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67:謎のアイテム

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 ソラが帰った後の客室、時刻は夜の20時を少し過ぎた頃。辺りは真っ暗で、窓から月の明かりが差し込んでいるだけだ。

「ねえ、アヤネちゃんもう寝てる?」

「起きてるよ?」

 二人は、何故か寝付けず起きて会話を始めた。其れは、ソラが帰った後に一度、今後について話し合ったのだが、あることに罪悪感を感じており、自分達の選択が正しかったのか心配で寝付けなかったのだ。

「ねえ、本当に良かったのかな?」

「何が?」

「やっぱり嘘は良くないよ~」

「いい?さっきも話したじゃない、嘘を付いてるのは向こうが先じゃない、あんな顔の日本人何てそうそう居るわけないじゃない!超美形じゃん!あり得ないよ~流石異世界ね!きっとあの人は、別の日本人に出会ってその人の話を聞いてたから、私達の話に合わせているだけよきっと!第一あのソラって人の事、名前くらいしか知らないじゃない?其でも信じろって言うの?私は顔なんかじゃ騙されないんだからッ!」

「でも…凄く親切にしてくれてるよ?奥さん達だっていい人そうだし…其に私達にそこまでする利用価値とか有るのかな…本当だったらどうするの?ねえ~謝って本当の事言った方がいいよ~」

「た、確かにそうだけど…今までそう言って、信じて危ない目にあったのを忘れたの?今度こそは、同じ過ちは繰り返さないわ!ここは、日本程安全じゃ無いのよ!気を許したらまた騙されちゃうに決まってるわよッ!其にね、全部嘘って訳じゃないし~少し話を盛っただけだから大丈夫よ!きっと!」

「其れは…そうだけど…」

「ハルコは、人が善すぎるのよ~そんなんじゃこの先、上手くやっていく事なんて無理よ?少しでも同情を誘って、利用しなきゃこの世界では生きていけないよ?」

ブブブッブブブッブブブッ…

「あれ?アヤネちゃん」

「何?ハルコどうしたの?」

「この音…スマホが動いてるみたい!」

ブブブッ!

「え~?」

「音が止まったみたい…どうしよう?」

「取り合えず取り出してみなよ~?」

「うん…」

 ガサゴソ…

 ハルコは、月の明かりを頼りに、女神から貰った背負い鞄に手を突っ込んでアイテムを探した。

「暗くて見付からないよ…確かさっき貰った腕輪と一緒にこの中に入れたんだけど…」

「見付かんないの?」

ガサガサ…

「ん~あったッ!あっ貰ったスマホだ!」

「嘘ッ!だってまだ充電してないはずでしょ?」

 取り出したスマホ型のアイテムの液晶画面が、真っ暗な室内を蒼白く照らしている。

「電源が入ってるみたい…メッセージが表示されてるよ?」

「何て?」

「魔力の補充が完了しました。だって!」

「え~?だって回復魔法とかかけたりして色々試したけど駄目だったんでしょ?」

「うん…何でだろ?やり方が違ったのかな~?」

「魔力で動くのか~もしかして…貰った腕輪と関係あるのかな?でも充電コードが付いてたんでしょ?」

「うん…コンセントに差し込むやつは付いて無かったけどコードは持ってるよ?」

「もしかして、それって充電用じゃなくてデータをやり取りする為に付いてるんじゃ?」

「ん?」

「はぁ…そう言えばハルコって機械音痴だったわね…まさかここまでとは…良いからかしてみてよ!」

 ハルコは、コードを取り出してアヤネに手渡した。

「はいッ、アヤネちゃん」

「…やっぱりね~、ハルコこれはPC とかに繋げて使うやつよ!お兄ちゃんが使ってるの見たこと有るもん、確か…充電とかも出来るけど。」

「PC ?」

「パソコンの事よッ!」

「へ~そうなんだ~エヘヘ」

「まったく…でもどうして今まで動かなかったんだろ?やっぱり怪しいのはその腕輪よね~魔道具って言ってたし…他には変わったことは無い?」

「う~ん分かんない…」

「仕方無いわね~取り合えず何が出来るか分かる?アプリとか使えるの?」

「ちょっと待ってね…えいッ!」

 ハルコが、画面を操作すると、別のメッセージに切り替わった。

「アヤネちゃん、何かアイテムの使い方みたいな説明が表示されたよ?」

「待って、私にも見せて?」

「うん、ほら~」

 アヤネは、ハルコのベットに移り、二人で画面を覗きこんだ。

「どれどれ…」

――――――――――――

(神話級)お助けアイテム No.03 女神の叡知(仮)

 本アイテムの使用方法及び、使用上の注意。

・魔力の充電について。
 本アイテムは機能の都合上、Lv .80相当の魔法、又は同レベル以上の魔道具の魔力を込める事により魔力の補充が可能となる。

・本アイテムのサイズは、込める魔力によって拡大と縮小、更に使用者の熟練度により、ステータス機能に組み込み持ち運びが可能となる。(現在Lv .1)

 機能について。
・本機能は異世界での生活について、困った事や相談などの問に女神様の叡知により、様々な問にお答えする便利アイテムである。
※あくまで知っていることに限る。知らない事は、しつこく聞かないこと!

・音声による検索について、本アイテムは、音声での問にも対応しているが、女神様の都合を最優先とし繋がらない場合は、メールでの質問に時間を置いて回答するするものとする。(内容にもよる)
 
・検索内容について、世界の禁即事項に抵触する内容については、女神様の独断と偏見により御答え出来ない場合が有ります。
※女神様のプライバシーは、守らなければならない。

 使用上の注意。

・本アイテムは、試作型だが神話級に属するため、第三者にアイテムの存在を教えるのは控える事をオススメします。(特に現地人や敵対者には、注意が必要!)争い事や盗難に合うおそれがありますので、上記のステータスに組み込むまでは、小さなお子様の手の届かない場所に、大切に保管してください。

・なお、この説明は、現在の所持者ハルコ(仮)が死亡するまで、再度表示されることはございませんので、ご了承ください。


―――――――――――――

「え~と……何これ?」

「お助けアイテムでしょ?」

「いや…うん…そう書いてあるけどさ…」

「早速使ってみる?アヤネちゃん」

「ちょっと待ちなよハルコ!凄く怪しいよ?このアイテム!」

「え~だって~」ウズウズ

「待ちなって!ハルコッ!」

「えいッヤー!」

 ハルコは、画面をスライドさせ通話ボタンをタップした、すると変わった呼び出し音が暫く鳴り、人の声が聞こえてきた。

 ピピピッ!ピピピッ!

「ハーイどちら様ですか?って何々?何でこれ動いてるの?」

 どうやら無事通話が成功した様だが、会話の相手が驚いている様子だ。しかも、女神と書いてあったのは、てっきり召喚の時にお世話になった女性だと思っていたが、明らかに別人の声だった。

