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成人編

06.真奈美さん

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 翌日から今やっているバイトもあるので週2日バイトに入った。

 お客さんの質問に答えながら色々なことを覚え、そしてお客さんの質問で分からないこと(つまり自分の分からないこと)は山城先輩に聞いた。

 先日学校の関係者の中で海外での活動をした人の講演会が学校で開催され参加した。
 海外経験者は海外での経験は人生に大きな意義があるという話で締めくくる。
 やっぱり海外には行きたい、必ず行くぞ!!

 海外での話に焚火をしたとかサバイバル術が必要そうな話もあった。
 そこで帰りがけに「サバイバル術入門」とか「アウトドア飯」と言った本を買って帰った。
 こういう類の本は、私には縁がないと思っていたが読んでみると案外はまった。

 森の中で乾いた枝が有れば、それを薪にして焚火をする。
 そしてその火でお茶を入れて食事が作れる……

「炊飯器が無くてもメスティンを使うとご飯が炊けるんだ!!
 それも、固形燃料1つあれば一人分は簡単に作れるの!!」

 更にアウトドア飯という料理本を見ながら再度独り言が溢れていく。
「えっ、こんな美味しそうなおかずもそれメスティンで可能なの、メスティン料理って多彩!!」

 そう言う事前知識を入れながら、待ちに待った一週間後、真奈美さんと一緒にキャンプに行った。

 近くのキャンプ場に行ってテントを張ってゆっくりとした時間の経過を楽しんだ。
 ただ、初心者の私には本で読んだくらいでは焚火はうまくできなかった。
 最後は「うまく行きません、真奈美先生お願いします」と丸投げになった。

 4つに折れる着火剤は使ってしまったので心配していたが?
 真奈美さんは、着火のための新聞紙を丸め、小さい目の小枝、その上に空気が通るように薪を組んだ。
 新聞紙にマッチ一本で火をつけると消えないように空気を送りながら焚火の炎を大きくしていった。

 見事な焚火を目の前にして「マッチ一本火事の元」そんなことを思い出した。

 しかし、さっきあんなに頑張ったのに火が着かなかった私は少し落ち込んでいた。

 そして、待望の料理を作ることになった。
 小型のバーナーで料理を作りながら、あの本に有ったように固形燃料を使いメスティンでご飯を炊く。
 固形燃料の火が消えるとメスティンを保温するように布を巻き裏向けて蒸らすらしい?
 
 沸かしたお湯でお茶を準備し、小さなテーブルに料理とごはんが並んで、小さな椅子座り焚火を眺めながらゆっくりした時間の中でご飯を食べた。

「もっと自力でいろいろ出来るようになりたい」そう呟くと真奈美さんは「大丈夫何度か経験すれば大体できるようになるわよ」と言ってくれた。

 真奈美さんは立ち上がって私の側に来ると「ただね……」そう言うと。

 いきなり私を羽交い絞めしての胸を揉んできた。

「キャー!!」と悲鳴を上げてしまった。

「やっぱりね、無防備過ぎるわ、少し護身術を覚えたほうが良いわね
 女の子だけだと何かと危ないからね」

 なるほど、そう言うことも考えておかなければならないか……しかしいきなり胸揉むか……

 真奈美さんはそう言うとその場で簡単な護身術を教えてくれて、後日護身術を教えてくれる道場が有ると言うので連れて行ってくれるらしい。

 ただ、あの時、真奈美さんは小さな声で「Cカップね、大きいな……」と呟いたのは聞き漏らしていない。
 そう言う趣味では無いと言うことだから安心はしたけどね……

 次の日は学校に行って、その後バイトに行った。

 この店では、数か月に一回実際のキャンプ体験をやっているのだが、それにも参加することにした。
 キャンプ体験もさせてもらえて、それが仕事だなんて素晴らしいバイトだ!!
 こういう経験は回数をこなすことが大事だと思う。

 また、この体験キャンプに参加することは、逆に店長からもバイトにも拘らず日曜や祭日であるのに、出てくれて助かると言われた。

 そして、私が参加できることで開催回数は1月に一回に出来ると言うので大いに協力することにした。

 今ではそんなことをしている内にこちらが本業(バイト)となり週5日通うようになっていた。
 体験キャンプ以外も店主催のウォーキングや山登り体験にも積極的に参加し、体力の向上に努めた。

 本当に出会いとは不思議なものだ、私には貴重なありがたい体験だった。

 そうしている内に数か月がたっていた。
 夏休みが始まりバイト時間も長くできるため充実した夏休みだった。

 いつもの親子が買い物に来ていた。

 お嬢さんの方が質問してきた。
「あの、スノピのグランドシートを見せてもらえませんか?」

そう言われて「ハイ、分かりました」と返事するとグランドシートを棚の上から下した。

「そうそう、このセットはマットと一緒になっていてお安くなっていますが如何ですか?」

「いいわね、斎藤教授どう思いますか?」

 彼女はそう叫んだ、斎藤教授?
 お父さんだと思っていた人は教授らしい、しれも斎藤教授……
 その教授と呼ばれる人を観察していると、なんと背広に付いている社章?が……
 えっ校章じゃないの?うち学校の教授なの…、もしかして斎藤教授というとマエストロ…

 そんなはずはないと否定したかったが…よく考えたら彼らが来る可能性は高いのだからおかしなことでは無い。

 その教授と呼ばれた人は愛想なくこたえる。
「予算内であれば瑠璃ちゃんに任せるよ……、それよりこの頃ポップアップテントが増えたよな……」

 瑠璃ちゃん?という名の人は教授に対して一言「斎藤教授、ではこのグランドシートを購入します、カードを貸してください!!」というとキャッシャーに向かった。

 瑠璃ちゃんというのは聞いたことが有る、裕也の話の中に出てくる助教だ。

 とりあえず、当たり障りなくなるべく目立たないようにこの場から消え去ろうと思った。
 そこで別の場所のお客さんに声を掛けに行くふりをするが、なんとマエストロ教授に声を掛けられた。

「サエラ君、このランタンを一度灯けてくれないか?」

 えっ、名前までバレてる?と思ったが名札を付けているのだから分かるわよね。

「はい、分かりました商品なので、こちらのサンプルでもよろしいですか?」

 そう言うとオイルをランタンに入れて火をつけた。

 ゆらゆら揺れる火が本当に美しく心を落ち着かせてくれる。

 だがマエストロ教授のその次に発した言葉に心臓が飛び出しそうになった。
「そうそう、サエラ君、最近北原君から連絡は有った?」

 えっ、なんで……
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