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成人編
01.コハクチョウ達
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真珠の首風りをした女の子は大人になりました。
今は故郷に帰り大きな北の湖でコハクチョウを見ながら何かを思い佇んでいます。
ここから、物語の2幕が始まります。
------
今は大学も冬休み、ここに帰って来るのは久しぶりだ。
湖には多くのコハクチョウ達がいつもの様に佇み休んでいる。
いつもの風景に私は心が安らぐ。
今年も大鷲のおばあちゃんは来てくれた。
二十数年を超えてここに来ていることになる。
簡単に言うが、20年以上……、人に換算すると相当なお年寄りだ。
そう言えば最近では、このおばあちゃん大鷲は有名になっている。
テレビとか新聞とかでも今年も来てくれましたと紹介されている。
大鷲のおばちゃんには感謝している。
裕也と最初に出会ったのは春だった、そう「鷹の渡り」を見た時だった。
その冬に大鷲のおばあちゃんを一緒に見に行ってから、裕也とは長い付き合いになっていたからだ。
その後、彼と一緒に野鳥を観察したり、保護センターで野鳥を見て回ることが多くなった。
その頃はまだ、北原君と呼んでいたが、彼は私の良き師匠だった。
だんだん、私は彼を師匠から大切な人と思うようになって行くのが分かった。
高校生になったときに彼は動物のお医者さんになると将来の夢を話してくれた。
私も3つの夢の一つが動物のお医者さんだったから同じ道をめざした。
現在では学年は1つ違うが私たちは同じ大学の獣医学科に入っている。
そうだ私は子供の頃の夢である「動物のお医者さんになる」という夢のひとつに近付いていた。
親も喜んでくれたし、一人暮らしも既に3年目だった。
ダメだ、気分転換しようとしたのに、やっぱり考えが纏まらない。
昨日言われたこと……、お父さんが言う『覚悟』の意味を考えていたが分からない。
とっくに『覚悟』は出来ているつもりだ……
分かっているわ、家のお父さんに限って”娘を遠くに行かせたくないから”という理由では無いだろう。
じゃあ何故かしら……
私は何か重要なことを忘れているんだと考えこんでいた。
湖を向いているがコハクチョウ達さえ目に入って来ないことにも気づかず。
そして茫然としていると不意に後ろから声を掛けられた。
「おひさぁ~サエラぁ~♪」
さっき電話したのでミカが来てくれた。
いつもの様に明るいミカだった。
ミカの顔を見ると弱音は吐いてしまう。
「ミカ、さっき電話したけど、私はどうしたら良いんだろう……」
「そうだ、ミカがこの真珠を買ってくれると良いんや」
ミカは首を振りながら。
「買う?それは出来へんでサエラ、知り合いに売るのはあかんのやろ」
「その真珠は大切なものや言うとったやんか、そんな安売りはあかんで」
ミカは真剣な顔をして質問してきた。
「なぁ、ひとつだけ聞かせてサエラが行きたい理由は『北原君が行く』からか?」
「えっ!!」
そう聞かれて少し慌てた、そんなことはないはず……、今は…私が行きたいと思ったから私の意志だ……
事の発端は、昨年ぐらいから彼が仕事に着いたら、なかなか纏まった時間をかけて世界を見ることは出来ないから学生のうちに世界を見ておきたいと言い始めた。
結果、彼は今年の春から休学し2年間の国際野生動物保護のボランティアに参加し海外に行くことになった。
そして彼は私も誘ってくれたのだ。
もちろん私も同じ考えだ、何か動物たちに私が出来ることが有るのでは無いかという思いで一年違いになるが募集に応募しようと考えていた。
そうなんだ、私の意志だ、間違いない。
「それもあるけど私の意志だよ、もちろん北原君が行くからという理由もあるけどね、それではダメなの?」
ミカは冗談だよみたいな顔をして答えた。
「ちょっと聞いて見たかっただけや、気にせんとって」
「大丈夫や、サエラはサエラや、今もコハクチョウ達を見とる」
