26 / 48
七つの厄災【不安編】:不安は心配からくるらしいですよ
謝罪面談
しおりを挟む俺達は今、アダマンティオス辺境伯の屋敷に来ている。俺達というのは、俺とエウリュアとメディ、冒険者ギルドのギルドマスター。冒険者ギルド受付のクリスは、なぜか辺境伯が座っている椅子の後ろに立っている。
クリスは元々孤児で、郊外で虐められていたクリスを辺境伯の息子夫婦が助けたらしい。息子夫婦が亡くなったのをきっかけに、ずっと辺境伯の為になるよう行動していたそうだ。クリスから事情を聞いたという辺境伯は、無償で石化病の薬を配布。郊外の病人を全員治療。そして――今、俺達へ額を床につけて謝罪している。
「本当に、本当にすまなかったのである。全ては我が哀しみにより目を曇らせたせいである。」
「わかりました。もう、頭をあげてください」
エウリュアがつぶやく。肩がプルプル震えている。怒っているのかと顔を見てみると――こいつ、笑ってやがる。
「(どうしたんだ?何笑ってやがる)」
「(ノゾム?あ、これが念話ね。だってあの威張りまくってた貴族が頭を床につくまで下げるなんて!あーすっとした!……父さんにも見せたかったなぁ)」
「(恨んでないのか?)」
「(そりゃ恨んでたわよ。だけど原因を知っちゃうとね。家族を殺された気持ち――なんとなくわかっちゃって)」
「(そうか――そうだな)」
とにかく、エウリュアは今までのわだかまりを許すつもりらしい。
「お姉ちゃんがそう言うならメディも許す」
「感謝である。まさか謝罪を受け入れてくれるとは――できれば英雄殿にも謝罪したかったのである」
頭をあげたアダマンティオス辺境伯は、申し訳無さそうな顔で空を仰ぐ。そしてクリスが一つの封書をアダマンティオス辺境伯へ差し出した。
俺が代表でアダマンティオス辺境伯から封書を受け取る。
「これはお詫びとなるかわからぬが、英雄殿の奥方、モイラ殿を解放するように求めた嘆願書である」
エウリュアとメディが顔を見合わせた。
「これで必ず解放してもらえる訳ではないが、我ができる精一杯の誠意である」
アダマンティオス辺境伯は立ち上がってもう一度頭を下げる。
「「ありがとうございます!!」」
エウリュアとメディも喜んで、憎き貴族だった男に礼を言った。
「そして、君が落人のノゾム殿か。息子家族の仇と我の無念を晴らしてくれ、本当にありがとう」
「気にすんな。たまたまだ」
「貴様!辺境伯様になんという態度を!!」
「良いのである!」
クリスが何やら俺の態度に突っかかってきたが、辺境伯がそれを許す。
「彼は悲哀の厄災に狙われていた我等を救ってくれた英雄である」
「ははっ、すげぇ変わりよう――」
それだけ子供夫婦が大事で、奪われた哀しみと奪ったモノへの憎しみが大きかった――ってことなんだろうな。
ギルドマスターはまだ話があるらしく辺境伯の家に残った。
辺境伯の屋敷を出た俺とエウリュアとメディはその足で買い出しに市場に行くことにした。受け取った嘆願書を王都へ届ける為、俺達は王都に向かうことにしたからだ。その話を聞いて辺境伯が支度金をくれた。この世界で旅となればそこそこ荷物が必要らしい。
「買い出しとはいえ、鍋、魔法瓶、クマ肉、ウサ肉、香草、キノコと食事関係はあるし、小人箱でもメディは小さいからなんとか三人で寝れるし、――なぁ、何がいるんだ?」
「その格好で旅するの? マントぐらいないと朝晩の寒暖差にやられるわよ? それから――武器はどうするの?」
エウリュアが一般常識のない俺に呆れた声で言う。あー、武器のことすっかり忘れてたな。どうしようか。
「この街でメディが一番良いと思う武器、防具のお店を紹介するよ!」
「おぉ! そりゃ助かる。ありがとうメディ」
俺は装備については何にもわかんねぇからな。メディの情報網にひっかかったお店なら信用できる。
「信…用……できる……?」
なんだこりゃ、店――なのか? メディ、本当に大丈夫なのか? 不安だ。かーなーり、不安だ。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ぽっちゃり女子の異世界人生
猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。
最強主人公はイケメンでハーレム。
脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。
落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。
=主人公は男でも女でも顔が良い。
そして、ハンパなく強い。
そんな常識いりませんっ。
私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。
【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】
手違いで勝手に転生させられたので、女神からチート能力を盗んでハーレムを形成してやりました
2u10
ファンタジー
魔術指輪は鉄砲だ。魔法適性がなくても魔法が使えるし人も殺せる。女神から奪い取った〝能力付与〟能力と、〝魔術指輪の効果コピー〟能力で、俺は世界一強い『魔法適性のない魔術師』となる。その途中で何人かの勇者を倒したり、女神を陥れたり、あとは魔王を倒したりしながらも、いろんな可愛い女の子たちと仲間になってハーレムを作ったが、そんなことは俺の人生のほんの一部でしかない。無能力・無アイテム(所持品はラノベのみ)で異世界に手違いで転生されたただのオタクだった俺が世界を救う勇者となる。これより紡がれるのはそんな俺の物語。
※この作品は小説家になろうにて同時連載中です。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!
いい子ちゃんなんて嫌いだわ
F.conoe
ファンタジー
異世界召喚され、聖女として厚遇されたが
聖女じゃなかったと手のひら返しをされた。
おまけだと思われていたあの子が聖女だという。いい子で優しい聖女さま。
どうしてあなたは、もっと早く名乗らなかったの。
それが優しさだと思ったの?
愚者による愚行と愚策の結果……《完結》
アーエル
ファンタジー
その愚者は無知だった。
それが転落の始まり……ではなかった。
本当の愚者は誰だったのか。
誰を相手にしていたのか。
後悔は……してもし足りない。
全13話
☆他社でも公開します
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】
一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。
追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。
無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。
そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード!
異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。
【諸注意】
以前投稿した同名の短編の連載版になります。
連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。
なんでも大丈夫な方向けです。
小説の形をしていないので、読む人を選びます。
以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。
disりに見えてしまう表現があります。
以上の点から気分を害されても責任は負えません。
閲覧は自己責任でお願いします。
小説家になろう、pixivでも投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる