22 / 47
本編
21話 ダンスパーティー
しおりを挟むテストが終わり、生徒会室でクリスマスパーティーの打ち合わせを始める。
「毎年恒例のクリスマスパーティーの事なんだけど、佐久間くんが、ダンスパーティーにしようと言ってるんだけど、皆はどう思う?」
恒例だったとは、知らなかったよ私は……。
「賛成!」
「意義なし!」
周りは賛同する。
「じゃあ、どういう風にする?」
「体育館で行う事にして、配置とかは?」
「軽音部にバックミュージックを流してもらうとか?」
「ディップ形式で、壁側に机を並べて置くとか?」
「その前に、日時はどうする?」
「日時は、クリスマスイブにでもヤるか……。」
イブか……。
って、ちょと待ってそれはまずいかも……。
「詩織、どうかした?」
私の顔を覗き込むように里沙が聞いてきた。
顔色で分かる里沙が恐いが。
「何でもないよ。時間は、夕方の五時ぐらいからでいいかな?」
自分から提案しながら、明らかに動揺してる。
ヤバイかな。
準備とか有るから、デートどころじゃないよね。
「そうだな……。そのくらいの時間からでいいんじゃないか。」
「詩織も歌わないとね」
里沙が言う。
「エ~。私も歌うの? 何でよ。」
不満を口にする私。
「今年の学祭で歌ってたんだから、その延長でね。」
「それって、優兄達に迷惑じゃ……。」
私がいいかけて。
「大丈夫。優基さんには、あたしから頼むから……。」
って、里沙が自信満々に遮った。
ハァ~。
それってさぁ音合わせしながら、パーティーの準備しなきゃいけないじゃん私。
忙殺し過ぎでは……。
「とりあえず、ポスター書くから、用紙頂戴。」
柚樹ちゃんが言う。
まぁ、掲示は早めがいいけどさ。
私は、席を立って用紙を七枚取りに行く。
それを渡すと、柚樹ちゃんと凌也は、その用紙に決まった事柄をマジックで書いていく。
「後は、制服で、ダンパはつまらないよなぁ~」
との意見に。
「そうだね。ちょっとおめかしでってことで、派手にならない感じの服装でって、付け足しておいて。それから、学校側にも許可をもらわないとね」
私が言うと。
「俺、今から聞いてくるな。」
そう言って、佐久間君が生徒会室を出ていく。
「予算どうかな?」
山本兄妹に振ると。
「立食と飾りつけだけなら大丈夫だよ。」
笑顔で帰ってくる。
「そっか……。」
「オードブルとケーキは買うとして、サンドウィッチぐらい手作りする?」
柚樹ちゃんが提案してきた。
「そうだね。手作りパーティーにしようか。家庭科室を使わせてもらえたらいいのだけど……。」
「じゃあ、それも先生に聞かないとね。あたしが行くよ。」
里沙が、勢いよく席を立って出ていく。
「後は、手伝ってくれる人を集めないとね。」
やること一杯だよ。
「体育館の使用許可もらってきた。」
ドアが勢いよく開いて、佐久間君が大きい声で言う。
「よし。それじゃあ、後は軽音部にお願いするだけでいいよね。」
私は、そう言うと立ち上がった。
時間もそこそこ来てたので、今日はここで解散することにした。
私は里沙が戻ってくるまで、生徒会室で待っていた。
どうしようかな……。
護になんて言おう。
「ただいま。って、あれ皆は?」
里沙が部屋に入るなりにキョトンとした顔をする。
「今日は、もう解散にしたの。で、どうだった?」
「OKもらえたよ。火の取り扱いだけ気を付けなさいって。」
「よかった……。じゃあ、帰ろっか」
私達は、それぞれ鞄を持つと部屋を出た。
部屋を出ると、護と優兄が待っていた。
「あれ、二人で待っててくれたんだ」
里沙が、二人を交互に見て言う。
私は、部屋に鍵をかける、
「ああ。他のメンバーが出て行ったのを見たから、終わったのかと思って、来てみた。」
優兄が、里沙の頭をポンポン叩く。
「じゃあ。私、鍵を返しに職員室に行くから……。」
その場を後にしようとしたら。
「こら、待て。オレも一緒に行くから……。」
護が、追ってきた。
どうしよう。
顔が、あげられない。
でも、言わなきゃいけないよね。
楽しみにしてたんだから……。
「護、ごめんなさい。クリスマスイブのデートなんだけど、出来なくなっちゃった。」
私は、怒られるのを承知でそう口にした。
「うん。なんとなくわかってた。」
エッ……。
驚いて護の方を見る。
「詩織は知らなかったみたいだけどな。オレ毎年誘われてたから、クリスマスパーティーに出てた。生徒会企画だから、詩織は、一日中準備で追われるのもわかってるから……。でも、クリスマスは、デートしような。」
そう言って、私の頭を抱き寄せる護。
「うん。」
飛びっきりの笑顔を護に見せる。
「……で、今年は、何するんだ?」
「エッと……。ダンスパーティーだよ。音楽は、軽音部に任せようと思ってる。そのせいで私も歌う羽目になったけど……。」
先程決まった事を口にする。
「マジかよ。オレも、出ないといけないじゃん。」
睚を下げて言う。
「心配?」
「そりゃあ、心配だよ。詩織が歌うとなると、結構な人数が集まるんだろうし。告知するのか?」
「それはしない。そんな事したら、私が楽しめないじゃん。」
って言うか、多分裏方の方で忙しいと思うけど……。
「じゃあ、詩織が歌ってる間は、壁際にでも居るか……。」
エッ……。
「可愛い彼女のが、頑張ってる姿を見ないとな。」
護が笑顔で言う。
そんな護に抱きついた。
「オレにとっては、高校最後のパーティーだしな。」
そっか……。
最後のパーティーか……。
じゃあ、思いっきり楽しんでもらわないといけないな。
「それに、心配なんだ。詩織にここぞと寄ってくる奴が居るからな。」
護が、聞き取りにくい声で言う。
「その日は、朝から準備なのか?」
「そうなると思う」
飾り付けにサンドウィッチ作り、テーブルのセッティング、ステージの準備。
ハァ~。
気が重いけど、三年生には、楽しんでもらいたいから、頑張らないと。
改めて、気合いを入れる。
「詩織。気合い入れ過ぎて、倒れるなよ。それだけが、心配。」
護が、優しい声で言う。
「うん。気を付ける。」
「本当か? 前みたいなことになるなよ。」
「アハハハ……。」
乾いた笑いを浮かべる。
「じゃあな。」
軽く唇を重ねて、護は帰っていった。
自分に部屋に入って、鞄を置くと優兄の部屋に行く。
コンコン。
ドアをノックすると。
「入れば。」
優兄の声が響く。
私は、ドアを開けて入ると。
「里沙から、話は聞いたよ。まぁ、息抜きになるから、受けるよ。って言うか、面白そうだって、他のメンバーも言ってる。」
って、部屋に入るなり言ってきた。
「それから、後輩達には、俺から言っておくよ。時間、何時から? 俺等、最近楽器触ってないから、その前に音合わせしたいから……。」
「17時始まりだから、16時ぐらいから音合わせでいいかな。私もその前に準備があるし……。」
「OK、その時間で、皆に伝えておくよ。」
「優兄、ありがとう」
私は、優兄に抱くつく。
「いいよ。たった一人の妹の為だし、里沙も、俺の演奏が聞きたがっていたしな。」
って、私の頭をポンポン叩いた。
後半の方が、メインだろうな。
何て思いながら。
「本当にありがとう、優兄」
もう一度、お礼を言う。
準備に忙しく動いていたら、あっという間に当日を迎えることになった。
私は、朝から忙しく動き回っていた。
会場の準備は、昨日のうちにある程度、仕上がっていた。
細かい部分を残して……。
私は、その所を細かくチェックしていく。
暗幕を下ろして、照明の点検をする。
天井を見上げて、球切れしてるところはないな。
証明を切り、暗幕をあげる。
後は、飾り……。
ステージには、ツリーを飾り付けて、机には、テーブルクロスを敷、クリスマス仕様の紙ナプキンや紙皿、コップを重ねて並べてある。
オードブルが届くのは、十六時半。
その間に、サンドウィッチを作らなきゃ。
「佐久間君、後頼んでもいい?」
「OK、やっとく。」
私は、体育館を佐久間君に任せて、家庭科室向かった。
家庭科室では、クラスの女子に頼んで、里沙、忍ちゃん、柚樹ちゃんがサンドウィッチ作り奮闘中。
「お疲れさま。皆ごめんね。せっかくの休みなのに手伝わせちゃって……。」
「いいよ、どうせ暇してたから。」
「こういうの楽しいから、大丈夫だよ。」
「皆、ありがとう。感謝してます」
私は、その場で頭を下げる。
「皆が、頑張ってくれるから、僕達も益々頑張らないと行けないと思わされたところだよ」
柚樹ちゃんが、笑顔で言う。
「ホントだよね。何人来るか、わからないから、結構な数要るし、皆に手伝ってもらえるだけでも、ありがたいよ。」
里沙が言う。
「詩織。今日の舞台挨拶頑張ってね。」
「って言うか、歌うんだってね。そっちも楽しみにしてるから。」
あれ、そんな話したっけ……?
