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本編
21話 ダンスパーティー
しおりを挟むテストが終わり、生徒会室でクリスマスパーティーの打ち合わせを始める。
「毎年恒例のクリスマスパーティーの事なんだけど、佐久間くんが、ダンスパーティーにしようと言ってるんだけど、皆はどう思う?」
恒例だったとは、知らなかったよ私は……。
「賛成!」
「意義なし!」
周りは賛同する。
「じゃあ、どういう風にする?」
「体育館で行う事にして、配置とかは?」
「軽音部にバックミュージックを流してもらうとか?」
「ディップ形式で、壁側に机を並べて置くとか?」
「その前に、日時はどうする?」
「日時は、クリスマスイブにでもヤるか……。」
イブか……。
って、ちょと待ってそれはまずいかも……。
「詩織、どうかした?」
私の顔を覗き込むように里沙が聞いてきた。
顔色で分かる里沙が恐いが。
「何でもないよ。時間は、夕方の五時ぐらいからでいいかな?」
自分から提案しながら、明らかに動揺してる。
ヤバイかな。
準備とか有るから、デートどころじゃないよね。
「そうだな……。そのくらいの時間からでいいんじゃないか。」
「詩織も歌わないとね」
里沙が言う。
「エ~。私も歌うの? 何でよ。」
不満を口にする私。
「今年の学祭で歌ってたんだから、その延長でね。」
「それって、優兄達に迷惑じゃ……。」
私がいいかけて。
「大丈夫。優基さんには、あたしから頼むから……。」
って、里沙が自信満々に遮った。
ハァ~。
それってさぁ音合わせしながら、パーティーの準備しなきゃいけないじゃん私。
忙殺し過ぎでは……。
「とりあえず、ポスター書くから、用紙頂戴。」
柚樹ちゃんが言う。
まぁ、掲示は早めがいいけどさ。
私は、席を立って用紙を七枚取りに行く。
それを渡すと、柚樹ちゃんと凌也は、その用紙に決まった事柄をマジックで書いていく。
「後は、制服で、ダンパはつまらないよなぁ~」
との意見に。
「そうだね。ちょっとおめかしでってことで、派手にならない感じの服装でって、付け足しておいて。それから、学校側にも許可をもらわないとね」
私が言うと。
「俺、今から聞いてくるな。」
そう言って、佐久間君が生徒会室を出ていく。
「予算どうかな?」
山本兄妹に振ると。
「立食と飾りつけだけなら大丈夫だよ。」
笑顔で帰ってくる。
「そっか……。」
「オードブルとケーキは買うとして、サンドウィッチぐらい手作りする?」
柚樹ちゃんが提案してきた。
「そうだね。手作りパーティーにしようか。家庭科室を使わせてもらえたらいいのだけど……。」
「じゃあ、それも先生に聞かないとね。あたしが行くよ。」
里沙が、勢いよく席を立って出ていく。
「後は、手伝ってくれる人を集めないとね。」
やること一杯だよ。
「体育館の使用許可もらってきた。」
ドアが勢いよく開いて、佐久間君が大きい声で言う。
「よし。それじゃあ、後は軽音部にお願いするだけでいいよね。」
私は、そう言うと立ち上がった。
時間もそこそこ来てたので、今日はここで解散することにした。
私は里沙が戻ってくるまで、生徒会室で待っていた。
どうしようかな……。
護になんて言おう。
「ただいま。って、あれ皆は?」
里沙が部屋に入るなりにキョトンとした顔をする。
「今日は、もう解散にしたの。で、どうだった?」
「OKもらえたよ。火の取り扱いだけ気を付けなさいって。」
「よかった……。じゃあ、帰ろっか」
