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第27話 第8軍団副軍団長 ローティ
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神聖帝国北西部の村ノーレッジ・・・
ウィズニア王国国境から南に50kmの距離にあるこののどかな村にも、魔王軍の手が伸びていた。
魔王軍第8軍団・・・
神聖帝国北西部の侵攻と、ウィズニア王国からの援軍を迎え撃つことを目的とした軍団。
その軍団の侵攻部隊がこの町に進撃してきた。
帝国軍は大打撃を受け、機能停止状態に陥っており、無人の野を行くがごとくに第8軍団はウィズニア王国方面に兵を進軍させていた。
この町を制圧しにきた侵攻部隊は、魔族の内の降天族と獣人族の混成部隊であった。
「さあ、痛い目にあいたくなくば、速やかに降伏するのだ!」
部隊長らしき獣人の戦士が村屋の家であろうひときわ大きな屋敷に大声をあげた。
屋敷の塀の内側では、村長家族と逃げなった村人達が農具を武器に手に持ち、立てこもっていた。
「そんな人数でどうやって俺達と戦うと言うのだ!
あっはっは!」
高笑いする部隊長の体にキラキラと光るつぶつぶがまとわりついた。
「なんだこれは?」
光るつぶつぶは氷の結晶が日光を受けて輝いていたもので、部隊長にまとわりついたものの正体は冷気であった。
「な・・・
さむ・・・」
部隊長はそうつぶやきかけてそのまま凍りついてしまった。
「隊長!」
「誰だ!
隊長をやったのは!」
「お前達の進撃はここまでだ!」
フレイがランドリクとトバイを従え隣の家の屋根の上に立ち、たんかをきった。
「貴様ら!」
侵攻部隊の面々が動き出そうとしたその時、すでに数瞬早くトバイが飛び出していた。
拳。
足。
肘。
膝。
武器と呼べるまでに鍛え上げられたトバイの肉体が敵の肉体を的確に打ち抜いてゆく。
「この小僧め!
こいつは俺達が!」
格闘戦に優れた狼タイプの獣人の戦士達がトバイを取り囲もうとした時、獣人のふさふさとした毛が燃え始めた。
ランドリクが火魔法を獣人戦士達に放ったのだ。
「さあ、さっさと逃げないと黒焦げになるぞ!」
ある者は毛を焼かれ、ある者は殴り飛ばされ、ある者は凍りつかされ・・・
「引け!
退却だ!」
副長らしき男の叫び声を聞き、侵攻部隊は慌てて退却していった。
帝国北西部第2の都市ノービス・・・
住民達が魔王軍の監視の元、列をなしている。
蛇面の男?が占領部隊に指示を出し、住民達の管理と登録の為に広場に集める為、移動させていたのだ。
この蛇面の男?の役職は魔王軍第8軍団副軍団長、その名をローティという。
列の最後尾にいた老夫婦が列から徐々に遅れだしているのをローティが気づいた。
「ちょっとそこのジジイ!
何ちんたら歩いてんのよ!」
「この人は足が悪いんです。」
老人に寄り添っていた妻がかばった。
老人は自身をかばってくれた妻を逆にかばい、
「妻には手荒なことをせんでくれ!」
ローティはしかめっ面で老夫婦のかばい合いを見ていたが、
「ちっ・・・
ちょっとアンタ達、何ぼけっとしてるの!
このジジイをさっさとタンカに乗せて運びなさい!
ついでにそのババアも乗せちゃいなさい!」
「ははっ!」
ローティンは部下に命じ、老夫婦をタンカに乗せて運ばせた。
「あ、ありがとう・・・」
「ベっ別にお礼言われる筋合いはないわよ!
アンタ達のせいでペースが落ちちゃうのが嫌だっただけよ!」
ローティの様子を見た部下が
「ローティ様・・・
あなたは少し、人間に甘すぎるのではありませんか?」
部下の苦言にローティは苦虫を噛み潰したような顔をして、
「あのね、アタシ達の目的は何なのかよおく考えなさい。
地上制圧してはい終わり・・・
じゃないの!
永続的な“統治”なのよ!
その為にも人間を“労働力”として使っていかなきゃならないのよ!
その大事な労働力を大事にするのは当然じゃなくて!!
大体軍団長も含めてアンタ達が“敵を倒せばいい”しか考えてない脳筋だから占領計画もぜんっぶアタシがたててるんじゃないの!!」
「は・・・ははっ
失礼致しました!!」
部下が引き下がった。
ローティは向き直り列の最後尾、先程の老夫婦がタンカに乗って運ばれているのを眺めていた。
「ローティ様!」
「なによ騒々しい。
今度は何?」
ローティに声を掛け駆け寄ってきたのは、先程ランドリク達に敗れ命からがら逃げ帰ってきた侵攻部隊の残党であった。
「まあ!
何なのアンタ達!
まさかやられて逃げ帰ってきたってこと!?」
「も・・・
申し訳ありませんっ!」
「で、軍の規模は?
帝国軍の残党?
