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惨痛 2 ※暴力描写あり/レ〇プを連想させる表現があります
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どこの学校へ行っても、必ず一人はいる素行不良の問題児。
勿論、悠の通う学校にも漏れなくそれに該当する生徒が数名おり、その中でも厄介だったのは、剣道部に籍を置く、高梨 翔と言う男だ。
暴力沙汰を頻繁に起こし、お世辞にも素行が良いとは言えない彼の名は、剣道部員でなくとも知っている。
けれど高梨は、剣道の腕も良いようで、それなりに部でも貢献をしていたお陰か、今のところ重い処罰は下されておらず、そのせいもあって、素行不良は日を追うごとにエスカレートして行くばかりだった。
とは言え、剣道部に入らなければ余程の事がない限りそんな男と関わり合いになる事はないだろうと、さして気にも留めずにいた悠だったが、まさか、それが意外な形で自分と関わることになるとは、思いもしなかった。
「悠、オレ、剣道部に入ったんだ!」
今まで色々な運動部に勧誘されては断っていた伊織が、初めて全力で取り組み始めたと言うそれが、まさにあの素行不良の高梨が所属している部活であり、どことなく一抹の不安を覚えながらも楽しそうに練習の事を話す伊織に、まさか止めておけなどと言えるはずもなく、ただ笑って、応援するよと言ったのは三ケ月程前だ。
元々要領が良かったのか才能があったのか、伊織がレギュラー入り目前だと聞いたのは、入部してから間もなくの事。
意外な才能を開花させた伊織は、現在のレギュラーにとって脅威であり、また、彼よりも長い時間部へ所属し努力し続けて上を目指している人間にとって嫉妬の対象になってしまうのではと言う悠の悪い予感は見事的中し、現在、その矛先がこちらにまで向けられようとしている、最悪の状況だった。
静まり返った図書室には似つかわしくないその姿に、つい先程まで読書や自習に勤しんでいた生徒達の姿は瞬く間に消え、その場に残さたのは、返却された本の整理をする悠と、前述にある高梨の二人だけだ。
「アンタが、伊織クンの言ってた彼方 悠?」
値踏みするかのように不躾な目でこちらの様子を窺う高梨の言葉に、悠が作業する手を止める事なく肯定の言葉を返すと、その反応が面白くなかったのか、彼は挑発するように悠が整理し積み上げていた本を床に払い落とした。
どさりと言う重い音と僅かな埃を舞い上げたそれに視線を落とし、けれどあまりにも安っぽいこの挑発に乗れば、それこそ目の前の男の思う壺だと考えた悠は、特に何を言う訳でもなく、また、決して視線を合わせる事も無く、床に散らばる本を拾い集めるべく手を伸ばした所で、それは本に届く直前、薄汚れた靴底に踏みつけられた。
容赦なく踏みつけられる右手の痛みに眉を顰め、それでも相手をわざわざ喜ばせるような声だけは絶対に出すまいと、歯を食いしばる。
何が目的かは解らないけれど、下手に反応して隙を見せてしまえばこの状況から逃れる事も難しくなる上に、最悪、伊織にまで危害が加えられ兼ねない。
それだけは回避しなければと、足に圧迫され徐々に色を変えて行く指先を見つめた。
「伊織クン、レギュラーの座、狙ってるんだってなァ」
「……レギュラー目指してる奴なんて、伊織の他にもたくさんいるだろ」
「気に入らねーんだよなァ……、入って間もねー奴が、大口叩いてんの」
伊織が剣道部に入部し、その才能と努力を認められはじめていたのは知っていたし、更に上を目指してレギュラー入りを果たすのだと、楽しそうに話しているのも聞いていた。
もしもこのまま伊織がレギュラーになったとして、異例な速さでレギュラー入りを果たした彼を妬まない人間など、出ないわけがないのだ。
伊織がレギュラーになると言うことは、現在のレギュラーから外れる人間も出てくると言うことになるのだから、それを良しとしない人間も中にはいるはずだ。
まるで落ちているゴミを足で弄んでいるかのように、悠の手を何度も踏みつけ床に擦り付けている高梨もまた、その内の一人なのかも知れない。
行儀の悪い足から解放された右手を即座に引っ込めて、左手でかばうようにさすっていれば、薄鈍色の髪が先程よりもわずかに距離を詰めていることに気がつき、さり気なく一歩後ろへ足を引くと、獰猛な動物がまるで獲物を定めたかのようにギラついた目が、悠を容赦なく射抜いた。
「……それで、俺に何の用?」
その視線から逃げるように、平静を装って机に残っていた本を手に取り棚へ戻す作業を再開すれば、すぐ背後に人の気配を感じ、思わず身を引いたところでそれをさせまいと言わんばかりに屈強な腕が悠の右腕を拘束して締め上げ、あまりの痛みにたまらずうめき声が漏れる。
「伊織クンが、随分大事にしてる親友がいるって聞いて、俺も是非、オトモダチになりたいと思ってさァ」
「だったらっ……、そのオトモダチの作り方、勉強してから出直して来いよ」
こんな乱暴な事をされて、誰がトモダチになんてなりたいと思うのだと続ければ、
「いいねェ、そう言う強気な態度。……這い蹲らせて泣かせてやりたくなる」
月並みな安っぽい台詞と右腕を締める力が更に強くなり、先程とは比べ物にならない痛みに息を詰まらせたような声が上がる。
「人のモノを盗るって、背徳感もあって最高なんだよなァ」
「そう言うの、ゲスって言うんだ……っ、覚えておけよ」
茶化すように吐かれた言葉に負けじと答え、挑むように高梨を睨みつけると、彼は鼻で小さく哂って悠を拘束する腕を放し、突然の解放によって悠がよろけたところで間髪入れずに背を蹴った。
当然、後ろから不意打ちで蹴られた悠が避けることなど出来るはずも無く、床に倒れる際に辛うじて受身を取れたのが奇蹟だと、そう考えた直後、今度は腹部に強い一撃を受け、襲ってくる嘔吐感に思わず口元を押さえ込んでいれば、乱暴に髪を掴まれ引き上げられる。
ぷつりと頼りないつなぎ目から、いくつか引き千切れて行く髪の悲鳴が聞こえた。
「へぇ……、モデルのオトモダチってだけあって、顔は綺麗なんだなァ……、まあ、悪くねー」
痛みに歪む視界に無理やり映り込んで来る、高梨の獣のような視線から逃れるべく抵抗を試みると、それに気を悪くしたのか、彼は掴んでいた悠の髪を乱暴に振り払い、上手く受身が取れなかった悠の耳に鈍い音が響くと同時に強い衝撃が脳を揺らした。
意識を飛ばしそうになったものの、それはすぐに高梨の手によって阻まれ、代わりにやって来たのは、喉元への圧迫感と気道が徐々に狭く閉塞されて行く度に頭へ血が上る感覚だった。
いっその事、意識を飛ばしてくれた方が楽だったのにと、ぐらぐら揺れる頭で考えた。
「あいつの女だって言う奴も散々盗って遊んでやったけど、腐る程周りに侍らせてる内の数人を盗ったくれーじゃ、つまんねーだろォ?」
無骨な指先が悠の喉仏を嬲るように押さえ込み、その反応を楽しんでいるのか少しずつ圧迫を始めれば、肺へ取り込まれる空気が浅く、か細くなって行く。
命まで取られる事はないだろう……、けれど、確実に身の危険が迫っているのは明白で、逃れる為の抵抗をするべきだと解っていても、先程頭を強く打ったせいで朦朧とし始めている意識では、腕一本も動かす事がままならない。
喉を圧迫され、満足に酸素を取り入れる事が出来ずに自然と開く口元から零れるものは、決して言葉にはならない乾いた音ばかりだ。
しかし、このまま黙って思い通りにされるつもりは無い。
この男の事だ、抵抗もせずに悠がねじ伏せられたとあらば、伊織をより挑発する為に、話を事実を誇張させるだろう。
せっかく伊織が夢中になれる物を見つけた所なのに、こんな事でその邪魔をする訳には行かないのだ。
……とは言うものの、自由の利かない身体で抵抗など出来るはずも無く、無論、出来たところで形勢逆転などあり得ないことは承知している。
故に、唯一、せめてもの抵抗の表れとして出来たのは、目の前でこちらを見下ろす顔に唾を吐きかける事だけだった。
悠の思いもよらない反撃に高梨の動きが止まり、ざまあみろと哂ってやれば、見事に彼のプライドにかすり傷でもつけたのか、先程入った蹴りとは比べ物にならない力で振り下ろされた拳が腹部に入り、言い表せない強い衝撃と痛みに息が詰まる。
なんとか浅く短い呼吸をする事は出来るものの、ダメージを受けた内蔵が痛みを訴える度に身体が痙攣を起こした。
「顔はカンベンしてやるよ。流石に汚ねーツラ見ながらじゃ、俺が萎える」
吐きかけられた唾を手の甲で拭う高梨の言葉は、この後自分の身に何が起こるのかを容易に想像させ、今まで感じていたものとはまた違う恐怖心が湧き上がる。
これから始まるだろう、屈辱に満ちた時間が一体どれくらい続くのか。
「これ以上暴れんなよ。痛ェ思いすんのはアンタだからな」
そう言うのが好みなら好きにしろよ。
悪意を持つ舌がべろりと耳を這う感触は酷く不快で、生々しかった。
どこの学校へ行っても、必ず一人はいる素行不良の問題児。
勿論、悠の通う学校にも漏れなくそれに該当する生徒が数名おり、その中でも厄介だったのは、剣道部に籍を置く、高梨 翔と言う男だ。
暴力沙汰を頻繁に起こし、お世辞にも素行が良いとは言えない彼の名は、剣道部員でなくとも知っている。
けれど高梨は、剣道の腕も良いようで、それなりに部でも貢献をしていたお陰か、今のところ重い処罰は下されておらず、そのせいもあって、素行不良は日を追うごとにエスカレートして行くばかりだった。
とは言え、剣道部に入らなければ余程の事がない限りそんな男と関わり合いになる事はないだろうと、さして気にも留めずにいた悠だったが、まさか、それが意外な形で自分と関わることになるとは、思いもしなかった。
「悠、オレ、剣道部に入ったんだ!」
今まで色々な運動部に勧誘されては断っていた伊織が、初めて全力で取り組み始めたと言うそれが、まさにあの素行不良の高梨が所属している部活であり、どことなく一抹の不安を覚えながらも楽しそうに練習の事を話す伊織に、まさか止めておけなどと言えるはずもなく、ただ笑って、応援するよと言ったのは三ケ月程前だ。
元々要領が良かったのか才能があったのか、伊織がレギュラー入り目前だと聞いたのは、入部してから間もなくの事。
意外な才能を開花させた伊織は、現在のレギュラーにとって脅威であり、また、彼よりも長い時間部へ所属し努力し続けて上を目指している人間にとって嫉妬の対象になってしまうのではと言う悠の悪い予感は見事的中し、現在、その矛先がこちらにまで向けられようとしている、最悪の状況だった。
静まり返った図書室には似つかわしくないその姿に、つい先程まで読書や自習に勤しんでいた生徒達の姿は瞬く間に消え、その場に残さたのは、返却された本の整理をする悠と、前述にある高梨の二人だけだ。
「アンタが、伊織クンの言ってた彼方 悠?」
値踏みするかのように不躾な目でこちらの様子を窺う高梨の言葉に、悠が作業する手を止める事なく肯定の言葉を返すと、その反応が面白くなかったのか、彼は挑発するように悠が整理し積み上げていた本を床に払い落とした。
どさりと言う重い音と僅かな埃を舞い上げたそれに視線を落とし、けれどあまりにも安っぽいこの挑発に乗れば、それこそ目の前の男の思う壺だと考えた悠は、特に何を言う訳でもなく、また、決して視線を合わせる事も無く、床に散らばる本を拾い集めるべく手を伸ばした所で、それは本に届く直前、薄汚れた靴底に踏みつけられた。
容赦なく踏みつけられる右手の痛みに眉を顰め、それでも相手をわざわざ喜ばせるような声だけは絶対に出すまいと、歯を食いしばる。
何が目的かは解らないけれど、下手に反応して隙を見せてしまえばこの状況から逃れる事も難しくなる上に、最悪、伊織にまで危害が加えられ兼ねない。
それだけは回避しなければと、足に圧迫され徐々に色を変えて行く指先を見つめた。
「伊織クン、レギュラーの座、狙ってるんだってなァ」
「……レギュラー目指してる奴なんて、伊織の他にもたくさんいるだろ」
「気に入らねーんだよなァ……、入って間もねー奴が、大口叩いてんの」
伊織が剣道部に入部し、その才能と努力を認められはじめていたのは知っていたし、更に上を目指してレギュラー入りを果たすのだと、楽しそうに話しているのも聞いていた。
もしもこのまま伊織がレギュラーになったとして、異例な速さでレギュラー入りを果たした彼を妬まない人間など、出ないわけがないのだ。
伊織がレギュラーになると言うことは、現在のレギュラーから外れる人間も出てくると言うことになるのだから、それを良しとしない人間も中にはいるはずだ。
まるで落ちているゴミを足で弄んでいるかのように、悠の手を何度も踏みつけ床に擦り付けている高梨もまた、その内の一人なのかも知れない。
行儀の悪い足から解放された右手を即座に引っ込めて、左手でかばうようにさすっていれば、薄鈍色の髪が先程よりもわずかに距離を詰めていることに気がつき、さり気なく一歩後ろへ足を引くと、獰猛な動物がまるで獲物を定めたかのようにギラついた目が、悠を容赦なく射抜いた。
「……それで、俺に何の用?」
