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高校生編と再婚約の条件

疑問と嫉妬…悠磨

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  気付けば、球技大会当日。

  オレは、人数が足りないサッカーに出ることになった。

「オーイ、悠磨。次、俺等の試合だぜ!」
  委員の仕事(まぁ、雑用だけど)をしていたオレを呼びに来たのは、透だった。
「あっ、直ぐに行く。」
  残りの用を他の人に任せて、グランドに向かった。


「あっ、悠磨くん。試合、頑張って。」
  オレに気付いた泉がそう声をかけてきた。
「まぁ、ほどほどに頑張るわ。」
  俺は、そう答えてグランド中央に並んだ。
「悠磨。先輩とだけど、頑張ろうな。」
  透が横で告げてきた。
  よく見れば、篠崎先輩が斜め前に居る。
「お手柔らかに頼むな。」
  先輩がニヤニヤしながら言う。
「こちらこそよろしくお願いします。」
  オレは、軽く頭を下げた。



  試合が始まるとお互い譲ることなく攻防戦を繰り広げた。
  先輩たちの隙をついて、スペースが空いてる所に移動。
  そこにすかさずボールが廻ってきた。
  オレは、そのボールをキープしつつゴールに向かう。
「流石、渡辺だな。だが、ここは通さねえよ。」
  篠崎先輩がオレの行く手を塞ぐ。
  オレは視線を周りに向けた。
  後方から、透の姿が目の端に捉えた。
「悠磨、こっち。」
  オレは、踵で後方の透にパスを出した。
「……チッ。折角彼女に良いところを見せれると思ったのに……。」
  先輩の呟きが聞こえてきた。
  彼女って……。
  先輩には、付き合ってる人居なかったはず。
  って、事は……。
  先輩が、誰かを見ている。その視線の先を追えば、亜耶の姿が……。
  まさか……、亜耶を狙っているのか……?
  オレの視線に気付いた先輩が。
「バレた? 渡辺には悪いが、俺、彼女狙ってるんだよね。ってことで、これからはライバルだ。」
  堂々とライバル宣言する先輩。
「オレ、負けませんよ。」
  と告げていた。

「悠磨くん。ガンバ!!」
  亜耶かのじょの声が耳に届く。
  応援してくれてるのなら、頑張らないとな。
「カイ! こっち。」
  オレは、後方でボールを持っていたクラスの奴に声を掛ける。
  ボールがオレのところに届く。
  オレは、それをキープしてゴール前まで進む。  ボール無しで走るときよりは、ややスピードは落ちるが、それでも何人か抜き去り、ゴールキーパーと一対一の対戦。
  考えるより先に体が動いた。
  ザッシュー。
  ゴールネットが揺れる。

  ワーーッ。
  完成が沸き興る。
「ナイスシュート、悠磨!」
  透が後ろから頭をバシッて叩いてきた。
「いってーって……。」
「「「悠磨くん、カッコいいーーー!」」」
  クラスの女子の声が聞こえてくる。
  その中に。
「すっごーい、悠磨くん。」
  彼女の声も混じってる。
「もしかして、鞠山さんのお蔭?」
  透が、冷やかしてくる。
「そうだと言ったら……。」
  真顔で受けとれば。
「なら、彼女に感謝だな。」
  透が苦笑しながら言う。
  確かにな。
  なんだかんだ言っても彼女が居れば、何時もの倍の力が発揮できるんだよな。

  その後、一点を守りきり、先輩のクラスに勝った。

「おい、悠磨。鞠山さん何に出るんだ?」
  透が、オレの首に腕を回して聞いてきた。
「ん? テニスだよ。」
「応援に行こうぜ」
  透に促されて、オレたちはテニスコートに向かった。


  テニスコートの周りには、凄い人だかりが出来ていた。
  何でこんなに居るんだ?
  コートに目を向けるとそこには亜耶の姿があった。
「なぁ、彼女。メチャ、可愛いな。」
「あぁ。俺、好みだ。」
「彼氏、居るのかな?」
「居るだろうよ。あんなに可愛いんだからな」
  って、周りの男どもの声が上がってくる。
  彼女って、亜耶の事だよな。
  男供の目線は、亜耶に向けられてるしな。
  相変わらず、モテモテだな。
  しかも、篠崎先輩もそこにいる。
「悠磨のライバル沢山……。」
  透が面白そうに言う。
「って言うか、鞠山さんめちゃ上手いじゃん。」
  練習してる亜耶を見て、感心してる透。
「そりゃあ、中学のときテニス部だったし、確か都大会に出てるはず。」
  何気に中学のときの亜耶を思い出す。
  応援に行ったんだよな。
「えっ……。何気に凄くないか? 何で陸上部に?」
  驚いてる透に。
「あ、オレが誘ったからだろ。じゃなきゃ、他の部活に入ってるって。」
  そう告げた。
「はぁ……。お前ら本当に付き合ってるんだ。」
  透が肩を落とす。
  その溜め息は、どっちを指してるんだ?
  その時ちょうど、亜耶がオレの方を見た。
「悠磨くん、来てくれたんだ。」
  嬉しそうにオレのところに来た。
  ちょうど、休憩らしく声を掛けてきた。
「うん。オレ等も、時間空いたから応援しに来た」
  オレは、亜耶にそう告げた。
  オレたちのやり取りに周りの反応が凄い(特に男が)。
  亜耶が、オレに声を掛けただけで、嫉妬の嵐(ちょっと、優越感)。
「鞠山さん、試合頑張って。」
  オレの横にいた透がエールを送る。
「ありがとう、湯川くん。じゃあ、そろそろ始まるから後でね。」
  そう亜耶が言うとコートに戻っていった。