私達は、それぞれ鞄を持つと部屋を出た。
部屋を出ると、護と優兄が待っていた。
「あれ、二人で待っててくれたんだ」
里沙が、二人を交互に見て言う。
私は、部屋に鍵をかける、
「ああ。他のメンバーが出て行ったのを見たから、終わったのかと思って、来てみた。」
優兄が、里沙の頭をポンポン叩く。
「じゃあ。私、鍵を返しに職員室に行くから……。」
その場を後にしようとしたら。
「こら、待て。オレも一緒に行くから……。」
護が、追ってきた。
どうしよう。
顔が、あげられない。
でも、言わなきゃいけないよね。
楽しみにしてたんだから……。
「護、ごめんなさい。クリスマスイブのデートなんだけど、出来なくなっちゃった。」
私は、怒られるのを承知でそう口にした。
「うん。なんとなくわかってた。」
エッ……。
驚いて護の方を見る。
「詩織は知らなかったみたいだけどな。オレ毎年誘われてたから、クリスマスパーティーに出てた。生徒会企画だから、詩織は、一日中準備で追われるのもわかってるから……。でも、クリスマスは、デートしような。」
そう言って、私の頭を抱き寄せる護。
「うん。」
飛びっきりの笑顔を護に見せる。
「……で、今年は、何するんだ?」
「エッと……。ダンスパーティーだよ。音楽は、軽音部に任せようと思ってる。そのせいで私も歌う羽目になったけど……。」
先程決まった事を口にする。
「マジかよ。オレも、出ないといけないじゃん。」
睚を下げて言う。
「心配?」
「そりゃあ、心配だよ。詩織が歌うとなると、結構な人数が集まるんだろうし。告知するのか?」
「それはしない。そんな事したら、私が楽しめないじゃん。」
って言うか、多分裏方の方で忙しいと思うけど……。
「じゃあ、詩織が歌ってる間は、壁際にでも居るか……。」
エッ……。
「可愛い彼女のが、頑張ってる姿を見ないとな。」
護が笑顔で言う。
そんな護に抱きついた。
「オレにとっては、高校最後のパーティーだしな。」
そっか……。
最後のパーティーか……。
じゃあ、思いっきり楽しんでもらわないといけないな。
「それに、心配なんだ。詩織にここぞと寄ってくる奴が居るからな。」
護が、聞き取りにくい声で言う。
「その日は、朝から準備なのか?」
「そうなると思う」
飾り付けにサンドウィッチ作り、テーブルのセッティング、ステージの準備。
ハァ~。
気が重いけど、三年生には、楽しんでもらいたいから、頑張らないと。
改めて、気合いを入れる。
「詩織。気合い入れ過ぎて、倒れるなよ。それだけが、心配。」
護が、優しい声で言う。
「うん。気を付ける。」
「本当か? 前みたいなことになるなよ。」
「アハハハ……。」
乾いた笑いを浮かべる。
「じゃあな。」
軽く唇を重ねて、護は帰っていった。
自分に部屋に入って、鞄を置くと優兄の部屋に行く。
コンコン。
ドアをノックすると。
「入れば。」
優兄の声が響く。
私は、ドアを開けて入ると。
「里沙から、話は聞いたよ。まぁ、息抜きになるから、受けるよ。って言うか、面白そうだって、他のメンバーも言ってる。」
って、部屋に入るなり言ってきた。
「それから、後輩達には、俺から言っておくよ。時間、何時から? 俺等、最近楽器触ってないから、その前に音合わせしたいから……。」
「17時始まりだから、16時ぐらいから音合わせでいいかな。私もその前に準備があるし……。」
「OK、その時間で、皆に伝えておくよ。」
「優兄、ありがとう」
私は、優兄に抱くつく。
「いいよ。たった一人の妹の為だし、里沙も、俺の演奏が聞きたがっていたしな。」
