12 / 12
Epi.
Epi.
しおりを挟む
真っ暗な屋敷の中、一人の少年がゆっくりと立ち上がった。少し遠い所に、柱に縛り付けられていた誰かが話しかけてくる。
「・・・ついにやり遂げたんですね!デミアン!」
その男は少年に向かってそう言った。
「まだだ。まだ一人殺していない。リアムは消えかけた。だがあいつはまだ存在している。少しは骨のあるやつだとは思ったが、とんだ赤ん坊だった」
そう言って少年は男の元まで歩み寄り、高くナイフを上げた。男はそれを見て驚く。
「何をしているんです?」
少年は男を見て不気味にほほ笑んだ。
「何って、もう一人殺すんだよ。じゃないと完全に身体を奪うことはできない。お前にも教えただろ?」
その言葉を聞いて男は悟った。自分はもう死ぬのだと。
「お前が悪いんだよイルマー。あの少年も、あの男も、本来なら俺が殺すべきだったんだ。なのにお前は一人を殺し、もう一人を重体にさせ不幸にもそいつも死んじまった。そしてこの館に残っているのは俺とお前だけだ。違うか?」
「・・・ネイミー。ネイミーが私の言うことを聞かないばかりに」
男はそう言ってテーブルの横で静かに横たわる少女の死体を睨みつけた。少年はそれに合わせて後ろを向き、その美しいとまで言える体をじっと眺めた。
「・・・ネイミーはかわいいやつだった。あいつは俺の言うことしか聞かない」
「ええ。そのせいで彼女も私も死ぬ羽目になりましたね」
そう彼は皮肉ると、目を瞑って静かになった。
もう死ぬ覚悟はできたようだ。
その時だった。少年は後ろのテーブルから、誰かの声がするのに気づいた。
「リ・・・リアム。逃げろ・・・逃げるんだ」
声の主は、ナイフで刺され重傷を負ったあの男だった。時間が経ちもう死んでしまったのかと少年は思ったのだが、かろうじて意識を取り戻し、そして最後に力を振り絞ってそう口にした。
少年はポケットから小さなカギを出すと、それで目の前の男を縛り付けていた鎖を解き、口を広げて笑って言った。
「お前はラッキーだったな」
「・・・ついにやり遂げたんですね!デミアン!」
その男は少年に向かってそう言った。
「まだだ。まだ一人殺していない。リアムは消えかけた。だがあいつはまだ存在している。少しは骨のあるやつだとは思ったが、とんだ赤ん坊だった」
そう言って少年は男の元まで歩み寄り、高くナイフを上げた。男はそれを見て驚く。
「何をしているんです?」
少年は男を見て不気味にほほ笑んだ。
「何って、もう一人殺すんだよ。じゃないと完全に身体を奪うことはできない。お前にも教えただろ?」
その言葉を聞いて男は悟った。自分はもう死ぬのだと。
「お前が悪いんだよイルマー。あの少年も、あの男も、本来なら俺が殺すべきだったんだ。なのにお前は一人を殺し、もう一人を重体にさせ不幸にもそいつも死んじまった。そしてこの館に残っているのは俺とお前だけだ。違うか?」
「・・・ネイミー。ネイミーが私の言うことを聞かないばかりに」
男はそう言ってテーブルの横で静かに横たわる少女の死体を睨みつけた。少年はそれに合わせて後ろを向き、その美しいとまで言える体をじっと眺めた。
「・・・ネイミーはかわいいやつだった。あいつは俺の言うことしか聞かない」
「ええ。そのせいで彼女も私も死ぬ羽目になりましたね」
そう彼は皮肉ると、目を瞑って静かになった。
もう死ぬ覚悟はできたようだ。
その時だった。少年は後ろのテーブルから、誰かの声がするのに気づいた。
「リ・・・リアム。逃げろ・・・逃げるんだ」
声の主は、ナイフで刺され重傷を負ったあの男だった。時間が経ちもう死んでしまったのかと少年は思ったのだが、かろうじて意識を取り戻し、そして最後に力を振り絞ってそう口にした。
少年はポケットから小さなカギを出すと、それで目の前の男を縛り付けていた鎖を解き、口を広げて笑って言った。
「お前はラッキーだったな」
0
お気に入りに追加
1
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
赤い部屋
山根利広
ホラー
YouTubeの動画広告の中に、「決してスキップしてはいけない」広告があるという。
真っ赤な背景に「あなたは好きですか?」と書かれたその広告をスキップすると、死ぬと言われている。
東京都内のある高校でも、「赤い部屋」の噂がひとり歩きしていた。
そんな中、2年生の天根凛花は「赤い部屋」の内容が自分のみた夢の内容そっくりであることに気づく。
が、クラスメイトの黒河内莉子は、噂話を一蹴し、誰かの作り話だと言う。
だが、「呪い」は実在した。
「赤い部屋」の手によって残酷な死に方をする犠牲者が、続々現れる。
凛花と莉子は、死の連鎖に歯止めをかけるため、「解決策」を見出そうとする。
そんな中、凛花のスマートフォンにも「あなたは好きですか?」という広告が表示されてしまう。
「赤い部屋」から逃れる方法はあるのか?
