すれ違い

麻沙綺

文字の大きさ
1 / 14

伊織side

しおりを挟む
  

 あ~あ。
 今日のデート、キャンセルされちゃった。
 せっかく、お洒落したのに水の泡じゃん。

 あいつったら。

『ゴメン。仕事が入ったから、今日のデート無理。』

 って、それだけ言って、電話切っちゃうんだもん。どうせなら、待ち合わせ場所に着く前に電話して欲しかったよ。
 しょうがない…か……。
 寄り道して帰ろう。

 彼と出会ったのは、社会人になってから。
 研修の時にお世話になったのが、彼だった。
 彼は、私の二つ上で整った顔立ち(所謂イケメンさん)で、物腰の柔らかい人で、責任感が強い人でもあった。
 一週間の研修を終えて、配属された部署は違えど、良く一緒に食事に行く間柄になっていった。
 そして、彼からの告白で付き合うようになって二年が経った。


 お互いに仕事が忙しく、会う時間も少なくなりつつあった時に同棲を始めた。
 忙しいのは変わりないが、朝の少しの時間でも顔を会わせれるだけで、心が満たせれていた。
 そのうち、私の方は仕事も落ち着き、定時で帰る時間も徐々に増えたのだが、彼の方は深夜だったり、午前様だったりと相変わらずの忙しさだ(体調面が心配だ)。

 で、やっとできた時間に久し振りのデートだって、喜んでいたのにドタキャンって……。
 今日一日浮かれていた心が、一気に沈み込んだよ。
 仕事ならね、仕方が無いって、諦めもついた。
 のに……。

 今、目の前を歩いているのは紛れもなく彼で、その横にはフンワリとした可愛い雰囲気の彼女が腕に引っ付いていた。
  
 えっ、どういう事?
 仕事じゃなかったの?
 私の心に疑念が湧き上がる。

 目の前の彼女は、まるで私と正反対のタイプだ。
 私は、どっちかって言うと姉御肌タイプで、 "守ってあげなくても大丈夫だよね" って言われる方だ。そして、身長も平均よりかなり高めの175センチで、ショートヘアー。パンツスーツが好きで、端から見たら男にも見えるって、悲しすぎる。
 だから、彼が彼女に触手を延ばしたんだと思った。……否、私じゃなく彼女が、本当の彼女だろう。
 私は、ただの同居人って事なのだろう。
 何て、滑稽だろう。
 好きだったのは、私だけで彼にはもう、その気持ちも覚めていたんだ。

 とりあえず、私は彼の後を追い、一言文句を言ってやろうと思った。
 けど、追ったところで、後悔しかなかった。

 だって、彼が彼女を愛しそうに見つめながら、路上であろうことか、キスをしてるんだもの。

 もう、これは完敗としか言いようがない。

 私は、その場を離れて家に戻った。


 彼女と居るのなら、今日も帰りは遅いはず。
 なら、今のうちに荷物をまとめて、出て行こう。

 そう思ったら、即決行。

 クローゼットの中に仕舞っていたトランクを引っ張り出して、それに必要なものだけを詰め込み、彼から貰ったもの全てを分別してゴミ袋に捨てた。
 それらのゴミを集積場所へと運びいれる。
 再び部屋に戻り、トランクを手に部屋を出た。

 玄関の鍵を閉めて、ドアポストに鍵を入れた。


 もう、此処には戻らないと心に決めて……。














しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

記憶を無くした、悪役令嬢マリーの奇跡の愛

三色団子
恋愛
豪奢な天蓋付きベッドの中だった。薬品の匂いと、微かに薔薇の香りが混ざり合う、慣れない空間。 ​「……ここは?」 ​か細く漏れた声は、まるで他人のもののようだった。喉が渇いてたまらない。 ​顔を上げようとすると、ずきりとした痛みが後頭部を襲い、思わず呻く。その拍子に、自分の指先に視線が落ちた。驚くほどきめ細やかで、手入れの行き届いた指。まるで象牙細工のように完璧だが、酷く見覚えがない。 ​私は一体、誰なのだろう?

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

なくなって気付く愛

戒月冷音
恋愛
生まれて死ぬまで…意味があるのかしら?

処理中です...