140 / 145
高校生編と再婚約の条件
別れと告白…亜耶
しおりを挟む夏休みも終わり、今日から新学期。
授業も部活もなくて、悠磨くんがクラスまで迎えに来てくれた。
でも、直ぐ帰るんじゃなくて教室の中で、お喋りを楽しんでいた。
教室内に誰も居なくなった時。
「なぁ、亜耶。」
悠磨くんが声をかけてきた。
私は、悠磨くんの方を見た。
「何?」
返事を返したけど中々言葉を発しない彼。
不思議に思い。
「どうしたの? 私の顔に何かついてる?」
と聞いていた。
だって彼が、私の事をじっと見ていたから。
「ううん、何でもない……。」
そう返ってきたけど、なんだか浮かない顔をしている。
何かあったのかなぁ?
何て思っていたら。
「亜耶。キスしようか……。」
悠磨くんが言ってきた。
今まで、何度もそういう雰囲気になった事あるけど、聞かれたこと無かった(全部、流れたけど……)。
何で、今なんだろう? と思いながら。
「……う、うん。いいよ」
って答えていた。
その答えを聞いて、ホッとした顔を見せた悠磨くん。
私の顎に手を添えて、ゆっくりと近付いてきて、もう少しで唇が触れそうって所で、遥さんの顔が浮かんで、気が付けば両手で彼を押し退けていた。
「ご、ごめん」
私が、慌てて謝った。
「……なんだよ。やっぱり亜耶は、オレを見てくれてなかったんだな。」
って、小声で彼が言う。
まさか、気付いてたなんて……。思ってもいなかった。
「亜耶の胸の内に居るのは、オレじゃないんだろ! オレは、あの人の代わりなんかじゃないよ。オレの事をちゃんと見てくれよ。」
悠磨くんの言葉に胸が痛くなった。
もう潮時なんだ。
本当の事を伝えないといけない時がきたんだって。
「ごめん。悠磨くんの事利用してた訳じゃないの。ちゃんと好きだった。でも、何時の間にか悠磨くんよりも遥さんの存在の方が大きくなってて、あの人じゃないとダメだって最近になって気付いたの。ごめんなさい。」
私は、心から謝罪した。
彼を傷つけたのは、他ならぬ私だから。
「行けよ……。」
彼の言葉にビクリと震える。
行けとは?
この時、未だわかっていなかった。彼が直ぐ近くに居ることを。
「行けよ! オレの事なんか構わず、あの人が待ってるから……。」
彼の弱々しい声。
待ってるって、まさか。
悠磨くんの言葉に疑心暗鬼になりながらも。
「ごめんね、悠磨くん。」
もう一度謝ってから、鞄を掴み教室を出た。
悠磨くん、最後に目を合わせてくれなかった。
怒ってるよね。
もう、話もしてもらえないのかなぁ。
私が傷つけたんだから、それぐらいの覚悟いるよね。
涙が溢れて止まらない。
私が泣いちゃダメってわかってるのに……。
下駄箱で上靴から下履きに履き替え、正門に足を向ける。
涙は一向に止まらない。
正門に近付けば、人垣が出来ていて、何だろうと思い覗けば愛しい人の姿。
私は、ゆっくりとその人垣を抜けて、彼の前に立った。
「は、遥さん……。」
泣いていたから、ちゃんと声がでなかった。
「どうしたんだ? 何で泣いてるんだ?」
遥さんが、優しい声でそう聞いてきたけど、ただ黙って首を横に振るしか出来なかった。
彼を不安にさせたのかもしれない。
何か言わなきゃって思っても、上手く言葉がでなかった。
「亜耶。話して欲しい。君の哀しみを取り除きたいんだ。」
彼の優しい瞳を見たら、またもやポロリと涙が溢れだした。
「悠磨くんとお別れしたの。彼を傷つけてしまった自分が許せなくて……。」
私は、遥さんに言ってはいけないと思いつつも言葉に出して告げていた。
すると。
「悠磨は亜耶の気持ち、大分前から知ってたんだよ。亜耶が、言い出せないことも。だから、亜耶が気にすること無い。アイツは、亜耶に笑ってて欲しいから、自分が悪役になってくれたんだ」
遥さんが優しく抱き締めてくれた。
「亜耶。亜耶の胸の内に居る男ひとは誰?正直に話して。」
遥さんの言葉にゆっくりと顔をあげて、目を見て。
「今、私の中に居る人は、遥さんです。私……遥さんの事……好きです。」
そう言葉を告げた。
「そう。じゃあ、俺もちゃんと言うな。」
遥さんはそう言うと、私の前に膝ま付き、右手を取って。
