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本編
13話 生徒会メンバー
しおりを挟む護の勉強の邪魔になると思って、護との接触を絶っていた。
「詩織、何編んでるの?」
里沙が聞いてきた。
「護の為にマフラーを編んでるんだ。」
笑顔で答える。
放課の合間に不得意ながらも編み物に勤しんでいたのだ。
「そっか、もうすぐクリスマスだもんね。あたしも何か、考えなきゃ。」
「優兄に?」
「そうだよ。何がいいかなぁ?」
里沙は、私に聞いてきた。
「里沙が、一生懸命考えたものなら、何でもいいんじゃないかな。」
あの兄の事だ。里沙から貰えるものは、何でもいいに決まってる。
「そうだね。じゃあ、一生懸命に考えてみる。」
そう言って、里沙が離れていく。
私は、護の事を想いながら一目一目編んでいく。
護、喜んでくれるかな?
何て不安に思いながらもせっせと編んでいく。
『二年C組の水沢詩織さん。大至急、生徒会室に来てください』
と、いきなり校内放送で、生徒会から呼び出されてしまった。
クラス中が、一斉に私の方を向く。
えっと。
私、何かしたかな……。
周りがコソコソ此方を見て言ってる。
里沙は、心配そうな顔で私を見ている。
首を傾げながら、生徒会室に向かった。
この時期の生徒会の呼び出しが、あんな事だとはつい知らずにノコノコと歩いていた。
コンコン。
生徒会室のドアをノックして。
「失礼します。」
と中に入る。
そこには、生徒会役員が勢揃いしていた。
尻込みしそうだった。
「わざわざ呼び出してすまない。」
生徒会長直々に言われ、恐縮してしまう。
「一体、何のご用でしょう?」
私は、恐る恐る聞いてみる。
「来年度の生徒会長を水沢さんに決定したので、その報告と引き継ぎをと思ってね。」
淡々と告げる会長。
「エッ……、嘘ですよね」
半信半疑でいる私が聞き返すと。
「嘘ではありませんよ。ここに居る役員全員一致で、水沢さんに決まりました。」
生徒会長の言葉に役員が、頷く。
本当の事なんだ。
「わかりました。精一杯務めさせて頂きます。」
と、承諾したのだ。
断れる雰囲気では無かったのだ。
すると、回りで拍手が起こる。
「……ってことで、明日からみっちりと引き継ぎさせてもらうから。覚えること多いから、メモ持参な。」
会長の言葉に背中に冷や汗が流れた。
本当に私に務まるのだろうか?
という、不安がよぎったからだ。
「他の役員は、自分が信頼出来る奴を選べよ。」
そう言って、会長が肩を叩いてきた。
そっか。
うちの学校、生徒会役員の選挙が無いのは、前任役員が会長を決めてるからなんだ。
改めて、凄い役を引き受けてしまった気がする。
「まぁ、水沢さんなら、大丈夫だと思うよ。学校中の生徒からも人気あるしね。」
その言葉に頷くメンバーだったが。
私って、そんなに人気あったけ……。
自分で自覚が無い為、何も言えない。
「そう言うことで、よろしくな。」
会長に言われて。
「わかりました。」
って、答えていた。
私は、頭を下げてから生徒会室を出た。
教室に戻ると、里沙が待っていた。
「お帰り。生徒会が、何の呼び出し?」
不思議そうに聞いてきた。
「それが……。」
私は、生徒会室での事を里沙に話すと。
「凄いじゃんか。じゃあ、次の生徒会長は、詩織なんだ!」
って、大声で言うから、クラス中の注目を浴びることに……。
「……という事で、里沙は副会長!」
私の言葉に。
「エーーー。あたしが、副会長!」
またもや大きな声で叫ぶ里沙。
イヤ、まあ驚くだろうけど、一番信頼できる相手って言ったら、一番に浮かんだのが里沙だったんだから仕方ないじゃん。
「今の会長に言われたの。信頼できる人を自分で選べって……。一番の親友の里沙がやらなくて、誰を選べばいいの?」
私は、里沙の目を見て言う。
「あたしでいいの?」
「里沙がいいの。って言うか、里沙しかいないじゃん。」
私の言葉に。
「わかりました。あたし、桜里沙、任命されたからには副会長、頑張ってやらせてもらいます。」
覚悟を決めたように言う。
「問題は、残りの役員をどうするかなんだよね。」
そんな話をしてたら。
「水沢。俺やる。お前が悩んでるなら、立候補するわ。」
佐久間君が、横から割って入ってきた。
「エッ…と。」
一番嫌煙したい人から立候補されるとは、思わず私が戸惑ってると。
「いいじゃない。あたしと同じ副会長でいい?」
里沙が、即決する。
私と彼の事を話していなかったのが仇となってしまった。
「OK。よろしくな」
軽く挨拶してきた。
佐久間君に続いて、クラスの皆が手を上げだす始末で、私はどうしたらいいかわからずにいた。
すると、里沙と佐久間君が、仕切りだす。
全く、頼もしい人達。
「残りは、男女二人ずつなんだけど。会計は、理数系が得意な奴。誰か居ないか?」
佐久間君が聞く。
その騒動で、クラス以外の人達まで入ってきて、教室内は、人だかりの山となった。
その中で、ある人と目が合った。
「拓人君。やってくれるかな、会計?」
私が聞くと。
「面倒くさいけど、詩織ちゃんの為なら仕方ねぇか……。」
嫌そうな顔はしていたけど、引き受けてくれた。
「その代わり、こいつもいいか?」
拓人君が突き出したのが、忍ちゃんだった。
「忍ちゃん、いいの?」
忍ちゃんは、首を縦に振る。
「いいよ。詩織ちゃんの為になるなら、私頑張るよ。」
笑顔で答えてくれる。
「……っで、会計役員が決まったな。後は、書記なんだが…」
佐久間君が、言い掛けた時だった。
「詩織。これ、何の騒ぎ?」
人垣を分けながらやって来る人物が……。
声を聞けば、すぐにわかる。
「佐久間君、里沙。後、お願いできる。」
「オッケ」
私は、二人の返事を聞いて護のところへ行く。
「どうしたの?」
私は、なんでもないように繕う。
護に心配させたくないから、生徒会の事は黙っておきたい。
「お前こそ、この人垣何? どうして、こんなに集まってるんだよ。オレ、心配……。」
顔を見れば、少しタレ目がちになっており、言葉通りの心配してるんだなと思わせられる。
「何でもないよ。ちょっとしたお祭りみたいなものだよ。」
私は、護の腕を引っ張って渡り廊下へ行った。
「護、勉強頑張ってる?」
私は、当たり障りの無い言葉を口にする。
「おうよ。お前の為にもな。」
そう言って、頭を撫でてくる。
「頑張り過ぎて、充電しに来たら、あの騒ぎだったから、何かあったのかと思って……。」
そっか。
あの日以来、会ってなかったから……。
「ちょっとだけ、ギュッとさせてくれ。」
それだけ言うと、頷く前に護の腕の中に抱き締められていた。
そして、耳元で。
「お前は、オレのだからな。絶対に他の奴のところへ行くなよ。」
って、釘を指す。その言葉に胸がキュンって高鳴る。自分は、彼に求められてるんだって安心感が増す。
「うん、大丈夫だよ。私は、護の事しか見ていないから……。」
私が、笑顔で答える。
「そっか……。そういや、詩織って。なんでオレの事を好きになったんだ?」
護が、急に聞いてきた。
「今、言わなきゃダメ?」
「聞きたい!」
即答の返事と護の真剣な顔にちょっと、恥ずかしいけど話すことにした。
「私が、高校に入る前からかな。」
私は、当時を思い出すかのように口にした。
「そんなに前から?」
護が驚いてる。
「うん。中学三年生の高校見学の時。私と里沙と他の二人の四人で、優兄の先導で学校の下見がてら、校内を廻ってた時に窓越しにグランドで、黙々と練習に打ち込んでる姿に一目惚れしたの。こんなにも一つの事に打ち込んでる人、余り見なかったから。高校に入って、優兄に名前だけ教えてもらってた。そして、凄く優しい笑顔の人なんだって思ったら、急に胸の鼓動が早くなって、あっ私、本当に好きなんだなって思って……。護から、告白された時、ビックリしたのと同時に物凄く嬉しかった。私を見つけてくれたって。」
私の顔に熱を帯びてくる。
「オレの事、そんなに見ててくれたのか?」
護が、私の顔を覗き込んできた。
ゆっくりと頷く事しかできなかった。
「あの時も……。」
「あの時?」
不思議そうな顔で私を見る。
「教室で、初めて顔を会わせた時。あの時も……あの時以前から、教室からずっと見てた。プレーの良し悪しで、一喜一憂してるとこ。先輩に怒鳴られながら、頑張ってる姿。全部見てた。」
私は、自分でも怖いと思いながらも口にしてた。
「気付いたら、ずっと目で追っていたんだよ。」
沈黙が痛い。やっぱり、引いちゃうよね。
「……そっか。オレ、詩織の事、独り占めしていいんだな。」
護は、確かめるように言う。
「そうだよ。だから、勉強頑張ってね。」
私は、護の頬に軽く口付けをする。
「大好き。」
今の素直な気持ちを口にする。
「オレも、愛してる」
そして、唇と唇が軽く触れる。
「じゃあな。今日も送ってやれなくてごめん……。」
申し訳なさそうに言う護に。
「気にしなくていいよ」
私の言葉を聞いて、護は行ってしまった。
私は、その背中を見送った。
教室に戻ると、まだ揉めていた。
「どうしたの?」
「それがさぁ、なかなか良い人材が見つからないんだ。」
二人が、困ったように言う。
私は、教室を見渡す。
「柚樹ちゃん、やってくれないかな?」
後ろの方でこっそりに覗いてた、柚樹ちゃんに声を掛ける。
「僕ですか? やれるかな……。」
自信なさげに言う柚樹ちゃんに。
「柚樹ちゃんなら大丈夫。だから、お願いします。」
そんな柚樹ちゃんに私は頭を下げる。
「僕でよければ……。こちらこそお願いします」
柚樹ちゃんが、やんわりと言う。
後は……。
「凌也。お願いできる?」
目が合った、凌也にお願いしてみる。
「俺かよ……。」
って、滅茶苦茶嫌そうだ。
「お願いします。」
私が、深々と頭を下げると。
「仕方ねぇか。水沢の兄貴達に世話になってるしな……。」
渋々、了解してくれた。
「ありがとう。」
私は、笑顔でお礼を言う。
「そんな笑顔見せられたら、断れねぇって。」
凌也が、恥ずかしそうに言う。
メンバーが決まったところで、黒山が散って行った。
「来年度の生徒会メンバーは、会長が私、水沢詩織。副会長が、佐久間和也、桜里沙。書記が、板垣凌也、松本柚樹。会計が山本拓人、山本忍で、よろしくお願いします。」
私は、早速メモ帳に役員名を書く。
「とりあえず。自己紹介だけしようか……。私、会長をやらせて頂きます、水沢詩織です。よろしく願います。」
私が言い終わると。
「副会長の佐久間和也です。以後、お見知りおきを。」
佐久間君が笑顔で辺りを見渡して言う。
「同じく、副会長の桜里沙です。よろしく。」
里沙が真顔で言う。
「書記に命じられた、板垣凌也です見た目は怖いかもしれないが、根は優しいので怖がらないでください。」
凌也が、照れながら言う。
まぁ、柔道遣ってて体格もいいし、顔もそこら辺の強面みたいだからね。
「同じく、松本柚樹です。皆の足を引っ張らないように頑張ります」
恥ずかしそうに言う、柚樹ちゃん。
大人しい女の子だけど、人一倍の努力家だったりする。
「会計の山本拓人です。こっち、双子の妹の忍です。詩織ちゃんの為に頑張ります」
拓人君が、忍ちゃんの分まで挨拶する。
忍ちゃんが、軽く頭を下げた。
この双子は、うちのご近所さんで優兄を慕っている拓人くんがチョクチョク忍ちゃんを連れてうちに来てたので、仲は良い。
結局、私が信頼してるメンバーが、集まった。
約一名を除いて……。
「ごめんね。来年一年、皆に迷惑を掛けちゃうけど、お願いします。」
私は、改めて頭を下げた。
「良いよ。他ならぬ、水沢の為だから、気にするな。」
って言ってくれる。
「本当にありがとう。」
皆の気持ちが嬉しい。
「ところで、詩織。このメンバーって、詩織とどう繋がってるの?」
里沙が、不思議そうに聞いてきた。
「山本兄弟は、里沙も知ってるよね。」
「そうだね。学校の下見も一緒だったもんね。」
里沙の言葉に双子が頷く。
「山本兄妹は、優兄の子分って言うか、幼馴染みで、凌也は、双子の兄達と同じ道場に通ってるの。よく顔を会わせるから知って。柚樹ちゃんは、私と同じ塾に通ってて、そこで知り合った。」
柚樹ちゃんの方を向くと、恥ずかしそうに頷いた。
「そっか。だから、皆詩織の事知ってるんだ。」
里沙が、納得してる。
「……で、水沢。俺達これからどうすれば良い?」
そうだな。
「私は、会長から明日から来るように言われてるけど、他のメンバーの事は、聞いてないなぁ……。」
私が、首を傾げると。
「だったら、皆で押し掛けるか。」
凌也が言う。
一番面倒臭いって顔してたヤツとは思えない発言だよ。
「そうだな。それぞれに引き継ぎがあると思うし、早めに覚えた方がいいだろ。」
拓人君も言う。
「じゃあ、明日から、全員で生徒会へ押し掛けるか。」
佐久間君が、仕切りだした。
「そうだね。メモ持参で伺おう」
里沙も柚樹ちゃんも忍ちゃんも頷いてる。
「じゃあ、今日は、ここで解散ね。明日はよろしく。」
私が、言うと皆が帰路につく。
「詩織ちゃん。久し振りに一緒に帰ろ。」
山本兄妹が言ってきた。
「そうだね。そうしようか。」
私は、二人に向き直って言う。
「里沙も一緒に……。」
と言いかけた、その時。
「ごめん。あたしは、優基さんと帰るから。」
教室の入り口で、ひょっこりと顔を出す優兄。
里沙は、そそくさと優兄の所に行ってしまった。
そんな行動をする里沙に拓人君も忍ちゃんも唖然としていた。
「しかし、優基さんの彼女が、里沙ちゃんだなんて…」
二人して、ビックリしてる。
優兄を慕っている二人からしたら、当然だろう。シかも、相手は里沙だし……。
「そうでしょ。私も初めて知った時、ビックリしたもん。でも、仲良しだよあの二人。」
私の言葉に。
「そうみたいだね。優基さんの笑顔、物凄く優しかったし……。」
「あの優基さんでも、あんな顔するんだ。」
二人共、戸惑ってる。
「そういえば、詩織ちゃんも彼氏居るよね。」
忍ちゃんに言われて。
「うん。」
改めて聞かれると、恥ずかしい。
「嘘。俺、詩織ちゃん狙ってたのに……。」
拓人君が、茶化すように言うから。
「本当かな?」
冗談ぽく聞くと。
「本当だよ。拓人ったら、毎日詩織ちゃん可愛いって、私の所まで言いに来るんだもん」
忍ちゃんが、フォローする。
その言葉に眼が点になる私。
冗談だと思ってたんだけど……。
「忍。それは言うなって……。」
拓人君の顔が、徐々に赤くなっていく。
それを見て、本当なんだって、思わされる。
「ごめんね、拓人君。」
私が言うと。
「それ以上言うな。余計に落ち込むだろう。」
拓人君が、どんどん落ち込んでいく。
「詩織!」
フと呼ばれて振り返ると、護が居た。
何で?
塾があるんじゃ……。
「護。どうしたの?」
聞く耳を持っていないみたいで。
「詩織。何で、こんなに遅いんだよ。オレに何か隠してる? それに、そいつ誰?」
私に対して、質問攻めだ。
また、妬きもちですかねぇ。
「ちょっと待って。彼は、山本拓人君。優兄の友達で、近所に住んでるから、一緒に帰って来ただけだよ」
私が言うと。
「じゃあ、何でこんな時間なんだ!」
攻めるように言ってくる。
「図書室で、勉強してたの。期末試験も近いし……。」
生徒会の事で遅くなったなんて言えない。
「そうなんです。私達、図書室にある個室を借りて、勉強してたんです。詩織ちゃんに色々と教えてもらいながら……。」
忍ちゃんが、助け船を出してくれる。
「本当に?」
護が、私の顔を覗き込んでくる。
「本当だよ。何で、護に嘘つかないといけないのよ。」
真顔で返すと。
「前にもあったから、また隠し事をされてるのかと……。」
うっ、鋭い。
「大丈夫だって。護、心配しすぎだよ。」
私が言うと、思いっきり抱き締められた。
拓人君も忍ちゃんも居るのに……。
「詩織、心配させ過ぎ。オレ、ずーっと、ドキドキしっぱなしだよ。受験どころじゃない……
。いっそうの事、お前の事閉じ込めたい。」
耳元で言われて、ドキッとした。
顔を上げると、護の顔が儚げで、私は、その憂いのある顔を見ていたら、護の頬に手を添えて微笑んだ。
「護の気持ち、凄く嬉しい。でも、そんな事したら、犯罪者になっちゃいますよ。私は、護の夢を叶えて欲しいから、邪魔しないようにしてたのだけど……。」
「邪魔じゃないよ、詩織が居ないと寂しい……。」
「護……。何、弱気になってるのよ。護には、凛として欲しいな。そして、堂々と護の所にお嫁さんとしていきたいなぁ。」
私は、語尾を小声で言うと、護の驚いた顔をし、みるみる赤くなる。
「それ、本当? 約束してくれる?」
嬉しそうに耳元で言うから、私は頷いた。
「やったー。その約束だけで、オレ頑張れる。」
そこには、笑顔の護が居た。
「帰ろうか。送るよ。」
護が、私の手を繋ぐ。
「ごめんね。拓人君、忍ちゃん。ビックリしたよね?」
私は、二人に向かって謝る。
「良いよ。詩織ちゃんの彼氏?」
忍ちゃんが、耳打ちする。
「そうだよ。紹介してないよね。私の彼、玉城護。」
私が護の腕を引っ張って、忍ちゃんと拓人君に言う。
「始めまして、玉城です。拓人君だっけ、驚かせてごめん。」
護が、恥ずかしそうに自己紹介する。
「始めまして、山本拓人です。玉城さんって、三年生ですよね。何で、詩織ちゃんと付き合ってるんですか?」
拓人君が、不機嫌そうに言う。
「だって、あの双子の兄ちゃん達が、よく許したなと……。」
拓人君が、不思議に思うのは、仕方ないよね。
私は、護と目を合わせる。
「そうだな。詩織を気にしだしたのが、去年の文化祭の時のステージで、一目惚れした。親友の優基にも相談してた。告白する時に背中を押してくれたのも優基だった。告白してから、詩織の兄貴だって知らされて、オレもビックリした。」
護が、淡々と話す。
「双子の兄貴が居る事も詩織から聞いてたから、少し不安もあったが、いつの間にか認められてた感じかな。」
再び、視線が交じる。
「そうなんだ。じゃあ、俺の入る隙無いじゃんか……。」
拓人君の顔が、落胆する。
「良いなぁ、詩織ちゃん。こんなにも思ってくれる人がいて。私も欲しいなぁ……。」
忍ちゃんが、羨ましそうに言う。
「大丈夫だよ。忍ちゃんにも、ちゃんと出会うことが出来るよ。」
私は、忍ちゃんの背中をポンと軽く叩いた。
「じゃあね、バイバイ」
拓人君と忍ちゃんに手を振る。
二人と別れて、護と歩く。
「そうだ、護。何で、あんな所に居たの?」
不思議に思って、聞いてみた。
「オレさぁ。さっきの人だかりの山を見て、また詩織を取られるんじゃないかって思って、お前の家に行った帰りだったんだよ。」
なっ……。
ちょっと、恥ずかしそうに言う護に思わず抱き付いちゃった。
「詩織……、ちょっと……。」
「護、可愛すぎる。それって、妬きもちかな?」
私が聞くと。
「悪いかよ。」
って、ぶっきらぼうに答える。
顔は、真っ赤になってるけど……。
やっぱり、可愛いよ。
私は、そんな護の頬に口付けた。
すると、さらに赤くなっていく護の顔。
「不意打ち禁止。」
そして、唇が重なる。
「護、ごめんね。」
「何に対してのごめんなのかな?」
「色々だよ。私、護の事誰よりも愛してるから、絶対に目標の大学、受かってよね。」
笑顔で言うと。
「そうだな。絶対に合格してみせるよ。でも、息抜きは、詩織にさせてもらうからな。」
護の笑顔が戻ってきた。
「約束だよ。」
「約束。」
そう言って唇を再び重ねた。
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