「ハーブティーはいかがですか?」聖痕が利き腕に現れなかった聖女は、役立たずと言われながらも世界を救う。

魔茶来

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お嬢様とシェリル、ユリアナと異世界のカーシャ

ユリアナとシェリル(2)

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 ユリアナは右手を天に掲げ精霊獣を呼ぶ。

 やがて空を優雅に泳ぐマンタのような精霊獣がやって来た。
「みんな、お嬢様とマリアス様をお願いいたします」

「では、シェリル姫行きましょうか」

 シェリル姫は少し元気がなかった。
「ユリアナ頼んだ……
 目的地はシャムカリン半島の近くのカルバモス卿の城だそうだ」

 ユリアナは心配そうに話しかけた。
「もし人違いだと大事になってしまいますよ、やはり警備隊に任せた方が良くありませんか?」

「ダメだ……
 あの時、あの男の記憶の欠片を見たんだ……」

「『異教徒狩り』?なぜそんなことをする?
 その上、奴らは男の両親を殺めたあやめた……
 どうして異教徒だというだけで、人を殺めあやめることまで出来るんだろう……」

 シェリル姫は少し落ち着いてから
「紋章はクリシェが見せてくれた、間違いないカルバモス卿のものだ
 もし男の妻が捕まっているなら連れ戻す」

「それと記憶の中で奴らは尊厳薬と言ってた、まただ……あんなものを……」

 ユリアナはその言葉に強く反応した。
「また、尊厳薬……」

 元気の無いシェリルはピアールを演奏し始めた。
 その音色は悲しい音色だった。

 曲演奏し終わるとピアールを持ち立ち上がった。
 そして聖なる槍サーマリアと叫び、槍を杖のようにして立ったまま下界の様子を見ていた。

「ここから見ると町はなんても小さいのだろう、人はもっと小さい」

「シェリル姫、それは聖なる槍ですね、槍に選ばれたのですか?」

「そうだ、選ばれたというより助けられた、もう何度もこの聖なる槍には助けられた」

「姫様、それでも”聖戦騎”として選ばれたということですよ
 そう言えば防御結界が全く張れていませんが、今結界は張っていないのですか?」

「ユリアナ、防御結界ってなんだ?」

「姫様……知らないんですか?」

「私は知らない……」

「え~っ?」

「今助けられたと言ってましたよね、防御結界無しで戦ってきたのですか?
 まさか真剣持った相手にですか?
 ちょっと待ってください、あぁ・・なんか眩暈がしてきました……」

「大丈夫かユリアナ?」

 流石にゾディアルで3日掛かる道のりだった、着いた時には日はすっかり落ちていた。

 その間、ユリアナはシェリルに精霊獣の上で結界に関してのレクチャーをしていた。
 シェリルは真剣に聞いていたので、時間はあっという間だったようだ。

 精霊獣は闇に溶け込むように暗い色になっており、下からは発見しにくいだろう。

 その城は上から見ると要塞のようであった、
 城壁は2重になっており中央に四角い建物らしきものが2つ繋がって立っていた。
 そして警備兵らしきものが、頻繁に巡回しているようだった。

「大きさの割に警備が厳重でアンバランスですね?
 多分地下にも施設があるんだと思います
 本当に要塞のような城ですね……」

「シェリル姫、これからどうなさるんですか?」

「虎穴に入らずんば虎子を得ずだ!!」

「えっ?、忍び込むのですか?
 では出入口を探しましょう、でもあの警戒ですから難しいかもしれません」

「簡単さ……正面から入って行けば良いんだ」

「まずは聖なる槍サーマリアはピアールにしてと……」
 シェリルは聖なる槍をピアールにしてベルトに差した。

 それを見たユリアナは聖剣グラウザーを短剣にした。

「これならどこから見ても怪しくは無いだろう……」

「シェリル姫、この砂漠地帯でこれはチョット無防備過ぎだと思いますよ?」

 シェリル姫は城の前まで来ると大きな声を掛ける

「頼もう!!、頼もう!!
 我が名はソルア国第二王女シェリルである

 証拠はこの胸の紋章だ!!

 訳有って乗り物を無くしたのだ
 今晩一夜の宿を請う」

 この時間の訪問で怪しくないと言えばウソだが、流石に王女と言うのであれば無視できない。
 門番は留守役に話をし、留守役はカルバモス卿へ連絡を取った。

 カルバモス卿は留守役に指示をした。
「紋章と顔を確認した、それと横に居るのはユリアナだ間違いない本物のシェリル姫だ
 向こうからチャンスがやって来るとは、ソルア国王に恩を売ることが出来るのだ、丁重にお泊めするのだ」

 留守役は直ぐに二人を応接室に通した。
「急なことなので、今お泊りのお部屋を準備しております
 準備できましたらお連れ致しますので、しばらくこちらでお待ちください」

 広い応接に二人残された。

 ユリアナが右のロンググローブを外す。
 精霊痕と聖痕が融合し複合化した聖痕がそこにはあった。

 腕を床に付ける

「ユリアナ、何をしているの?」

「この辺りに居る全ての精霊達に協力をお願いして情報を得ているのです」

 しばらくすると何かに話しかけているようにユリアナが話し始めた。
「そう、ありがとう」

 そしてシェリルの方を見ると
「上から見た時に見た奥の建物に聖女達が居ると報告がありました
 でも奥の建物ですね……、今から奥の建物に潜り込む方法を考えましょう」

「上から見た時に繋がっていただろう?」

「でもシェリル姫様、2つの違う建物のなので、通常外壁は2mくらいの外壁石がありますから、こっちらの外壁とあちらの外壁ということで2つあ理ますから、単純にかんがえても4mの石の壁があります、どうやっても無理だと思います……」

「簡単だ、破壊するぞ……」

「4mは無茶ですよ……シェリル姫流石に時間が掛かります……」

「簡単に人を殺めあやめるような奴らを許せないんだ!!」

 シェリルは『聖なる槍サーマリア』と叫び、ピアールを聖なる槍に変えた。
 次に『ロングタクト』を叫びロングタクトとし、前回やったように聖痕に力を溜めた。

「ユリアナは私が聖女であると知っているから安心して聖痕の力を使える」

 ユリアナは不思議そうな顔をして暢気に聞く……
「シェリル姫、聖痕の力って?何か聖痕で出来ることが分かったんですか?」

 やがて「セイントバイオレンス」そうシェリルが叫ぶとロングタクトに聖なる光がチャージされ始める。

「えっ、シェリル姫、それはチョット危険です・・・、いや、あの・・・お止め下さい……」

 その声も空しくシェリルは「セントバイオレンス・シュート」というと壁が巨大な光に包まれたいった。

 光が収まると大きな穴が開いて奥の建物への通路が出来ていた。
 4mの厚みの石の壁は一瞬で蒸発していた。

 ユリアナはその威力に茫然としていた。
 それは威力だけでは無かった、こんな大きな力を使った後もシェリルは息一つ乱れていなかった。
(シェリル姫は、こんな力を連続で出すことが出来るの?
 そう言えば前のヤバトガの成体10体以上を倒した光と言うのはこの光……)

「ユリアナ行くぞ」
 そう言うとシェリルは隣の建物に移動した。
 廊下側の窓から見た建物の中は大きな広間のようであり、実験装置のようなものが並んださながら工場だった。

「シェリル姫様、あれは……」

 指をさす方向に多くの聖女達が足枷を付けられ、強制的に「尊厳薬」を作らされていた……
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