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第一章

8.予想外の事は誰でも驚くだろ

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 月曜日

 学校へと向かう俺の足取りは重かった。それもそうだろ。昨日は色々ありすぎたんだからな。あんな出来事があって通常運転でいける奴なんてそうそう居ないだろ

 それに昨日は楽しみな事を考えて楽しい気分で終わっただけに今日からの事を思うとその落差もあってかなり憂鬱だ

「はぁ」

 昨日からもう何度目にかになるか分からないため息が俺の口から漏れてしまう。おまけに体の痛みが抜け切ってない。それが昨日あった事が夢じゃないと言う事を否が応でも理解させられる

 その事実にまたしてもため息が出そうになるが堪える。そうしないと切り替えられる気がしなかったからだ

 ………ため息の原因全部あいつだよな。昨日からの悩みの原因の元凶はあいつ。しかもあいつの方は特に気にしていないだろうな。なんかまたムカついてきたな。元から考えてはいたけど響、いや篝のやつはしばらく雑に扱っておくか。

 あっそれと今更すぎる気がすっけど、俺達の関係を周囲には言わないように口止めもしないとだな。あのバカは付き合ってる事を隠したりしないしな

 それにあのバカはよくモテる。その内確実にまた誰か付き合いたいって声をかけられるだろうな。でもってその流れで俺の名前が出かねない。だから今日会ったら真っ先に余計な事を喋らないように口止めをしないとだな

 ったく。あのバカのせいで面倒なーーー

「おはよう。駆君」

「うぉ!」

「うえぇ!?」

 考え事をしていたので急に後ろから声をかけられて驚いて俺はつい大声を出してしまった。そして俺の声の後に悲鳴がさらにもう一つ。状況的に俺に声をかけてきた奴だな。

「え、えっと2人とも大丈夫?一旦落ち着いて」

 そこに更に新たに別の人間の声が加わる。多分最初から俺達の間抜けなやりとりを見てたんだろう。そして俺にはこの声の主に心当たりがある。そしてそこから最初に声をかけてきたのが誰かも分かった

 この声はあいつだな。この少し遠慮がちな喋り方でわかる。それとこいつのいるところにはだいたいニコイチでいる奴がいるから最初に声をかけたのはあいつで間違えない

 そう考えながら振り向くとそこには俺の思った通りの人物達がいた

「あはは。ごめんね。まさかあんなに驚くと思ってなくて」

 苦笑いをしながら謝るのは二重の目と少し幼い顔つきでちょっとだけ中性的な顔が特徴をしたポジティブよりの性格をした星野春人だ

「えっと2人とも怪我とかしてない?」

 そしてまたしても遠慮がちに声をかけ俺達に心配気な視線を向けるのは春人と同じように幼さが残る顔つきで片方にだけ寄せた目元まで届く髪と眼鏡が特徴だ。春樹とは逆でにネガティヴよりな性格の影山秋人だ

「大丈夫だよ。というか大袈裟だよ。これくらいで怪我したりはしないよ。飛び上がったわけでもないしね」

「春樹の言う通りだな。でもまぁ心配してくれてありがとうな」

「そっか。それならよかった」

 秋人は少しばかり心配性なところはあるけどいつも細かいところににも気遣いができる奴なんだよな。この2人は幼馴染らしくよく一緒に行動をしている

 本当に仲がいいんだよな。ついでに言うと2人とも身長は高い方じゃなく、細身な所まで一緒だったりもするし似てるところも多いんだよな

 そんな事を思っていると春樹に声をかけられる

「ところで駆君」

「なんだ?」

「今日はどうしたの?なんか珍しく不機嫌っぽいらしんだけど何かあったなら話をきくよ?」

「うわぁ!?春君!!」

「……は?」

 秋人が何か叫び出したが今は無視する。それよりも春人の言った内容が気になったからだ

 自分で言うのもどうかと思うが俺は感情の起伏が薄い方で、それに感情のコントロールも上手い方だ。確かにさっきはあのバカのせいで苛立っていたがそれでもいつもなら近くに誰かがいてもそれに気づかれない

 普通に喋れるし、普段通りにしか見えないくらいにはバレないんだけどな

「落ち着いて秋ちゃん。ごめんね駆君。実は秋ちゃんが今日の駆君はなんだか不機嫌そうで何かあったのか心配してたんだよ。でもそれに触れていいのかわからなくて、もし聞いてうざがられたりしたらどうしようって悩んでたんだよ」

「わー、わー!春君喋りすぎだよ~。というか全部言っちゃってるし」

 あー、そういう事かなるほどな。あのロクデナシも言ってたけどまさかここまでだとはな

 秋人はよく色々な事に気づく。けどそれは別に勘がいいわけじゃなくてどっちかと言うと察しがいいっていう類で人の機微に敏感だし、よく見てる。それが理由なのか細かい気遣いがよくできる

「いや、そんな誰かに話したりする程の事は別にないぞ。あと別にそんな事を聞かれても大して気にしないから大丈夫だぞ秋人」

「そ、そう?ならよかった~」

 逆の意味で誰かに言える程の内容じゃないからな。それに別に聞く君くらい俺は気にしねえけどな

 あのバカやロクデナシと同レベルかそれ以上の事をやらなきゃ大して気にしねぇから大丈夫なもんだし、それに人はより酷いものを経験していれば寛容になれるものだからな

 それにしても

「なぁ、俺そんなに不機嫌そうに見えたのか?」

 多分気づいたのは秋人だけで春人や他のやつには大丈夫だとは思うけど、もしもバレバレだったら普段通りに振る舞える様に気を配らねえと。でもってもしそうだとしたらあいつのせいになるわけで。頼むからこれ以上問題を増やさないでくれよ。俺の心の平穏の為に

「うーん。僕には普段通りに見えたんだけど、秋ちゃんがなんとなくそんな気がするって言ってたんだよ」

 やっぱり気づいたのは秋人だけだったか。でも春人ってちょっと鈍いからなぁ

「え、えっとほんの少し歩く速度っていうか歩き方に違和感があるかなって感じただけだよ」

「えぇ、どんな風にだ?」

「う、うぅーん。何ていうか、僕の気のせいかも知れないんだけどさ。駆君いつもより歩く速度がゆっくりに見えたんだけど脚の動きは逆に速い気がしたんだ」

「えっそうだったのか?」

「僕は全然気づかなかったかな」

 春人の呑気な声が聞こえる今は適当にスルーしておく

 というかよく秋人はそんな事に気づいたな。歩く速度だけならまだしも脚の動きって

「それで何となく無早く歩き出そうとしてるのを無理に止めて脚を力ませてるんじゃないかなあって思って、なんでそんな事してるのかって考えたらイライラしてるのに気づかれないように我慢してるんじゃないかと思って」

「へぇ、秋ちゃんは相変わらず人の事をよく見てるね」

 春人の呑気な声が入る。俺もその意見には同意だな。本当に秋人は細かいところを見てるし、察しがいいな。やっぱり隠し事をするのは難しそうだな

 まぁ、でもさすがにあのロクデナシ程じゃねぇからそんな直ぐにはバレねぇし、わざわざ探ろうともしないからかなりマシなんだけどな

 そう考えてると春人は俺に向きな直り声をかける

「それで駆は本当に大丈夫なの?」

「まぁ、俺の個人的な事だしな。それにさっきも言ったけど友達に相談する程の内じゃねえから気にするな」

 いや、本当に相談が出来る程の内容じゃないんだ。酒の醜態といい、初体験と言いマジで自分の口からは言えないんだ

 だから春人。気遣いは嬉しいけど悪いけどこの話題についてはこれ以上何も言わないでくれ。ついでに秋人があたふたしてやるからマジでやめてやれ

「そっか。分かった。でも相談したくなった
いつでもしてね!」

 幸いにも春人は俺の言葉をあっさりと信じたので俺は気づかれない程度にほっと息を吐いた。見ると秋人も俺と同じように息を吐いていた

 裏表のない春人の笑顔に少し罪悪感が湧くが内容が内容なだけに仕方がない。すまない春人。でもこれは当人たち以外には知られたくないんだ

「ほら!だから大丈夫だって言ったでしょ秋ちゃん。駆君は優しいからこのくらいの事は気にしないって」

「それでも春君はもう少し僕にペースを合わせてよ~」

「あはは。ごめんごめん」

 秋人の抗議に対して春人は謝ってはいるが特に気にしてないのは見てわかる通りでこの2人は大体いつもこんな感じだ

「お前ら本当に仲がいいよな~」

 この2人は幼馴染で昔から仲が良いらしいけど性格が真逆なのは分かってはいたけどこんなところまで逆なんよだな

「まぁね。秋ちゃんとは昔からずっと一緒だったからね」

「春君にはよくお世話になってるからね」

 そう言った秋人の表情には春人に対する信頼が感じられる。ただそれは一瞬だけで直ぐに遠い目をした

 一瞬何故?と疑問に思ったが、多分だけどさっきのやり取りのように何かと引っ張り回されることもあったんだろうな容易に想像がついた

「まぁとりあえず学校に行こうぜ」

 とりあえず秋人の気を紛らわせようと俺は話題を変える事にした

「あ、そうだね。つい止まっちゃっていたね」

「わっ!そうだった。」

 そうして俺は学校に向かって春樹と秋人を加えて再び歩き出す

 にしてもまさかあのバカに会う前にこんな驚かされるとは思ってなかったなぁ。元々秋人は人をよく見てるとは思ってはいたけど予想以上だな

 秋人でここまでバレるとなるとあのロクデナシには確実にバレるよな。マジであいつへの対応どうすっかな

 あのバカと何かしらあった事だけならいっけどあいつはそのくらいで終わる訳がないんだよな。確実に何があったかとかどんな関係になってるとか気づかれると思った方がいいだろう。それに加えてその事実を知った時にあいつが何をするか、どこまで止められるか。はぁ。本当に面倒くせぇ


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