6 / 14
6.帰還する
しおりを挟む
一行は麓の村で無事に合流した。
「お疲れ~!」
旅籠にあるテーブルを囲み、一行は揃って夕食を取っていた。無事を祝って乾杯し、各々の食事に取りかかる。
「……でさ、そこでアタイの会心的な一撃が炸裂したわけだ!」
「こっちはこっちで、谷でめっちゃ魔物に囲まれてたいへんやったで」
互いに今日の出来事を話す中、エプロンを着けた旅籠の主が大皿を持ってテーブルへと近づく。
「やあ、楽しんでるかな? 今日は特別に新鮮なのが入ってね。サービスしておくから、よかったら」
トン、と置かれた皿の上には、薄くスライスされて美しく並んだ、タコの刺身が乗っていた。透き通り、艶のある様は、いかに新鮮かを窺い知れる。
ガタン、と黒髪の青年は口を押さえて立ち上がる。
「どした……?」
「ごめん、俺、ちょっと……!」
そのまま余裕のない様子で、店を飛び出して行ってしまった。
あっけにとられた髭の主は、ややあって我に返り、申し訳なさそうに眉を下げる。
「すまない、苦手だったかな」
「ああ、気ぃ悪うせんとってください。アイツ今日、タコの魔物に絡まれて、トラウマになっとるんです」
「うえー、それはヤダな。アタイそっち行かなくてよかった」
「それは悪いことをした。この辺りで新鮮な海のタコが手に入ることは滅多になくてね。ぜひ味わって欲しかったものだから」
「オレ、いただきます」
「アタイもー」
※ ※ ※
黒髪の青年は旅籠を飛び出して、足の向くまま林へと入る。
おもむろにそこで足を止めた。まだ手を口に当てたまま、もう片腕で自分の体を抱く。顔がほのかに上気していた。
「どうしよう……俺、あの時のこと思い出すと……」
そのままその場に座り込んだ。
「タコ足で頭いっぱいになる……っ! もういやだー!」
トラウマというよりも、特殊な性癖に目覚めてしまった青年は、以後「タコ」という言葉を見聞きする度、森のタコをありありと思い出すのであった。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
※ ここから先はルート分岐します。この先は蛸ルートです。
「お疲れ~!」
旅籠にあるテーブルを囲み、一行は揃って夕食を取っていた。無事を祝って乾杯し、各々の食事に取りかかる。
「……でさ、そこでアタイの会心的な一撃が炸裂したわけだ!」
「こっちはこっちで、谷でめっちゃ魔物に囲まれてたいへんやったで」
互いに今日の出来事を話す中、エプロンを着けた旅籠の主が大皿を持ってテーブルへと近づく。
「やあ、楽しんでるかな? 今日は特別に新鮮なのが入ってね。サービスしておくから、よかったら」
トン、と置かれた皿の上には、薄くスライスされて美しく並んだ、タコの刺身が乗っていた。透き通り、艶のある様は、いかに新鮮かを窺い知れる。
ガタン、と黒髪の青年は口を押さえて立ち上がる。
「どした……?」
「ごめん、俺、ちょっと……!」
そのまま余裕のない様子で、店を飛び出して行ってしまった。
あっけにとられた髭の主は、ややあって我に返り、申し訳なさそうに眉を下げる。
「すまない、苦手だったかな」
「ああ、気ぃ悪うせんとってください。アイツ今日、タコの魔物に絡まれて、トラウマになっとるんです」
「うえー、それはヤダな。アタイそっち行かなくてよかった」
「それは悪いことをした。この辺りで新鮮な海のタコが手に入ることは滅多になくてね。ぜひ味わって欲しかったものだから」
「オレ、いただきます」
「アタイもー」
※ ※ ※
黒髪の青年は旅籠を飛び出して、足の向くまま林へと入る。
おもむろにそこで足を止めた。まだ手を口に当てたまま、もう片腕で自分の体を抱く。顔がほのかに上気していた。
「どうしよう……俺、あの時のこと思い出すと……」
そのままその場に座り込んだ。
「タコ足で頭いっぱいになる……っ! もういやだー!」
トラウマというよりも、特殊な性癖に目覚めてしまった青年は、以後「タコ」という言葉を見聞きする度、森のタコをありありと思い出すのであった。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
※ ここから先はルート分岐します。この先は蛸ルートです。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
【BL】魔王様の部下なんだけどそろそろ辞めたい
のらねことすていぬ
BL
悪魔のレヴィスは魔王様の小姓をしている。魔王様に人間を攫ってきて閨の相手として捧げるのも、小姓の重要な役目だ。だけどいつからかレヴィスは魔王様に恋をしてしまい、その役目が辛くなってきてしまった。耐えられないと思ったある日、小姓を辞めさせてほしいと魔王様に言うけれど……?<魔王×小姓の悪魔>
神官、触手育成の神託を受ける
彩月野生
BL
神官ルネリクスはある時、神託を受け、密かに触手と交わり快楽を貪るようになるが、傭兵上がりの屈強な将軍アロルフに見つかり、弱味を握られてしまい、彼と肉体関係を持つようになり、苦悩と悦楽の日々を過ごすようになる。
(誤字脱字報告不要)
ミロクの山
はち
BL
山神×人間
白い蛇の神様の伝承が残る巳禄山にやってきた人間が山神様(蛇神)に溺愛される話。短編集です。
触手と擬似排泄、出産・産卵があります。
【宗慈編】
巳禄山で遭難した槙野宗慈は雨宿りした門のような構造物の下でいつの間にか眠ってしまう。
目を覚ました宗慈はミロクという男に助けられるが……。
出産型のゆるふわなミロクさま×従順な宗慈くんのお話。
【悠真編】
大学生の三笠悠真はフィールドワークの途中、門のようなもののある場所に迷い込んだ。悠真の元に現れた男はミロクと名乗るが……。
産卵型のミロクさま×気の強い悠真くん
【ヤツハ編】
夏休みに家の手伝いで白羽神社へ掃除にやってきた大学生のヤツハは、そこで出会ったシラハという青年に惹かれる。シラハに触れられるたび、ヤツハは昂りを抑えられなくなり……。
蛇強めのシラハさま×純朴なヤツハくん。
※pixivにも掲載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる