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七つの厄災【悲哀編】:悲しみは積み重なるものらしいですよ

はじめてのダンジョンは血の匂いがすごいらしいですよ1

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 サクッと助けてくるはずが予定が狂ってしまった。子供達の病気は治ったが、なんとなく空気が重いままだ。

「ちょっと洞窟に行ってくる。――子供達を頼む」

 俺は子供達をエウリュアの家のベッドに寝かせると、すぐ洞窟へ向かおうとした。エウリュアと事情を聞いたメディも一緒に行こうとするが、子供を頼むとお願いする。

「怒る気持ちはわかるけど、そのまま行って勝てる保証はあるの?」

 俺は黙ったままだ。保証なんてあるわけがない。

「じゃあ、私も一緒に行く!」

「――駄目だ!」

 わざと怒鳴る。行く必要のなくなった危険な場所へ、大切な人を連れて行きたくない。エウリュアも同じように思ってるかもしれないけど無視する。嫌われたっていい。これは俺の我儘だ。
 俺は無言でエウリュアを見つめる。

「絶対、無事に戻ってきてよね」

「まぁ、あんな外道共にやられたりしないさ」

 根負けしたエウリュアが諦めて言う。守れない約束はしたくないので、適当にごまかした。

「止めても駄目っぽいよ、お姉ちゃん。二人のことはメディにまかせて!」

「あぁ、頼んだ」

 メディが空気をかえるように元気な笑顔で見送ってくれた。


 洞窟は街から歩いて一日の距離。――を二時間ほどで走る。アドレナリンがでているせいか、いくら走っても疲れを感じない。なんとか夕暮れ夜になる前に洞窟についた。入り口に誰もいないことを確認して中に入る。奴らの準備が整う前になんとか叩きたい。洞窟の中は思ったより広く明るかった。松明なんかは必要なさそうだ。警戒しながら一〇メートルくらい進むと話し声が聞こてきた。反響して位置がわかりずらいが、内容がわかる距離まで慎重に距離をつめる。

「本当にくるんですか?」

「どうだろうな。来なければ子供の首を斬って町中にさらせばいい。英雄の末娘の息がかかった子供はまだまだいる」

「――へぇ」

 また頭に血が登りはじめる。首を斬ってさらすだと――。

「お早いおつきですね。こちらの準備がまだ整っていませんのに」

 三人目――気付かれた!? 先手を取る為に飛び出そうとして思いとどまる。気配を消した俺に気付いているだと? ――そんなわけねぇ、ブラフだ。

「おや? でてきませんね? 勘違いだったのでしょう――かっ!」

 背筋にぞくっときた。大慌てで転がって逃げる。俺の元いた地面に何かが突き刺さっている。よく目を凝らしてみると――真っ黒な針。

「影針を初見でかわしますか、さすがは落人というところでしょうか。でも、そろそろでてきていただけませんか? 少しお話がしたいのですが――」

 嘘だな。今の影針とやらは、地面にあった拳ぐらいの石を地面に刺さっている。まったく、人間の体じゃ貫通してる威力――俺を殺す気MAXじゃねーか。あ、針が消えやがった。こりゃ、暗殺にもってこいだな。だいたい、奴は俺の姿を見ていない、そして針は天井の方からきた。思ったところから自由に針を飛ばせるんだろう。俺の居場所を魔道具か何かで調べて、勘で針を撃ったんだ。今もし出ていったら、俺の周りあちこちから針が降り注いで、あっという間にハリネズミになっちまう。

「本当にいるのか?」

「えぇ、気配はないですが、あの岩場の奥の壁の影に隠れています。魔道具レーダーを持ってきて本当に良かった」

「見てきましょうか? ライオスさん」

「大丈夫、そろそろ出てきますよ」

 俺が聞いているって言うのにしれっとネタバラシして、浮足立っている仲間を落ち着かせやがった。これで不意打ちをするチャンスはゼロだ。

「……普通の奴ならな」

 ボソリとつぶやいて、壁から少し離れ腰をおとす。手のひらを壁につけ深呼吸。吸いきった息とともに一気に衝撃を放つ。
 ズンッと洞窟内に重い音が響きわたる。振動が洞窟全体に広がって天井がボロボロと崩れだした。思ったより脆かったみたいだ。

「実家の奥義のひとつだ」

「っな!?」

「うぉっ!」

「ぎゃあ!」

 ガンッと音がした。うまいこと誰がに当たったみたいだ。
 奴らの奥の方から「うあー」だの「ぎゃー」だの聞こえてきた。やっぱりな、人数は多いほうがいいにきまっている。基本、戦闘は数だ。

「これは! 貴方の仕業ですか? 落人!」

「教えねぇよ!」

 ズンッズンッと二度、壁を重く響かせると崩落は更にひどくなった。俺はテレビのヒーローみたいに、必殺技を最後まで取っといたりしないんだよ。使える技はどんどん使う。
 洞窟の奥の叫びが酷くなる。阿鼻叫喚の地獄絵図になっているんだろう。
 
「ほれもっいっちょ!」

 ズンッ!――やべぇ、楽しくなってきた。

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