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という夢を見た。
すべては夢であった。
夢の中の出来事だった。
現実世界に残されたのは喪失感と汚れたパンツ。
はぁ、と吐き出した溜め息が床に落ちて溜まった。
パンツを洗ってシャワーを浴びて、着替えて学校に行く。
俺だって高校生だし、学校も休めないチキンだから。
教室に入ると、いつもの3人がいつもの位置でいつものように話していた。
「おはよー」
「おはよ!」「おはよう」「まんじゅう」
いつもの挨拶。
日常の歯車が思い出したように回り始める。
「つか聞けよ、俺の話」
「どうした?」
茶髪が反応する。
「昨日ヤバい薬もらったんだけどさ……」
「通報しますね」
メガネが端末を触る。
「覚醒剤じゃねーから?」
「まんじゅー!!」
まんじゅうが口の端から涎を垂らす。
「これが夢が見れる薬なんだけど」
「は?」
「夢。夢見れんの」
「何ですか、それは」
「だから、自分の好きな夢を見れるっつーか……」
俺は薬についての説明を一通りする。
「すげーじゃん」「夢の中で勉強もできるのですね」「まんじゅう」
まんじゅうは無視で。
チャイムが鳴り、とりあえず放課後行ってみよーぜ、と言う。
チャイムに身体が反応するなんて俺も真面目だな。
放課後。
俺は3人と一緒に公園に向かう。
「ってゆーかさ、お前はそれを飲んで大丈夫なわけ?」
「何が?」
「まんじゅう」
「ほら、ヤバい毒とか入ってたらどうすんだよ」
……考えてなかった。
どうしよ。
「今んとこ生きてるから大丈夫じゃね?」
「皮膚が紫色に変色していますが大丈夫ですか?」
「え、嘘?!」
慌てて腕を見る。
変わっていない。
「嘘かよ」
「すみません、眼鏡にぶどうジュース付いてました」
拭け。
「此処か?」
茶髪が足を止める。
前に見た公園。
「おう」
「誰もいなくね?」
「まっまんじゅう! まんっ! じゅうっ! まんじゅぅぅぅうううっ!!」
「前はいたんだけどな」
「今度は君が嘘をついたということでしょうか」
俺眼鏡かけてねーしぶどうジュースも飲んでねーから。
しばらく待っていても、魔法使いは来ない。
「まだ来ねーの?」
「そのうち来るんじゃね?」
「来てねーじゃん」
「来ないようなら私は帰りますが」
「待てよ」
「お前が絶対いるっつーから来たんだぜ?」
「私も家が遠いので」
「まんじゅう!」
ゴミのような3人は公園を出ていく。
俺は公園にひとり、のはずだった。
いつのまにか、グレーの塊が滑り台に乗っている。
「魔法使いかよ?」
声をかけると、滑り台を滑り始めた。
すーっと滑って砂場に刺さる。
ぼふ、と砂埃が舞う。
シュールすぎんだろ。
「……儂が、…魔法使いじゃ」
ゆっくり言っても威厳ねーから。
「なんでさっきいなかったんだよ?」
「おらんかったとは言っとらんぞ?」
いたのかよ。
なんで来ねーんだ。
「おろおろしておるお主を見るのがな、……楽しかったんじゃよ」
糞のような笑みを浮かべる。
「お主と話すことはもうないな……」
魔法使いのおっさんが何処かへ歩いていく。
と、止まって振り向く。
「魔法使いはいいが、おっさんはやめてくれんかのう…?」
「何て呼ぶんだよ」
「儂にも名前があるんじゃぞ?」
おっさんが俺の目を見て、言う。
「三郎之助左衛門、じゃ」
すべては夢であった。
夢の中の出来事だった。
現実世界に残されたのは喪失感と汚れたパンツ。
はぁ、と吐き出した溜め息が床に落ちて溜まった。
パンツを洗ってシャワーを浴びて、着替えて学校に行く。
俺だって高校生だし、学校も休めないチキンだから。
教室に入ると、いつもの3人がいつもの位置でいつものように話していた。
「おはよー」
「おはよ!」「おはよう」「まんじゅう」
いつもの挨拶。
日常の歯車が思い出したように回り始める。
「つか聞けよ、俺の話」
「どうした?」
茶髪が反応する。
「昨日ヤバい薬もらったんだけどさ……」
「通報しますね」
メガネが端末を触る。
「覚醒剤じゃねーから?」
「まんじゅー!!」
まんじゅうが口の端から涎を垂らす。
「これが夢が見れる薬なんだけど」
「は?」
「夢。夢見れんの」
「何ですか、それは」
「だから、自分の好きな夢を見れるっつーか……」
俺は薬についての説明を一通りする。
「すげーじゃん」「夢の中で勉強もできるのですね」「まんじゅう」
まんじゅうは無視で。
チャイムが鳴り、とりあえず放課後行ってみよーぜ、と言う。
チャイムに身体が反応するなんて俺も真面目だな。
放課後。
俺は3人と一緒に公園に向かう。
「ってゆーかさ、お前はそれを飲んで大丈夫なわけ?」
「何が?」
「まんじゅう」
「ほら、ヤバい毒とか入ってたらどうすんだよ」
……考えてなかった。
どうしよ。
「今んとこ生きてるから大丈夫じゃね?」
「皮膚が紫色に変色していますが大丈夫ですか?」
「え、嘘?!」
慌てて腕を見る。
変わっていない。
「嘘かよ」
「すみません、眼鏡にぶどうジュース付いてました」
拭け。
「此処か?」
茶髪が足を止める。
前に見た公園。
「おう」
「誰もいなくね?」
「まっまんじゅう! まんっ! じゅうっ! まんじゅぅぅぅうううっ!!」
「前はいたんだけどな」
「今度は君が嘘をついたということでしょうか」
俺眼鏡かけてねーしぶどうジュースも飲んでねーから。
しばらく待っていても、魔法使いは来ない。
「まだ来ねーの?」
「そのうち来るんじゃね?」
「来てねーじゃん」
「来ないようなら私は帰りますが」
「待てよ」
「お前が絶対いるっつーから来たんだぜ?」
「私も家が遠いので」
「まんじゅう!」
ゴミのような3人は公園を出ていく。
俺は公園にひとり、のはずだった。
いつのまにか、グレーの塊が滑り台に乗っている。
「魔法使いかよ?」
声をかけると、滑り台を滑り始めた。
すーっと滑って砂場に刺さる。
ぼふ、と砂埃が舞う。
シュールすぎんだろ。
「……儂が、…魔法使いじゃ」
ゆっくり言っても威厳ねーから。
「なんでさっきいなかったんだよ?」
「おらんかったとは言っとらんぞ?」
いたのかよ。
なんで来ねーんだ。
「おろおろしておるお主を見るのがな、……楽しかったんじゃよ」
糞のような笑みを浮かべる。
「お主と話すことはもうないな……」
魔法使いのおっさんが何処かへ歩いていく。
と、止まって振り向く。
「魔法使いはいいが、おっさんはやめてくれんかのう…?」
「何て呼ぶんだよ」
「儂にも名前があるんじゃぞ?」
おっさんが俺の目を見て、言う。
「三郎之助左衛門、じゃ」
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