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成人編
03.祖父母
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アパートに戻ると暗い部屋の中、電気も点けないでコタツの中に寝ころんでいた。
いけない、そうだ今のままではいけない。
今振り返ると、世界のどこかで私を待っている動物がいると言う話だけで浮かれていたんじゃないだろうか?
行ってからのことも表面的なことを調べているに過ぎなかった。
母の話を思い出す。
「暑い国?寒い国?
言葉は?
何が主食なの?
食材直ぐに手に入るの?食べたことが有るものなの?
貨幣単位は?物価は?
一日暮らすのにいくらかかる?
奇麗な水なの?水には注意しなさいよ……」
あの日母が質問していたこと、少し調べればわかることだと思う。
そう簡単な質問ばかりだと思うが答えられなかった。
「そらぁお父さん怒るわな……」
そう呟きながら自分が情けなかった。
裕也のことが気にかかる、でも今は休学をするため両親との約束もあるのだろう単位の取得に必死だ。
私が弱音を吐くための連絡は避けようと思っている。
そう言えば今3回生、あの事件が有ったのも小学校3年生、そうだ6年の間の3年と言うのは何かあるのだろうか?
「おばあちゃん、また何か私に伝えようとしているの?」
もちろんそんなことは無いだろう、でもなんか3年つながりだったので、そう呟いてしまった。
春には4回生だ、6年の内の半分をここで暮らした。
まだ獣医への道の入り口である学校、それもまだ半分しか来ていない私だ。
「まだ半分か……来年の春に海外はやっぱり無理かな……」
実は獣医への道は結構ハードなのだ。
簡単ではない、野鳥だけの獣医などないから、それ以外の動物……いや生物全般のことを勉強するのだ。
基礎獣医学なんかは基礎でありながら生命の基礎から獣医関連の法律範囲までと広い……
獣医学は他にも病態獣医学、応用獣医学等々ある……
もちろん臨床獣医学なんかもあるのだから6年間は本当に学習と実習の組み合わせで結構ハードだ。
今の段階でも野鳥以外の動物たちのことも多く勉強させてもらった。
苦しいと言えば苦しいが、楽しかったのも事実だ。
思い出してしまうような強烈な体験の数々。
羊が突進して来るとか、馬の蹄鉄、牛の爪切りの練習やとか、強烈なのは牛の直腸検査とかもあった。
今思い出しても匂いや動物たちの肌触りや触覚が残っている。
そして笑いが出てしまうようなことも多かった。
しかし、最近将来の方向が少し曖昧になっていた。
だって、将来の夢が動物のお医者さんって言っても、実際の仕事?と言うところで現実が見えてくる。
意味合いから言えば”小動物臨床”つまり犬や猫を見ている獣医さんになるか?
それって個人で動物病院を経営すると言うことなのですが……先立つモノが必要なのだ。
最初は地道にどこかに就職という選択肢かな。
色んな動物と言うことで動物園、でも私立、公立とも獣医なりたてで雇ってもらえる可能性は低いような気がする。
今は”産業動物獣医師”になることを目指すか……
後3年の内に考えなければならない。
そんな時に海外の話だった、もしかすると別の何かが見えてくるかもしれないと思ったんだろう。
なんだろう、この虚脱感……
そう言えば4回生の後期から研究室に所属しなければならないのだが……
これは重要なことだと勝手に思い込むことにして、忙しいだろう裕也に聞いてみることにした。
(本当は声が聴きたいというのが本音だ)
「ごめんね電話して」
「いや、大丈夫やで俺もサエラの声が聴きたかったからな」
裕也はいつものように優しく、そして自分が属する研究室を推薦してくれた。
裕也は「マエストロ」と呼んでいるらしいが、そこの教授が少し変わっていて面白いらしい。
私も裕也の話の中にで出てくる研究室の話は知っていた。
特に教授と助教授のコンビは面白い人たちという印象がある。
本当はどんな人だろう楽しみが増えた、前期を乗り越えて後期には研究室の扉を叩こう!!
電話を切って、裕也の声を聴けて少しの幸福感からか、いつの間にか暗い部屋のコタツの中で眠りに落ちて行った。
~~~~~~
私は夢を見た。
小学3年生になっている私。
「あれ私小学生やったかな?」
前を見るとおばあちゃんが立っていた。
「学校で出来へん勉強は難しかったか?」
「難しいわ、誰も教えてくれへんし、勉強の仕方が合っているのかどうかも分かれへんかったわ、
それでもな、私は知りたいことを、いろいろな人に聞いて教えてもろて一生懸命に覚えて行ったんや、
そうやな、ホンマに大変やったわ、でも面白いとこもあったんや」
おばあちゃんは優しい顔で話しかけてくる。
「あんなぁサエラ、必要やったら、遠慮せんでもあの真珠は使って良いねんで」
なぜそんなことをおばあちゃんが言うのか分からなかったので、返す言葉がなかった。
すると、もう一人居ることに気が付いた。
「あれ!!、おじいちゃん」
なんとおじいちゃんが横にいた。
久しぶりに聞くおじいちゃんの声、その声は優しく私に語り掛けた。
「真珠は所詮 "物” やからな」
「そやけどな、その真珠と一緒に経験した思い出は心に残るんやで、
沢山の真珠と一緒に経験したキラキラした思い出がサエラの心の中にいっぱい残っているんや、
その中に、おじいちゃんとおばあちゃんの思い出もサエラの心の中に残っているやろ、
さぁから必要になったら心配せんと使こうて良いねんで」
そう言うと二人は消えて行った。
~~~~~~
そこまでで、私は目が覚めた。
目が覚めると、コタツの中だった。
変な夢だった。
「そうか、勉強するってそう言うことやったんや……
なんや、またいつのまにか受け身で教えてもらうのが勉強やと思い込んでいたわ」
そうか、今私の中には、世界のことを知りたいという欲望が溢れている。
あの時の出来事や勉強は、今の私、そう獣医になりたいという夢を私にくれたのだ。
今回の出来事も、何か将来に向けて大きな転換期であるということかもしれない。
「学校で教えてくれない勉強をするための真珠か……」
いけない、そうだ今のままではいけない。
今振り返ると、世界のどこかで私を待っている動物がいると言う話だけで浮かれていたんじゃないだろうか?
行ってからのことも表面的なことを調べているに過ぎなかった。
母の話を思い出す。
「暑い国?寒い国?
言葉は?
何が主食なの?
食材直ぐに手に入るの?食べたことが有るものなの?
貨幣単位は?物価は?
一日暮らすのにいくらかかる?
奇麗な水なの?水には注意しなさいよ……」
あの日母が質問していたこと、少し調べればわかることだと思う。
そう簡単な質問ばかりだと思うが答えられなかった。
「そらぁお父さん怒るわな……」
そう呟きながら自分が情けなかった。
裕也のことが気にかかる、でも今は休学をするため両親との約束もあるのだろう単位の取得に必死だ。
私が弱音を吐くための連絡は避けようと思っている。
そう言えば今3回生、あの事件が有ったのも小学校3年生、そうだ6年の間の3年と言うのは何かあるのだろうか?
「おばあちゃん、また何か私に伝えようとしているの?」
もちろんそんなことは無いだろう、でもなんか3年つながりだったので、そう呟いてしまった。
春には4回生だ、6年の内の半分をここで暮らした。
まだ獣医への道の入り口である学校、それもまだ半分しか来ていない私だ。
「まだ半分か……来年の春に海外はやっぱり無理かな……」
実は獣医への道は結構ハードなのだ。
簡単ではない、野鳥だけの獣医などないから、それ以外の動物……いや生物全般のことを勉強するのだ。
基礎獣医学なんかは基礎でありながら生命の基礎から獣医関連の法律範囲までと広い……
獣医学は他にも病態獣医学、応用獣医学等々ある……
もちろん臨床獣医学なんかもあるのだから6年間は本当に学習と実習の組み合わせで結構ハードだ。
今の段階でも野鳥以外の動物たちのことも多く勉強させてもらった。
苦しいと言えば苦しいが、楽しかったのも事実だ。
思い出してしまうような強烈な体験の数々。
羊が突進して来るとか、馬の蹄鉄、牛の爪切りの練習やとか、強烈なのは牛の直腸検査とかもあった。
今思い出しても匂いや動物たちの肌触りや触覚が残っている。
そして笑いが出てしまうようなことも多かった。
しかし、最近将来の方向が少し曖昧になっていた。
だって、将来の夢が動物のお医者さんって言っても、実際の仕事?と言うところで現実が見えてくる。
意味合いから言えば”小動物臨床”つまり犬や猫を見ている獣医さんになるか?