「……鞠山亜耶さん。好きです。結婚を前提にお付き合いお願いします。」
って、真顔で告白してくれて、何時準備したのか右手の薬指には指輪が嵌められていた。
私は、遥さんの目を見て。
「……っ、はい」
って答えた。
遥さんのホッとした表情が目に入った。
緊張してたのかな。
普段見ない姿だったから、そうだよね。
周りでは、囃し立てる声がするが、どうでもよかった。
だって、嬉しさが込み上げてくてるんだもの。
皆の前で、堂々と告白されたらね。
恥ずかしいけど、嬉しい方が大きいよ。
遥さんが立ち上がり、私の頬に手を伸ばしてきた。
「亜耶。もう、泣き止めよ。」
遥さんの指が、私の涙を拭う。
「無理だよ。嬉しすぎて、止まらないの。」
泣き笑いの状態の私。
困った顔をする遥さん。
一時期、私は彼の想いを疑った。
彼は、ずっと私を想って居てくれたのに……。
でも、こんな風に真剣に言葉にしてくれたら、嘘偽りの無い想いだって思える。
「亜耶。愛してる。」
彼が耳元で囁いてきたから。
「私も、愛してます。」
そう口にするには、恥ずかしかったけど、言わないと伝わらないって事がわかってるから、口にしたら彼が強く抱き締めてきた。
私は、彼に背に腕を回して抱き締め返す。
この腕の温もりを放したくない。
ずっと、傍にいたい。
遠回りしてきた私の想いは、やっと報われた。
それは、無駄なことじゃないって信じてる。
それにね、今までヒミツにしてきた年上の婚約者が居ることもこれを期に皆に知れ渡るよね。こんなに堂々と宣言してるんだもの。
ここからが、私達のスタートだから。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
これにて本編終了です。
番外編投稿するよていです。
0
お気に入りに追加
114
あなたにおすすめの小説
ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました
宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。
ーーそれではお幸せに。
以前書いていたお話です。
投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと…
十話完結で既に書き終えてます。
【完結】婚約破棄された傷もの令嬢は王太子の側妃になりました
金峯蓮華
恋愛
公爵令嬢のロゼッタは王立学園の卒業パーティーで婚約者から婚約破棄を言い渡された。どうやら真実の愛を見つけたらしい。
しかし、相手の男爵令嬢を虐めたと身に覚えのない罪を着せられた。
婚約者の事は別に好きじゃないから婚約破棄はありがたいけど冤罪は嫌だわ。
結婚もなくなり、退屈していたところに王家から王太子の側妃にと打診が来た。
側妃なら気楽かも? と思い了承したが、気楽どころか、大変な毎日が待っていた。
*ご都合主義のファンタジーです。見守ってくださいませ*
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。
【完結】捨ててください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。
でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。
分かっている。
貴方は私の事を愛していない。
私は貴方の側にいるだけで良かったのに。
貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。
もういいの。
ありがとう貴方。
もう私の事は、、、
捨ててください。
続編投稿しました。
初回完結6月25日
第2回目完結7月18日
王女殿下の秘密の恋人である騎士と結婚することになりました
鳴哉
恋愛
王女殿下の侍女と
王女殿下の騎士 の話
短いので、サクッと読んでもらえると思います。
読みやすいように、3話に分けました。
毎日1回、予約投稿します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる