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琉生side5
しおりを挟む伊織を頼くんの家から連れ出し、車に乗ったのはいいがどう話を切り出せばいいのやら、わからないオレ。
その間、カーステレオから流れてくるDJの話が、BGM化している。
「琉生……。ごめんね。」
突然、小さな声で謝りだす伊織。
「何が?」
オレは、何に対する謝罪なのか見当がつかない。
「勝手に行方を眩ませたこと……と逃げちゃったこと……。」
伊織の声は、落ち込んでいて反省のが見え隠れしている。そんなんじゃ、オレは怒るに怒れない。
無言でいると。
「ちゃんと事情を聞かなかった私が悪いよね。」
そう言葉を紡ぐ伊織。
チラッと横を見れば、空笑いを浮かべている。
自己嫌悪に陥ってる顔だった。
「変な勘繰りをせずに、琉生に聞けば良かった……。そしたら、こんなにも胸を痛めることなかったのに、ね」
って、何時もよりも弱々しい声で告げてくる伊織の頭に
手をやり、頭をオレの肩に寄せて軽く叩く。
すると隣で、 "グズっ" と鼻を啜る音が……。
見れば、頬に一筋の涙が伝っていた。
さっき泣き止んだばかりだというのに、また涙して……。
本当に伊織は、泣き虫なんだから……。
普段強がりのくせして、心許した奴の前では感情の赴くまま見せてくれる。そのギャップがいいんだがな。
今までの男どもは、損してるなんて思ってしまう。
まぁ、オレ以外に見せる必要ないんだがな。
「伊織の泣き虫は、治りそうにないな。」
オレは揶揄じみた言い方しか出来なかったが、それでも伊織が愛しい人には違いない。自我を忘れたの彼女だけだからな。
泣いている理由はオレの性だろう。
「……ヒック。私だって、泣きたくて泣いてるんじゃない……んだよ。」
と言い訳をし出す。
「伊織……。ごめんな。今まで不安な思いさせて……。オレたちの事、会社に話しても良いよな。何かあったら、オレが護から。」
伊織と離れて解ったことは、彼女自身を心から愛していること。頼くんがそれをより解らせてくれた。
伊織の隣にオレは、ずっと居たいと……。
こんな時に伝えたいと思ってしまったのだ。
「う、うん」
戸惑いがちの返事だったが、それを聞いてホッと胸を撫で下ろした。
本当は、ちゃんと計画を立ててたんだが、こうなったら仕方ないよな。
オレは、車を走らせなが "あること" を頭で企てた。
家に着き、リビングのソファーに伊織を座らせると。
「ちょっと、待ってろ。」
その一言だけ伝え、自室に向かう。
机の引き出しに隠していたビロードの小箱を手にして、リビングに戻る。
伊織が、落ち着き無くそわそわしている。
「伊織……。この間渡せなかった "モノ" 今渡させて……。」
ソファーに座っている伊織に声をかける。
伊織は、驚いた顔をしてオレを見てくる。
オレは、伊織の前に回り込み膝まずくと。
「今回の事で伊織には不安にさせてしまったかもしれない。だけど、オレは伊織とこれからの一生を一緒に生きていきたいと思う。不甲斐ないオレだけど結婚してください。」
伊織の目を見つめながら言葉を紡ぎ、手にしていた小箱の蓋を開けて見せる。オレは、 "はい" しか求めてない。
伊織は、息を飲み両手を口許に宛がい、目を大きく見開いた。
「私……でいいの?」
確認するかのように訪ねてくるから。
「伊織しか要らない。」
強くそう答えた。
「……はい。……宜しくお願いします。」
か細い声で返事が返ってきた。
オレは、伊織の左手をとり指輪を薬指に嵌める。
指輪は、以前伊織が雑誌で見て欲しがってたものにした。
「伊織……。一緒に幸せになろうな。」
オレはそう言って、伊織の目許に口付けた。
その後、伊織を横抱きにして、寝室のベッドまで運び込みもちろん美味しくいただきましたよ(伊織自身を……ね)。
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