私が、首を傾げてると、里沙が舌を出す。
「里沙、喋ったの?」
「だって、今日の事だし、言っても大丈夫かなって思って……。」
しょうがないな。
「歌う曲って決まってるの?」
「それは、まだ。これから音合わせするから、その時に決めると思うけど……。」
「そうなんだ。衣装とかは?」
「それは、内緒だよ。」
私は、口に人差し指を当てて言う。
「楽しみにしてるよ。」
「うん。この事は、他の人には話さないでね。サプライズにしたいから。」
何て、話ながら、サンドウィッチを作り上げていった。
十六時前に体育館に戻ると、優兄達が、スタンバイしていた。
私は、慌ててステージに駆け寄って。
「今日は、本当にすみません。皆さん忙しいのに……。」
挨拶すると。
「いいよ。楽しそうだし、息抜きにもなるから、逆に誘ってくれてありがとう。」
皆が笑顔で言ってくれて、一安心して音合わせをした。
私達の音合わせは、時間ギリギリまで続いた。
なにせ、久し振りだっただけに、感覚を取り戻すのに時間がかかった。
「詩織、そろそろ時間だよ。」
里沙の声で、練習を終わらせる。
「早く、着替えてきて。会長が入り口を開けるって、決まりがあるんだから。」
里沙が、催促する。
そんな決まりあったの?
サンタ服に着替える。
このスカート、丈短すぎだよ。
こんなの護が見たら、また怒るかも……。
何て思いながら、急いで体育館の入り口に向かう。
「遅い! 皆、待ってる」
拓人君が怒鳴る。
「ごめん」
私は、一言謝って、息を整え皆の顔を見渡し、頷く。
それと同時に体育館の入り口を開けた。
私は、頭を下げて。
「いらっしゃいませ!」
笑顔で、向かい入れたのだった。
結構な人数が集まったんだな。
オードブル、足りるかな?
飲み物、足りてるかな?
私は、そればかりを気にしていた。
「詩織ちゃん。そろそろ挨拶。」
忍ちゃんが、私の肩を叩いて言う。
私は、マイクを持ってステージに上がる。
「今日は、生徒会主催クリスマスダンスパーティーに足を運んでくださり、ありがとうございます。今宵は、皆様楽しんでいってください。」
私は笑顔で挨拶を済ませて、舞台袖に引っ込むと、直ぐに着替えに向かった。
今日の衣装は、オフホワイトのシャツに赤と緑のチェックのネクタイを緩く結び、黒のショートパンツ。黒のハイソックスにパンプス。
腕には、お守り代わりに護からもらったブレスレット。
髪は、サイドアップにして、星形のイヤリングをつける。
鏡で、最終チェックをする。
今日は、ゲストがメインなので、こんな感じかな。
私は、自画自賛しながらステージ横に戻った。
「詩織。さっき、護が怒ってたぞ。足見せすぎだって……。」
優兄が報告してくる。
「って、その格好も護が怒るもと?」
「それは、大丈夫だよ。前もって、護に見せてるし、許可もらってるから。」
「それならいいんだが。」
「詩織ちゃん、可愛いよ。」
結衣さんが、いきなり抱き締めてきた。
エッと……。
「ありがとうございます。結衣さんも綺麗です。」
私も結衣さんに言い返す。
綺麗すぎて、見とれていたのだ。
「ありがとう。」
結衣さんが、クスクス笑う。
「ほら、出番だ。行くぞ。」
健さんが、私達に声を掛けてから、ステージに出て行く。
私も、ステージに出ようとしたら。
「お前は、最後で良いよ。イントロが流れてからも十分、間に合うしな。」
優兄はそれだけ言うと出て行く。
それぞれが、ポジションに着いたところで、健さんがカウントを出した。
私は、それに合わせて、大きく深呼吸して、ステージに出た。
歌いながら、護を探す。
壁にもたれながら、私の歌を聞いてる。
中央でも、それに合わせるようにして、ダンスしてる。
私は、ステージ上で皆が楽しんでいるのを見ながら、歌う。
良かった。
楽しんでもらえてる。
私は、安心して歌い続けた。
もう一度、護の方を見ると、いつの間にか女の子に囲まれていた。
一年から三年生まで入り交じって……。
やっぱり、モテモテだね。
妬けちゃうな。
でも、私は、もてなす方なので、文句は言えない。
とりあえず、今は歌に集中した。
ステージが終わり、着替えに行こうとしたら。
「詩織、着替えてる暇ないよ。手伝って!」
里沙が、私の腕を引っ張る。
そして、そのままフロアーに向かって、裏方に専念しようとしたのだが、よりにもよって、チークタイムになってしまい、男子生徒が、こぞって私の所に来て、一緒に踊って欲しいと囲まれてしまった。
「エ~っと……。」
どう、断ろうかと言葉を選んでる時だった。
いきなり腕を引っ張られて、バランスを崩し、その胸の中に納まる。
顔をあげると護の姿が目に入る。
「悪いが、こいつはオレのだから。」
護が、私の肩を抱きながら、その場から連れ出してくれた。
「護、ありがとう。」
「良いよ。今のうちに見せびらかせておかないとな。」
護が笑顔で言う。
「ついでに踊るか。」
そう言って、護のエスコートで、中央に出向く。
「護。私、踊れないよ。」
小声で言うと。
「大丈夫。オレに体を委ねてくれれば。」
