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2.お前が待っているのは俺じゃないから

砂漠の民⑥

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 少し前、結界内でロザリアがフェスリーに跨っていた。
 その前に膝まづく全ザガールの兵達。

 一方ラミアに最後の魔導士が討たれた時、ジェイは遠隔で魔法を使い結界を開いた。

 ロザリアの腕輪からはジェイが話しかける。
「少しの間だけ開くから、直ぐに来てくれこの人たちは案外頑固者達だよ、それと外は真っ暗だお前達の結界の鎧に暗視機能を付けたから使ってくれ」

 グレスに声を掛けるロザリア
「行きますよ、グレスさん」

 グレスが変な反応をする?
「恐れ多いことですが、よろしくお願いします」

 恐る恐るフェスリーに跨るグレス。

 ロザリアはサンクスに残るように言う。
「サンクスはここに居てくださいね」

 だがサンクスは行きたいようだった。
「俺も行きます、何か役に立ちたいんです、走って行くので先に行っててください」

「分かりましたサンクス、外は暗いので気を付けてね。そう言えばジェイが暗視機能を付けたとか言っているわ」

 外に出たフェスリーは足から炎を出す。
 そんなに強力に出している訳では無いがそれで虫は焼かれ寄って来ない。
 それと不思議なことにフェスリーは少し中に浮いているようだった。

 ジェイに言われたように結界の目の部分を手で上下すると確かに暗闇だった周りが明るく見えてきた。
 だが色は無く白と黒の世界。
 フェスリーに跨るロザリアは何もグレスと語らなかった。
 今現在でもロザリアにはあの時の城を攻められた状況が浮かんでくる。
 つまり同じ話題が無いと言うことでは無く何も語れなかったのだ。
 
 彼女の心境は色の無い今の周りの状況と同じだった。
 走り始めるフェスリー、それは一刃の風が走るようだった。

「ひゃ~早いな、でもまだフェスリーには慣れないもんな、さて俺も頑張って行くぞ!!」
 虫の中結界で身を守りサンクスも外に出た。

 サンクスも暗視機能を使ってみた。
「なんだよ、色が無いじゃないか、でも色が無いから怖さも半減するから良いかな・・・、でも姫をグレスと一緒に行かせてしまったのはまずかったかな?」

だが少しすると明るい顔になった。
「大丈夫さ、ジェイがいるから大丈夫だよ、きっと」 

 グレスは少女の小さな背中を見て自分と比較するように考えて居た。
(こんなにも、か細く幼い少女が自分が進むべき道をちゃんと選んでいる。これが人の上に立つ者のだろう。それに引き換え俺はミザカのことで動揺している)

 グレスにはまだ見えないのだろうが暗視で見ているロザリアにはラミア達が見えた。
 ラミアは二人に近付き二人を追い詰めているようだった。

「フェスリー、ラミア様にグレスを連れて来たことを伝えて」

 フェスリーは頭を上に挙げると大きく嘶く。

 フィ~ロ~リィ~リィ~
 その声は遠くまで聞こえる高音でありながら鈴を鳴らすような心地よい嘶きだった。

 声はラミアにも聞こえた。
「あなた達の迎えが来たわよ」

 その言葉に恐怖する二人。
 特にミザカは涙が止まらなくなっていた。
 その涙の意味は自分でも分からなかった。

 ラミアの後ろに4つの光が見えた時、ミザカは絶望していた。

 やがてその炎が近づいてくる。
 するとそれがフォグリスであることが分かると二人は不思議な反応をする。

「神獣様」
 そう呟くといきなり跪く二人。
 その後二人は頭を下げた。

 結果フェスリーが近づいてもグレスに気が付いていなかった。

「サムリ、ミザカ、俺は無事だ」
 その声が聞こえ、頭を上げた二人の前にグレスが立っていた。

 ミザカは立ち上がりグレスの胸に飛び込んで行った。
 神獣の前であること、そしてグレスが死んだはずであること。
 そんなことは目の前のグレスの前では意味がなかった。

 ミザカには今目の前のグレスが全てだった。
 泣きながら「怖かった・・・怖かった・・・」それだけを繰り返すミザカ。

 そのミザカを強く抱き締めるグレスだった。

 だがその情景を見てサムリは何かを感じ取ったようだった。
「そうか、恐怖じゃなかったんだ」

 サムリは理解した、ラミアが単純な恐怖を与えたのではないことを。
「どうりで俺も嫁と生まれてくる子供に思いがはせる筈だ、あの女の目を見た時に魅せられたんだな」

 再度グレスとミザカはフェスリーの前に跪いた。

 グレスは改めてロザリアに聞いた。
「ロザリア様、あなた様は神獣フォグリスの巫女であるのでしょうか?」

「違います、私はこの子と友達なだけですよ、元々この子はラミア様とジェイ様の家族同様の存在のようです」

 さっきから弱電センサーに反応がある、俺はグレスに相談する。
「グレス取り込み中すまないが急ぎなんだ。結界は大きくしておくのでここの全員を起こして結界内に退避させてくれ、どうやら別動隊が後ろから来るようだ」

 サムリは知っている情報を教えてくれた。
「右二十名、左二十名の四十名でサンブルド王の魔導士が五名ずつ付いています」

「それ以降も襲って来るのかな?」

「いえ、それ以降は計画はありませんでした」

 なるほど、もう相当深夜だからな、でも待てよそれなら夜明けまでの少しの間時間があることになる。

「お前達の家族はどうなんだ?」

 グレスが気落ちした声で話した。
「多分明日には処刑でしょうね」

「お前達の拠点に敵は何人くらいいるんだ?」

「約五十名だったのですが今回これから来る者を考えると残り二十名くらいでしょうか?」

 何とかなる人数だと思う、そうだ処刑される人質を救出しよう。
「こっちは今来ている魔導士を倒せば戦士四十名を追加できる、これで奴らの所に暗いうちに殴り込みに行こうじゃないか」

 サムリが制止する。
「そんな無茶な・・・我々はそれでは生きてはいけない」

 グレスはサムリを制止する。
「サムリ、もう気付いているんだろ伝承の通りのことが起きているダガダを目指す時が来たのだ」

 俺はラミアと一緒に行くつもりでグレスに後を頼んだ。
「グレス、後のことは頼んだ、俺達はまずは奴らをやっつけて来る」

 ロザリアが言い難そうに声を掛けて来た。
「私も行きます」

 戦う手段も無く、戦うことで敵を気づ付ける心配をするロザリアを心配して声を掛ける。
「大丈夫なのか?」

「今回はセグリアの騎士団ではないので大丈夫だと思います。フェスリーも居てくれる、それとサンクスを迎えに行かないと」

「サンクスがどうしたって?」

「こちらに向かっているんです」

 ここはジェイ組の総出撃になりそうだ。

「じゃあ、サンクスを拾って行くぞ!!」

 サンダーボードに乗る二人とフェスリーに乗ったロザリアが敵に向かって行った。
 途中サンクスを見つけた。
 虫だらけの砂地を踏みしめながら襲い掛かる蟲にヌンチャクや棒を使って戦っていた。
「おーい、サンクス」
「ジェイ、もう終わったのか?」

「もう一仕事やらないといけなくなった、一緒に行くか?」

「もちろん」

 俺はサンクスに近付くとヒョイと肩に乗せた。

 サンクスはサンダーボードの速度に嬉しそうな顔になった。
「早いな、凄いや!!」
(肩の上に乗せるなんて、この世界じゃあんまりしないんだ、やっぱり父さんみたいだ。ジェイは父さんと同じ世界から来たのかな、だったら召喚者なんだ・・・)

 そのころ魔導士たちは危機感を持っていた。
「先兵隊のライフシグナルが消えました。奴らは相当な力を持っているようです」

 魔導士は精霊石を取り出した。
「我々も準備しておいた方が良いと思われますな、手伝ってくれますかな」

「もちろんですとも」

 五人の魔導士たちは二つの精霊石を外に投げると一斉に詠唱を始めた。
「「我は求め其方たちの顕現を要望する、現れよゴーレム!!」」

 やがて精霊石を中心として砂漠の砂が集まり五メータのゴーレムが顕現した。

 そしてもう片方のグループもゴーレムを呼び出した。
 ジェイ達の行く手に前に2体の大きなゴーレムが顕現した。
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