って、私の頭をポンポン叩いた。
後半の方が、メインだろうな。
何て思いながら。
「本当にありがとう、優兄」
もう一度、お礼を言う。
準備に忙しく動いていたら、あっという間に当日を迎えることになった。
私は、朝から忙しく動き回っていた。
会場の準備は、昨日のうちにある程度、仕上がっていた。
細かい部分を残して……。
私は、その所を細かくチェックしていく。
暗幕を下ろして、照明の点検をする。
天井を見上げて、球切れしてるところはないな。
証明を切り、暗幕をあげる。
後は、飾り……。
ステージには、ツリーを飾り付けて、机には、テーブルクロスを敷、クリスマス仕様の紙ナプキンや紙皿、コップを重ねて並べてある。
オードブルが届くのは、十六時半。
その間に、サンドウィッチを作らなきゃ。
「佐久間君、後頼んでもいい?」
「OK、やっとく。」
私は、体育館を佐久間君に任せて、家庭科室向かった。
家庭科室では、クラスの女子に頼んで、里沙、忍ちゃん、柚樹ちゃんがサンドウィッチ作り奮闘中。
「お疲れさま。皆ごめんね。せっかくの休みなのに手伝わせちゃって……。」
「いいよ、どうせ暇してたから。」
「こういうの楽しいから、大丈夫だよ。」
「皆、ありがとう。感謝してます」
私は、その場で頭を下げる。
「皆が、頑張ってくれるから、僕達も益々頑張らないと行けないと思わされたところだよ」
柚樹ちゃんが、笑顔で言う。
「ホントだよね。何人来るか、わからないから、結構な数要るし、皆に手伝ってもらえるだけでも、ありがたいよ。」
里沙が言う。
「詩織。今日の舞台挨拶頑張ってね。」
「って言うか、歌うんだってね。そっちも楽しみにしてるから。」
あれ、そんな話したっけ……?
私が、首を傾げてると、里沙が舌を出す。
「里沙、喋ったの?」
「だって、今日の事だし、言っても大丈夫かなって思って……。」
しょうがないな。
「歌う曲って決まってるの?」
「それは、まだ。これから音合わせするから、その時に決めると思うけど……。」
「そうなんだ。衣装とかは?」
「それは、内緒だよ。」
私は、口に人差し指を当てて言う。
「楽しみにしてるよ。」
「うん。この事は、他の人には話さないでね。サプライズにしたいから。」
何て、話ながら、サンドウィッチを作り上げていった。
十六時前に体育館に戻ると、優兄達が、スタンバイしていた。
私は、慌ててステージに駆け寄って。
「今日は、本当にすみません。皆さん忙しいのに……。」
挨拶すると。
「いいよ。楽しそうだし、息抜きにもなるから、逆に誘ってくれてありがとう。」
皆が笑顔で言ってくれて、一安心して音合わせをした。
私達の音合わせは、時間ギリギリまで続いた。
なにせ、久し振りだっただけに、感覚を取り戻すのに時間がかかった。
「詩織、そろそろ時間だよ。」
里沙の声で、練習を終わらせる。
「早く、着替えてきて。会長が入り口を開けるって、決まりがあるんだから。」
里沙が、催促する。
そんな決まりあったの?
サンタ服に着替える。
このスカート、丈短すぎだよ。
こんなの護が見たら、また怒るかも……。
何て思いながら、急いで体育館の入り口に向かう。
「遅い! 皆、待ってる」
拓人君が怒鳴る。
「ごめん」
私は、一言謝って、息を整え皆の顔を見渡し、頷く。
それと同時に体育館の入り口を開けた。
私は、頭を下げて。
「いらっしゃいませ!」
笑顔で、向かい入れたのだった。
結構な人数が集まったんだな。
オードブル、足りるかな?
飲み物、足りてるかな?
