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高校生編と再婚約の条件
飲み会…遥
しおりを挟む起きて直ぐに今日の予定を確認するために、手帳を開いた。
えっと、今日は……。
あれ、これ何のマークだ?
二重丸のマーク。
俺は、首を捻って思い出す。
あっ~、ヤバイ、忘れていた。
今日の予定では、これ行けそうにもない。
イヤ、雅斗に相談してみるか……。
俺は、そう思いながら家を出た。
会社に着くと直ぐに雅斗が居るであろう、副社長室に向かった。
コンコンコン。
ドアをノックする。
「入れ。」
威圧感のある雅斗の声。
仕方ないか、ここでは偉い様だもんな。
俺は、ドアを開けて一礼してから。
「失礼します。おはようございます、副社長。」
雅斗に向けて言う。
「おはよう、遥。そんなに改まってどうしたんだ?」
雅斗が怪訝そうな顔をして聞いてきた。
俺は、雅斗の方に歩み寄り。
「今日、最後の接待だけど、俺抜きでもいいか?」
雅斗の顔色を伺いながら、言う。
「何、用事でもあるのか?」
雅斗が、眉を寄せて聞いてくる。
「それが、前の会社の送別会が十九時から有るんだよ。すっかり忘れてた。」
俺の答えに。
「珍しいな、遥が約束を忘れてるなんて。まぁ、お前の代わりができる奴と代わってくれればいいさ。」
苦笑する雅斗。
そうなんだよ、約束忘れてるなんて自分でも驚いてるんだよ。
それだけ、忙しかったんだなぁ。
「本当に悪いな。」
「いいさ。向こうも主役のお前が居なきゃ始まらんだろうし……。楽しんでこいよ。」
雅斗が真顔で返してきた。
「……っと、朝イチの会議行くぞ。」
雅斗が席を立ち、資料を持ってドアに向かう。
俺も必要な物を鞄から取りだし、後を追った。
本日の最後の接待場所まで雅斗を送る。
俺の代理で来てくれた赤石さんが、店の前で待っていた。
「わざわざ、すみません。」
俺は、頭を下げた。
「イヤ、いいよ。こんな時でしか副社長と話も出来ないしな。」
赤石さんが、ニコヤカに言う。
「それでは、お願いします。お先に失礼します。」
俺は、軽く頭を下げる。
「おう、遥も仕事の事気にせずに楽しんでこいよ。」
雅斗の余計な一言を放った。
会社の最寄り駅近くにある居酒屋。
前は、よく来てたんだよな。
入り口のドアを開けて、中に入る。
「あっ、高橋さん。こっち。」
俺に気付いた女性社員が、手招きする。
俺は、そっちに足を向けた。
……が、突然両腕に重みが増した。
「高橋さん。待ってたんですよ。」
フルメークで、香水臭い女性二人に捕まった。
臭いが混じって、気持ち悪い……。
呑む前から、吐きそうだ。
「高橋さんは、ここね。」
って、見渡せば俺の周り女性社員で埋め尽くされてる。
何の冗談だ。
しかも、必要以上に触れてくるし………。
馴れ馴れしい。
あ~、鳥肌立ちそうだ。
「高橋も来たことだし、時間だから始めるか。」
部長が切り出した。
うん、そうしてくれると助かる。
そして早く、ここから逃げたい。
「高橋、挨拶しろ。」
部長に言われて、何言えばいいんだ?
暫し、考えた末。
「今日は、送別会を開いていただき、ありがとうございます。短い間でしたが、色々とお世話になりました。」
当たり障りの無い挨拶をした。
「高橋、今の仕事場とか予定とか無いのか?」
部長の鋭い質問。
え~、言わないといけないのか?
