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七つの厄災【不安編】:不安は心配からくるらしいですよ

遺跡探訪

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 遺跡の場所はエイレーネが知っていた。
 十数年前、隣国との戦場だった国境付近で、隣国を守護するドラゴンが暴走した事件があった。ドラゴンは理性を失い、敵味方の区別なく攻撃、生き残ってたのは討伐した英雄のみとなっている。――が、エイレーネが教えてくれた真実は違った。そこには二人いたんだ。英雄と――古代魔術を使う古代人、モイラさんだ。
 その戦場に遺跡があったんだ。理由はわからねぇが遺跡に眠っていたモイラさんは、英雄とドラゴンの戦いの余波で目覚めた。どんな理屈かわからないが、モイラさんは目覚めた時点で状況を理解していたそうだ。
 モイラさんは英雄に力を貸したが改造されたドラゴンは強く、かなりの死闘の末ドラゴンを石化して倒した。それが『悲哀の厄災』に変ったのは――別の話だ。

 王都から遺跡まで一週間、エイレーネに紹介してもらった馬車で三日の距離。俺達は、馬車に堅固プロテクション、馬に肉体強化ブーストフィジカル速度増加スピードアップをかけて一日でプロタトスまで戻った。そこから更に一日、『悲哀の厄災』と戦った森のダンジョンより隣国に近い側、そこに遺跡がある。
 
 パルテノン神殿――古代ギリシャ時代に作られたドーリア式建造物。建物自体が芸術品。そんなことを思わせる見事な建物が、同心円状にいくつも規則正しく並び一つの都市を作っている。中央には神の像――ってことはパンドラか? ――があったようだが、ドラゴンの寝床になっていたようで潰れてしまって右手だけが転がっていた。今は誰もいないようだが、時々、冒険者が神殿を漁って、今の時代では製法が途絶えてしまった古代の魔道具を持ち帰り、一財産築いたり築けなかったりするらしい。

「結構広いな」

「地下があるはずだよ。お父さんが言っていた」

 端から適当に探索し、地下への入り口を探す。入り口自体はあちこちにあるらしいからな。
 
「あ、あれじゃない?」

 エウリュアが何かを見つけ指を差す。先には地下へ降りる階段が床にむき出しになっていた。覆っていた建物は壊れてしまったらしい。地下鉄の入り口みたいだな。
 エウリュアが、ふと、足を止めて上を見上げた。

「あれが母さんの眠っていた神殿なのよね」

 俺達の目の前の青空には、縦横200メートルくらいの巨大な岩が浮かび、その上に神殿が建っていた。遠目に見ても地上にある建物より更に装飾が施されているのがわかる。

「見に来たことないのか?」

「危ないからね。話に聞いていただけで来たのは初めて。立派な神殿よね」

「そうか――そうだな。凄い神殿だ」

「お兄ちゃん、お姉ちゃん!はーやーくー!」

 見るとメディが地下への入り口付近で待っていた。俺達は慌てて駆け寄り、三人で地下に降りていった。


 俺達が地下で探すのは、この都市の人々が埋葬されているネクロタフィオ墓地だ。なんでこんな言葉知ってるかって? ふにゃけ顔の同級生のおかげだな。
 地下は地上と同じく石組みで、道幅は地下とは思えないほど広かった。明かりの魔道具が設置されていたと思われるくぼみが、等間隔で壁に空いている。

光球ライティング!」
「光よ集いて標となれ……光球ライティング!」

 メディとエウリュアが明かりの魔法を唱え、光球が地下道を明るく照らす。道幅が広すぎて一つではほとんど役に立たない。

「ここまで大きい場所なら、案内用の地図とかないか」

「案内図ねぇ。戦争があったならもうないんじゃないの?」

「あ、お兄ちゃんこれ、地図じゃないかな」

「お、どれどれ? ん? ガラス――水晶の板かこれ? メディ? どうしてこれが地図だって思うんだ?」

「下に古代文字で書いてあるから。ここに指をあてて魔力を流すみたい」

 メディは水晶版の下にあった小さな丸い金属板に指を当てると、魔力を流し込んだらしい。魔力が感じられない俺にはわからん。
 一、二秒ほど待つと水晶板が青白く輝き出し、この一体の地図と区画の説明が浮かび上がった。

「どれが墓地だかわかるかメディ?」

「もちろん! この道を突き当たりまで行くと更に下に降りられる階段があるみたい」

 メディが指差す先をみると階段らしきものをを示すマークがついている。縮尺がよくわからない為、突き当りまでの距離はわからない。
 奥を眺めてみても、突き当りまでは光が届かず真っ暗だ。

「ノゾム、敵よ! 光よ集いて刃となれ――硬刃鋭化ブーストエッジ

 エウリュアの手が剣の表面を滑り、刀身が青く光輝く。

「どこからだ? なんの意識も気配も感じなかったぞ?」

「この道の奥! ライティング!」 

 メディが光球を操作して道の奥へ飛ばす。光球に照らされて現れたのは人――ただし、透けている。
 半透明になった人達が空中を漂いながら近づいてくる。俯いて長い髪に顔が隠されている女や、顔が半分吹き飛んでる男、片足を失った短躯の髭面と、遺跡に訪れて死んだ元冒険者達とひと目で分かるような格好だ。極めつけに――どいつもこいつも目が真っ赤に光ってやがる。

 こいつらってやっぱり――幽霊――だよな?
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