護の手が、私の腰に回される。
私は、護の厚い胸板に手を置く。
「それでいい。」
護が、耳元で言う。
「サンタの格好も可愛かったけど、他の男共の目が足に注がれてたのが気に入らない。」
膨れっ面で言う護に対して。
「仕方ないじゃんか。生徒会メンバーで決めた事なんだから……。それに今日はもうサンタの格好はしないから……。でも、裏方の仕事しないとね」
クスクス笑いながら、私は答えた。
「そうか……。ならいいけど」
護が、私の額にキスを落とす。
「護?」
私が、顔をあげると目線が合う。
そして、唇に柔らかい感触。
護の唇が、重なってる。
皆が見てる前で、長い口付け。
「ん……」
息苦しくなって、護の胸を軽く押す。
唇が、ゆっくりと離れる。
「護…」
「お前は、オレのなんだからな。よく覚えておけよ。」
護が、笑いながら言う。
「はい。重々承知してます。」
クスクス笑いながら答えた。
「愛してる、詩織。」
護の腕の力が込められる。
「私も、愛してます。」
私は、護の唇にそっとキスをした。
周りに居るのにお構いなしとは……。
これで、いいのかなぁ……。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
【完結】要らないと言っていたのに今更好きだったなんて言うんですか?
星野真弓
恋愛
十五歳で第一王子のフロイデンと婚約した公爵令嬢のイルメラは、彼のためなら何でもするつもりで生活して来た。
だが三年が経った今では冷たい態度ばかり取るフロイデンに対する恋心はほとんど冷めてしまっていた。
そんなある日、フロイデンが「イルメラなんて要らない」と男友達と話しているところを目撃してしまい、彼女の中に残っていた恋心は消え失せ、とっとと別れることに決める。
しかし、どういうわけかフロイデンは慌てた様子で引き留め始めて――
離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。
しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。
私たち夫婦には娘が1人。
愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。
だけど娘が選んだのは夫の方だった。
失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。
事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。
再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。
ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました
宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。
ーーそれではお幸せに。
以前書いていたお話です。
投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと…
十話完結で既に書き終えてます。
あなたなんて大嫌い
みおな
恋愛
私の婚約者の侯爵子息は、義妹のことばかり優先して、私はいつも我慢ばかり強いられていました。
そんなある日、彼が幼馴染だと言い張る伯爵令嬢を抱きしめて愛を囁いているのを聞いてしまいます。
そうですか。
私の婚約者は、私以外の人ばかりが大切なのですね。
私はあなたのお財布ではありません。
あなたなんて大嫌い。
「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。
因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。
そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。
彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。
晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。
それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。
幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。
二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。
カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。
こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる