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七つの厄災【悲哀編】:悲しみは積み重なるものらしいですよ
はじめての情報戦らしいですよ1
しおりを挟む「さて。じゃあ、はじめるとするか!」
俺はいま、エウリュアと一緒に三目熊のでる森にきている。石化病の薬の材料をあつめるためだ。
三日前、宿屋で三人の治療した後に、これからのことをメディから相談された。郊外の石化病だけでも根絶したいと。
前回の薬は残り九個。全部使ったとしても、病人はまだ二八名もいるそうだ。これはメディの現状の情報網で調べた範囲で――と注意書きが入り、もっといるかもしれないらしい。
その為に必要な三目熊の瞳は二八個。瞳一個で薬ひとつできる算段だ。もちろん他に必要な材料はあるが、それはメデイアの店にそろっているらしい。前回製薬の際、メデイアは、ほぼ材料費だけで売ってくれたってことらしいな。
メディから、できたら多めに採ってくるよう頼まれている。情報網にひっかからない病人のためと、対貴族用らしい。詳しいことは聞いてもわからんので、全部メディに丸投げした。俺達はただ材料を調達にすればいいってことだ。
「ノゾム! そっちにまわす! 三匹!」
「了解!」
エウリュアがひきつけてきたトリオプスベアを、すれ違いざま、足の早いヤツから順に舌を引っこ抜く。悶絶しているところをエウリュアが剣で――魔法で切れ味を強化しているらしい――首を飛ばす。
流石に素手じゃクマの毛皮を貫けないからな。首の骨も丈夫そうだし――俺も剣ぐらい欲しかったけど結構高いんだもんなぁ。
お金のない今の状況じゃどうすることもできず、困っていると、メディから「お兄ちゃん、素手でも戦えるんでしょ? いらないんじゃない?」と、言われてしまった。
一応、余ったクマ皮から保護テープを作ってもらって拳を保護している。――今は、クマのヨダレでべったべただけど。
「流石に二人だとはやいね。ガシガシ狩るよ、ノゾム!」
「おぉ、頑張ろう!」
ニコニコと笑うエウリュアと一緒にいれるだけで俺は幸せだ!
片道三日、狩り一日、計一週間で俺達は帰ってきた。品薄になるだけあって、移動はなかなか大変だったが、俺もエウリュアも力が普通のヤツとは違う。たった一日で二〇匹倒し、ついでに肉と毛皮も手に入れて帰ってきた。
「おかえりなさい! お姉ちゃん、お兄ちゃん!」
「「ただいま!」」
メディが出迎えてくれて、俺達の返事がそろう。ちょっと照れくさい。
「もう、帰ってくるなり返事で惚気けないでよね! あぁーメディにもいい人いないかなぁ」
照れてる俺たちを見てメディがグチる。
「メディは一〇歳だろ? まだ早いんじゃないのか?」
「こっちの世界じゃ一五歳で成人なの。――あと五年しかない」
「まだ、五年もあるでしょ?」
「余裕宣言!? お姉ちゃんだって成人するまで男の人と話すこともできずに焦ってたのに――ずーるーいー!」
「ちょっ、馬鹿! 黙ってなさい」
「嫌だー、アハハハハハ」
二人のやりとりを見ていると、この間までの悲壮感漂うエウリュアが嘘みたいだ。
「今回も熊の皮はギルドで高く買ってもらえたし、薬の材料はメデイアさんに渡してきた」
「あとは薬ができあがるのを待つだけだね」
エウリュアも同意してくれる。
「ところが、そうのんびりしてる訳にはいかないみたいなの」
「ん? ――どういうことだ?」
「あのアホ貴族がね。お姉ちゃん達を狙ってるみたい」
「また嫌がらせなの?」
「ううん、今回は本気で殺しにくるみたいだよ」
俺とエウリュアはうんざりして言葉をなくし、メディは楽しそうに笑って答えたのだった。
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