あなたの傍に……

麻沙綺

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本編

44話 卒業式

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  卒業式当日。
  私達生徒会メンバーは、校門で先輩達が来るのを待ち構えて居た。

「おはようございます。先輩方は、コサージュをつけて出席してください」
  私達は、先輩方に順番にコサージュをつけていく。
  その中には、ちひろさんやその取り巻き達も居る。

  でも、今日はあえて知らん顔をする。

  って言うか、向こうは、こんな日に朝から会いたくなかっただろうけど……。

「おはよう、詩織。」
  一際目を惹く彼は、私を見つけると大声で言ってきた。
「おはようございます、護先輩。おめでとうございます。このコサージュを着けさせてください」
  ちひろさんと取り巻き達の視線が突き刺さる。
「どうしたんだ? やけに他人行儀じゃん。」
  護に言われて、私は、視線を軽く向ける。
「ちひろさん達が見てるから……。」
  私は小声でそう言うと。
「そっか……。」
  少し残念そうな顔をする護。
  コサージュをつけ終わると
「おめでとうございます」
  改めてお祝いの言葉を掛ける。
「ありがとう」
  笑顔の護を見ると、自然と私も笑顔になる。
「今日の帰り、待っててね。」
「わかってる。優基達も一緒だろ。」
「うん。」
「代表挨拶、とちるなよ。」
  護が、頭をワシャワシャと撫でてくる。
「うん。頑張る。」
「余り、頑張るな。」
  って、小さい声で返ってきた。

  それって、また焼きもちかな?

  護が私から離れたとたん、ちひろさんが護に近寄って、腕を組んでるし……。

  ハァ……。

  護が、それを無理矢理剥がしてるのが見えた。
  そういや、クラスの打ち上げとか、よかったのかなぁ……。
  私は、そっちに気をとられてるうちに、コサージュをつけ終えて、私達は体育館に急いだ。



「水沢。代表挨拶頑張れよ。」
  って、どこからともなく声がかかる。
「うん、ありがとう」
  そして、厳かに式が始まった。


  淡々とプログラムが進んでいく。
『在校生祝辞。卒業生、在校生、起立』
  ザザ…。
『在校生代表、水沢詩織』
  マイクを通して、自分の名前が呼ばれる。
「はい。」
  人一倍の大きな声で返事をする。

  壇上に上がると。
『卒業生、在校生、礼』
  私は、一度会場を見渡した。

  護と目が合う。

  そのまま、目線を落として原稿を読みだした。

「在校生祝辞。
  卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。
  高校生活の中で、喜び、苦しみ、悲しみ、幾多となくあったと思います。
  また、様々な壁を乗り越えてきた皆さんにとっても、力になった事だと思います。
  それらを一つの通過点として、新たな道筋がこれから開かれようとしている今。
  桜の蕾と共に、希望への道へ続いていることでしょう。
  在校生一同は、先輩方が築きあげた歴史に恥じぬよう、精一杯頑張って参ります。

  平成〇〇年三月吉日 在校生代表 水沢詩織」

『卒業生、在校生、礼』
  私は、お辞儀をして壇上を降りる。
  ハァー。
  緊張した。
  これで、肩の荷が下りた。

『着席』

  そして、筒がなく式が終わった。



  三年生の下駄箱から正門までの直線を在校生が並ぶ。
  私達は、紙吹雪を在校生それぞれ渡していく。
  掃除が大変だけど。
  下駄箱では、佐久間くんがオッケーのサインを出してる、
  私は、マイクを持って。
「在校生の皆さん。卒業生の準備が整いました。拍手でお送りしましょう。」
  って、アナウンスする。
  それに合わすように曲が流れ出す。
  私は、マイクのスイッチを切って、脇に挟むと拍手しながら移動する。

  柚樹ちゃんを見つけて。
「柚樹ちゃん、紙吹雪足りてる?」
「うん。大丈夫だよ」
「最後まで行き渡るように配分に注意してね」
「わかってる」
  柚樹ちゃんにそれだけ告げて、他の場所に行く。

  紙吹雪は、三ヶ所に段ボールに入れて置いてある。

  ミニ駕籠に紙吹雪を入れて持ってもらって、無くなったら取りに来てもらう事になってる。

「忍ちゃん。紙吹雪足りてる?」
「まだ、沢山あるよ。」
「OK。そこ任せたからね。」
「はい。」
  最後に里沙のところに行く。
「紙吹雪、足りてる?」
「そうだね。ギリギリかな」
「そっか……。忍ちゃんのところが多そうだから、少し貰ってくるよ」
  私は、ミニ駕籠を二・三個持って忍ちゃんのところに行く。 それに紙吹雪を入れて戻ると。
「詩織。裏方ばっかりしてていいの? もうすぐ玉城先輩、通るんじゃないの?」
  里沙が、心配してくれる。
「そうだね。でも、里沙だってそうでしょ。」
  私が言い返すと。
「あたしはいいの。ほら、行かないと……。」
  里沙が、背中を押すが。
  朝の事があったから、余り見たくないかな。

  そう思ってたら。
  護が通ると一部の女子達から、黄色い声が上がる。
  想像してたより、凄いや。
  やっぱり、人気者だね。
  それに、ちひろさんが傍に居る。
  でも、そろそろ行かないといけないよね。

  私は、走って正門まで移動する。

  そして、息を整え。
「おめでとうございます」
  笑顔と拍手で送り出して行く。
  護が、私の目の前を通過して行く。

  それも、ちひろさんがわざと護の腕に自分の腕を絡めながら。
  そして。
「護は、返してもらうから……。」
  って、私に言い残していく。

  そうですか……。

  私は、何も言わずに笑顔を絶やさずに、先輩達を送り出した。






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