上 下
98 / 145
高校生編と再婚約の条件

疑惑…悠磨

しおりを挟む

  オレは、昼間透が言ってたことを思い出していた。


  亜耶が、鞠山財閥の孫娘って……。
  あり得ない。
  亜耶は、至って普通の家庭に育った子だ。どこにお嬢様の気質が入ってるんだ?
  誰にでも優しく接して、嫌な顔一つもしない。そんな子がお嬢様って、あり得ないだろ。

  まぁ、あの人が御曹司なのは知ってたが……。
  だからって、あの人に譲る気はない。
  亜耶は、オレの彼女だ。
  ……が、不安がオレを襲う。

  本当に亜耶は、オレを見ているのだろうか?
  オレを好きでいてくれてるのだろうか?

  そんな疑問が、生まれてくる。

  今は一緒に居るけど、離れていってしまいそうな不安が拭えない。
  しかし、何故透はあんなに詳しく知ってたんだろうか?
  亜耶のお兄さんの嫁さんの事も知ってた。
  姉の嫁ぎ先だとも言ってたなぁ。

  明日、あいつに聞き出せばいいか……。

  そう思い眠りについた。


  翌日。
  何時ものよう亜耶との待ち合わせていた。
「おはよう、悠磨くん。」
  亜耶が挨拶しながらこちらに来る。
「ああ、おはよう亜耶。」
  なんら何時もと変わらない光景の筈なのに違和感が……。
  ふと気付いた。
  亜耶の雰囲気が何時もより柔らかい。
  そして、左腕には男物の腕時計。
  何で?
  何で、男物の腕時計なんか……。
「悠磨くん、どうしたの? 行かないと遅れるよ。」
  亜耶が、不思議そうな顔をして俺の顔を覗いてくる。
「ん、あぁ。」
  って、答えて歩き出した。


  オレがプレゼントした訳じゃない。
  じゃあ、高橋遥あのひとからのプレゼント?

  あーもー、気になる。
  誰だよ。
  誰からのプレゼントだ?
  昨日は、してなかったよな。
  ってことは、昨日お姉さんと買いに行った時に買ったとか……。
  あり得るな。
  自己完結しても、やっぱり本人に聞かないと……。


  いつの間にか、自分の教室に着いていた。
「おはよう、悠磨君。」
  教室に入ると泉がオレの傍に来る。
「ん、あぁ、おはよう。」
  そう言いながら、自分の席に着く。
「どうしたの? 悩み事?」
  泉がオレの席の前に座るなり、聞いてきた。
「何でもないよ。ただ、球技大会のメンバー何時決めるかなって……。」
  ハハ。空笑いを浮かべるオレ。
  なんて嘘。
  言えるわけ無いだろ、本当の事。
「そうだね。今日の昼放課にでも決めちゃおう。」
  泉の提案を受けて。
「じゃあ、それで……。」
  そう答えると席を立った。
  亜耶に聞かないと落ち着かなかったから……。


  亜耶のクラスに行くと仲の良い友達とお喋りしてた。
「亜耶。」
  オレが入り口で声を掛けると周りが一斉にオレと亜耶を交互に見出す。
「悠磨くん。」
  亜耶がオレを呼ぶ声にドヨメキがおきる。
  今まで、亜耶のクラスに顔を出さなかったオレが悪いか……。
  亜耶が、友達に断りを入れてからオレの所に来た。
  そういや、入学当初に約束したことオレ果たしてないな。
  何て思いながら、廊下の隅に移動する。
「どうしたの?」
  亜耶が小首を傾げて、そう聞いてきた。
  どうしたって……。
「なぁ、亜耶。その腕時計……。」
  オレは、亜耶の左腕にしてる時計を見いる。
  すると。
「ん? あぁ、これね。自分で買ったの。昨日お義姉さんと買い物に行った時に気に入っちゃたから……。」
  亜耶が、顔色も変えず淡々と話す。
  そっか、自分で買ったのか。
  一瞬でもあの人からのプレゼントなのかとかと思った。
  「そうだったんだ。」
  それを聞いてホット安心してる自分が居る。
「変かな?」
  亜耶が、戸惑いがちに小声で聞いてきた。
「変じゃないよ。寧ろ、亜耶らしいよ。」
  オレがそう言うとホッとした顔を見せる。
  
  何で、そんな安心した顔をするんだ?
  何かあるのか?

