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第一章

10.思わぬところで意識がそれたりもする

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 昼休み

「はぁーー、静かで涼しい。それだけで快適だな」

 俺は図書室で読書をしていた。暑いこの季節に冷房が効いた部屋は天国だ。そのせいで涼しいってのに逆に溶けるんじゃないかっていう錯覚を覚える

 この天国で俺が読んでいる本気は家から持ってきていたBL漫画だった。いつもなら外出する時に持って行く本にBLはチョイスはしない。誰かに見られてあれこれ言われてもるのもわざわざコソコソ隠れて読むのもめんどだしな

 だから普段はラノベとかの小説を持って行ってる。挿絵のページにさえ気をつければ後は小さい文字だけだしな。まぁ、でもそれでも表紙を見られたら面倒だがそこはカバーを付けてるから問題ない

 そんな訳で俺が学校にBLを持って来てるのは普段ならありえないんだが今日は朝から憂鬱だったのでその気分を紛らわせる為に今回は持ってきた。当然原因はあのバカだ

 今朝も危うく他の奴に俺たちの間にあった事がバレかけたじゃねか。ったく、あいつ頭は良いのに本当になんで変なところでズレてるんだ

 それにあのバカの相手はしばらくしたくねえってのに、休み時間の度に声をかけて面倒くさいことこの上ない

 あのバカはクラスの人気者の1人だから俺まで注目されてだるい。ただでさえ最近は他の人気者と繋がりを持っちまって面倒なのにあいつにしつこく付き纏われたら嫌でも注目される。それが嫌いな俺からしたら最悪でしかない

 他人の目がなかったら一発ぶん殴っても許されるんじゃないか?

 ………やばいな。あのバカとの過ちや今朝さっそくのあいつのやらかし、おまけに夏の暑さにやられて思考が暴力的になってるな

「よし、読書に集中するか」

 俺は声に出して意識を切り替えることにした

 今日の図書室には俺以外誰もいないのでBLを読んでいても人目を気にする必要がないので読書が捗る。中学もそうだったけど、やっぱり学校の図書室っていうのはあんまり人気がないんだな

 俺しかいない図書室ではぺら、ぺらと俺のが本のページを捲る音だけが響く

 そしてある場面を見て

「あれ、そういえばあいつ今日の俺らを見て何にも言って来ないな」

 気づいたら俺の口からは言葉が漏れていた。図書室では褒められた行為ではないが、今は他の利用者がいないからギリギリセーフだと思っておこう

 一瞬思考がズレるが直ぐに修正をして漫画のあるページへと目を向ける。視線は漫画を捉えているが俺の意識は漫画のストーリーからは外れたままだ

 おい、嫌な予感しかしないぞ。でも問いただして藪蛇になりたくねぇしな。面倒くせえ

 俺が本のストーリーから意識が外れる原因を作った場面。それは主人公達が付き合っている事を実は友人が気づいていたことを知って驚いている場面だ

 このキャラの言動で隠れて付き合ってる事がバレるんじゃないかと心配する発言をよくする事から主人公達はよく動揺させさられていた。だが実際のところは人を見る目に優れていて主人公達カップルをいじって遊んでいた事が判明した

 俺の知り合い………友達にはこのキャラのように人を見透かしてくる奴がいる。正直偶に怖くなるくらいだ

 ついでに言うと本心をそう簡単には掴ませない。ただ根っからの善人ではある。同時にある意味でかなり捻くれてる

 趣味が同じだったのと似ている部分があったから中学の頃に気が合って仲良くなった。それからの付き合いだからあいつの事はある程度は知ってる。けど今のあいつに至っては未だに中々掴めないところもあるんだよな

 多分あいつなら俺と響の間に何があったか勘づいていてもおかしくない。具体的な事は予想がつかなくても俺と響の関係に何か変化があった事だけは確実に気づいてる。そして多少抽象的でもある程度正確に推測できる。そういう奴なんだ。そしてあいつの性格からして俺に声をかけくる
 
 ………はずなんだが俺に声をかけないってのはどうしてだ?普段のあいつなら絶対に面白がって聞いてくるはずなのに。わっかんねぇな

「はぁーーー、嫌な気分をマシにする為にわざわざ学校にまで持ってきてBLを読んでたってたのにまさか別の心配事が見つかるとかついてなさすぎだろ」

 俺はでかいため息と共に愚痴を溢す

 ただでさえあのバカのせいで頭が痛いってのに、どうしてこうも悩み事が積み重なるんだろうな

 いや、考えるのは終やめとくか。少なくとも昼休みの今は好きな事をして気を紛らわせよう。それに噂をすればなんとやらって言うし、あいつの事を考えるのはやめておこう

 っていうかそもそも俺がこんなに面倒な事になってる原因だが、それはあいつが悩みの種の今の関係になるトラブルを作ったからで

「マジで今度埋め合わせをしてもらうとするか。さすがに殴るのはやめとくとして絶対になんか奢らせる」

 ってかこれじゃあ。出てくるのはひねくれじゃなくてあのバカになりそうだな。いやバカの方がまだマシか。いやまず第一にそもそも口には出してないから噂をすればなんとやらに当てはまらないか

「てか、嫌な事を忘れる為に読んでたんだよ俺は。だったら今は忘れるき限るな」

 そうして俺は再び読書に意識を向けようとしした時

カラララ

 俺の背後から図書室の扉を開く音が聞こえた。

 ………おいおい。俺は噂をしていないんだが?そもそも俺は今1人で頭の中で考えたんだぞ。ノーカンだろノーカン

いや大丈夫だ落ち着け俺。そもそもあいつらのどっちかだと決まった訳じゃない。

 よし、そうと決まったらさっさと誰かを確認しよう

 俺はそう決めてBLを机の上に置く。因みに俺は基本的に表紙が汚れるのが嫌だから買った漫画やラノベにカバーを付けてる。だから見られても問題ない

 俺は本を机の上に置き覚悟を決める。

 さて鬼が出るか蛇が出るか。図書室に入ってきた人物を確認する為に読書をしていて下げていた顔を上げ、図書室の入口へと視線を向ける

そしてそこにいたのは

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