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七つの厄災【不安編】:不安は心配からくるらしいですよ
盗賊魅了
しおりを挟むあれから一週間後。準備も整い、俺は心もそぞろに浮足立って街道を歩いている。
この道はプロタトスから王都につながっている一八街道の中の一つ。第七街道だ。当然、出来上がった太刀と挂甲を装備してる。俺の背中にルンルンなんて文字がでていそうだ。
ゴブリンや盗賊がいないかキョロキョロしてるとエウリュアから注意された。
「そんなにキョロキョロしないでよ。こっちが恥ずかしいじゃない」
そうなのだ。この街道は王都に向かうだけあって、結構人通りが多い。馬車もガンガン走っているし、低級の竜が引く竜車や大きな二本足で走るひよこもいる。ゴブリンも盗賊も出てくるわけがない。戦いが絡まないファンタジーは気分がいい!
「ちょっと、聞いてるの?ノ・ゾ・ム!」
俺が浮かれ上がって支離滅裂なこと思ってるとエウリュアが追いかけてきて腰紐を掴まれた。すかさず振り切ろうとするが、お、結構強い。俺が負けないように踏ん張っていると、メディが追いついてきた。
「ちょっと速いよ。お兄ちゃん。お姉ちゃんもおいてかないで」
「あぁ、ごめんね。メディって、どうしたのそれ」
「行商のお兄ちゃんがくれたの」
そう言ってメディは干し肉をもぐもぐ食べている。隣を通っていく行商人のまだ若そうな兄ちゃんが、御者台からこちらに手を振ってる。あ、メディが振り返すとめちゃくちゃ喜んでる。もしかしてロリコンか?
「メディ、あいつロリコンじゃねぇの? 危ねえんだから知らん人についていくなよ?」
「わかってるよ? でも、あのお兄ちゃんは危険じゃないから大丈夫!」
「どうしてわかるんだよ、そんなこと」
「もちろん魔法で!」
なんでもアナライズっていう相手に敵意があるかどうか色でわかる魔法があるそうだ。敵意があれば赤、味方は青、何も思っていない中立は黄色。信号機かよ。
「でも、ねーちゃんが心配するからやめろな?」
メディがエウリュアを見ると、はっきりと心配そうな顔している。家族がバラバラになったことや石化病のことなんかで、今じゃすっかり心配性だ。最初はひどくちょっとメディの姿が見えなくなると不安がっていたが、今は自覚しているらしく不安な顔をするだけだ。
「後ろから二人。前に五人。赤い人がいる」
メディが急に小声でいう。俺はキョロキョロして見るが区別がつかない。
「ノゾム、気配で探ってみて。ノゾムならわかるかも」
エウリュアに言われて、一秒目を瞑り精神統一――いた、敵意かどうかはわからないが、はっきりと俺達を意識してる意識の視線みたいなものを感じる。前五人のうち二人がゆっくりと俺達の左右に移動をはじめた。向こうも気付いたか?
「まずいな」
このままじゃ囲まれちまう。その後は人通りが少なくなってから襲うつもりか?
「大丈夫、任せてお兄ちゃん。テンプテーション」
メディがつぶやくと、奴らが意識してる気配が強くなった。
「ん? なんだ? もっとこっちを意識し始めた気がするが――」
「あ、そういう感じ方なんだ。意識はしてるかもね。今、全員――メディの味方にしたから!」
メディに言われて、そーっと周りを伺うと・・・あぁ、なるほど。皆ロリコンになったのね。ちらっちらっとメディを見る奴、隠そうともしないでメディを見つめてる奴もいた。さっきまであんなに隠れようとしてたのに。
「あー、なんていうか。ロリコン製造魔法?」
「ぷっ、あははははははっ」
「あーはっはっはっ」
俺の一言にメディが笑い、釣られて俺も笑い出す。エウリュアだけが心配そうな顔をしてる。一時的とは言え、妹がロリコンに囲まれているとか、そりゃあ姉として心配だろう。
「「ごめんなさい」」
――なんで俺まで。
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