私は、そればかりを気にしていた。
「詩織ちゃん。そろそろ挨拶。」
忍ちゃんが、私の肩を叩いて言う。
私は、マイクを持ってステージに上がる。
「今日は、生徒会主催クリスマスダンスパーティーに足を運んでくださり、ありがとうございます。今宵は、皆様楽しんでいってください。」
私は笑顔で挨拶を済ませて、舞台袖に引っ込むと、直ぐに着替えに向かった。
今日の衣装は、オフホワイトのシャツに赤と緑のチェックのネクタイを緩く結び、黒のショートパンツ。黒のハイソックスにパンプス。
腕には、お守り代わりに護からもらったブレスレット。
髪は、サイドアップにして、星形のイヤリングをつける。
鏡で、最終チェックをする。
今日は、ゲストがメインなので、こんな感じかな。
私は、自画自賛しながらステージ横に戻った。
「詩織。さっき、護が怒ってたぞ。足見せすぎだって……。」
優兄が報告してくる。
「って、その格好も護が怒るもと?」
「それは、大丈夫だよ。前もって、護に見せてるし、許可もらってるから。」
「それならいいんだが。」
「詩織ちゃん、可愛いよ。」
結衣さんが、いきなり抱き締めてきた。
エッと……。
「ありがとうございます。結衣さんも綺麗です。」
私も結衣さんに言い返す。
綺麗すぎて、見とれていたのだ。
「ありがとう。」
結衣さんが、クスクス笑う。
「ほら、出番だ。行くぞ。」
健さんが、私達に声を掛けてから、ステージに出て行く。
私も、ステージに出ようとしたら。
「お前は、最後で良いよ。イントロが流れてからも十分、間に合うしな。」
優兄はそれだけ言うと出て行く。
それぞれが、ポジションに着いたところで、健さんがカウントを出した。
私は、それに合わせて、大きく深呼吸して、ステージに出た。
歌いながら、護を探す。
壁にもたれながら、私の歌を聞いてる。
中央でも、それに合わせるようにして、ダンスしてる。
私は、ステージ上で皆が楽しんでいるのを見ながら、歌う。
良かった。
楽しんでもらえてる。
私は、安心して歌い続けた。
もう一度、護の方を見ると、いつの間にか女の子に囲まれていた。
一年から三年生まで入り交じって……。
やっぱり、モテモテだね。
妬けちゃうな。
でも、私は、もてなす方なので、文句は言えない。
とりあえず、今は歌に集中した。
ステージが終わり、着替えに行こうとしたら。
「詩織、着替えてる暇ないよ。手伝って!」
里沙が、私の腕を引っ張る。
そして、そのままフロアーに向かって、裏方に専念しようとしたのだが、よりにもよって、チークタイムになってしまい、男子生徒が、こぞって私の所に来て、一緒に踊って欲しいと囲まれてしまった。
「エ~っと……。」
どう、断ろうかと言葉を選んでる時だった。
いきなり腕を引っ張られて、バランスを崩し、その胸の中に納まる。
顔をあげると護の姿が目に入る。
「悪いが、こいつはオレのだから。」
護が、私の肩を抱きながら、その場から連れ出してくれた。
「護、ありがとう。」
「良いよ。今のうちに見せびらかせておかないとな。」
護が笑顔で言う。
「ついでに踊るか。」
そう言って、護のエスコートで、中央に出向く。
「護。私、踊れないよ。」
小声で言うと。
「大丈夫。オレに体を委ねてくれれば。」
護の手が、私の腰に回される。
私は、護の厚い胸板に手を置く。
「それでいい。」
護が、耳元で言う。
「サンタの格好も可愛かったけど、他の男共の目が足に注がれてたのが気に入らない。」
膨れっ面で言う護に対して。
「仕方ないじゃんか。生徒会メンバーで決めた事なんだから……。それに今日はもうサンタの格好はしないから……。でも、裏方の仕事しないとね」
クスクス笑いながら、私は答えた。
「そうか……。ならいいけど」
護が、私の額にキスを落とす。
「護?」
私が、顔をあげると目線が合う。
そして、唇に柔らかい感触。
護の唇が、重なってる。
皆が見てる前で、長い口付け。
「ん……」
息苦しくなって、護の胸を軽く押す。
唇が、ゆっくりと離れる。
「護…」
「お前は、オレのなんだからな。よく覚えておけよ。」
護が、笑いながら言う。
「はい。重々承知してます。」
クスクス笑いながら答えた。
「愛してる、詩織。」
護の腕の力が込められる。
「私も、愛してます。」
私は、護の唇にそっとキスをした。
周りに居るのにお構いなしとは……。
これで、いいのかなぁ……。
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