「アヤネちゃん、繋がっちゃった!」

「どうすんのよ~ハルコ!も~取り合えず何か話すしか無いんじゃないの?」

「うん…もしもし、女神様ですか~?」

「そうですけど、何方ですか?」

「私は、ハルコです。始めまして!」

「ハルコ?私は女神見習いのエルルーです。ハルコさんは、何故そのアイテムを持っているのですか?」

「え~と…2週間くらい前に異世界に召喚されたのですが…その時貰ったんですけど…」

「え~~~!それって、私の司る世界に来たって事?」

「多分そうだと思います。もしかして…私達が此方に来る前にお世話になった方が言っていた行方不明の女神様なのですか?」

「行方不明?…あっ!連絡するの忘れてた~不味いな…どうしよう…お姉様怒ってるかな……」

「あの…」

「あっ!ゴメンゴメン!多分それ私だよ~ちょっと私用で忙しくてね~留守にしてたんだ~今は大丈夫だから気にしないでね!」

「そうなんですね…じゃあ早速、質問とかしていいんですか?」

「ちょっと待ってね?…え~とマニュアルは…そんなの作ってなかったかッ!えっとね~今貴女のデータを照合するから、そのアイテムに付いてたコードって持ってる?」

「はい!有ります。…アヤネちゃんコード取って!」

「ん?誰かいるの?」

「あっはい!友達のアヤネちゃんが隣に居ます」

「ふぅ~ん…まぁあいいや、それじゃあ其を、自分のステータスを出して、このアイテムとステータスにブッ差しなさい!」

「ん~アイテムの方は出来ましたけど…ステータスには、これ何処に取り付ければいいんですか?」

「何処でも良いわよ?真ん中でも端っこでも、勝手にくっつくから!」

「あっ出来ました!」

「んじゃもうちょっと待ってね…」

 声が途切れると、ステータス画面に、ロード中とメッセージが現れ暫く待つことにした。数分後――また女神様の声が聞こえてきた。

「もしも~し」

「はい、何ですか?」

「ただ待っているのも何だから、先に質問とか聞いときたいんだけどいい?」

「そうですね~ちょっと待ってください?」

「良いわよ?まだ考えてなかったの?」

「はい…直ぐ相談しますの、ですみません…」

「良いわ!気にしないでね?こっちも後一時間位掛かるから!」

「ありがとうございます。」

 と、言う事でハルコは、何を訪ねるかアヤネと相談し始めた。

「どんな質問とかにする?」

「女神って言うくらいだから、助言とかに近いのかな~?願いを叶えてもらう訳じゃないから、取り合えず此れからどうすべきか聞いてみたら良いんじゃ無いかな~?」

「そうだね!アヤネちゃん、じゃあ聞いてみるね!」

 ハルコは、改めて女神に話し掛けた。

「お待たせしてご免なさい。質問いいですか?」

「決まったのね?良いわよ?何々?」

「えっと…私達この世界に来て初めて私達より先に日本から来たって言う冒険者の人に出会ったんですけど…実は明日、その人の仲間の人達と一緒にダンジョンに行く約束になっているんですけど…」

「へ~貴女達より先にね~」

「あの…その冒険者の言ってる事を信じてもいいんでしょうか?私達ずっと騙されたりひどい目に遭ってて、信じるべきか不安で…」

「成る程ね~今調べてみるから待ってね?」

「お願いします。」

 更に暫く待つと、

「え~!68人も~!あっでも既に6人死んでる…」

と、聞こえてきた。二人は聞かなかった事にした…

「あっもしも~し?分かったわよ~」

「あっはいそれでどうですか?」

「貴女達、数分のラグが有るけど、皆同時に此方に来たのね~貴女達以外に此方に召喚のされた人達は、居ないみたいね~」

「やっぱりね~あの人は嘘ついてたのよ~」

「そうですか…」

「もしかしてだけど、その冒険者って一年くらい前に来たって言ってなかった?」

「どうしてそれを?確かにそう言ってたけど…ねぇ~アヤネちゃん?」

「うん!一年くらい前に此方に来て、奥さんが既に2人も居て、子供までいるって言ってた…」

「名前は、聞いてるよね~?」

「はい、ソラって言ってました。確か本名は竹中空だって聞きました。」

「あぁ~ソラ君か…彼は召喚じゃなくて転生転移だからカウントしてないんだよ~見た目も結構、改造したからね~疑いたくもなるよね~ゴメンね何か!」

「お知り合いなんですか?」

「うん、まぁね~彼とは友達だからね~ある程度は、知ってるよ!この前、会ったしその時、奥さん達も紹介して貰ったよ?」

「嘘ッ!じゃ~あの人は本当に元日本人で、言ってる事も本当なんだ~!」

「そうみたいだね~2人とも運が良かったね~!彼と一緒に居れば、取り合えず危険なんてまず無いと思うから良かったじゃない!」

「不味いよ~私あの人に嘘の話しちゃった~」

「直ぐに謝った方がいいよね~!どうしよう…許してくれるかな…」

「どういう事?」

「実は…」

 アヤネ達は、エルルーに事の顛末を話して相談した。

「大丈夫だよ!ソラ君はそのくらいなら、呑気に笑って許してくれるよ!だから落ち込まないで、明日会ったら素直に謝って許してもらいなさい!後、私の事は黙っておくように!いい?」

「はい!有難うございます。」

「有難うございます!」

「じゃあね!貴女の情報はそのアイテムに正式に登録したから、此方でもチェックしておくけど、何かあればまた連絡してきてね!バイバ~イ」

「分かりました!また宜しくお願いします。」

「宜しくお願いします。バイバイ女神様!」

 ハルコは、画面を操作して通話を終了させた。

「何か、前に会った女神様と随分違う人だったね」

「そうだね!アハハッ!」

「フフッ!でも、相談して良かったね~!アヤネちゃん」

「うん!明日会ったら直ぐに謝らなくっちゃ!早く寝ないと寝坊したら大変!」

「うん!おやすみなさいアヤネちゃん!」

「おやすみなさいハルコ!」

 二人は、スッキリした気持ちで、眠りに落ちていった。エルルー様は、この日より数日間、眠れぬ日々を過ごしたが…



 最後まで読んで下さりありがとうございます。
次回も良かったら暇潰ししていって下さい。宜しくお願いします。
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