「そうやどんな時でも、コハクチョウ達が好きなサエラやもんな、応援するで頑張りや!!」
「ただな、私もその真珠の話は知っとるんや、そうやサエラが大切にしている値打ちを知っとるんや……」
「真珠本来の価値ではなくサエラ価値で言うと買える人なんかおらんやろ言うこともわかとるんや」
「さぁから、その真珠の売り先探しとかな、私に買い取ってくれと言うのはちょっと相談に乗れんわ」
「それとな、サエラ大学生になって一人暮らし始めてから標準語使っているみたいやけど、なんかイントネーションがおかしいで……」
イントネーションと聞いて心当たりがあった。
「えっ、そうなの……」
何となく思っていたが、やっぱりか関西出身の先輩が関西なまりの標準語を使っているのをイントネーションがなんか変だと感じでいたが、私もそうだったんだ。
なんか可笑しくて笑ってしまった。
「やっぱり付け焼き刃ではあかんなぁ~」
こっちに帰ってきて初めて笑ったような気がした、やっぱり持つべきものは友達だ。
「それで北原君はどうしてるん?」
「今、出発準備してるわ、私とは1回生違うからな、休学届も出したようで春には出発するみたいや」
「そうなんや忙しそうやな、それでもあんまり時間ないけど、北原君には相談したんやろ?」
「まさか親にこんなこと言われると思ってなかったから、まだ電話もしてへん……」
そうだ、昨日帰って来てから、怒涛のような出来事が私にあった。
帰省する前には、両親は「殆ど伝手も無いのに世界に行くなんて」と卒倒するんじゃないかとか冗談で思っていた。
でも昔、お父さんは「世界を股に掛ける女流写真家サエラやな」とか言っていた。
そうだ、二つ目の夢の写真家で世界に行くことも一緒に話したのだ、考えに反対はしないだろうと考えていた。
だが実際は、昨晩帰省し私も国際ボランティアに来年参加したいと相談したのだが……
話が進んでくると『お前には、世界に行くだけの覚悟がない』というのが理由で反対された。
最後に『覚悟』を示すことを条件に猶予を貰った……
未だに解決策が出て来ないのだ。
今は故郷に帰り大きな北の湖でコハクチョウを見ながら何かを思い佇んでいます。
ここから、物語の2幕が始まります。
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今は大学も冬休み、ここに帰って来るのは久しぶりだ。
湖には多くのコハクチョウ達がいつもの様に佇み休んでいる。
いつもの風景に私は心が安らぐ。
今年も大鷲のおばあちゃんは来てくれた。
二十数年を超えてここに来ていることになる。
簡単に言うが、20年以上……、人に換算すると相当なお年寄りだ。
そう言えば最近では、このおばあちゃん大鷲は有名になっている。
テレビとか新聞とかでも今年も来てくれましたと紹介されている。
大鷲のおばちゃんには感謝している。
裕也と最初に出会ったのは春だった、そう「鷹の渡り」を見た時だった。
その冬に大鷲のおばあちゃんを一緒に見に行ってから、裕也とは長い付き合いになっていたからだ。
その後、彼と一緒に野鳥を観察したり、保護センターで野鳥を見て回ることが多くなった。
その頃はまだ、北原君と呼んでいたが、彼は私の良き師匠だった。
だんだん、私は彼を師匠から大切な人と思うようになって行くのが分かった。
高校生になったときに彼は動物のお医者さんになると将来の夢を話してくれた。
私も3つの夢の一つが動物のお医者さんだったから同じ道をめざした。
現在では学年は1つ違うが私たちは同じ大学の獣医学科に入っている。
そうだ私は子供の頃の夢である「動物のお医者さんになる」という夢のひとつに近付いていた。
親も喜んでくれたし、一人暮らしも既に3年目だった。
ダメだ、気分転換しようとしたのに、やっぱり考えが纏まらない。
昨日言われたこと……、お父さんが言う『覚悟』の意味を考えていたが分からない。
とっくに『覚悟』は出来ているつもりだ……
分かっているわ、家のお父さんに限って”娘を遠くに行かせたくないから”という理由では無いだろう。
