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七つの厄災【不安編】:不安は心配からくるらしいですよ
謝罪面談
しおりを挟む俺達は今、アダマンティオス辺境伯の屋敷に来ている。俺達というのは、俺とエウリュアとメディ、冒険者ギルドのギルドマスター。冒険者ギルド受付のクリスは、なぜか辺境伯が座っている椅子の後ろに立っている。
クリスは元々孤児で、郊外で虐められていたクリスを辺境伯の息子夫婦が助けたらしい。息子夫婦が亡くなったのをきっかけに、ずっと辺境伯の為になるよう行動していたそうだ。クリスから事情を聞いたという辺境伯は、無償で石化病の薬を配布。郊外の病人を全員治療。そして――今、俺達へ額を床につけて謝罪している。
「本当に、本当にすまなかったのである。全ては我が哀しみにより目を曇らせたせいである。」
「わかりました。もう、頭をあげてください」
エウリュアがつぶやく。肩がプルプル震えている。怒っているのかと顔を見てみると――こいつ、笑ってやがる。
「(どうしたんだ?何笑ってやがる)」
「(ノゾム?あ、これが念話ね。だってあの威張りまくってた貴族が頭を床につくまで下げるなんて!あーすっとした!……父さんにも見せたかったなぁ)」
「(恨んでないのか?)」
「(そりゃ恨んでたわよ。だけど原因を知っちゃうとね。家族を殺された気持ち――なんとなくわかっちゃって)」
「(そうか――そうだな)」
とにかく、エウリュアは今までのわだかまりを許すつもりらしい。
「お姉ちゃんがそう言うならメディも許す」
「感謝である。まさか謝罪を受け入れてくれるとは――できれば英雄殿にも謝罪したかったのである」
頭をあげたアダマンティオス辺境伯は、申し訳無さそうな顔で空を仰ぐ。そしてクリスが一つの封書をアダマンティオス辺境伯へ差し出した。
俺が代表でアダマンティオス辺境伯から封書を受け取る。
「これはお詫びとなるかわからぬが、英雄殿の奥方、モイラ殿を解放するように求めた嘆願書である」
エウリュアとメディが顔を見合わせた。
「これで必ず解放してもらえる訳ではないが、我ができる精一杯の誠意である」
アダマンティオス辺境伯は立ち上がってもう一度頭を下げる。
「「ありがとうございます!!」」
エウリュアとメディも喜んで、憎き貴族だった男に礼を言った。
「そして、君が落人のノゾム殿か。息子家族の仇と我の無念を晴らしてくれ、本当にありがとう」
「気にすんな。たまたまだ」
「貴様!辺境伯様になんという態度を!!」
「良いのである!」
クリスが何やら俺の態度に突っかかってきたが、辺境伯がそれを許す。
「彼は悲哀の厄災に狙われていた我等を救ってくれた英雄である」
「ははっ、すげぇ変わりよう――」
それだけ子供夫婦が大事で、奪われた哀しみと奪ったモノへの憎しみが大きかった――ってことなんだろうな。
ギルドマスターはまだ話があるらしく辺境伯の家に残った。
辺境伯の屋敷を出た俺とエウリュアとメディはその足で買い出しに市場に行くことにした。受け取った嘆願書を王都へ届ける為、俺達は王都に向かうことにしたからだ。その話を聞いて辺境伯が支度金をくれた。この世界で旅となればそこそこ荷物が必要らしい。
「買い出しとはいえ、鍋、魔法瓶、クマ肉、ウサ肉、香草、キノコと食事関係はあるし、小人箱でもメディは小さいからなんとか三人で寝れるし、――なぁ、何がいるんだ?」
「その格好で旅するの? マントぐらいないと朝晩の寒暖差にやられるわよ? それから――武器はどうするの?」
エウリュアが一般常識のない俺に呆れた声で言う。あー、武器のことすっかり忘れてたな。どうしようか。
「この街でメディが一番良いと思う武器、防具のお店を紹介するよ!」
「おぉ! そりゃ助かる。ありがとうメディ」
俺は装備については何にもわかんねぇからな。メディの情報網にひっかかったお店なら信用できる。
「信…用……できる……?」
なんだこりゃ、店――なのか? メディ、本当に大丈夫なのか? 不安だ。かーなーり、不安だ。
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