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蛸ルート(蛸×黒)

7.闇月の森の君

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 木漏れ日の峠道に、男の姿があった。

「あれから8年か。やっと来れたな」

 短い黒髪に、革の服を着た男が、たった1人で峠道を歩いていた。

 ほどなくして森の広場へと辿り着く。彼は茂みを背にして座り、カバンから昼食を取り出した。
 取り出した包みにはサンドイッチが入っている。水筒には暖かい飲み物が入っていた。中身が冷めない特殊な仕様のものだ。

 風に乗って、辺りに美味しそうな香りが広がる。
 水筒から紅茶を1口含み、包みを開けたサンドイッチにかぶりつく。美味しそうに頬張っていると、男の両脇から2本、タコ足のような触手が伸びてきた。男は慌てる様子もなく、用意していたサンドイッチを触手に差し出す。

「久しぶりだな、覚えてるか?」

 1本の触手はサンドイッチを器用に先端で巻いて持ち、もう1本は優しく男の頬に触れた。
 
「会えないかもしれないって思ってた。……これも飲むか?」

 男がコップを取り出して水筒の中身を注ぐと、サンドイッチを持った触手が背後に引っ込む。戻ってきた触手は、コップを器用に絡め取った。

「ぬるめにしておいたけど、平気か?」

 男の問いかけに、すぐに空になったコップが返ってくる。催促するように、コップでコツコツと男の腕を叩いた。

「お前、図体もでかくなったし、食べる量もずいぶん増えたみたいだ」

 男が苦笑すると、頬に遠慮がちに触れていた触手が愛おしそうに顔を撫でた。

「くすぐったいって」

 男はコップに新たに飲み物を注ぎ、カバンから3つほどサンドイッチを取り出す。

「まだあるぞ。食べるか?」

 2本の触手に加え、男の頭上から3本目の触手が現れる。触手は大事そうにサンドイッチを持ち上げ、男の背後に消えていった。
 男も手にしたサンドイッチを齧り、ひとまず昼食を楽しんだ。





 全て食べ終わった頃、右脇から伸びた触手が男の口についたソースを撫でて拭い、左脇のもう1本が抱き寄せるように腰に絡み付く。

「お前のこと、ずっと……忘れられなかったんだ」

 男の手が触手を撫でる。
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