誰がこの「呪い」を生み出したのか?
そして彼らはなぜ、呪われたのか?
徐々に明かされる「赤い部屋」の真相。
その先にふたりが見たものは——。
朧《おぼろ》怪談【恐怖体験見聞録】
その子四十路
ホラー
しょっちゅう死にかけているせいか、作者はときどき、奇妙な体験をする。
幽霊・妖怪・オカルト・ヒトコワ・不思議な話……
日常に潜む、胸をざわめかせる怪異──
作者の実体験と、体験者から取材した実話をもとに執筆した怪談短編集。
『ゴーゴン(仮題)』
名前も知らない兵士
ホラー
高校卒業後にモデルを目指して上京した私は、芸能事務所が借り上げた1LDKのマンションに居住していた。すでに契約を結び若年で不自由ない住処があるのは恵まれていた。何とか生活が落ち着いて、一年が過ぎた頃だろうか……またアイツがやってきた……
その日、私は頭部にかすかな蠢き(うごめき)を覚えて目を覚ました。
「……やっぱり何か頭の方で動いてる」
モデル業を営む私ことカンダは、頭部に居住する二頭の蛇と生きている。
成長した蛇は私を蝕み、彼らが起きている時、私はどうしようもない衝動に駆られてしまう。
生活に限界を感じ始めた頃、私は同級生と再会する。
同級生の彼は、小学生の時、ソレを見てしまった人だった。
私は今の生活がおびやかされると思い、彼を蛇の餌食にすることに決める。
最終死発電車
真霜ナオ
ホラー
バイト帰りの大学生・清瀬蒼真は、いつものように終電へと乗り込む。
直後、車体に大きな衝撃が走り、車内の様子は一変していた。
外に出ようとした乗客の一人は身体が溶け出し、おぞましい化け物まで現れる。
生き残るためには、先頭車両を目指すしかないと知る。
「第6回ホラー・ミステリー小説大賞」奨励賞をいただきました!
トゴウ様
真霜ナオ
ホラー
MyTube(マイチューブ)配信者として伸び悩んでいたユージは、配信仲間と共に都市伝説を試すこととなる。
「トゴウ様」と呼ばれるそれは、とある条件をクリアすれば、どんな願いも叶えてくれるというのだ。
「動画をバズらせたい」という願いを叶えるため、配信仲間と共に廃校を訪れた。
霊的なものは信じないユージだが、そこで仲間の一人が不審死を遂げてしまう。
トゴウ様の呪いを恐れて儀式を中断しようとするも、ルールを破れば全員が呪い殺されてしまうと知る。
誰も予想していなかった、逃れられない恐怖の始まりだった。
「第5回ホラー・ミステリー小説大賞」奨励賞をいただきました!
他サイト様にも投稿しています。
百物語 厄災
嵐山ノキ
ホラー
怪談の百物語です。一話一話は長くありませんのでお好きなときにお読みください。渾身の仕掛けも盛り込んでおり、最後まで読むと驚くべき何かが提示されます。
小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。
ファムファタールの函庭
石田空
ホラー
都市伝説「ファムファタールの函庭」。最近ネットでなにかと噂になっている館の噂だ。
男性七人に女性がひとり。全員に指令書が配られ、書かれた指令をクリアしないと出られないという。
そして重要なのは、女性の心を勝ち取らないと、どの指令もクリアできないということ。
そんな都市伝説を右から左に受け流していた今時女子高生の美羽は、彼氏の翔太と一緒に噂のファムファタールの函庭に閉じ込められた挙げ句、見せしめに翔太を殺されてしまう。
残された六人の見知らぬ男性と一緒に閉じ込められた美羽に課せられた指令は──ゲームの主催者からの刺客を探し出すこと。
誰が味方か。誰が敵か。
逃げ出すことは不可能、七日間以内に指令をクリアしなくては死亡。
美羽はファムファタールとなってゲームをコントロールできるのか、はたまた誰かに利用されてしまうのか。
ゲームスタート。
*サイトより転載になります。
*各種残酷描写、反社会描写があります。それらを増長推奨する意図は一切ございませんので、自己責任でお願いします。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる