18 / 18
18
しおりを挟む
という夢を見た。
世界は相変わらずくるくる回っていた。
軽く回っていた。
軽やかに回転していた。
軽妙に転がっていた。
重さなんてまるでないみたいに。
「おはよー」
「おはよ!」「おはよう」「まんじゅうー……」
教室に入っていつもの3人と挨拶を交わす。
なんてことのない日常。
そんな日常が、なんだかとても貴重なものに思えた。
でもその違和感も、日常の空気に埋もれて消えてしまう。
普通。
「そーいや最近さぁ、強姦あったんだって?」
茶髪が自然に話す。
強姦、という単語に心の奥がちくりと痛んだ。
なんだ、これ。
「電車でしたよね」
メガネも話す。
電車、という言葉も妙に頭に引っかかる。
なんなんだよ。
「まんじゅう」
まんじゅうか。
そうか、そうだな。
まんじゅうだな。
「どうした? お前、顔怖くね?」
「大丈夫ですか?」
「まんじゅ…?」
3人の目が俺を覗く。
なんでもない、と俺は手をひらひら振って笑う。
うまく笑えてんのかな。
3人はそれで落ち着いて会話に戻る。
頭の中がズキズキと痛む。
「けど強姦なー……」
「まんじゅう…」
「人間としてどうなんでしょう」
「それな?」
「強姦はAVの中だけにしてほしいですね」
「まんじゅう!」
「現実と区別つかない奴がやるんだろ」
「区別、ですか」
「境界線くらい自分で引けっての」
3人はいつものように会話している。
其処に違和感はない。
俺も違和感なんて感じないはずなのに。
なんでだ。
何が変なのだろう。
俺だけが違う世界にいるような。
俺だけが周りに馴染めていないような。
「犯人は高校生だったらしいですよ」
「まんじゅう、まんじゅう」
内臓に糸をくくりつけて引かれているような痛みが走る。
どうしようもなくて、もうどうしようもなくて俺は蹲る。
おい、どうしました、まんじゅう、3人の声もどこか遠くに聞こえた。
どうしようもないんだ。
どうにもしようがないんだ。
境界線なんてもとから何処にもないんだ。
という夢を見た。
完
世界は相変わらずくるくる回っていた。
軽く回っていた。
軽やかに回転していた。
軽妙に転がっていた。
重さなんてまるでないみたいに。
「おはよー」
「おはよ!」「おはよう」「まんじゅうー……」
教室に入っていつもの3人と挨拶を交わす。
なんてことのない日常。
そんな日常が、なんだかとても貴重なものに思えた。
でもその違和感も、日常の空気に埋もれて消えてしまう。
普通。
「そーいや最近さぁ、強姦あったんだって?」
茶髪が自然に話す。
強姦、という単語に心の奥がちくりと痛んだ。
なんだ、これ。
「電車でしたよね」
メガネも話す。
電車、という言葉も妙に頭に引っかかる。
なんなんだよ。
「まんじゅう」
まんじゅうか。
そうか、そうだな。
まんじゅうだな。
「どうした? お前、顔怖くね?」
「大丈夫ですか?」
「まんじゅ…?」
3人の目が俺を覗く。
なんでもない、と俺は手をひらひら振って笑う。
うまく笑えてんのかな。
3人はそれで落ち着いて会話に戻る。
頭の中がズキズキと痛む。
「けど強姦なー……」
「まんじゅう…」
「人間としてどうなんでしょう」
「それな?」
「強姦はAVの中だけにしてほしいですね」
「まんじゅう!」
「現実と区別つかない奴がやるんだろ」
「区別、ですか」
「境界線くらい自分で引けっての」
3人はいつものように会話している。
其処に違和感はない。
俺も違和感なんて感じないはずなのに。
なんでだ。
何が変なのだろう。
俺だけが違う世界にいるような。
俺だけが周りに馴染めていないような。
「犯人は高校生だったらしいですよ」
「まんじゅう、まんじゅう」
内臓に糸をくくりつけて引かれているような痛みが走る。
どうしようもなくて、もうどうしようもなくて俺は蹲る。
おい、どうしました、まんじゅう、3人の声もどこか遠くに聞こえた。
どうしようもないんだ。
どうにもしようがないんだ。
境界線なんてもとから何処にもないんだ。
という夢を見た。
完
0
お気に入りに追加
15
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!

すべて実話
さつきのいろどり
ホラー
タイトル通り全て実話のホラー体験です。
友人から聞いたものや著者本人の実体験を書かせていただきます。
長編として登録していますが、短編をいつくか載せていこうと思っていますので、追加配信しましたら覗きに来て下さいね^^*
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
ああ! これはめっちゃ面白いですね!!
まんじゅうまんじゅう
こういう頭がくるくるする作品は大好物です。
また、こういうの書いて下さい~!
まんじゅうまんじゅう
ありがとうございます〜!
楽しんでいただけてよかったです!!
まんじゅうまんじゅう