいとも思える」

と、ゼナック。

「実は許嫁というものだったとは?」

「ないない。普通の、うん、特に何かあるような感じじゃなかったよね」

陽菜野の応えに、アギト頬杖をたてながら頷いた。
テーブルの上にある、唐揚げを一つ口にしながら。
そこで、セシルが一息をついてから言う。

「そう言うもんか。そっちの世界だと」

「あーまあ。こっちでは?」

「そーだなぁ……処女童貞を散らす相手が幼馴染の場合が多いとか。あとは、あれだ。貴族とかになると許嫁になることが多い。家同士の繁栄とか、そういう理由でな」

「へぇー」

「ま、幼馴染ってのが居たとしてもだ。大抵はどちらか片方が都会にいって、疎遠になってある日突然ばったりとあってだな、結婚したりとかしてんだよ」

「それ、セシルの経験談?」

「るっせぇ。ともかく、お前ら二人がその歳までつるんでいるのが、珍しい方だと考える」

と締めて、話題は再び転換された。
セシルが自身の過去を語りたくないためであることは、周知の事実だった。


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