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という夢を見た。
ドロドロなのはパンツの中と俺の心。
夢が幸せであればあるほど、そうではない現実を見て落胆する。
何回繰り返そうとも慣れることはない。
いつも、最悪な目覚めが俺を襲う。
朝なんて来なければいいのに、と寝癖のついた頭で思う。
もちろんそんなことは起こらない。
いっそ死ね。
階段を上がる。
教室のざわめきが廊下まで漏れていた。
ざわざわ、ざわ。
ガラガラ、と教室のドアを開ける。
一瞬。
時が止まってクラスメイトはしん、と静かになって。
たくさんの目が俺を向いて、俺は固まって動けなくなる。
でもそれは一瞬のことで、すぐに普通に戻る。
何の違和感もない、普通な教室。
これが普通なんだ、と俺は自分に言い聞かせる。
これが普通だ。
これでいいんだ。
今までもこうだったじゃないか、と。
「茶髪、髪ズレてません?」
「作画ミスに決まってんだろ?」
「スタッフが悪いのかなぁ」
「私が直してあげますね」
「さんきゅ」
「まんじゅう」
今までもこうだった。
いつでも俺は輪の外側にいた。
外側から眺めているだけだった。
部外者で第三者で他人だった。
そうだ。
表面だけで付き合っててもいいことなどない。
これでよかったんだ。
これが最善で最良で最高だったんだ。
「どう? 直った?」
「ええ、いつも通りの茶髪ですね」
「まんじゅう」
「ま、俺の髪って書くの難しいからさ、しょうがないんじゃね?」
「たまに私も描いてますが頭頂部は難しいですね」
「描いてんの?」
「まんじゅー」
「小遣い稼ぎ程度に、ですよ」
「作画ミスすんじゃねーぞ?」
俺はひとりだった。
俺はひとりっきりだった。
友達などいなかった。
いても薄っぺらい関係だった。
そんなもの、友達とは呼ばない。
呼べない。
呼んでいいはずもない。
俺はひとりだから。
俺には友情なんて感情はないから。
「……さて。この辺で茶番は終わらせましょうか」
「茶番?」
「茶髪。あなた、カツラですね?」
「は? なわけねーだろ」
「カツラでなければどうズレるんですか?」
「まーんーじゅっ!」
「……さく
「作画ミスとかいう茶番はやめましょう」
「…………」
「吐いたほうが楽ですよ?」
「まんじゅう……」
「………………そうだ」
俺と3人の間には確かに境界線があった。
いくら頑張ってもその境界線が消えることはない。
ぴんと張り詰めたそれは、俺と3人を区切っている。
「カツラなのを認めるんですね?」
「…そうだよ。オレは……カツラだ」
「まんじゅう?」
俺は気配を殺して教室の隅で小さくなる。
誰にも話しかけられない。
俺は空気だ。
空気。
「違う! オレはファッションでカツラ被ってるだけなんだよ」
「ファッション、ですか」
「まんじゅう」
空気は友達を求めるか?
空気は感情を持つか?
空気は思考するか?
空気は望むか?
「そういうことにしておきましょうか」
「しておくっつーかそうなんだけどな」
「まんじゅう」
否。
空気は空気だ。
俺は空気だ。
空気ならば友達なんていらないだろう。
……ゴミ。
ドロドロなのはパンツの中と俺の心。
夢が幸せであればあるほど、そうではない現実を見て落胆する。
何回繰り返そうとも慣れることはない。
いつも、最悪な目覚めが俺を襲う。
朝なんて来なければいいのに、と寝癖のついた頭で思う。
もちろんそんなことは起こらない。
いっそ死ね。
階段を上がる。
教室のざわめきが廊下まで漏れていた。
ざわざわ、ざわ。
ガラガラ、と教室のドアを開ける。
一瞬。
時が止まってクラスメイトはしん、と静かになって。
たくさんの目が俺を向いて、俺は固まって動けなくなる。
でもそれは一瞬のことで、すぐに普通に戻る。
何の違和感もない、普通な教室。
これが普通なんだ、と俺は自分に言い聞かせる。
これが普通だ。
これでいいんだ。
今までもこうだったじゃないか、と。
「茶髪、髪ズレてません?」
「作画ミスに決まってんだろ?」
「スタッフが悪いのかなぁ」
「私が直してあげますね」
「さんきゅ」
「まんじゅう」
今までもこうだった。
いつでも俺は輪の外側にいた。
外側から眺めているだけだった。
部外者で第三者で他人だった。
そうだ。
表面だけで付き合っててもいいことなどない。
これでよかったんだ。
これが最善で最良で最高だったんだ。
「どう? 直った?」
「ええ、いつも通りの茶髪ですね」
「まんじゅう」
「ま、俺の髪って書くの難しいからさ、しょうがないんじゃね?」
「たまに私も描いてますが頭頂部は難しいですね」
「描いてんの?」
「まんじゅー」
「小遣い稼ぎ程度に、ですよ」
「作画ミスすんじゃねーぞ?」
俺はひとりだった。
俺はひとりっきりだった。
友達などいなかった。
いても薄っぺらい関係だった。
そんなもの、友達とは呼ばない。
呼べない。
呼んでいいはずもない。
俺はひとりだから。
俺には友情なんて感情はないから。
「……さて。この辺で茶番は終わらせましょうか」
「茶番?」
「茶髪。あなた、カツラですね?」
「は? なわけねーだろ」
「カツラでなければどうズレるんですか?」
「まーんーじゅっ!」
「……さく
「作画ミスとかいう茶番はやめましょう」
「…………」
「吐いたほうが楽ですよ?」
「まんじゅう……」
「………………そうだ」
俺と3人の間には確かに境界線があった。
いくら頑張ってもその境界線が消えることはない。
ぴんと張り詰めたそれは、俺と3人を区切っている。
「カツラなのを認めるんですね?」
「…そうだよ。オレは……カツラだ」
「まんじゅう?」
俺は気配を殺して教室の隅で小さくなる。
誰にも話しかけられない。
俺は空気だ。
空気。
「違う! オレはファッションでカツラ被ってるだけなんだよ」
「ファッション、ですか」
「まんじゅう」
空気は友達を求めるか?
空気は感情を持つか?
空気は思考するか?
空気は望むか?
「そういうことにしておきましょうか」
「しておくっつーかそうなんだけどな」
「まんじゅう」
否。
空気は空気だ。
俺は空気だ。
空気ならば友達なんていらないだろう。
……ゴミ。
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