追放された荷物持ち~魔法は使えないけど、最強剣術で冒険者SSSランク!?完全回復魔法が使える幼馴染は一緒についてきてくれるそうです~

柳原猫乃助

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第一章 勇者追放

第一話 冒険者ギルドへ

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さて、どこに行くべきか。

ホテルを出た草薙アギトは、ほとんど皆無である私物を積めた、鞄を背負って若干悩んだ。
しかしすぐに向かう先を思い付いた。

そうだ、とりあえず冒険者ギルドに行こう。
そうすれば冒険者になれるかもしれない。
よく知らんが。

即断即決をして、何度か脚を向けた場所へと歩む。
道順は覚えているので、十分程度で冒険者ギルドデリアド支部に到着した。
いざ、その扉を開けようとした所で、後ろから彼を追ってくる人物がやっと追い付いてきた。

白銀の髪を靡かせて、妙に楽しげな感じで、アギトに声をかける。

「おーい、追放された魔力無しの幼馴染ー。待ってよー」

「なんだ。てっきりドラニコスの所に残るかと思っていたが」

「わざとでしょ。意地悪」

「そっちの方がいいと思うけどな」

「別に一緒にいても私達にメリットないよ。彼って、あんまり帝国の外に出るつもりないっぽいし」

「ゼブラール帝国の由緒正しい勇者の家系だったか。玉の輿狙えたんじゃないか?」

「うーん。それは残念かも」

「今からでも戻れば間に合うだろ」

「そういうのはね、もっとお金大好きな女の子に言うべきだね。私は違いますから」

「なら適正だと思うが」

「意地悪ぅ」

彼女は手にしている杖でアギトの頭を軽く小突く。
質素な木製のそれに、上級の魔石が嵌め込まれている杖は、少女の身の丈よりも長い。
だからこその悪戯が出来たのか。
二人の身長差は10cm20cm程度ではなかった。
少女は、年頃の平均をとても下回る背丈だった。

「ともかく、今度は冒険者になってみようかな」

「冒険者か……たしかこういうの読んでたんだろ?」

「ふふふ、ファンタジー小説といえば私よ」

「なにがだ」

「勇者パーティに追放された主人公は冒険者ギルドにいって、新たに冒険者になるの。そして初めてのクエストで、実は、隠された最強のスキルとかアビリティとか発現するんだよ!」

「お前はもう、なんだっけ、完全回復魔法とか使えるんじゃなかったか?」

「アギトのことを言ってるんだよ」

「俺か?」

「よかったね主人公だよ」

「どうだか」

「まあ、それにね。私ってば勉強家だからこの世界のことある程度は知ってるんだよ。冒険者になれば、Cランクで空港がタダで使えるんだって」

「それはいい情報だ」

「みんなを探すために、いざ、冒険者としての第一歩を踏み出そう!!」

そうして二人は冒険者ギルドの扉を開いた。
目的を果たすために。

冒険者ギルドはその多くの場合、ギルドとして機能と酒場としての機能が二つ並んでいた。
デリアド支部はその典型例であり、来訪者を出迎えるのはギルドとしての側面、受付カウンターになる。
カウンターにいる受付嬢は意気揚々とやってきた小さな少女と無表情で可愛げがない少年の二人の装いをみて、即座にその目的を想像した。

少女は雪のような白銀の長髪と、深緑を思わせる翡翠色の瞳で、真珠のような肌色の幼げな顔立ち。
平均以下の背丈は、少年と並ぶと比較的に強調されているかのようだ。
白い魔法士のローブを身に纏い、白いハンチング帽を被っていた。
手にしている杖は高級品とまでいかないものの、それなりの値がしたのだと伺える。

一方、少年……草薙アギトは黒髪に燻っているような灰色の瞳で、無感動の表情がなかなかいい顔のパーツ配置を台無しにしていた。
怒っているのかと思えるほど、まばたきも少なく、視線も動かす気配がない。
しかし服装は黒目なシャツに紺色のズボンという、簡素なスタイルで、武器の類いは皆無であった。

そんな想像の末に二人の正体を察した受付嬢が対応する。

「これは、その、名のある貴族の方でしょうか?」

二人は後ろを振り向く。
そこには誰もいない。
受付嬢の対応が、経験と知識にやって可変する。

「あー、ごめんなさい。あなたたちのことなの」

「あ、私達だったんですね」

「随分高位な防具だから、もしかしたらと思って。で、登録ギルドの変更かしら?」

「いえ、私達冒険者になりたくて来たんです」

「え、新人希望?」

受付嬢が驚くのは仕方なかった。
少女が身に付けている防具は、上位冒険者でなければ滅多に手が出せない。
金銭的にも、そもそも邂逅する機会もすくない。
一瞬だけ窃盗の可能性を疑ったが、あり得ない妄想は放棄する。

「駄目ですか?」

「あ、いいえ。冒険者ギルド……いえ、冒険者協会は常に様々な新人を求めているわ。でもその前に」

カウンターの裏側にある書類棚から、二枚の羊皮紙が取り出される。
幾つかの項目がある簡易的な履歴書。
インクと羽ペンも同じく二つ用意されて、二人に手渡された。

「とりあえずそれにあなた達のことを書いてくれないかしら」

「わかりました」

少女は応えると、少年と共に項目に記していく。
二人とも達筆な大陸共通語で、数分足らずで終わる。
少女の氏名欄には”アサギリ=ヒナノ”。
少年の氏名欄には”クサナギ=アギト”。

少女、朝霧陽菜野から書類を受け取った受付嬢の目線が、書面を軽く泳ぐ。

「ん、この出身地……なるほど、異世界人。勇者パーティに所属していたのに、脱退したの?」

「ええ、二人一緒にパーティから追放されちゃって」

「因みに理由は?」

「メンバーとのトラブルといいますか、そんな感じです」

「そう。いいわ、担当者を連れてくるから待ってて」

受付嬢がそうして関係者専用のエリアへと進んでいくのを見送りながら、あんまり追放について深く聞いてこなかったなと感想を抱いた陽菜野に、アギトは欠伸をのんびり一回した。

「面接だと思うから欠伸しちゃ駄目だよ」

「解ってる」

しばらくして、担当者がやってきて二人を面接室へと案内し始めた。
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