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バイオミラクルカトウ
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俺の名はカトウ。
元ニ本陸軍特殊作戦部隊隊長。
だが、同じ隊のサトウの裏切りにより部隊は壊滅。
俺自身も重症により命を失う寸前だった。
「どうするカトウ君。この治療……いや、もはや実験だな。うまく行けばキミの命は助かるだろう。だがその確率は一パーセント未満だ」
「……やってくれ。失敗しても恨みはしねぇ」
「そうか……、わかった。感謝する」
軍のマッドサイエンティストと呼ばれた男、ハザマの手によってバイオ手術を受けた。
その結果、百メートルを五秒で走り、ジャンプ力は軽く五メートルを超える強靭な肉体を手に入れた。
アタシの名はサトウ。
元二本陸軍特殊作戦部隊隊員。
テロ組織に母を人質に取られ部隊を裏切った。
仲間を裏切った悲痛な思いでたどり着いた引き渡し場所で、アタシを待っていたのは冷たくなった母だった。
約束は当たり前のように反故にされた。なんとなくわかっていた。
そして母が爆発。アタシは死んだ。そう思っていた。
テロ組織の施設で気がついたとき、アタシは脳以外のほぼ全身を機械に置き換えられたサイボーグになっていた。
その結果、百メートルを五秒で走り、ジャンプ力は軽く五メートルを超える強靭な肉体を手に入れた。
ある日、二人が出会った。
「カトウ隊長……、ごめんなさい。いえ、謝っても許されることじゃないわね」
「いいさ、全部知っている」
サトウは自分を騙したテロ組織を壊滅させていた。
カトウはハザマから事情を聞かされ、影でひっそりとサトウをサポートしていた。
ハザマから何故姿を隠すのか聞かれたとき、「サトウが嫌がる。そういう奴だ」とカトウは答えた。
「全部終わったんだろ?」
「いいえ、裏切り者がまだここに一人」
カトウに銃を渡し、銃口を自分の額にあてるサトウ。
その顔は、すべてをやりきった安堵の微笑みを浮かべていた。
「そうだな」
自分に厳しいサトウらしい……とカトウは思った。
サトウが目をつぶり、カトウが覚悟を決めて引き金を引いた。
ただし、銃口を天井に向けて。
響く銃声。その音を合図に、感動的な音楽が流れ出し、隠れていたキャストが二人の周りで踊りだす。
トロンボーンとドラムが演奏しながらやってきて、ポップなメロディとリズムが場を盛り上げる。
何が起こったのかわからずうろたえるサトウに、クマとウサギから花束が贈呈された。
そしてカトウがひざまずくと、音楽が止まった。
踊っていたキャスト達が爽やかな笑顔で様子を伺っている。
カトウの手には小さな箱が掲げられ、中にはプラチナゴールドの指輪が輝いていた。
「結婚してくれ。サトウ」
「えっと……ごめんなさい。ストーカーはちょっと……」
「え?」
「話していないのに全部知ってるとか気持ち悪い」
「え?」
「あと、こういうサプライズは苦手……というかぶっちゃけ嫌いだし、隊長の口調も自分に酔ってるみたいでちょっと……かなり嫌」
「えぇ~???」
気まずそうな顔をして数歩後ずさり、反転して百メートル五秒の速度で去っていくサトウ。
「ミラクルは起きなんだか……」
サトウとすれ違ったハザマが花束を背に隠してつぶやいた。
元ニ本陸軍特殊作戦部隊隊長。
だが、同じ隊のサトウの裏切りにより部隊は壊滅。
俺自身も重症により命を失う寸前だった。
「どうするカトウ君。この治療……いや、もはや実験だな。うまく行けばキミの命は助かるだろう。だがその確率は一パーセント未満だ」
「……やってくれ。失敗しても恨みはしねぇ」
「そうか……、わかった。感謝する」
軍のマッドサイエンティストと呼ばれた男、ハザマの手によってバイオ手術を受けた。
その結果、百メートルを五秒で走り、ジャンプ力は軽く五メートルを超える強靭な肉体を手に入れた。
アタシの名はサトウ。
元二本陸軍特殊作戦部隊隊員。
テロ組織に母を人質に取られ部隊を裏切った。
仲間を裏切った悲痛な思いでたどり着いた引き渡し場所で、アタシを待っていたのは冷たくなった母だった。
約束は当たり前のように反故にされた。なんとなくわかっていた。
そして母が爆発。アタシは死んだ。そう思っていた。
テロ組織の施設で気がついたとき、アタシは脳以外のほぼ全身を機械に置き換えられたサイボーグになっていた。
その結果、百メートルを五秒で走り、ジャンプ力は軽く五メートルを超える強靭な肉体を手に入れた。
ある日、二人が出会った。
「カトウ隊長……、ごめんなさい。いえ、謝っても許されることじゃないわね」
「いいさ、全部知っている」
サトウは自分を騙したテロ組織を壊滅させていた。
カトウはハザマから事情を聞かされ、影でひっそりとサトウをサポートしていた。
ハザマから何故姿を隠すのか聞かれたとき、「サトウが嫌がる。そういう奴だ」とカトウは答えた。
「全部終わったんだろ?」
「いいえ、裏切り者がまだここに一人」
カトウに銃を渡し、銃口を自分の額にあてるサトウ。
その顔は、すべてをやりきった安堵の微笑みを浮かべていた。
「そうだな」
自分に厳しいサトウらしい……とカトウは思った。
サトウが目をつぶり、カトウが覚悟を決めて引き金を引いた。
ただし、銃口を天井に向けて。
響く銃声。その音を合図に、感動的な音楽が流れ出し、隠れていたキャストが二人の周りで踊りだす。
トロンボーンとドラムが演奏しながらやってきて、ポップなメロディとリズムが場を盛り上げる。
何が起こったのかわからずうろたえるサトウに、クマとウサギから花束が贈呈された。
そしてカトウがひざまずくと、音楽が止まった。
踊っていたキャスト達が爽やかな笑顔で様子を伺っている。
カトウの手には小さな箱が掲げられ、中にはプラチナゴールドの指輪が輝いていた。
「結婚してくれ。サトウ」
「えっと……ごめんなさい。ストーカーはちょっと……」
「え?」
「話していないのに全部知ってるとか気持ち悪い」
「え?」
「あと、こういうサプライズは苦手……というかぶっちゃけ嫌いだし、隊長の口調も自分に酔ってるみたいでちょっと……かなり嫌」
「えぇ~???」
気まずそうな顔をして数歩後ずさり、反転して百メートル五秒の速度で去っていくサトウ。
「ミラクルは起きなんだか……」
サトウとすれ違ったハザマが花束を背に隠してつぶやいた。
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