  って考えていたら。

  キーンコーンカーンコーン………。
  チャイムが響く。
  委員長のオレが遅れるわけにはいかない。
「じゃあ、オレ戻るな。」
「あっ、うん。また後でね。」

  亜耶がはにかみ笑顔で手を振る。
  オレは、亜耶に手を振り返し、教室に戻った。


 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

長い片思い

詩織
恋愛
大好きな上司が結婚。 もう私の想いは届かない。 だから私は…

ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました

宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。 ーーそれではお幸せに。 以前書いていたお話です。 投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと… 十話完結で既に書き終えてます。

婚約をなかったことにしてみたら…

宵闇 月
恋愛
忘れ物を取りに音楽室に行くと婚約者とその義妹が睦み合ってました。 この婚約をなかったことにしてみましょう。 ※ 更新はかなりゆっくりです。

貴方の愛人を屋敷に連れて来られても困ります。それより大事なお話がありますわ。

もふっとしたクリームパン
恋愛
「早速だけど、カレンに子供が出来たんだ」 隣に居る座ったままの栗色の髪と青い眼の女性を示し、ジャンは笑顔で勝手に話しだす。 「離れには子供部屋がないから、こっちの屋敷に移りたいんだ。部屋はたくさん空いてるんだろ? どうせだから、僕もカレンもこれからこの屋敷で暮らすよ」 三年間通った学園を無事に卒業して、辺境に帰ってきたディアナ・モンド。モンド辺境伯の娘である彼女の元に辺境伯の敷地内にある離れに住んでいたジャン・ボクスがやって来る。 ドレスは淑女の鎧、扇子は盾、言葉を剣にして。正々堂々と迎え入れて差し上げましょう。 妊娠した愛人を連れて私に会いに来た、無法者をね。 本編九話+オマケで完結します。*2021/06/30一部内容変更あり。カクヨム様でも投稿しています。 随時、誤字修正と読みやすさを求めて試行錯誤してますので行間など変更する場合があります。 拙い作品ですが、どうぞよろしくお願いします。

王女殿下の秘密の恋人である騎士と結婚することになりました

鳴哉
恋愛
王女殿下の侍女と 王女殿下の騎士  の話 短いので、サクッと読んでもらえると思います。 読みやすいように、3話に分けました。 毎日1回、予約投稿します。

【完結】王子妃教育1日無料体験実施中!

杜野秋人
恋愛
「このような事件が明るみになった以上は私の婚約者のままにしておくことはできぬ!そなたと私の婚約は破棄されると思え!」 ルテティア国立学園の卒業記念パーティーで、第二王子シャルルから唐突に飛び出したその一言で、シャルルの婚約者である公爵家令嬢ブランディーヌは一気に窮地に立たされることになる。 シャルルによれば、学園で下級生に対する陰湿ないじめが繰り返され、その首謀者がブランディーヌだというのだ。 ブランディーヌは周囲を見渡す。その視線を避けて顔を背ける姿が何人もある。 シャルルの隣にはいじめられているとされる下級生の男爵家令嬢コリンヌの姿が。そのコリンヌが、ブランディーヌと目が合った瞬間、確かに勝ち誇った笑みを浮かべたのが分かった。 ああ、さすがに下位貴族までは盲点でしたわね。 ブランディーヌは敗けを認めるしかない。 だが彼女は、シャルルの次の言葉にさらなる衝撃を受けることになる。 「そして私の婚約は、新たにこのコリンヌと結ぶことになる!」 正式な場でもなく、おそらく父王の承諾さえも得ていないであろう段階で、独断で勝手なことを言い出すシャルル。それも大概だが、本当に男爵家の、下位貴族の娘に王子妃が務まると思っているのか。 これでもブランディーヌは彼の婚約者として10年費やしてきた。その彼の信頼を得られなかったのならば甘んじて婚約破棄も受け入れよう。 だがしかし、シャルルの王子としての立場は守らねばならない。男爵家の娘が立派に務めを果たせるならばいいが、もしも果たせなければ、回り回って婚約者の地位を守れなかったブランディーヌの責任さえも問われかねないのだ。 だから彼女はコリンヌに問うた。 「貴女、王子妃となる覚悟はお有りなのよね? では、一度お試しで受けてみられますか?“王子妃教育”を」 そしてコリンヌは、なぜそう問われたのか、その真意を思い知ることになる⸺! ◆拙作『熊男爵の押しかけ幼妻』と同じ国の同じ時代の物語です。直接の繋がりはありませんが登場人物の一部が被ります。 ◆全15話+番外編が前後編、続編(公爵家侍女編)が全25話+エピローグ、それに設定資料2編とおまけの閑話まで含めて6/2に無事完結! アルファ版は断罪シーンでセリフがひとつ追加されてます。大筋は変わりません。 小説家になろうでも公開しています。あちらは全6話+1話、続編が全13話+エピローグ。なろう版は続編含めて5/16に完結。 ◆小説家になろう4/26日間[異世界恋愛]ランキング1位!同[総合]ランキングも1位!5/22累計100万PV突破! アルファポリスHOTランキングはどうやら41位止まりのようです。(現在圏外)

愛する人が姉を妊娠させました

杉本凪咲
恋愛
婚約破棄してほしい、そう告げたのは私の最愛の人。 彼は私の姉を妊娠させたようで……

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

処理中です...