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しおりを挟む電車がホームに入って来て、それに乗り込んだ。
降りる方のドア付近を陣取って、ふと窓に映る自分の姿に怖じ気付いた。
時間も無かったし、妹に言われたまま着て来たけど、本当にこれでよかったんだろうか?
と思ってしまう。
妹には友達とは言ったけど、気になってる異性とは言わなかったのが仇となってる気がしてならない。
せめてリップだけでもと思い鞄に入ってるミニポーチ(入れっぱなしになってる)を出して、ピンク色のリップを取り出し、塗った(ママ曰く、高校生なら薄化粧とは言わず、リップだけでも充分との事で)。
それでも、夜寝る前のスキンケアーだけは、やってるんだけど成果が出てるかはいまいちわからない。
それでもやらないよりはと、続けている。
不安(格好が…)だけど、もう潔く行くしかないよね。
もうすぐ、降りる駅に着いてしまうし……。
ホームに降りて、そのまま改札口に足を向ける。
改札口を出て辺りをキョロキョロと見渡したが、彼の姿を見つけれずそのまま改札口と反対側の壁側へ移動して、彼が来るのを待った。
暫くして、改札口が混み出したので目を泳がせていると彼を見つけた。
彼の私服姿(勿論初めて見る)のだけど、見惚れてしまった。
淡いブルーのジャケットに白のTシャツ、チノパンにバッシュ。
シンプルな装いなんだけど、存在感が凄くて彼の隣に並びたく無いと逃げ腰になってしまい、思わず横に一歩ずれた。
「珠稀、遅くなってごめん。」
彼は、私に気付くと直ぐに此方に向かって来て私の近くで、そう口にしたのだ。
「私も、今さっき着いたばかりだから、そんなに待ってないよ。」
と言葉を返す。
「じゃあ、行こうか。」
そう言って当たり前の様に私の前に手を差し延べてきた。
私は、その手をマジマジと見ながらどうしたものかと思案する。
この手を捕ったら、必然的に横に並ぶことになる。そうならない様にするには、一歩下がった常態の方がいいとは思うものの、さてどうしたものか……。
思考を巡らせてると。
「珠稀、どうした?」
私の顔を覗き込むようにして聞いてくる彼に思わず仰け反ってしまい、彼が傷付いた顔をする。
そんな顔しないで欲しい。
「な、何でも無い……。」
戸惑いながらそう答えると。
「そ……。」
そっけない返事とは裏腹に不満そうな顔で答える彼。
怒らせちゃった?
不安になり顔を俯ける。
「時間がもったいないから、行こうか。」
彼が背を向けて歩き出したのを慌てて追う。
足の長さが違うから、中々追い付けず、パタパタと小走りする羽目に……。
何で、こんな事になってるんだろう?
浮かれ過ぎたのがいけないのかな?
彼は、揶揄ってるだけだったのかな?
そんな事が頭に浮かび、往来の真ん中で足が止まった。
来ない方がよかった。
私は踵を返すと彼とは反対方向へと走り出した。
本当は、彼との勉強とても楽しみにしてる自分が居たの。
昨日からずっとそわそわしてた。
勉強苦手だし、でもこういう事(不純かもしれないけど)で少しでも克服できたらって思ったんだけど……。
「珠稀、待て!」
背後から聞こえて来る彼の声。
待つ理由も見つからないから、そのまま走る。
でも……。
「待て、って言ってるだろ。」
って、難無く腕を捕まれてしまう。
息一つ乱す事無く、彼は私に追い付いて、もう、何なのかわかんなくて、小さな子どもの様に首を只横に振るしか出来なくて。顔も見られたく無くて、彼から背けていた。
楽しく(?)図書館で勉強のはずが、何でこんな事になってるんだろう?
「珠稀、ごめん。珠稀の気持ちが知りたくて、俺……。」
彼が不意に口にした言葉に顔を上げる。
辛そうな顔で、私を見てくる。
「自分が焦ってるの、わかってる。珠稀が俺を見てくれるのを待つつもりだった。だけど……。」
彼が言葉を途切らせる。
何が、そうさせてるのか私にはわからない。
ただ、私の我が儘が彼に辛くさせてるなら。
「……答えは出てるよ。だけど、今は伝えれない。もう少しだけ、待って欲しい。」
私の中に答えは出てるの。
でも、引っ掛かることもあるの。
それが、解決すれば……。
「わかった。待つよ。だけど、長くは待てないよ。」
彼は、真顔でそう口にした。
「…うん。」
私も自分のためにも、早々に解決しなければと決意を改めてした。
その後、彼に腕を引っ張られる形で図書館に行き、時間一杯勉強(彼に迷惑だったかも)に費やした。
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