「なぁ、何で鞠山さん。俺の名前知ってるんだ?」
  透が不思議そうにオレに聞いてきた。
「そりゃあ、知ってるだろ。同じ部活だし、オレと一緒に居るんだからな」
  オレの言葉にやや不満に思いながら、納得したみたいだ。
「なるほど……。で、何で、彼女は男物の時計してるんだ?」
  こいつ本当に鋭いな。
「自分で買ったんだってさ。」
  オレは、亜耶が言ってたことをそのまま伝えた。
「ふーん。」
  そこは納得してないみたいだが。
  まぁ、オレも納得してないからこいつの事言えないか……。
「あのさぁ、あの時計、俺見たことある。どっかのブランド物の時計。確か、ペアだった気がしたが……。」
  はっ?
  ペアだって………。
  だったら、その片割れは何処に?
  オレは、貰ってないぞ。
「悪い。不安にさせたか。でも、俺の記憶違いかもしれないから、忘れてくれ。」
  透が、オレの顔を色を見て言う。
「あぁ。気持ち切り替えて、応援するぞ。」
  オレは、そう言って亜耶を応援した。


  応援の甲斐があったのか、亜耶のクラスが勝ち残った。
「悠磨くん、応援ありがとう。」
  そう言って照れ笑いをする亜耶。
  可愛いぜ。
「いや。オレも亜耶が応援してくれたから、ゴールできたようなものだし……。」
  オレは、亜耶の頭を撫でる。
  何で、同じクラスじゃないんだろう?
  この時ばかりは、運命を呪った(大袈裟かもだけど)。
「この次の試合、亜耶のクラスと当たるんだけど、応援してくれるか?」
  何気に聞くと。
「うん。ちゃんと応援するよ。声援できるかは難しいけど、ね」
  亜耶が、困った顔をして言う。
  まぁ、自分のクラス応援しないわけにはいかないよな。
「そうだよな。まぁ、心の中で良いから応援よろしく頼むな。」
  取り敢えずは、応援してもらえるんだから、良しとしなくちゃ。
「悠磨。そろそろグランドに戻らないと。」
  透が、横で言う。
「あぁ、わかってる。じゃあ、よろしく。」
  オレは、亜耶の頭をポンと叩く。
「うん。」
  亜耶がどうしたら良いのかわからないような顔で、オレを見ていたのには、気付かなかった。
  いや、気付かない振りをした。

  第二回戦は、亜耶のクラスと直接対決。
  でもなぁ。
  亜耶のクラス、やたらと纏まりがいいんだよな。
「悠磨。今度は、簡単に勝たせてもらえそうにないぞ。」
  透の言葉にオレは。
「そうだな。何か、作戦でも練るか……。」
  って言っても、オレ余りサッカー詳しくないんだが……。
  何て、クラスの奴等と話した。
  そんな時に相手の応援席に亜耶の姿を見つけた。
  ヤバイな。
  亜耶の見ている前で、無様な姿見せたくない。
  そんな事を思いながら、オレは試合に望んだ。



  結果は、惨敗。
  相手のチームのリーダーの的確の指示のもと、皆が動くからオレ達の方が相手にならなかった。
「お疲れさま。」
  泉がタオルを持ってオレの方にやってくる。
「あ、オレは良いや。」
  泉のタオルを断った。その理由は言わずとも。
「お疲れ、悠磨くん。」
  亜耶が、オレのタオルを持っていたからだ。
  亜耶の手から、タオルを受け取った。
「あぁ、ありがとう。」
「残念だったね。もう少しだったのに……。」
  亜耶が、悔しそうに言う。
  まぁ、後右へ五センチずれていたら、ゴールになっていたんだが……。
「仕方ないさ。それより、亜耶の試合は?」
  オレのために悔しがってくれる亜耶。
  クラスが違っても、応援してくれてたことがわかる。
「えっ、ああ。これからなんだけど。ちょっと押してるかな。」
  目が泳いでる。
  何かあるのか?
「亜耶、何か隠してるのか?」
  オレの言葉に首を左右に勢いよく振る。
「だったら、何でそんなに警戒してるんだ?」
  怪訝に思い訪ねてみれば。
「悠磨くんを狙ってる女の子に悪いかなぁって……。」
  亜耶は、そう言って俯いた。
  なんだよそれ。
「オレは、亜耶に独占されたいんだよ。」
  亜耶の耳元でそう囁けば、顔も耳も真っ赤になる。
  ヤバイ。
  そんな顔させたくなかったんだが……。
「もー、悠磨くんのバカ。」
  小さく呟く亜耶。
  そんな顔、他の男に見せたくない。
  仕方がない。
  オレは、亜耶を抱き寄せて周りに見せないようにし。
「次の試合。応援してる」
  オレは、亜耶の顔を覗き込んでそう告げる。
「……うん。」
  亜耶が、小さく頷いた。




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