まぁ、今後会うかわからない連中に言っても、差し障りはないか……。
そう思い。
「今の仕事場は、鞠山財閥の副社長の付き人です。一ヶ月後には海外研修が始まって、帰国後には婚約ですね。」
一様、今決まってる予定を口にした。
すると周りが、どよめいた。
そりゃあ、そうだよな。
一社員だった俺が、一流財閥の副社長の付き人なんだからな。
「高橋、大出世だな。」
部長が苦笑する。
イヤ、確かに大出世になるのか……。
「幹事。後宜しく。」
部長の言葉に同期の田中が立ち上がった。
「えっ~、僭越ながら私が、とらせてもらいます。高橋にこれからの未来に乾杯!」
「「「乾杯!!」」」
それぞれグラスを手に合わせた。
「ねぇ、高橋さん。婚約って相手が居ないでしょ? 私がなってあげようか?」
俺に寄ってくる女どもに嫌気が差す。
やめてくれ。
俺、媚を売ってくる奴嫌いなんだよ。
「抜け駆けズルい。それなら、私だって立候補するよ。」
立候補ってなんだよ。
「私だって……。」
次から次へと上がってきて、切りがない。
「お前らなぁ、高橋の婚約者は決まってるんだよ。さっさと諦めて、他を当たれ。」
田中が、助け船を出してくれた。
「「「「えーーーー!!」」」」
見事にハモり、エコーがかかってるみたいだ。
「嘘でしょ。だって、高橋さん、彼女居たこと無いですか!」
ハハハ……。
確かにそんな素振り一度だって見せなかったし、見せるつもりなかったし……。
相手は、まだ高校生だし……。
「めちゃ、可愛い子だよ。それもお嬢様だしな。」
田中、何処でそんな情報を手に入れたんだ。
俺、彼女がお嬢様だなんて言ってないぞ。
「お嬢様って……。世間知らずの我が儘なんでしょ? 高橋さんには合わない。」
会ったこともないのに彼女の何がわかるんだよ。
彼女は、そこら辺のお嬢様じゃないんだよ。
「そんなこと言ったら、社会復帰できなくなるぞ。」
田中、一体何処まで知ってるんだ。
「何、その脅し。お嬢様の悪口言っただけじゃん。」
女どものあっけらかんとした言葉に腹が立つ。
「それが不味いんだよ。俺、聞いちゃったんだよ。細川商事のお嬢様が、高橋の婚約者の悪口をわざわざ会社まで押し掛けて言ったんだって。会長がそれを聞いてて、そのお嬢様を泣きものにしたって話を……。」
マジ、こいつなんなの。
どこで、そんな情報を手にしたんだよ。
「それってさぁ、高橋が絡んでるって聞いたんだよな。」
こいつ、全て知ってるんじゃないか?
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背中に嫌な汗が流れる。
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そこに部長が割って入ってきた。
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まぁ、御大ならやりかねないか……。
「……って、まさか高橋さんの婚約者の相手って。」
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「そう言うことだろ。」
部長が、背中を叩く。
「はい。元々、彼女が高校を卒業するまでは表向きは普通に……っていうか、婚約の事伏せてたんです。ちょっとした事が切っ掛けで、婚約破棄になってしまいましたがね。やっと会長に認めてもらえまして、会長自ら俺に最後の試練として、海外研修に行けとそれを条件に彼女との再婚約を認めてもらえることになったんで……。」
って、何で俺こんなに語ってるんだ。
「お前、顔しまり無い。」
田中が、ニマニマと俺の顔を見て言う。
そうだろうな。
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「あれ? 気付かなかった。何で、女性物? しかもブランドだし……。」
「彼女からのプレゼント。」
ボソリと呟く。
ペアだなんて、言わない方がいいよな。
でも、あの時の手紙……、ヤバ、思い出したら嬉しさで口許が……。
「へぇー。高橋でもそんな顔するんだ。」
そんな顔って、変な顔してたか?
「愛しそうな顔してるぞ。」
何、そんな顔してるのか。
思わず、口許を手で覆った。
「仕事とか、私たちと話してるときにはしなかったよね。それだけ、彼女の事が好きなんだね。私たちじゃ敵うわけ無いか……。」
周りもその言葉に同意して頷く。
あはは……ヤバイな。
自分が、崩壊しそうだ。
「祝福するね。」
周りからも納得をもらい、楽しく呑むことができた。
お開きになり、店の外に出た。
俺は、田中を捕まえて。
「お前、あの情報はどこから得たんだよ」
問いただす。
「あれ。細川商事の社員から直接聞いた。って言うか、呑み友達になった奴が、そこに勤めててな色々教えてもらったんだよ。」
田中は、陽気に語り出した。
マジか……。
これ、雅斗に報告しておいた方がいい案件だなぁ……。
俺は、内心頭を抱え込んだのだった。
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