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3章

夜が深けて

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雪乃は窓の外を見続けていたがふっと視線をひなたへと戻す。


「……話せば、長くなるから簡単に言うけど。」

雪乃はひなたがゆっくりと頷いたのを確認して話し始めた。


「母親と一緒にいたら、私、このままじゃ死んじゃうって、本気で思ったから。」



あーあ、言っちゃった。どうせ家に帰れだの何言ってんだだの言われるんだろうな、大人なんてそんなもんだ。

雪乃は家出理由を簡潔に述べたあとの頭で呟く。


「よく、頑張ったね」


しかしひなたの返答は雪乃が想像していたそれとは全く異なるものだった。
雪乃は思わずひなたの顔をじっと見つめる。
なんなんだこの人、やっぱり変だ。でも、そんなことをゆってくれた人は、はじめてだ。

「えっ、なに!?どーしたん!?えっ、なんで泣いとんの…」

困ったような、焦ったようなそんな表情でひなたが雪乃の顔を覗き込む。

「んーん、ただ、そんなふうに言ってくれた人、はじめてだから。」

そう伝えるとひなたはそっか。とにっこり笑った。


「あ、お腹すいとらんの?」


思い出したようにひなたが聞いてきた。


「…んー、すいてる、かも」


雪乃は涙目をごし、と擦りながらそういえば何も食べてないなあ、と考える。
ひなたはすっと立ち上がり何食べたい?と聞きながら広すぎるキッチンの方に向かっていた。


「オムライス。」



雪乃がぼそっと答えると
つくったるわ。
そう言って笑うひなたの姿が見えた。


ああ、この人なら…少しは信じてもいいのかな。そんなあわい期待を雪乃は抱いていた。
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