その視線から逃げるように、平静を装って机に残っていた本を手に取り棚へ戻す作業を再開すれば、すぐ背後に人の気配を感じ、思わず身を引いたところでそれをさせまいと言わんばかりに屈強な腕が悠の右腕を拘束して締め上げ、あまりの痛みにたまらずうめき声が漏れる。
「伊織クンが、随分大事にしてる親友がいるって聞いて、俺も是非、オトモダチになりたいと思ってさァ」
「だったらっ……、そのオトモダチの作り方、勉強してから出直して来いよ」
こんな乱暴な事をされて、誰がトモダチになんてなりたいと思うのだと続ければ、
「いいねェ、そう言う強気な態度。……這い蹲らせて泣かせてやりたくなる」
月並みな安っぽい台詞と右腕を締める力が更に強くなり、先程とは比べ物にならない痛みに息を詰まらせたような声が上がる。
「人のモノを盗るって、背徳感もあって最高なんだよなァ」
「そう言うの、ゲスって言うんだ……っ、覚えておけよ」
茶化すように吐かれた言葉に負けじと答え、挑むように高梨を睨みつけると、彼は鼻で小さく哂って悠を拘束する腕を放し、突然の解放によって悠がよろけたところで間髪入れずに背を蹴った。
当然、後ろから不意打ちで蹴られた悠が避けることなど出来るはずも無く、床に倒れる際に辛うじて受身を取れたのが奇蹟だと、そう考えた直後、今度は腹部に強い一撃を受け、襲ってくる嘔吐感に思わず口元を押さえ込んでいれば、乱暴に髪を掴まれ引き上げられる。
ぷつりと頼りないつなぎ目から、いくつか引き千切れて行く髪の悲鳴が聞こえた。
「へぇ……、モデルのオトモダチってだけあって、顔は綺麗なんだなァ……、まあ、悪くねー」
痛みに歪む視界に無理やり映り込んで来る、高梨の獣のような視線から逃れるべく抵抗を試みると、それに気を悪くしたのか、彼は掴んでいた悠の髪を乱暴に振り払い、上手く受身が取れなかった悠の耳に鈍い音が響くと同時に強い衝撃が脳を揺らした。
意識を飛ばしそうになったものの、それはすぐに高梨の手によって阻まれ、代わりにやって来たのは、喉元への圧迫感と気道が徐々に狭く閉塞されて行く度に頭へ血が上る感覚だった。
いっその事、意識を飛ばしてくれた方が楽だったのにと、ぐらぐら揺れる頭で考えた。
「あいつの女だって言う奴も散々盗って遊んでやったけど、腐る程周りに侍らせてる内の数人を盗ったくれーじゃ、つまんねーだろォ?」
無骨な指先が悠の喉仏を嬲るように押さえ込み、その反応を楽しんでいるのか少しずつ圧迫を始めれば、肺へ取り込まれる空気が浅く、か細くなって行く。
命まで取られる事はないだろう……、けれど、確実に身の危険が迫っているのは明白で、逃れる為の抵抗をするべきだと解っていても、先程頭を強く打ったせいで朦朧とし始めている意識では、腕一本も動かす事がままならない。
喉を圧迫され、満足に酸素を取り入れる事が出来ずに自然と開く口元から零れるものは、決して言葉にはならない乾いた音ばかりだ。
しかし、このまま黙って思い通りにされるつもりは無い。
この男の事だ、抵抗もせずに悠がねじ伏せられたとあらば、伊織をより挑発する為に、話を事実を誇張させるだろう。
せっかく伊織が夢中になれる物を見つけた所なのに、こんな事でその邪魔をする訳には行かないのだ。
……とは言うものの、自由の利かない身体で抵抗など出来るはずも無く、無論、出来たところで形勢逆転などあり得ないことは承知している。
故に、唯一、せめてもの抵抗の表れとして出来たのは、目の前でこちらを見下ろす顔に唾を吐きかける事だけだった。
悠の思いもよらない反撃に高梨の動きが止まり、ざまあみろと哂ってやれば、見事に彼のプライドにかすり傷でもつけたのか、先程入った蹴りとは比べ物にならない力で振り下ろされた拳が腹部に入り、言い表せない強い衝撃と痛みに息が詰まる。
なんとか浅く短い呼吸をする事は出来るものの、ダメージを受けた内蔵が痛みを訴える度に身体が痙攣を起こした。
「顔はカンベンしてやるよ。流石に汚ねーツラ見ながらじゃ、俺が萎える」
吐きかけられた唾を手の甲で拭う高梨の言葉は、この後自分の身に何が起こるのかを容易に想像させ、今まで感じていたものとはまた違う恐怖心が湧き上がる。
これから始まるだろう、屈辱に満ちた時間が一体どれくらい続くのか。
「これ以上暴れんなよ。痛ェ思いすんのはアンタだからな」
そう言うのが好みなら好きにしろよ。
悪意を持つ舌がべろりと耳を這う感触は酷く不快で、生々しかった。
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