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74:召喚された者達

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 ―ユグレシア帝国、バディアス家領内への途上―
 帝都を出て2日目…バデァアス家の領地までは、普通の馬車だけで移動すると帝都から屋敷まで3日らしい。私達の乗った馬車(と言うか屋根が無いから荷車だと思う…見るのも乗るのも初めてなのでよく分からないが)は、アニスさんが乗った馬車の後ろと前に一台ずつ、ゆっくりと走りながら進んでいる。アニスさんは立派そうな馬車に揺られながら車内で魔導書を読んでいるらしい。私達はあの後、人数を確認して自己紹介などをして、最初に私が思っていたより少し多くて12人いたみたいだ。そして、(仮)だけど暫定的に4人ごとに別れて3チームを組んだ、移動の時は乗り物の都合上、6人ごとに別れている。何故四人組かと言うと、経験値と言うのはパーティーメンバーで等分されるそうなので、6人だと中々レベルアップしないらしいので、ギフトがあっても経験値が少ないとメリットが薄れるからだ。

 一行は昨日の晩に領地に入り、魔物が出る森の手前で夜営を張り、暫くこの場所を拠点に、戦闘訓練をする事となった。皆、女神様から武器や装備を貰っていたが、冒険者のルッツさん、この人は巫女の方から紹介された人で、その人のお兄さんだから信用できるそうだ。そのルッツさんの助言で、初めは槍を使うといいと言われたので、皆も慣れるまでは槍を使う事に決まった。何でも、槍は他の武器より、相手から距離を取れるので恐怖が和らぐとか何とかで…素人には、持ってこいの武器らしい。

 早朝、食事を済ませた私達は、森に入る前にルッツさんのパーティーに色々とレクチャーを受けてから、魔物の捜索を開始した。この森には、ゴブリンが数多く生息しているそうで、奥に進むとオークと言う豚鼻の魔物が出るらしい、今回はゴブリンとの戦闘にしぼり、オークが出たら必ず撤退しろと言われている、更に奥まで行くともっと危険な魔物が出没するらしいので、兎に角オークを見付けたら帰って来いとの事。

 私のチームは、頭の薄い少しやつれた感じのヨシフミと言う50代のおじさん一人と、ナオキ君、彼は少しポッチャリして眼鏡をかけた男の人で、異世界召喚には詳しいと自称している高校生だ。其とナツキと言う20代後半の女の人で、肩まで伸ばした茶髪以外にこれと言って特徴の無い極々平凡な女性だ。一応12人中、女性は私達二人だけで、しかも残念な事に私が最年少だった。チーム分けは話し合いだったが、余り者だった3人にこう言った事に詳しいと言うナオキ君が、アキヒロさんに言われて加わった感じだ。彼はバランス調整だと言っていたが明らかに厄介払いだ…私は、可愛い美少女なので、もっと優遇されてもいいと思う…まぁ冗談だけど!!私は、顔を隠してるし…

 現在、私達はおじさんが先頭で、次に私とナツキさんが横に並んで、その後ろをナオキ君が後ろと周囲を警戒しながら歩いている、

「皆さん、足元に気を付けて下さい!」

「オジサン…足元ばかりじゃなくてさぁ~ちゃんと前見て確認してよ~ いきなり襲われたら危ないだろ~」

「そうは言うけどね~草がボウボウだし、木が生い茂ってるから余り遠くまでは確認できないよっ!…其に、森歩きなんて慣れてないから転んで怪我でもしたら大変じゃないか!嫌なら先頭はナオキ君が歩くかい?」

「お 俺は、後ろを警戒してるだろっ!其こそオジサンには任せられないよっ!!あぁ~あ!何で俺がこんなパーティーに入らなくちゃいけないんだよ…クソッ!」

「まぁまぁ…二人とも喧嘩しないでさ~仲良くしましょっ!こんなに可愛い美少女2人とパーティー組めたんだからラッキーじゃない?」

「どこがだよッ!俺は、リアルの女には興味ないねッ!ケモミミは別だけど…其に、一人は年増のオバサンで少女ですら無いじゃん、そっちは全然喋らないし、地味なフードなんか被っちゃってまともに顔なんか見えないじゃないか!!其ともフードを取るとスゲー美少女だったりすんのか??まぁそんなの現実には起きないんだよッ!俺は、そんな事より確実に生き延びて強く成る事の方が重要なんだよッ!」

「うわッ!キモッ!やっぱりあんたってオタクってやつなのね、見て見てユリちゃん、私鳥肌立っちゃったッ!其に、私は年増なんかじゃないし~ピチピチの20代よッ!」

「ふんッ!其がどうしたッ!そっちこそ仲良くするんじゃ無かったのかよッ!喧嘩売ってんのか?ババァ」

「ちょっと~槍を此方に向けないでよ~危ないでしょ~」

 メンバー達は、言い争いをしながら森に入ってからずっとこの調子だ。私は、異世界に来てからは、余り人と話をしていない、服装も暗がりの中で割と直ぐに持ち物に入っていた黒くて地味なフード付のマントを上から羽織り、顔は前髪で隠して目立たない様にしている。此は以前、ドライブに行った時、私のお兄ちゃんが最近ハマっていると言う物語の話を車内で延々と聞かされていて、その時、自分なら…とかの例え話をぼんやりとだが覚えていたので、其れを実戦している、大抵こう言った異世界召喚では、召喚者や同じ境遇の者達は友好的なふりをして内心悪巧みをしている事が多いので、概見やステータスを偽って監視の届かない所で逃げ出すのが吉と言っていた…気がする…多分。失踪直前にはアニメ何かも散々観させられたっけ…しかし、本人ではなく私が異世界に来る事になるとは思っても見なかった…今頃、お兄ちゃんは全国を旅でもしているのだろうか?もしかしたら外国とか…ジャングルの中だったりして…この事を知ったらさぞ悔しがるに違いない。

 そうこうしていると、オジサンが立ち止まって私達に合図を送ってきた。

「皆さん、この先で誰かが戦ってるみたいです」

「本当だッ!音が聞こえるッ!」

「どうしますか?近寄って見学でもしますか?」

「何言ってんだよッ!別の獲物を探しに行くに決まってるだろ?早くしないと他のパーティーと差が付いてしまうだろ!下手すると見捨てられるぞ?」

「バッカじゃないの?そんな事有る分けないじゃないッ!」

「あんたは黙ってろよッ!俺そんなの御免だからなッ!俺は、一人でも行くぞッ!」

「ん~私は其処まで深刻な話では無いと思っとるがな~まぁここは万が一と言う事もあるからな…ナオキ君の言う通り別の獲物を探しに行く、に賛成しようと思うがどうじゃ?」

 耳を澄ませると確かに、其らしい掛け声や奇妙な鳴き声みたいなのが聞こえる。そして私が同意の意味でコクリと頷くと、ナツキさんも仕方無さそうに同意した。

 その後、別方向へと進むと、獣道の様な場所を発見し、道を辿る様にその脇を隠れながら更に進むとお目当てのゴブリンを発見した。数は3匹で、大勢だと気付かれ易いので、背後からオジサンとナツキさんが近寄って行く。私はゴブリンの頭しか見えないが少し離れた場所から獣道の先が見える茂みに隠れている。ナオキ君は、回り込んで少し離れた場所からゴブリンの前に飛び出して、注意を引き付ける作戦だ。私は、最後まで隠れて不足の事態に備える、又は皆の気付いていない危険が迫った時に知らせる役目だ。

 ガサガサッ!

「ゴブリンどもッ!俺が相手だ!!」

 ギギャッ!ギャギャ―

「今だッ!」

「「きぇぇぇぇぇー」くらえぇぇー」 

 ギャギャッ! ギィィィー ドサッドサッ!ギィィ……

「オジサン、きぇぇって其は無いでしょッ!きぇぇって…ぷぷぷ」

「なっ…笑うなっ…私の勝手だろうがッ!其よりちゃんとトドメをさせッ!」

「ハイハイッ!ったくうるさいな~」

 ゴブリンの背後から、二人がタイミングを合わせて各々ゴブリンを槍で貫いた!ナツキの突きは浅かった様だが、ゴブリンは倒れてビクビク痙攣している。残ったゴブリンは、前後から挟まれキョロキョロしながら此方を威嚇している。ユリが隠れている場所からは、ゴブリンの頭が2つ見えなくなっただけだが、彼女はまだ気を緩めずに慎重に周りを警戒している。ナオキが槍を構えてゆっくりとゴブリンに近付くと、

「アハハッ!よっわ~まぁゴブリンだしな~てかコイツら全裸じゃん!マジかよ…コイツは俺が貰うぞ~ソレッ!」

 グサッ ギャギャー ドサッ!

「よっしゃ~レベルアップッ!」

 残ったゴブリンも痙攣していたゴブリンも動かなくなったのか、頭の中でピロリンと、音が鳴った気がした。多分私達のレベルが上がったのだろう事が予想される。ステータス画面同様にゲームみたいだ。隠れていた私も呼ばれて姿を現した、ナオキ君が興奮しながら何もない空中を指でなぞっている。私は、直接戦闘に参加していないので、討伐報告用の指定部位の剥ぎ取りをする事になった。正直此が一番キツい、だって死体を触らなくてはいけないし…ゴブリンって、人形で男の人のアレがモロに見えるんだもの…だからと言ってヤらない訳にはいかない…私は、出来るだけ目を背けて、淡々と自分の仕事を完遂した、クールを装って(内心で絶叫しながら)…だってこんな森の奥で叫ぶ何て危険極まりない行動は絶対に出来ない。私はそんなバカな女では無い!!その後、何度か同じ事を繰り返し15匹程討伐して拠点に戻った。私達は2番目に帰還したみたいで、日が暮れる間近にアキヒロさん達のパーティーが帰ってきた。

 食事の後の報告会では、各々のチームの戦果と戦い方等の意見交換等をした。レベルについては、大体の数字を聞いただけだ、其はレベルアップによるステータスの上昇値は個人差があって、スキル等の技能もある程度は共通だが、必ずゲット出来る訳ではなく、人各々の得手不得手や職業、才能何かに左右され、中にはそう言った事に左右されない特殊な固有スキルと言うのが有るらしいが、取り合えず…表向きには、全部話していてはキリがないと言って話していない、其等については、アニスさんが教えて欲しいと凄く知りたがったのだが、皆(個人情報の大切さに)薄々感ずいたのか…話そうと言う意見は出なかった。因みに、アキヒロさんのパーティーはレベルが既に二桁に上がったと言って、ルッツさんや中間の人達が凄く驚いていた。

――◇――◇――◇――

 ユリのステータス

名前・ユリ
種族・ヒューマン
職業・見習い兵士(仮)
サブ・ハンター
サブ2・????の眷族(解除不可)
性別年齢・女・13
Lv.7
HP.70
MP.48
筋力・18  (3)ボロい槍
防御・13  (8)革鎧
知力・16  ()
精神・12  ()
俊敏・16  (13)スニーカー

状態・普通
スキル・異世界言語2・料理2・索敵1・剣術1・解体2・????0
加護・無し

――◇――◇――◇――

 私のレベルは10匹目を討伐した時に7に上がった。スキルは解体と索敵を覚えた以外、この世界に来た直後と変わっていない、????の項目に関しては一切分からない、他の項目は、選択すると説明が出るのにこれ等は其が表示されなかった…これはお兄ちゃんが言っていたチートの可能性も有るけど…其らしい恩恵など今のところ一切無い。もしかするとバッドなスキルかもしれないし…悪魔の眷族とかだったらどうしよう…恐ろしくてとても誰にも知られる訳にはいかない…話によると、割とポピュラーな固有スキルに鑑定的なスキルが有るらしいので、バレないかと心配でならない…今の所は誰も持っていないみたいだが、このままレベルアップしていくとこの中の誰かが鑑定スキルを覚えてしまう可能性も否定出来ない…いや…既に覚えていて黙っていても不思議では無い!!あぁ~お兄ちゃんの言う通り、早めに逃げ出した方がよいかもしれないよ~あぁ~んどうしよ~考え過ぎかなのかな~?





 読者の皆様、明けましておめでとうございます。そして、最後まで読んで下さりありがとう御座います。数話前から、うっかり話をひろげ過ぎてしまった感がしてなら無い…修正も中々進まないし…本編(ソラ達一行)にどう繋げるか予想ができないし…頑張れ未来の自分!!と言う事で作者は現実逃避しておりますが……次回も是非暇潰ししていって下さい、宜しくお願いします。
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