それともウィズニア王国からの援軍かしら?」
「そ・・・それが・・・」
侵攻部隊から状況を聞いたローティは一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに元の表情に戻り顎に手をやり思案し始めた。
「たった3人で・・・
ふうん・・・
人間どもの中にも骨のありそうな奴がいるようね・・・
で、奴らはこちらに向かっているのかしら?」
「おそらくは・・・」
「ローティ様、いかがなさいますか?」
「侵攻部隊を軽くひねるような奴らよ。
アンタ達じゃ相手にならないわ。
いいわ・・・
アタシが相手してあげるわ・・・
第8軍団副軍団長ローティ様がね・・・」
先の割れた舌がローティの口元から伸びた。
ウィズニア王国国境から南に50kmの距離にあるこののどかな村にも、魔王軍の手が伸びていた。
魔王軍第8軍団・・・
神聖帝国北西部の侵攻と、ウィズニア王国からの援軍を迎え撃つことを目的とした軍団。
その軍団の侵攻部隊がこの町に進撃してきた。
帝国軍は大打撃を受け、機能停止状態に陥っており、無人の野を行くがごとくに第8軍団はウィズニア王国方面に兵を進軍させていた。
この町を制圧しにきた侵攻部隊は、魔族の内の降天族と獣人族の混成部隊であった。
「さあ、痛い目にあいたくなくば、速やかに降伏するのだ!」
部隊長らしき獣人の戦士が村屋の家であろうひときわ大きな屋敷に大声をあげた。
屋敷の塀の内側では、村長家族と逃げなった村人達が農具を武器に手に持ち、立てこもっていた。
「そんな人数でどうやって俺達と戦うと言うのだ!
あっはっは!」
高笑いする部隊長の体にキラキラと光るつぶつぶがまとわりついた。
「なんだこれは?」
光るつぶつぶは氷の結晶が日光を受けて輝いていたもので、部隊長にまとわりついたものの正体は冷気であった。
「な・・・
さむ・・・」
部隊長はそうつぶやきかけてそのまま凍りついてしまった。
「隊長!」
「誰だ!
隊長をやったのは!」
「お前達の進撃はここまでだ!」
フレイがランドリクとトバイを従え隣の家の屋根の上に立ち、たんかをきった。
「貴様ら!」
侵攻部隊の面々が動き出そうとしたその時、すでに数瞬早くトバイが飛び出していた。
拳。
足。
肘。
膝。
武器と呼べるまでに鍛え上げられたトバイの肉体が敵の肉体を的確に打ち抜いてゆく。
「この小僧め!
こいつは俺達が!」
格闘戦に優れた狼タイプの獣人の戦士達がトバイを取り囲もうとした時、獣人のふさふさとした毛が燃え始めた。
ランドリクが火魔法を獣人戦士達に放ったのだ。
「さあ、さっさと逃げないと黒焦げになるぞ!」
ある者は毛を焼かれ、ある者は殴り飛ばされ、ある者は凍りつかされ・・・
「引け!
退却だ!」
副長らしき男の叫び声を聞き、侵攻部隊は慌てて退却していった。
帝国北西部第2の都市ノービス・・・
住民達が魔王軍の監視の元、列をなしている。
蛇面の男?が占領部隊に指示を出し、住民達の管理と登録の為に広場に集める為、移動させていたのだ。
この蛇面の男?の役職は魔王軍第8軍団副軍団長、その名をローティという。
列の最後尾にいた老夫婦が列から徐々に遅れだしているのをローティが気づいた。
「ちょっとそこのジジイ!
何ちんたら歩いてんのよ!」
「この人は足が悪いんです。」
老人に寄り添っていた妻がかばった。
老人は自身をかばってくれた妻を逆にかばい、
「妻には手荒なことをせんでくれ!」
ローティはしかめっ面で老夫婦のかばい合いを見ていたが、
「ちっ・・・
ちょっとアンタ達、何ぼけっとしてるの!
このジジイをさっさとタンカに乗せて運びなさい!
ついでにそのババアも乗せちゃいなさい!」
「ははっ!」
ローティンは部下に命じ、老夫婦をタンカに乗せて運ばせた。
「あ、ありがとう・・・」
「ベっ別にお礼言われる筋合いはないわよ!
アンタ達のせいでペースが落ちちゃうのが嫌だっただけよ!」
ローティの様子を見た部下が
「ローティ様・・・
あなたは少し、人間に甘すぎるのではありませんか?」
部下の苦言にローティは苦虫を噛み潰したような顔をして、
「あのね、アタシ達の目的は何なのかよおく考えなさい。
地上制圧してはい終わり・・・
じゃないの!
永続的な“統治”なのよ!
その為にも人間を“労働力”として使っていかなきゃならないのよ!
その大事な労働力を大事にするのは当然じゃなくて!!
大体軍団長も含めてアンタ達が“敵を倒せばいい”しか考えてない脳筋だから占領計画もぜんっぶアタシがたててるんじゃないの!!」
「は・・・ははっ
失礼致しました!!」
部下が引き下がった。
ローティは向き直り列の最後尾、先程の老夫婦がタンカに乗って運ばれているのを眺めていた。
「ローティ様!」
「なによ騒々しい。
今度は何?」
ローティに声を掛け駆け寄ってきたのは、先程ランドリク達に敗れ命からがら逃げ帰ってきた侵攻部隊の残党であった。
「まあ!
何なのアンタ達!
まさかやられて逃げ帰ってきたってこと!?」
「も・・・
申し訳ありませんっ!」
「で、軍の規模は?
帝国軍の残党?
それともウィズニア王国からの援軍かしら?」
「そ・・・それが・・・」
侵攻部隊から状況を聞いたローティは一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに元の表情に戻り顎に手をやり思案し始めた。
「たった3人で・・・
ふうん・・・
人間どもの中にも骨のありそうな奴がいるようね・・・
で、奴らはこちらに向かっているのかしら?」
「おそらくは・・・」
「ローティ様、いかがなさいますか?」
「侵攻部隊を軽くひねるような奴らよ。
アンタ達じゃ相手にならないわ。
いいわ・・・
アタシが相手してあげるわ・・・
第8軍団副軍団長ローティ様がね・・・」
先の割れた舌がローティの口元から伸びた。
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