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2 オリオンと出逢う
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お店の予約当日。
オレはてっきり店に行くものだと思い込んでいたが、指定された場所は電車の中だった。もちろんきっちり電車の時刻と車両も決まっている。
(マッサージ店なのに、変わったシステムだよな……)
仕事終わりに、指定のあった車両に乗り込んで吊り革に掴まる。まだ帰宅ラッシュの名残が残る車内には、そこそこ人が乗っていた。
いくつかの駅を通り過ぎた頃、不意に隣に立った男性に声を掛けられた。
「こんばんは」
ネイビーのスーツに長い白い髪。スラリとした長身。誰もが振り返りそうな目立つ容姿だったが、不思議と誰も見ていない。当然、彼とは初対面だった。
「あ……こんばんは。オリオンさんですか?」
「はい。野々田様ですね。私の事はどうぞ、オリオンとお呼びください」
胸に手を当てて微笑んだ男は、名工の彫刻のような整った顔立ちをしていた。見慣れた車内の風景に混ざる、異質な存在。
「本日は、よろしくお願いします」
「あ、はい、お世話になります」
慇懃に頭を下げられ、こちらも頭を下げる。
「ご友人からの紹介ですね。本日は私が案内を務めさせていただきます。何なりとお申し付けください」
「わざわざ案内がつくんですか?」
「ええ、そうですよ」
にっこりと微笑まれる。
なんだか狐につままれた気持ちになった。一体これからどこに向かうんだろう? 当然、店に向かうんだよな……?
「早速ですが、会場へご案内します。次の駅で降りていただけますか?」
「はい。えっと……会場?」
電車はゆっくりと速度を落とし、ドアが開いた。
オレはてっきり店に行くものだと思い込んでいたが、指定された場所は電車の中だった。もちろんきっちり電車の時刻と車両も決まっている。
(マッサージ店なのに、変わったシステムだよな……)
仕事終わりに、指定のあった車両に乗り込んで吊り革に掴まる。まだ帰宅ラッシュの名残が残る車内には、そこそこ人が乗っていた。
いくつかの駅を通り過ぎた頃、不意に隣に立った男性に声を掛けられた。
「こんばんは」
ネイビーのスーツに長い白い髪。スラリとした長身。誰もが振り返りそうな目立つ容姿だったが、不思議と誰も見ていない。当然、彼とは初対面だった。
「あ……こんばんは。オリオンさんですか?」
「はい。野々田様ですね。私の事はどうぞ、オリオンとお呼びください」
胸に手を当てて微笑んだ男は、名工の彫刻のような整った顔立ちをしていた。見慣れた車内の風景に混ざる、異質な存在。
「本日は、よろしくお願いします」
「あ、はい、お世話になります」
慇懃に頭を下げられ、こちらも頭を下げる。
「ご友人からの紹介ですね。本日は私が案内を務めさせていただきます。何なりとお申し付けください」
「わざわざ案内がつくんですか?」
「ええ、そうですよ」
にっこりと微笑まれる。
なんだか狐につままれた気持ちになった。一体これからどこに向かうんだろう? 当然、店に向かうんだよな……?
「早速ですが、会場へご案内します。次の駅で降りていただけますか?」
「はい。えっと……会場?」
電車はゆっくりと速度を落とし、ドアが開いた。
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