義務婚と牢獄

魔茶来

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アルバート

CASE:アンジェ③

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 アンジェを助ける方法があるなんて私には思いつきもしない。

 ただ、イリアの様子がおかしい。
 それは、こんな状況なのにイリアは楽しそうだった。

「なんか楽しそうね、イリア?こんな時に何がそんなに楽しいの?」

 やっぱりなんかイリアは楽しそうだった、薄笑いとともに答える。
「私が歳の離れた男と結婚することを承諾したは何故だと思う?」

「分からないわ?
 大勢の召使や大きな家に住めるから?
 もちろん結婚したらお金も沢山手に入るでしょうけど?
 そうなの?やっぱりお金?」

 私の答えが予想通りなのか、なんか薄笑いを湛えながらイリアが答える。
「違うわね。
 権力を持つためよ」

「権力を持つ?」

「そう、今はそのチャンスなのよ、楽しい気持ちにもなるわ」
 
 やっぱり、私にはイリアの言っている意味が分からなかった。

「それで公園の中に入ってどうするの?
 きっと既にサルカ君はアンジェの家についているし、もしかすると侍従達に捕まっているかもしれない」 

「そんな訳はないわよ。
 まともに考えてサルカ君が直接アンジェの家に行くと思う?」

「だって、アンジェに会いに行ったんじゃないの?」

「アンジェはたぶん養女に出されるまで閉じ込められているし、誰にも会わせることは無いわよ」

「そんな・・・」

「そのくらい大変なことになったということね。
 その上サルカ君が来たからと言って、アンジェに合わせるなんてことしたらハプサル家は破滅だからね」

 イリアはそのまま公園の奥にある備品置き場の小屋に入ろうとした。
「どうするの?」

「やっぱり、居るわ」
 イリアは小声でそう言うと耳を澄ませた。

 私も耳を澄ませると、備品小屋からゴソゴソと音がしていることに気が付いた。
「えっ?なにか居るの・・・」

 その時イリアが私の口をふさぐようにした。
「サルカ君よ・・・、入るわよ」

 イリアは小声でそう言うと小屋の扉を開けた。
 小屋の中では、私達が扉を開けたというのにサルカ君はそのことに気が付いていなかった。
 それほど夢中にサルカ君が必死になって何かのカギを開けようとしていた。

「サルカ君、み~~つけ!!」
 イリアが少し大きな声でそう言うとサルカ君は驚いたようにこっちを振り向いた。

「えっ、イリア!!」
 驚いたサルカ君は声を上げたが、直ぐに口をふさいだ。

「やっぱりね、アンジェの所に行くの?」

 サルカ君は黙っていた。

 サルカ君を見ながら、イリアが意地悪そうに語りかけた。
「どうしたの、喋れなくなったの?
 助けてあげましょうか? 
 私ならその鍵を開けることも出来るのよ」

「本当か?
 開けられるのか?
 開けられるのであれば開けてくれ」

「ただね、あなたがアンジェを連れて逃げる手伝いはしないわよ。
 それは二人を不幸にするから」

「手伝ってくれない?
 なぜ?
 もう僕たちは、どうすることも出来ないんだ。
 このままでは彼女は・・・
 二人で逃げるだけだ。」

「そうね、あの変態の所に養女に行って二年も生きていた娘は居ないわね」

「えっ、そうなの?
 でも、そんな馬鹿なことがある訳ないでしょ・・・」
 二年も生きた娘が居ない?その言葉は衝撃的だった思わず声が出た。

「そうよ、そういう契約で養女に出すことを承認したから大きな契約金が手に入るのよ」

「酷い・・・、そんなことアンジェが可哀想・・・」
 そんな酷いことが本当にあるなんて、アンジェのことを思うと目が潤んでしまった。
 サルカ君は口びるをかみしめたが、直ぐにイリアの顔を見ると土下座するように頭を下げた。

「頼む、鍵を開けられるなら開けてくれ。お願いだ」
 サルカ君は少し涙声になりそうな声で必死に声を絞り出していた。

「だめよ。
 あなたをアンジェには会わせることは出来ないのよ。
 あなた達、二人の家はそう言う関係になってしまった。
 家同士がそういう関係になった以上諦めなさい」

「でも、頼む・・・、そうしないとアンジェ・・・アンジェの一生が終わってしまう・・・
 僕は、貴族の階級を捨てても二人で暮らしていく覚悟はある」
 
「そうよね、そのくらいの覚悟はいるわね。
 でもそれでは何も解決しないし、あなた達二人は幸せとは程遠いことになるわ。
 あなたアンジェの兄弟や両親、親戚のことを考えている?
 たぶんあなたがアンジェと駆け落ちをすると、格下のアンジェの家族や親戚は不幸な目に合うわよ。
 アンジェはそんなことを望むと思う?

「それは・・・
 でも、アンジェを助けたいんだ・・・」

「サルカ君って本当に子供ね・・・
 修復不可能な状況になっている今の状況で自分達のことだけ考えていてはだめ!!
 それは大きな不幸を招くことになるのよ。
 どう、私がアンジェの命を助けてあげようか?」

「えっ?命を助けるって?そんな方法があるの?」

「でも、二人の関係は元には戻せないわ。
 どちらかと言うと新たに人生をやり直すことに近いと思うわ。
 幸せになれるかどうかはアンジェしだいだけどね。
 それでも良いなら助けてあげるわ」

「本当か、本当にアンジェは助かるのか?」

「もちろん助けるわよ、ただしあなたは私に貸しがひとつできることになるわね」

「構わない、本当にアンジェが助かるなら、なんでも言ってくれ、たとえ・・・」

「そう、それなら助けてあげるわ」 

 イリアは不敵な笑いを浮かべるとカギに手を掛けた。
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