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「黒山くん、今日は明るかね」
一緒にレジに立っているとき、ダークナイトに言われた。
僕はフードのままレジにいる。
お客さんは僕のフードを見て怪訝な顔をするけど、見て見ぬ振りをする。
人間は天使の皮を被った悪魔なのかな、と思う。
「明るい、すか?」
「明るかよ~」
こうやって返事してくれるしね、とダークナイトが言う。
闇の騎士のくせに親切なフリしやがって呪う。
お客様が来て、ダークナイトが対応する。
世間話をしながらバーコードを通してブックカバーをかけて袋に入れて代金をもらう。
その手際に、うっかり尊敬しそうになる。
それに僕にはあんな営業スマイルができない。
「黒山くんもレジしとーっちゃけん、笑顔にならな」
「笑顔とか、……できないす」
「なんで? 口角上げるだけやん」
「うまく言えないんすけど……」
ダークナイトは柔らかい笑顔になって、次の言葉を待つ。
こういうところは優しいと思う。
厨二だけど。
「偽善を顔に貼り付けているっていうか、」
何言ってんだコイツ、な顔をダークナイトはしない。
心までは知らないけど。
「心で思ってないことをしてもいいのかな、って」
「何言いよーと?」
ええ?!
言わないんじゃなかったの。
泣きそう。
「嬉しいけん、楽しいけん、幸せやけん、笑うんじゃなかとよ」
何言ってんだコイツ。
「笑うけん、幸せになると」
名言っぽいの言った後にドヤるのやめろ気持ちが悪い。
「やけん、黒山くんも笑っとったら幸せになるっちゃない?」
「笑うなんて、偽善じゃないすか」
「またそんなこと言いよる……」
ダークナイトが息を吸う。
すぅ、と音が出るくらいに大きく。
「笑えっ!!」
あまりに大きい声だったので、お客さんが数人振り向く。
ダークナイトは僕から目を逸らさずに、怒ったような顔をしている。
その迫力に押されて、
「……はい」
頷いてしまった。
唾が顔にかかって気持ちが悪い。
さっきからずっと気持ち悪いんだよ。
「よし!」
ダークナイトは満足気な顔で体の向きを戻す。
緊張が抜けて、ふぅ、と僕は息を吐く。
お客さんたちもそれぞれ本の世界に入っていく。
僕も笑顔を作らなきゃいけないのかな、と考えてみる。
もし笑顔になったら、雪くんは喜んでくれるだろうか。
雪くん?
なんで出てきたんだ。
その理由のひとつに思い当たって、慌てて消す。
違う。
そんなはずはない。
僕が雪くんを、好きだから、なんて。
そんなわけがない。
本を運んできたゆきくんが、僕に手を振る。
無意識に右腕が上がり始めて、それを全力で止めてゆきくんを睨む。
ゆきくんはまたひらひらと手を振って、美優さんに小突かれて表情を崩す。
倉庫の方に歩いて、本棚の陰に消える。
美優さんが僕を見てニヤニヤしてたのこわい。
何企んでるんだろ。
「黒山くん、お客様来とんしゃーよ」
「あ。はい」
目を前に移すと本を持ったお客さんが立っていた。
申し訳ございませんお待たせしました、とレジの下に貼ってあるマニュアルを見ながら言う。
笑顔えがお、とダークナイトが囁く。無理矢理口角を上げてみるけどどうにも笑ってる顔じゃない。
ダークナイト呪うぞ。
一緒にレジに立っているとき、ダークナイトに言われた。
僕はフードのままレジにいる。
お客さんは僕のフードを見て怪訝な顔をするけど、見て見ぬ振りをする。
人間は天使の皮を被った悪魔なのかな、と思う。
「明るい、すか?」
「明るかよ~」
こうやって返事してくれるしね、とダークナイトが言う。
闇の騎士のくせに親切なフリしやがって呪う。
お客様が来て、ダークナイトが対応する。
世間話をしながらバーコードを通してブックカバーをかけて袋に入れて代金をもらう。
その手際に、うっかり尊敬しそうになる。
それに僕にはあんな営業スマイルができない。
「黒山くんもレジしとーっちゃけん、笑顔にならな」
「笑顔とか、……できないす」
「なんで? 口角上げるだけやん」
「うまく言えないんすけど……」
ダークナイトは柔らかい笑顔になって、次の言葉を待つ。
こういうところは優しいと思う。
厨二だけど。
「偽善を顔に貼り付けているっていうか、」
何言ってんだコイツ、な顔をダークナイトはしない。
心までは知らないけど。
「心で思ってないことをしてもいいのかな、って」
「何言いよーと?」
ええ?!
言わないんじゃなかったの。
泣きそう。
「嬉しいけん、楽しいけん、幸せやけん、笑うんじゃなかとよ」
何言ってんだコイツ。
「笑うけん、幸せになると」
名言っぽいの言った後にドヤるのやめろ気持ちが悪い。
「やけん、黒山くんも笑っとったら幸せになるっちゃない?」
「笑うなんて、偽善じゃないすか」
「またそんなこと言いよる……」
ダークナイトが息を吸う。
すぅ、と音が出るくらいに大きく。
「笑えっ!!」
あまりに大きい声だったので、お客さんが数人振り向く。
ダークナイトは僕から目を逸らさずに、怒ったような顔をしている。
その迫力に押されて、
「……はい」
頷いてしまった。
唾が顔にかかって気持ちが悪い。
さっきからずっと気持ち悪いんだよ。
「よし!」
ダークナイトは満足気な顔で体の向きを戻す。
緊張が抜けて、ふぅ、と僕は息を吐く。
お客さんたちもそれぞれ本の世界に入っていく。
僕も笑顔を作らなきゃいけないのかな、と考えてみる。
もし笑顔になったら、雪くんは喜んでくれるだろうか。
雪くん?
なんで出てきたんだ。
その理由のひとつに思い当たって、慌てて消す。
違う。
そんなはずはない。
僕が雪くんを、好きだから、なんて。
そんなわけがない。
本を運んできたゆきくんが、僕に手を振る。
無意識に右腕が上がり始めて、それを全力で止めてゆきくんを睨む。
ゆきくんはまたひらひらと手を振って、美優さんに小突かれて表情を崩す。
倉庫の方に歩いて、本棚の陰に消える。
美優さんが僕を見てニヤニヤしてたのこわい。
何企んでるんだろ。
「黒山くん、お客様来とんしゃーよ」
「あ。はい」
目を前に移すと本を持ったお客さんが立っていた。
申し訳ございませんお待たせしました、とレジの下に貼ってあるマニュアルを見ながら言う。
笑顔えがお、とダークナイトが囁く。無理矢理口角を上げてみるけどどうにも笑ってる顔じゃない。
ダークナイト呪うぞ。
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