じゃあ何故かしら……
私は何か重要なことを忘れているんだと考えこんでいた。
湖を向いているがコハクチョウ達さえ目に入って来ないことにも気づかず。
そして茫然としていると不意に後ろから声を掛けられた。
「おひさぁ~サエラぁ~♪」
さっき電話したのでミカが来てくれた。
いつもの様に明るいミカだった。
ミカの顔を見ると弱音は吐いてしまう。
「ミカ、さっき電話したけど、私はどうしたら良いんだろう……」
「そうだ、ミカがこの真珠を買ってくれると良いんや」
ミカは首を振りながら。
「買う?それは出来へんでサエラ、知り合いに売るのはあかんのやろ」
「その真珠は大切なものや言うとったやんか、そんな安売りはあかんで」
ミカは真剣な顔をして質問してきた。
「なぁ、ひとつだけ聞かせてサエラが行きたい理由は『北原君が行く』からか?」
「えっ!!」
そう聞かれて少し慌てた、そんなことはないはず……、今は…私が行きたいと思ったから私の意志だ……
事の発端は、昨年ぐらいから彼が仕事に着いたら、なかなか纏まった時間をかけて世界を見ることは出来ないから学生のうちに世界を見ておきたいと言い始めた。
結果、彼は今年の春から休学し2年間の国際野生動物保護のボランティアに参加し海外に行くことになった。
そして彼は私も誘ってくれたのだ。
もちろん私も同じ考えだ、何か動物たちに私が出来ることが有るのでは無いかという思いで一年違いになるが募集に応募しようと考えていた。
そうなんだ、私の意志だ、間違いない。
「それもあるけど私の意志だよ、もちろん北原君が行くからという理由もあるけどね、それではダメなの?」
ミカは冗談だよみたいな顔をして答えた。
「ちょっと聞いて見たかっただけや、気にせんとって」
「大丈夫や、サエラはサエラや、今もコハクチョウ達を見とる」
「そうやどんな時でも、コハクチョウ達が好きなサエラやもんな、応援するで頑張りや!!」
「ただな、私もその真珠の話は知っとるんや、そうやサエラが大切にしている値打ちを知っとるんや……」
「真珠本来の価値ではなくサエラ価値で言うと買える人なんかおらんやろ言うこともわかとるんや」
「さぁから、その真珠の売り先探しとかな、私に買い取ってくれと言うのはちょっと相談に乗れんわ」
「それとな、サエラ大学生になって一人暮らし始めてから標準語使っているみたいやけど、なんかイントネーションがおかしいで……」
イントネーションと聞いて心当たりがあった。
「えっ、そうなの……」
何となく思っていたが、やっぱりか関西出身の先輩が関西なまりの標準語を使っているのをイントネーションがなんか変だと感じでいたが、私もそうだったんだ。
なんか可笑しくて笑ってしまった。
「やっぱり付け焼き刃ではあかんなぁ~」
こっちに帰ってきて初めて笑ったような気がした、やっぱり持つべきものは友達だ。
「それで北原君はどうしてるん?」
「今、出発準備してるわ、私とは1回生違うからな、休学届も出したようで春には出発するみたいや」
「そうなんや忙しそうやな、それでもあんまり時間ないけど、北原君には相談したんやろ?」
「まさか親にこんなこと言われると思ってなかったから、まだ電話もしてへん……」
そうだ、昨日帰って来てから、怒涛のような出来事が私にあった。
帰省する前には、両親は「殆ど伝手も無いのに世界に行くなんて」と卒倒するんじゃないかとか冗談で思っていた。
でも昔、お父さんは「世界を股に掛ける女流写真家サエラやな」とか言っていた。
そうだ、二つ目の夢の写真家で世界に行くことも一緒に話したのだ、考えに反対はしないだろうと考えていた。
だが実際は、昨晩帰省し私も国際ボランティアに来年参加したいと相談したのだが……
話が進んでくると『お前には、世界に行くだけの覚悟がない』というのが理由で反対された。
最後に『覚悟』を示すことを条件に猶予を貰った……
未だに解決策が出て来ないのだ。
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