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七つの厄災【不安編】:不安は心配からくるらしいですよ
装備万端
しおりを挟む店内の窓を開け、ろうそくの代わりに電灯という魔道具を光らせると、店内は驚くほど明るくなった。
「どや、自慢の武器防具達や」
どや顔でクリスティナが胸をはる。はる――胸がないな。
「ど、どこみてんのや!」
胸を隠してクリスティナが恥ずかしそうにしてる。あ、エウリュアが睨みつけてきた。
「いや、違うんだよエウリュア。あんまりにクリスティナの胸がないなぁって」
言った瞬間エウリュアとクリスティナからビンタとパンチが飛んできた。
「――ごめんなさい」
「「わかればよろしい」」
気を取り直して店内を物色する。普通の片手剣やロングソードから、雷のようにギザギザしているサンダーソード(ボタンを押すと電気が流れる)、剣の柄が銃になっていて切っ先から一発だけ撃てるガンソードなんてものもある。あ、銃もおいてあるけど、先込め式だな。弾は火薬と弾頭を紙でまとめた一体型になってる。鎧はファンタジーにでてくるような革の鎧もあるけど、ライダースーツみたいなのもある。防御力が高そうだな。
「お、あったこれこれ」
「あ、それは――」
俺が探していたのは太刀。家の武術の基本装備だ。江戸時代の打刀と違って太いし長いんだけど――。
「なぁ、これなんかいろいろ違くないか?」
「あー、すまんなー。うち刀には詳しくなくて、それでも形だけ思い出しながらやってみたんけど、なんかイマイチなん」
「うーん、いや。刃はしっかりしてるし、拵えだけだな。これだったら俺が教えられるけど」
「ほんま? 助かるわー! その分、値段から引いたるわ!」
これ、長さは太刀なのに打刀のような拵えになっている。よくアニメにでてくるような見栄えのいい刀だ。
打刀は刃が上を向くように腰に差すんだけど、太刀は逆に刃が下で環などで吊って佩く。佩き方はいろいろあるが家のやり方が独特なので省略、少なくとも環がなけれりゃどうしようもない。
俺は、家でよく練習に使っていた黒漆太刀って拵えを頑張って絵で説明した。明日にはできてるってさ。すげーはやいな?
大体、漆はあるのか? お店のオブジェのせいで不安は尽きないけど任せるしかない。――俺じゃできないしな。
刀があるということは――店内を見渡すとあった、当世具足のバッタモンみたいなのが。お、さらに古い裲襠式挂甲もある。
「なぁ、鎧については詳しいのか」
「刀よりは詳しいかな。実家が昔、具足屋の家系だったらしいんで」
「挂甲を革で作って欲しいって言ったらどのくらいでできる?」
「うーん、せやなぁ。三日くらいか」
「さっきの拵えもそうだけどずいぶん早いんだな。普通なら何ヶ月もかかるもんだろう?」
「企業秘密や。って普通ならいうところやけど、同じ日本人やから教えたる。答えはこの世界のスキル、武器作成と防具作成を持っとるからや」
「え? スキル?」
「せや、イメージで粘土みたいに革や金属を扱えるんや」
「そりゃ便利だな。なぁ」――俺はエウリュアの方を向き――「俺も覚えれるかな」と、聞いてみた。
「まず無理ね。ノゾムはこの世界で産まれたわけじゃないから」
「今までの落人が、この世界でスキルを手に入れたって話はないみたいだよ」
エウリュアとメディに言われてへこむ俺。
あぁ、そんなスキルがあればドクロ刃紋の真っ黒な刀とか、でっかい十字架みたいな刀とか、中二病チックな武器防具が作れたのに――。
そんな俺の心を読むようにクリスがフォローしてくれた。
「武器と防具はうちが代わりにつくったる。いっぱい稼いできてな!」
「あぁ、わかった。自分で作れないものは頼むしかない。よろしく頼むな! クリス!」
「任せとき!」
ガッチリ握手をする俺とクリス!
こうして俺の装備は三日後に取りに来ることになった。
他にエウリュアは、俺が折った予備の剣の代わりを、メディは小型の杖の代わりになる魔法触媒も兼ねた短剣を買って店をでた。帰りの道中市場にもよって、ちょっとした香辛料など旅に必要なものを買いながら、俺らは家路についたのだった。
あー、刀に鎧、出来上がるのが楽しみだなぁ。
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