29 / 145
中学生と婚約解消
食事にて2…遥
しおりを挟む「亜耶には、少し早かったか?」
雅斗が苦笑しながらそう言葉を告げる。
「そんなこと無いよ。今から覚えておけば、将来役に立つって」
沢口が珍しくまともな事を言う。
確かに一理あるよなぁ。普段の生活だと必要ないだろうけど、これから否が応でも増えるだろうしなぁ。
チラリと横を見れば、そんな会話をキョトンとした顔をして見ている亜耶。
当の本人がこれじゃあ、意味無いと思うが、な。
う~ん、どうしたものか……。
「先輩がもう少し色んな所に連れ出せば、自然と亜耶ちゃんも覚えますって……」
沢口のニコニコした顔が自棄にうざい。
お前、もしかして勘違いしてる?
確かに俺と亜耶は婚約してるが、俺の一方通行なの。
簡単にどこそこに連れ廻せる立場じゃないんだ。
俺は雅斗に視線を送るが、軽く首を振るだけで何も言わない。
訂正するつもり無いらしい。
ハァ~~。
「先輩、何暗い顔をしてるんですか?もっと楽しみましょうよ」
って、明るく言ってくる沢口。
人の気も知らないで……。
「はいはい」
俺は、どうでも良いような返事を返す。
すると。
「遥さん?」
心配そうな顔で俺を見てくる亜耶。
「大丈夫だよ。亜耶が行きたいのなら連れてってやるから……」
俺は、亜耶の頭にポンと手をやる。
「本当!!」
上目遣いで、嬉しそうに俺を見てくる亜耶。
何時、そんな技を覚えてきたんだ。俺を惑わせるきか。
「その時は、あたしもお供しまーす」
って、沢口が言い出す。
「誰が連れてくか!」
俺はすかさずそう返した。
亜耶との時間をコイツに取られるのは癪だ。
「由華、飲みすぎ。遥をからかうのも良い加減にしろ」
と雅斗の注意が飛ぶ。
よく見れば、一人でボトルワインを開けていた。
「遥さん。本当に連れてってくれる?」
横から亜耶の声。
「ん?亜耶が行きたいと思えば何時でも連れて行くが……」
仕事の合間にだから、時間調整が大変かもしれないが……。
「ヤッター!約束だよ」
満面な笑みで言う亜耶。
ハァ~、この笑顔最高だ。写真に納めたい。
そんなやり取りを沢口がニタニタと見ていた。
ええい、その笑いやめろ。仮にもお前は女だろうが……。
そう突っ込みたいのを抑えた俺って、凄いと思う。まぁ、言えば何かしらの返しが待ってるだけだしな。
「よかったね、亜耶ちゃん」
「はい、由華さん」
二人は、目線を会わせて笑っていた。
ったく……、何だか嵌められた気分だ。
だが、亜耶と堂々とデートできるんだ、良しとしないとな。
「亜耶?勉強の方は捗っているのか?」
突然雅斗が話を切り替えた。
「ん?なんとかね」
難しそうな顔をして言う亜耶。
「そっか。亜耶ちゃん、受験生だったね。もし解らないところがあったら、先輩に聞けば良いからね。先輩、何気に教免持ってるし。全教科教えてくれると思うよ」
って、お前自分では教えないのかよ。
呆れ顔で沢口を見てれば。
「そうなの?遥さん」
亜耶が、興味津々で此方を見てくる。
「うん。まぁ、一様持ってはいるよ」
無理矢理伯父に取らされたようなもんだが、な。
「凄いなぁ」
って、亜耶が目を輝かせて俺を見てくる。
この目は、直視できない。
「亜耶は知らなかったんだな。遥は、文武両道だから出来ないものをあげた方が早いくらいだ」
雅斗が余計なことを言い出す。
それを聞いた亜耶の顔が、尊敬の眼差しに変わった。
「何時も、あんなにふざけてばかりなのに?」
ちょ……ちょっと亜耶さん。それは、どういう意味合いですかねぇ。って言うか、俺、ふざけてた覚えないんだが……。
「へぇ~。亜耶ちゃんの前ではふざけるんですか?先輩」
沢口の目が細められ、良いこと聞いたと言わんばかりに樮笑んでる。
あっ、もう……。俺、コイツの前では積んだわ。
「由華、その顔はやめたほうがいい」
静かに雅斗が嗜めるが。
「だって、普段冷酷な仮面しか被らない先輩が、亜耶ちゃんの前では破顔するんですよ。見てみたいじゃないですか」
余計な事を口にするなと言いたい。亜耶はそんな俺を知らないんだからな。
俺たちのやり取りを我感せずって顔をして、黙々と食べる亜耶。
何に対しても一生懸命な亜耶が愛しい。
「成る程、その顔ですね。これがあの先輩だとすると別人ですね」
って、どの顔だよ。それに別人って、同じ人物なんだが……。
これ以上、コイツに見せるわけにいかねぇ。
「そろそろ行くか」
雅斗の言葉に。
「そうだね」
満足いったのか、沢口が同意する。
亜耶を見れば、コクコクと頷いている。
「ここは俺が出すよ。遅れた詫びに」
俺は伝票を手にし、席を立った。
7
お気に入りに追加
114
あなたにおすすめの小説
ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました
宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。
ーーそれではお幸せに。
以前書いていたお話です。
投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと…
十話完結で既に書き終えてます。
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
【完結】王子妃教育1日無料体験実施中!
杜野秋人
恋愛
「このような事件が明るみになった以上は私の婚約者のままにしておくことはできぬ!そなたと私の婚約は破棄されると思え!」
ルテティア国立学園の卒業記念パーティーで、第二王子シャルルから唐突に飛び出したその一言で、シャルルの婚約者である公爵家令嬢ブランディーヌは一気に窮地に立たされることになる。
シャルルによれば、学園で下級生に対する陰湿ないじめが繰り返され、その首謀者がブランディーヌだというのだ。
ブランディーヌは周囲を見渡す。その視線を避けて顔を背ける姿が何人もある。
シャルルの隣にはいじめられているとされる下級生の男爵家令嬢コリンヌの姿が。そのコリンヌが、ブランディーヌと目が合った瞬間、確かに勝ち誇った笑みを浮かべたのが分かった。
ああ、さすがに下位貴族までは盲点でしたわね。
ブランディーヌは敗けを認めるしかない。
だが彼女は、シャルルの次の言葉にさらなる衝撃を受けることになる。
「そして私の婚約は、新たにこのコリンヌと結ぶことになる!」
正式な場でもなく、おそらく父王の承諾さえも得ていないであろう段階で、独断で勝手なことを言い出すシャルル。それも大概だが、本当に男爵家の、下位貴族の娘に王子妃が務まると思っているのか。
これでもブランディーヌは彼の婚約者として10年費やしてきた。その彼の信頼を得られなかったのならば甘んじて婚約破棄も受け入れよう。
だがしかし、シャルルの王子としての立場は守らねばならない。男爵家の娘が立派に務めを果たせるならばいいが、もしも果たせなければ、回り回って婚約者の地位を守れなかったブランディーヌの責任さえも問われかねないのだ。
だから彼女はコリンヌに問うた。
「貴女、王子妃となる覚悟はお有りなのよね?
では、一度お試しで受けてみられますか?“王子妃教育”を」
そしてコリンヌは、なぜそう問われたのか、その真意を思い知ることになる⸺!
◆拙作『熊男爵の押しかけ幼妻』と同じ国の同じ時代の物語です。直接の繋がりはありませんが登場人物の一部が被ります。
◆全15話+番外編が前後編、続編(公爵家侍女編)が全25話+エピローグ、それに設定資料2編とおまけの閑話まで含めて6/2に無事完結!
アルファ版は断罪シーンでセリフがひとつ追加されてます。大筋は変わりません。
小説家になろうでも公開しています。あちらは全6話+1話、続編が全13話+エピローグ。なろう版は続編含めて5/16に完結。
◆小説家になろう4/26日間[異世界恋愛]ランキング1位!同[総合]ランキングも1位!5/22累計100万PV突破!
アルファポリスHOTランキングはどうやら41位止まりのようです。(現在圏外)
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。
忙しい男
菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。
「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」
「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」
すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。
※ハッピーエンドです
かなりやきもきさせてしまうと思います。
どうか温かい目でみてやってくださいね。
※本編完結しました(2019/07/15)
スピンオフ &番外編
【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19)
改稿 (2020/01/01)
本編のみカクヨムさんでも公開しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる