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番外編
新年会…遥
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亜耶と出会った翌年の新年会の様子です。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
無理矢理連れてこられた新年会。
某ホテルの大広間で行われている。
会社関係のお偉い様に顔を売っておけとの両親と姉と兄に言われて来たものの、知り合いも居ないし、何処かのお嬢様が俺に纏わり着いてくる。
何だよ、鬱陶しいなぁ。
そう思いながら、笑顔を張り付けて。
「すみませんが、ちょっと用事があるので失礼します。」
纏わりつくお嬢様方から離れる。
此処にあのお嬢様が居るとは思わなかったが……。
あ、もう、疲れた。
まだ、来て30分も過ぎてないのに疲労困憊。
こういう時は、亜耶に抱きつき癒されたいぜ。
辺りをキョロキョロと見渡せば、見知った顔を見つけた。
「雅斗。あけおめ。……って、何でお前がここに居るんだ?」
俺がそう言うと。
「おめでとさん。それ、今更かよ。お前と付き合いだして、かれこれ五年も経つけど、知らないとは……。」
大袈裟に手を広げて首を振り、呆れたように言う。
「雅斗。何が、言いたいんだよ。」
俺は、焦れて雅斗に聞く。
「お前さぁ、こういうパーティーに滅多に出ないだろ? って言うか、今回初めてだろ。俺は、5歳の時から出てるからな。お前、自分が高橋コーポレーションの息子だって、隠してただろうが……。」
目だけで俺に問いかける。
「別に隠してた訳じゃないけど……言う必要ないと思っただけだし……。それに、家柄で友達作るのって、何か違うと思ったんだよ。俺は、自分の目で信じた奴しか信じないと決めてるんだ。それより、雅斗が何でここに居るんだよ?」
俺は、思っていたことを口にした。
「本当、今更だよな。俺の名字は?」
雅斗に問いかけられ。
「鞠山……、って、えっ、お前って、あの鞠山財閥の関係者なのか?」
俺は驚いて声をあげた。
「関係者も何も、俺、会長の孫ですけど……。」
さらっと言いやがる。
「えっえー! ちょっと待って……、お前こそなんで隠して……。」
だって、こいつの家、いたって普通一般家庭の一軒家なんだぞ。それが、何でセレブと繋がるんだよ。
俺が、怪しんでいると。
「あぁ。家はカモフラージュ(?)ってやつだな。本家から学校に通うと何かしらに捲き込まれる恐れあるからって事で、あの家を買ったって母さんが言ってた。」
雅斗が、何でも無いように言う。
何らかしら……って、犯罪ものか……なるほどな。
「……で、お前がここに居るってことは、亜耶ちゃんも居るんだろ?」
俺はそう言いながらキョロキョロと亜耶の姿を探す。
「いや。亜耶は、この場所には来てないよ。」
雅斗の顔が曇る。
えっ何で、来てないんだ?
ご両親の姿もこの会場に在るから、今亜耶ちゃんは一人なのだろう。
心配じゃないのか?
そう思いながら、雅斗の返事を待つ。
「亜耶のお披露目は、高校に入ってからか卒業してからになる。」
は?
雅斗は、早くから顔を出してコネを作ってるのに亜耶のデビューはまだ先?
これって、どう言うことだ?
出し惜しみってやつか?
俺が考え込んでると。
「なぁ、遥。お爺様に挨拶しに行かないか?」
雅斗が、意味深な言葉を口にした。
唐突の申し出にどういう意味なのか、薄々気が付いていた。
「……わかった、行くよ。」
俺は、雅斗の後ろを着いて行く。
「お爺様、私の親友で高橋コーポレーションの四男、高橋遥を連れてきました。」
雅斗が先に告げた。
「お初にお目にかかります、高橋コーポレーションの四男、高橋遥です。宜しくお願いします。」
ヤベッ、声震えてやがる。
緊張しながら、頭を下げる。
ここで、気に入ってもらえれば、亜耶との関係も変わってくるだろう。
「おお、君が遥くんかね。うちの娘からも名前を良く聞くよ。孫娘の亜耶の事をとても気にかけてくれてるとか。」
口許は穏やかなのに目は、人を射貫くような鋭い目付きだ。俺の事を観察してるのだろう。
「あっ、はい。亜耶さんは、私にとっても大切な娘ですから……。それに、彼女の無邪気な笑顔で私は、毎回癒されてます。」
俺は、彼女の笑顔を思い浮かべてそのまま口にする。
「そうだろう、そうだろう。亜耶の笑顔は、天使の微笑みだからな。遥くんに頼むかな。」
会長は、愛好を崩し何度も頷き同意する。
そして、会長直々の頼みとは?
まさか、亜耶自身のことか?
それなら、願ったり叶ったりだ。
会長の言葉をドキドキしながら待つ。
「亜耶のレビューの時のエスコート役を遥くんに頼んでもいいか? まだ先の話だがな。」
身構えて待った言葉が、自分と思ってた事と違い、肩を落としてたが、思ってもみない申し出だったのは間違いない無い。
「それなら、喜んでお受けします。」
俺は、笑みを浮かべて答えた。
レビューは一回しかない、そのエスコート役として傍に居れるなら、嬉しいじゃないか。
「そんな簡単に引き受けてよかったのか?」
雅斗が小声で耳打ちしてきた。
「ん? ああ、俺、亜耶ちゃん以外女とは思ってないし……。」
これ、本当の事。
その声が、会長の耳に届いたらしく。
「遥くんには、あれの良さがわかってるみたいだな。遥くんがよければ、嫁にもらってくれないか?」
話が飛躍しすぎてると思う気がするが……。
それでも、俺は嬉しくて。
「いいんですか? 私なんかで……。会長のお気に入りのお孫さんですよね?」
確認するように訪ねると。
「そうだ。亜耶は、ワシの可愛い孫娘だ。だからこそ、ワシが信頼できる輩と一緒に添い遂げてほしいと思っておる。幸い、お主は、雅斗とも仲の良い間柄だし、家柄も申し分ない。お主に託そうと思ったのだが、亜耶では不服か?」
真顔で問われれば、真顔で返すしかない。
内心では、小躍りしてるが……。
「不服だなんて、滅相もありません。私が彼女……亜耶さんを幸せにして見せます」
なんて、断言して見せた。
やべ、嬉しくて仕方ないぜ。
会長からの許可まででるとは、やっぱり俺と亜耶は結ばれる運命なんだろう。
「ならば、此処だけの話として、聞いてくれ。雅斗もだ。今から、高橋遥くんが亜耶の婚約者だ。だが今は誰にも言うことは許さぬ。亜耶が高校生に成った時にそれとなく広めるんだ。わかったな」
会長が声を潜ませて有無を言わせぬように言う。
俺と雅斗は、黙って頷いた。
高校までは内密ってことだよな。
ってことは、八年は婚約のこと黙っておかないといけないんだ。
長いなぁ……。
「……と言うことで、亜耶ならこのホテルの最上階で退屈してることだろう。遥くん、亜耶の事宜しく頼む。」
会長が悪戯っ子の笑みを浮かべて、そう言って、カードキーを手に渡してきた。
「いいんですか?」
俺は思わず確認していた。
「あぁ、構わないよ。亜耶の驚く顔が見えないのが残念だがな。」
茶目っ気のある笑顔を俺に向けてきた。
俺は、そのキーを受けとると。
「それでは、失礼します。」
って、その場を辞した。
俺は、亜耶がいる最上階へ来た。
部屋の鍵を開けて中に入る。
「誰も来ないでって行ったでしょ!!」
クッションと共に飛んできた叫び声。
「今晩は、亜耶。」
俺はそう言って、投げつけられたクッションを拾い笑顔を向けた。
「えっ……な、なんで、遥さんがいるのよ!」
言葉を噛みながら、驚愕な顔で俺を見てくる亜耶。
「まぁ、俺もセレブの一人だし……。招待は、毎年受けてたけど、今年始めて来たら、雅斗が居たから、もしかしてって聞いたら、駕籠の鳥になってるとは……。」
亜耶の顔が、赤くなったり青くなったりと世話しない。
あぁ、もう可愛いな。
「夕飯は食べた?」
俺がそう訪ねると首を横に振る。
俺も、余り食べれなかったし……。
「じゃあ、俺と外に食べに行くか?」
と聞くと戸惑い気に。
「ここからでちゃダメだって、お爺様に言われてるの……。」
亜耶が、シュンと肩を落として言う。
あぁ、そうか。亜耶に何かあったときに対処しきれないもんな。
「俺と一緒なら大丈夫だと思うけど、一応聞いてみるな」
そう告げて前から聞いていた電話番号にかける。
直ぐに繋がり。
『遥くん。どうしたんだい?』
亜耶の父親が出る。
「今晩は。忙しい時にすみません。今、亜耶が居る部屋に居るんですが、亜耶と食事に出掛けてもいいですか?」
俺が電話をして居る間、クッションを両手で抱え込み不安そうに俺を見てくる亜耶。しかも、目を潤ませてるし……。
なんちゅう可愛さ。小さな動物みたいだ。
『えっ、どうやって……。って、お義父さんからカードキーを渡されたんだね。……まぁ、遥くんなら大丈夫か……。亜耶も退屈してるだろうし……。できれば、私からもお願いできるかなぁ。パーティーが終わるまでに戻ってきてくれればいいよ。』
って、返事が返ってきた。
「ありがとうございます。では、亜耶さんをお借りします。」
俺は、そう言って電話を切った。
信頼され過ぎてるのか、これは?
それとも試されてるのか?
どちらにしても俺にはラッキーな事だ。
「どうせ、ダメだったんでしょ?」
亜耶が、涙目で気落ちしたように言う。
涙を流さないように耐えてるのが、またたまらなく可愛い。
「良いってさ。ほら、亜耶準備して。外に出よ。」
「嘘でしょ? また、揶揄ってるんでしょ?」
俺を睨み付けながら言う。
本当に疑い深いなぁ。
それだけ警戒心が強いんだろうけど(俺に対して)……。
「へぇ、じゃあ、ここで時間まで一人で居るか? 俺とじゃないと外に出られないよ?」
俺が、こんなんだから、疑われているんだろうが……。
さっきの婚約者話をしたら、更に嫌われそうだ。
「本当に……。本当に遥さんと一緒なら部屋を出てもいいって言ったの?」
不安気な顔で俺を見上げてくる。
「あぁ、本当だよ。君のお爺様からもここに来る許可してくれたし、父親からも今、お願いされた。後は、亜耶の気持ち一つでここから出て、外でゆっくりすることが出来るんだけど、どうする?」
俺は、亜耶が座っているソファーに近づき、目の高さを合わせるために屈んで問う。
暫く考えてでた答えは。
「じゃあ、行く。支度するから待ってて。」
だった。
「うん。ここで待ってるから、着替えておいで。」
俺は、亜耶が抱き締めていたクッションをそっと取り上げて、立たすと背中を押して隣の部屋に行くように促した。
パタパタと隣の部屋に行く亜耶を見送り、ソファーに座った。
着物姿の亜耶も可愛いぜ。
心で悶えながら、口許が緩んでいくのがわかった。
パーティーには出ないのに着物を着せられてるのは、新年だからか……。
俺としては、役得だけど。
暫くすると隣の戸が開く音がした。
振り向けば、可愛らしいワンピースを着て白のジャケットを羽織、髪は、アップだったのをおろしてサイドだけをバレッタでとめていた。
足元は、踵の低いブーツを履いていた。
「お待たせしました。……何処か変なところでもありますか?」
ジッと見ていた俺に訝しげな目を向けて言う。
「ううん、無いよ。可愛い俺のお姫様。さぁ、何処に食べに行きますか?」
何て声をかけると。
「そうね……。」
亜耶が、右手人差し指を口許に持っていき考え出す。
「じゃあ、ファミレスがいい!」
って、元気な声で答えた。
考えた末にファミレスって……。思ったけど小学生の亜耶らしい答えだとも思った。
「うん、わかった。じゃあ、ファミレスに行こう。そこで、亜耶の好きなの食べような。」
俺がそう言うと満面な笑みを浮かべて。
「うん!」
って、元気に頷いた。
もう本当に可愛いったらありゃしない。
俺だけの天使。
今まで嫌っていた新年の挨拶周りだったが、この年から変わった。何せ、会長に挨拶を済ませば亜耶と時間まで一緒に居られるんだから……
。
これが、毎年に楽しみだったんだよ。
公認されて、他の目に晒されていない亜耶を独り占めしてるなんて思ったら、誰だって、浮かれるだろう。
決してロリコンでは無いからな!!
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無理矢理連れてこられた新年会。
某ホテルの大広間で行われている。
会社関係のお偉い様に顔を売っておけとの両親と姉と兄に言われて来たものの、知り合いも居ないし、何処かのお嬢様が俺に纏わり着いてくる。
何だよ、鬱陶しいなぁ。
そう思いながら、笑顔を張り付けて。
「すみませんが、ちょっと用事があるので失礼します。」
纏わりつくお嬢様方から離れる。
此処にあのお嬢様が居るとは思わなかったが……。
あ、もう、疲れた。
まだ、来て30分も過ぎてないのに疲労困憊。
こういう時は、亜耶に抱きつき癒されたいぜ。
辺りをキョロキョロと見渡せば、見知った顔を見つけた。
「雅斗。あけおめ。……って、何でお前がここに居るんだ?」
俺がそう言うと。
「おめでとさん。それ、今更かよ。お前と付き合いだして、かれこれ五年も経つけど、知らないとは……。」
大袈裟に手を広げて首を振り、呆れたように言う。
「雅斗。何が、言いたいんだよ。」
俺は、焦れて雅斗に聞く。
「お前さぁ、こういうパーティーに滅多に出ないだろ? って言うか、今回初めてだろ。俺は、5歳の時から出てるからな。お前、自分が高橋コーポレーションの息子だって、隠してただろうが……。」
目だけで俺に問いかける。
「別に隠してた訳じゃないけど……言う必要ないと思っただけだし……。それに、家柄で友達作るのって、何か違うと思ったんだよ。俺は、自分の目で信じた奴しか信じないと決めてるんだ。それより、雅斗が何でここに居るんだよ?」
俺は、思っていたことを口にした。
「本当、今更だよな。俺の名字は?」
雅斗に問いかけられ。
「鞠山……、って、えっ、お前って、あの鞠山財閥の関係者なのか?」
俺は驚いて声をあげた。
「関係者も何も、俺、会長の孫ですけど……。」
さらっと言いやがる。
「えっえー! ちょっと待って……、お前こそなんで隠して……。」
だって、こいつの家、いたって普通一般家庭の一軒家なんだぞ。それが、何でセレブと繋がるんだよ。
俺が、怪しんでいると。
「あぁ。家はカモフラージュ(?)ってやつだな。本家から学校に通うと何かしらに捲き込まれる恐れあるからって事で、あの家を買ったって母さんが言ってた。」
雅斗が、何でも無いように言う。
何らかしら……って、犯罪ものか……なるほどな。
「……で、お前がここに居るってことは、亜耶ちゃんも居るんだろ?」
俺はそう言いながらキョロキョロと亜耶の姿を探す。
「いや。亜耶は、この場所には来てないよ。」
雅斗の顔が曇る。
えっ何で、来てないんだ?
ご両親の姿もこの会場に在るから、今亜耶ちゃんは一人なのだろう。
心配じゃないのか?
そう思いながら、雅斗の返事を待つ。
「亜耶のお披露目は、高校に入ってからか卒業してからになる。」
は?
雅斗は、早くから顔を出してコネを作ってるのに亜耶のデビューはまだ先?
これって、どう言うことだ?
出し惜しみってやつか?
俺が考え込んでると。
「なぁ、遥。お爺様に挨拶しに行かないか?」
雅斗が、意味深な言葉を口にした。
唐突の申し出にどういう意味なのか、薄々気が付いていた。
「……わかった、行くよ。」
俺は、雅斗の後ろを着いて行く。
「お爺様、私の親友で高橋コーポレーションの四男、高橋遥を連れてきました。」
雅斗が先に告げた。
「お初にお目にかかります、高橋コーポレーションの四男、高橋遥です。宜しくお願いします。」
ヤベッ、声震えてやがる。
緊張しながら、頭を下げる。
ここで、気に入ってもらえれば、亜耶との関係も変わってくるだろう。
「おお、君が遥くんかね。うちの娘からも名前を良く聞くよ。孫娘の亜耶の事をとても気にかけてくれてるとか。」
口許は穏やかなのに目は、人を射貫くような鋭い目付きだ。俺の事を観察してるのだろう。
「あっ、はい。亜耶さんは、私にとっても大切な娘ですから……。それに、彼女の無邪気な笑顔で私は、毎回癒されてます。」
俺は、彼女の笑顔を思い浮かべてそのまま口にする。
「そうだろう、そうだろう。亜耶の笑顔は、天使の微笑みだからな。遥くんに頼むかな。」
会長は、愛好を崩し何度も頷き同意する。
そして、会長直々の頼みとは?
まさか、亜耶自身のことか?
それなら、願ったり叶ったりだ。
会長の言葉をドキドキしながら待つ。
「亜耶のレビューの時のエスコート役を遥くんに頼んでもいいか? まだ先の話だがな。」
身構えて待った言葉が、自分と思ってた事と違い、肩を落としてたが、思ってもみない申し出だったのは間違いない無い。
「それなら、喜んでお受けします。」
俺は、笑みを浮かべて答えた。
レビューは一回しかない、そのエスコート役として傍に居れるなら、嬉しいじゃないか。
「そんな簡単に引き受けてよかったのか?」
雅斗が小声で耳打ちしてきた。
「ん? ああ、俺、亜耶ちゃん以外女とは思ってないし……。」
これ、本当の事。
その声が、会長の耳に届いたらしく。
「遥くんには、あれの良さがわかってるみたいだな。遥くんがよければ、嫁にもらってくれないか?」
話が飛躍しすぎてると思う気がするが……。
それでも、俺は嬉しくて。
「いいんですか? 私なんかで……。会長のお気に入りのお孫さんですよね?」
確認するように訪ねると。
「そうだ。亜耶は、ワシの可愛い孫娘だ。だからこそ、ワシが信頼できる輩と一緒に添い遂げてほしいと思っておる。幸い、お主は、雅斗とも仲の良い間柄だし、家柄も申し分ない。お主に託そうと思ったのだが、亜耶では不服か?」
真顔で問われれば、真顔で返すしかない。
内心では、小躍りしてるが……。
「不服だなんて、滅相もありません。私が彼女……亜耶さんを幸せにして見せます」
なんて、断言して見せた。
やべ、嬉しくて仕方ないぜ。
会長からの許可まででるとは、やっぱり俺と亜耶は結ばれる運命なんだろう。
「ならば、此処だけの話として、聞いてくれ。雅斗もだ。今から、高橋遥くんが亜耶の婚約者だ。だが今は誰にも言うことは許さぬ。亜耶が高校生に成った時にそれとなく広めるんだ。わかったな」
会長が声を潜ませて有無を言わせぬように言う。
俺と雅斗は、黙って頷いた。
高校までは内密ってことだよな。
ってことは、八年は婚約のこと黙っておかないといけないんだ。
長いなぁ……。
「……と言うことで、亜耶ならこのホテルの最上階で退屈してることだろう。遥くん、亜耶の事宜しく頼む。」
会長が悪戯っ子の笑みを浮かべて、そう言って、カードキーを手に渡してきた。
「いいんですか?」
俺は思わず確認していた。
「あぁ、構わないよ。亜耶の驚く顔が見えないのが残念だがな。」
茶目っ気のある笑顔を俺に向けてきた。
俺は、そのキーを受けとると。
「それでは、失礼します。」
って、その場を辞した。
俺は、亜耶がいる最上階へ来た。
部屋の鍵を開けて中に入る。
「誰も来ないでって行ったでしょ!!」
クッションと共に飛んできた叫び声。
「今晩は、亜耶。」
俺はそう言って、投げつけられたクッションを拾い笑顔を向けた。
「えっ……な、なんで、遥さんがいるのよ!」
言葉を噛みながら、驚愕な顔で俺を見てくる亜耶。
「まぁ、俺もセレブの一人だし……。招待は、毎年受けてたけど、今年始めて来たら、雅斗が居たから、もしかしてって聞いたら、駕籠の鳥になってるとは……。」
亜耶の顔が、赤くなったり青くなったりと世話しない。
あぁ、もう可愛いな。
「夕飯は食べた?」
俺がそう訪ねると首を横に振る。
俺も、余り食べれなかったし……。
「じゃあ、俺と外に食べに行くか?」
と聞くと戸惑い気に。
「ここからでちゃダメだって、お爺様に言われてるの……。」
亜耶が、シュンと肩を落として言う。
あぁ、そうか。亜耶に何かあったときに対処しきれないもんな。
「俺と一緒なら大丈夫だと思うけど、一応聞いてみるな」
そう告げて前から聞いていた電話番号にかける。
直ぐに繋がり。
『遥くん。どうしたんだい?』
亜耶の父親が出る。
「今晩は。忙しい時にすみません。今、亜耶が居る部屋に居るんですが、亜耶と食事に出掛けてもいいですか?」
俺が電話をして居る間、クッションを両手で抱え込み不安そうに俺を見てくる亜耶。しかも、目を潤ませてるし……。
なんちゅう可愛さ。小さな動物みたいだ。
『えっ、どうやって……。って、お義父さんからカードキーを渡されたんだね。……まぁ、遥くんなら大丈夫か……。亜耶も退屈してるだろうし……。できれば、私からもお願いできるかなぁ。パーティーが終わるまでに戻ってきてくれればいいよ。』
って、返事が返ってきた。
「ありがとうございます。では、亜耶さんをお借りします。」
俺は、そう言って電話を切った。
信頼され過ぎてるのか、これは?
それとも試されてるのか?
どちらにしても俺にはラッキーな事だ。
「どうせ、ダメだったんでしょ?」
亜耶が、涙目で気落ちしたように言う。
涙を流さないように耐えてるのが、またたまらなく可愛い。
「良いってさ。ほら、亜耶準備して。外に出よ。」
「嘘でしょ? また、揶揄ってるんでしょ?」
俺を睨み付けながら言う。
本当に疑い深いなぁ。
それだけ警戒心が強いんだろうけど(俺に対して)……。
「へぇ、じゃあ、ここで時間まで一人で居るか? 俺とじゃないと外に出られないよ?」
俺が、こんなんだから、疑われているんだろうが……。
さっきの婚約者話をしたら、更に嫌われそうだ。
「本当に……。本当に遥さんと一緒なら部屋を出てもいいって言ったの?」
不安気な顔で俺を見上げてくる。
「あぁ、本当だよ。君のお爺様からもここに来る許可してくれたし、父親からも今、お願いされた。後は、亜耶の気持ち一つでここから出て、外でゆっくりすることが出来るんだけど、どうする?」
俺は、亜耶が座っているソファーに近づき、目の高さを合わせるために屈んで問う。
暫く考えてでた答えは。
「じゃあ、行く。支度するから待ってて。」
だった。
「うん。ここで待ってるから、着替えておいで。」
俺は、亜耶が抱き締めていたクッションをそっと取り上げて、立たすと背中を押して隣の部屋に行くように促した。
パタパタと隣の部屋に行く亜耶を見送り、ソファーに座った。
着物姿の亜耶も可愛いぜ。
心で悶えながら、口許が緩んでいくのがわかった。
パーティーには出ないのに着物を着せられてるのは、新年だからか……。
俺としては、役得だけど。
暫くすると隣の戸が開く音がした。
振り向けば、可愛らしいワンピースを着て白のジャケットを羽織、髪は、アップだったのをおろしてサイドだけをバレッタでとめていた。
足元は、踵の低いブーツを履いていた。
「お待たせしました。……何処か変なところでもありますか?」
ジッと見ていた俺に訝しげな目を向けて言う。
「ううん、無いよ。可愛い俺のお姫様。さぁ、何処に食べに行きますか?」
何て声をかけると。
「そうね……。」
亜耶が、右手人差し指を口許に持っていき考え出す。
「じゃあ、ファミレスがいい!」
って、元気な声で答えた。
考えた末にファミレスって……。思ったけど小学生の亜耶らしい答えだとも思った。
「うん、わかった。じゃあ、ファミレスに行こう。そこで、亜耶の好きなの食べような。」
俺がそう言うと満面な笑みを浮かべて。
「うん!」
って、元気に頷いた。
もう本当に可愛いったらありゃしない。
俺だけの天使。
今まで嫌っていた新年の挨拶周りだったが、この年から変わった。何せ、会長に挨拶を済ませば亜耶と時間まで一緒に居られるんだから……
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これが、毎年に楽しみだったんだよ。
公認されて、他の目に晒されていない亜耶を独り占めしてるなんて思ったら、誰だって、浮かれるだろう。
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