それって個人で動物病院を経営すると言うことなのですが……先立つモノが必要なのだ。
最初は地道にどこかに就職という選択肢かな。
色んな動物と言うことで動物園、でも私立、公立とも獣医なりたてで雇ってもらえる可能性は低いような気がする。
今は”産業動物獣医師”になることを目指すか……
後3年の内に考えなければならない。
そんな時に海外の話だった、もしかすると別の何かが見えてくるかもしれないと思ったんだろう。
なんだろう、この虚脱感……
そう言えば4回生の後期から研究室に所属しなければならないのだが……
これは重要なことだと勝手に思い込むことにして、忙しいだろう裕也に聞いてみることにした。
(本当は声が聴きたいというのが本音だ)
「ごめんね電話して」
「いや、大丈夫やで俺もサエラの声が聴きたかったからな」
裕也はいつものように優しく、そして自分が属する研究室を推薦してくれた。
裕也は「マエストロ」と呼んでいるらしいが、そこの教授が少し変わっていて面白いらしい。
私も裕也の話の中にで出てくる研究室の話は知っていた。
特に教授と助教授のコンビは面白い人たちという印象がある。
本当はどんな人だろう楽しみが増えた、前期を乗り越えて後期には研究室の扉を叩こう!!
電話を切って、裕也の声を聴けて少しの幸福感からか、いつの間にか暗い部屋のコタツの中で眠りに落ちて行った。
~~~~~~
私は夢を見た。
小学3年生になっている私。
「あれ私小学生やったかな?」
前を見るとおばあちゃんが立っていた。
「学校で出来へん勉強は難しかったか?」
「難しいわ、誰も教えてくれへんし、勉強の仕方が合っているのかどうかも分かれへんかったわ、
それでもな、私は知りたいことを、いろいろな人に聞いて教えてもろて一生懸命に覚えて行ったんや、
そうやな、ホンマに大変やったわ、でも面白いとこもあったんや」
おばあちゃんは優しい顔で話しかけてくる。
「あんなぁサエラ、必要やったら、遠慮せんでもあの真珠は使って良いねんで」
なぜそんなことをおばあちゃんが言うのか分からなかったので、返す言葉がなかった。
すると、もう一人居ることに気が付いた。
「あれ!!、おじいちゃん」
なんとおじいちゃんが横にいた。
久しぶりに聞くおじいちゃんの声、その声は優しく私に語り掛けた。
「真珠は所詮 "物” やからな」
「そやけどな、その真珠と一緒に経験した思い出は心に残るんやで、
沢山の真珠と一緒に経験したキラキラした思い出がサエラの心の中にいっぱい残っているんや、
その中に、おじいちゃんとおばあちゃんの思い出もサエラの心の中に残っているやろ、
さぁから必要になったら心配せんと使こうて良いねんで」
そう言うと二人は消えて行った。
~~~~~~
そこまでで、私は目が覚めた。
目が覚めると、コタツの中だった。
変な夢だった。
「そうか、勉強するってそう言うことやったんや……
なんや、またいつのまにか受け身で教えてもらうのが勉強やと思い込んでいたわ」
そうか、今私の中には、世界のことを知りたいという欲望が溢れている。
あの時の出来事や勉強は、今の私、そう獣医になりたいという夢を私にくれたのだ。
今回の出来事も、何か将来に向けて大きな転換期であるということかもしれない。
「学校で教えてくれない勉強をするための真珠か……」
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