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第6話 ボディビルと勇気

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─僕はボディビルを通じて万人を勇気づける心の医者になりたい─
マッスル北村

かつてガリスブルグ王国ーと言われた魔法使いエリオ・・・
その娘であるエリスのロききで国王への謁見はすんなりと行われた。
エリスのロききがあるとはいえ、国王をはじめ居並ぶ大臣達や宮廷魔法使いも私に対していぶかしんでいる様子がありありとうかんで見てとれた。
そこで私は、魔王と戦う意志、戦えるだけの実力を肉体で表現することにした。
私はおもむろにマントと服を脱ぎ捨て、ボディビルダーの正装ともいえるビキニパンツ一丁になり、体を前傾させ両腕で丸太を抱え込むようなポーズ、いわゆるモストマスキュラーポーズをとった。
周囲からどよめきが起きた。

「き、筋肉の魔王に引けをとってない・・・何という筋肉だ!」

実際に魔王を見たことのある宮廷魔法使いがそう叫ぶと、国王を始め、大臣達も、ひょっとしたらと顔色が明るくなった。
百回のプレゼンより一見の筋肉。
国王達の態度は軟化し、私に対して非常に協力的になってくれた。
私に対して行く先々の町での協力の手配をしてくれるだけでなく、道案内兼世話人としてマクシミリアンという美しい青年をつけてくれた。
エリスも私と一緒に行きたがったが、エリスは回復魔法が使える為、王都に残って負傷した兵隊の看病をしてもらうことにした。
私は国王に対して一つお願いをした。
それは、ボディビルショーを開催してもらうことだ。
偉大なるボディビルダー、マッスル北村のようにボディビルを通じて王都の人々の打ちひしがれた心を勇気づけたかったのだ。
王宮前の広場に特設ステージが設けられ、多くの人々が集まった。
ステージ中央に私は立ち、ポージングを次々と決めていく。私は筋肉にのせて精一杯の激励のメッセージを人々に送った。
人々の歓声が次第に熱を帯びていく。人々の心の奥底に消えかけくすぶっていた火種が再び燃え上がり、心の炎が歓声に溶け込み熱風となり私の筋肉にぶつかってくる。
人々に勇気を与えるなどというのは私の傲慢だったかもしれない。むしろ皆から私のほうが勇気をもらった気がする。
私の決意は皆の熱気に焼き締められ、さらに強固となった。
いざ、魔王討伐へ!
王都の北門まで見送りに来たエリスに挨拶を済ませ、北門の外に広がる大地を見すえる。
この北の大地の果てに魔王の居城があるのだ。
マクシミリアンが私をうながす。

「イタルさん、さあ行きましょう。」

私は北の大地を一歩踏みしめた。
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